気温の変化と共に旬を迎える秋果実と煮物、鍋物商材を売り込む|「これは押さえたい」青果編・2023年10月

2023.09.22

創風土パートナー 代田 実

近年は気候温暖化の影響で9月まで厳しい残暑が続くことが多くなったが、10月ともなれば次第に秋らしい日が増えてくる。その中で消費を伸ばすのが本格的な旬を迎える秋果実のリンゴ、ミカン、柿と食卓での出現率がぐっと上がる「煮物」「鍋物」商材だ。

これに比例してサラダ材料は徐々に消費を落としてくるので、売場スペースの再配分を随時行い、効率的な売場商品構成で商売を行うことが重要だ。

10月の家計支出金額上位品目と前月比伸び率

出所:総務省家計調査2022年10月全国二人以上の世帯の支出金額

リンゴ

多くの品種が出回るリンゴは販売品種の押さえがポイントとなる。9月から本格的に新シーズン入りするリンゴは、10月になるとさまざまな品種の中生種が出回り始め、その消費金額は9月の1.5倍以上と急増し、果実全品目中最大の消費金額となる。

そのため、10月はリンゴ販売が果実全体の売上げ、利益を左右するといっても良い重点品目となるので後述の販売ポイントを押さえ、しっかり販売していきたい。

10月リンゴの販売ポイント

10月に市場入荷するリンゴの品種数は数十種類に及び、それら全てを品揃えすることはとても不可能だ。そこで軸となる早生ふじを中心に売場づくりを行うことになるが、それぞれの品種特性をしっかり理解し、食味重視の販売を行っていくことが基本となる。

10月のリンゴ販売の軸となる早生ふじだが、実は早生ふじという品種は存在しない。ふじの血を引く品種のうち、ふじよりも早く、10月に出回る弘前ふじ、昂林、やたか、紅将軍などの品種を総称して「早生ふじ」と呼んでいる。

このため同じ早生ふじであっても、品種、産地によって味のばらつきが出ることがあるので注意したい。早生ふじを販売する際は、仕入れる商品の品種、産地をしっかり押さえ、お客に満足してもらえる品質、食味であることを確認して販売することが大切だ。

また、早生ふじと併せて売り込みたいのが、秋映、シナノスイートとなる。前述のとおり、早生ふじの販売に当たっては注意が必要だが、それを補完する上で重要な品種が秋映、シナノスイートとなる。

シナノスイートは栽培面積が全品種中5位、秋映は9位と出回り量が多い上、両品種とも10月上旬から旬に入り、安定した食味の商品を販売することができる。そのため10月前半については早生ふじと併せて、これら2品種を前面に出して売り込むことを勧めたい。

特徴ある品種の紅玉、北斗の販売もおもしろい。10月に出回るリンゴの品種は数多いが、その中で特徴ある品種でかつ出回り量の多い紅玉、北斗はぜひ、販売にチャレンジしてほしい品種だ。

特に紅玉は煮崩れしにくいことからコンポートや焼きリンゴ作りに適しているため、こうした用途を目的に購入するお客が多い品種だ。

また、北斗は栽培面積では第7位とそれなりの生産量があり、この時季のリンゴとしては珍しく蜜入りになることが多く、食味の良いリンゴとなる。

ただ、芯カビの発生など障害が出やすいことから、生産、販売を避けられがちだが、品質管理をしっかり行い、売り込んでいきたい品種ではある。

ミカン

ミカンは、産地、品種にこだわって販売したい。9月から出始める極早生種のミカンは、最初は緑色が目立つものの、10月ともなれば着色も良くなり食味も安定してくる。

ただ、今年のように台風が多く、局地的な大雨が降った年は産地別の作柄や食味にばらつきが出やすいことが過去からの例を見ても推測できる。こんな年だからこそ、自店で販売するミカンは産地、品種にこだわってしっかり選び、自店のお勧めブランドを販売していきたいものだ。

近年注目の品種はゆら早生だ。和歌山県で早生種の宮川早生の枝変わり(突然変異)として発見されたゆら早生は、本来11月から出回る早生種の特徴そのままの高糖度で、果肉の薄皮(じょうのう)がとても薄いのが特徴の新品種。

例年、10月上旬~中旬にかけて出回り始めるので、11月の早生種の出回りを待たず、それに近い食味のミカンを楽しめるということで販売する店が増えている注目品種だ。

特に今年のように雨が多い年でも比較的食味が安定する特徴もあり、価格面では多少高くてもお客に自信を持ってお勧めできる品種だ。

白菜

一般に1日の平均気温が20℃を下回ると、食卓での鍋料理出現率が上昇するといわれている。青果売場の鍋材料の売れ数もこれに比例して増え、特に鍋材料の定番ともいえる白菜は前月9月対比で約2倍の消費金額となる。変動幅は極めて大きいので天気予報などで気温動向を確認の上、品切れやチャンスロスを出さないよう発注、売場計画は慎重に行いたい。

その際、参考になる気象庁のホームページや、例年10月になると日本気象協会から発表される「なべ物指数」などの情報となる。こまめにチェックするようにすると良い。

参考までに、全国各地の平均気温が20℃を下回る平年日をまとめると以下のようになる。今年は酷残暑が見込まれているのでこれより遅くなると思われるが、1つの目安として見てほしい。

札幌/9月10日

仙台/9月22日

東京/10月5日

大阪、福岡/10月14日

鍋商材売場展開時の工夫

白菜のカット売りは、ロス対策を兼ねて玉売り、鍋スープとの併売が有効だ。カットした白菜の4分の1や2分の1は基本、当日売り切りとなるが、売り切り時の売場商品ボリューム不足が悩みのたねだ。

そこでお勧めしたいのが、売り切る必要のない玉売りや白菜鍋スープとの併売だ。売場商品ボリュームを維持しつつ、カットした白菜を売切ることができる。

ネギ

鍋材料の中で白菜やキノコ類は全国どこへ行っても大きく違わないが、ネギ類だけは地域性が強く、同じ長ネギだけでも仙台の曲がりネギや群馬の下仁田ネギなど特徴あるものが多く存在する。こうした特徴あるネギをそろえてメニュー提案するのも、競争店との差別化という意味で効果的となる。