10月1日、酒税率改正でビール減税、ビールプロモーションに乗る|「これは押さえたい」酒編・2023年10月

2023.08.24

酒文化研究所 山田聡昭

10月1日に酒税率が改正され、ビールは減税、反対に新ジャンルは増税される。後者は9月末に大きな仮需が生じて10月最終週まで動きは鈍い。一方、前者は大手ビールメーカーが減税を機に主力ブランドのてこ入れを図ったり、新製品を投入したりして大規模なプロモーションを展開する。小売りはこの波に乗ってビール比率を高め商品単価の引き上げを図る。

ビール類の酒税改正の概要

テーブル
自動的に生成された説明

ビールのメーカープロモーション対応

ビールは350㎖1缶当たり約7円の減税となる。マスコミはビール減税を報道枠で報じ、大手ビール4社はこの機に大々的にプロモーションをかける。アサヒは「スーパードライ」を軸にラグビーW杯公式スポンサーの立場を最大限に活用して「減税」をアピールするだろう。

「ビールが安くなった」という情報は広く知られるところとなるが、この商機の初期のターゲットは増税された新ジャンルを買い置きしなかったビール類のライト&ミドルユーザーだ。新ジャンルの家庭在がなくなり始め、第3週までは6缶とばら売りでリマインド購買を拾っていく。

第3週以降はビール類ヘビーユーザーが売場に戻ってくる。ここからは彼らがメインターゲットで、ビールの6缶パックで1000円を切れるなら、このタイミングで仕掛け「安くなった感」をアピールし、新ジャンルからビールへのシフトを促す。

売場展開

9月末に新ジャンルを売り切った後は、冷蔵ケースの新ジャンルのフェースを減らし、代わりにビールのフェースを増やして、年末までビールメーカーのプロモーションと連動してビールを売り込んでいく。ビール類のヘビーユーザーを新ジャンルからビールに誘導できれば、商品単価は上がり中長期的に売り上げを下支えすることができる。

色で売り込めクラフトビール

9月末には新ジャンルの増税前の買いだめが発生、10月にはビール減税でビール売場の立ち寄り客数が増加する。この期間にあえてクラフトビールの露出を高め、プラス1アイテムのトライアルを促す。

クラフトビールは、これまでペールエールやIPAなどビアスタイルをお客に伝える売り込み方が多かった。クラフトビールファンにはこのコミュニケーションで良いのだが、あまりビールに関心のない一般客には伝わりにくい。

現在、クラフトビールの裾野を広げようと「キリンスプリングバレー」が、クラフトビールをシンプルに色で選ぶことを提案する広告を大々的に展開している。このコミュニケーションを活用して、クラフトビールを色別に分けてアピールする。

売場展開

ビールを4色に分ける。ピルスナーラガーなどの金色(ゴールド)、ベルジャンホワイトやヴァイツェンなどの白色(ホワイト)、アンバーエールやIPAなどの茶色(ブラウン)、ポーターやスタウトなどの黒色(ブラック)だ。

エンドや平場で色別にブロックを作り、バラエティ豊富な商品を分かりやすくアピールする。

クラフトビールは使う麦芽によって液色はさまざま。香り、甘味、酸味のバランスで味わいはバラエティに富む

インバウンド対応アルミカップ酒

欧米や東南アジアからの観光客が回復し、中国からの団体客が動き始めるこの秋のインバウンド需要は、コロナ前を上回ると予想される。彼らが日本滞在中に飲んだり、土産にしたりする酒は、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、ドラッグストアで購入されている。観光地でない地域でも宿泊施設の近くの店では、こうした需要に応えていきたい。

売場展開

ビールやレディトゥドリンク(RTD)は通常の品揃えでカバーできるが、日本を代表する酒と思われている日本酒は、外国人に好まれるパッケージの商品をそろえる。ホテルで飲むにも土産にするにも手ごろであるのはアルミ缶カップ酒で、浮世絵や錦鯉のデザインのものがよく動く。また、海外では濁った酒がないため濁り酒が喜ばれる。オーソドックスな濁り酒の他、リンゴやかんきつの果汁を加えた飲みやすいタイプも品揃えして売り込む。

トレンド商品

梅酒&ユズ酒

インバウンド対策として品揃えを充実させたいのが梅酒とユズ酒だ。梅酒は日本への留学生の多くが持ち帰りたい酒のトップに挙げており、同様に万人受けするユズ酒は、海外の展示会で日本酒ブースでの最初に一杯に重宝されている。

また、フランスのトップソムリエが審査する酒コンテストKura Masterは、今年、梅酒部門を設けた上、上位入賞酒とポールボキューズのスイーツとのペアリングを審査し、実際、同店で提供され好評を得た。

商品は土産に手ごろな中小容量商品(紙パックを含む300~720㎖)を10点程度品揃えしておきたい。お勧めの生産者は、豊富なバリエーションと安定した品質の梅乃宿酒造(奈良県)や中野BC(和歌山県)、梅酒コンテストで入賞実績のある木内酒造(茨城県)、明利酒類(同)、小嶋総本店(山形県)など。

テーブルで食事をしている人
自動的に生成された説明
写真提供:Kura Master