食味が安定してくる秋果実のミカン、リンゴ、気温が高ければサラダ商品提案も|「これは押さえたい」青果編・2023年11月

2023.10.05

創風土パートナー 代田 実

今年の夏は全国的に観測史上最も暑い夏となったが、実は昨年11月も記録的に暖かい11月だった。特に東日本では観測史上最も気温の高い11月であり、このため図表にある昨年11月の家計支出を見ても、思いのほか煮物・鍋物商材が伸びず、図表にはないものの代表的な鍋商材である白菜の消費は20位179円にとどまっていた。

気象庁の季節予報では、今年の11月も西日本を中心に平年より暖かい11月となる見とおしなので、昨年の実績と今年の気温動向を注意深く見ながら気温に合わせたメニュー・商品提案を行っていく必要があるだろう。

2023年11月の家計支出金額上位品目と前月比伸び率

出所:総務省家計調査2022年11月全国二人以上の世帯の支出金額
※10位以下は前月比伸び率の大きい品目のみを掲載

味が安定してくる秋果実

今年の秋果実は猛暑と厳しい残暑の影響を受け、出始め時季の早生種を中心に着色不良や棚持ちの悪さなどに見舞われ、品質、食味とも不安定であった。こうした秋果実も11月になるとミカンは極早生種が終了し、早生種に切り替わることで一段と食味が良くなる他、リンゴも主力品種であるふじが本格的に出回ることで品質、食味とも安定してくる見とおしだ。

それに合わせて家計支出金額でも青果部門全体のトップ2となるミカン、リンゴをしっかり販売することが11月青果商売全体の結果に結び付くといえる。

ミカンは極早生種~早生種への切り替えがポイントとなる。9月の露地ミカン出始めから10月いっぱい販売してきた極早生種のミカンは終了となり、11月になると各産地とも早生種のミカンに切り替わり、食味も良くなると同時に品質も安定してくる。

このため、年によっては極早生種の残量が多いこともあるが、食味と価格のバランスも考えてできるだけ早いタイミングで早生種への切り替えを行うのが基本戦略となる。

シーズンスタート時点で販売する産地、ブランドを決めているのであれば、その産地、市場担当者から早生種への切り替え時季情報をもらい、在庫調整を行うなどスムースな切り替えを行うとよい。

また、お客に対してはPOPでの表示などで「本格的ミカンシーズン到来!」「一段とおいしくなりました」など、早生種に切り替わって味が良くなったことをアピールしたい。

また、多くの産地が11月中旬にかけて早生種に切り替わると、その後下旬から12月上旬にかけ、高糖度でミカンの袋(じょうのう)が薄く食べやすい「南柑20号」も出回り始めるので、こちらもしっかり品揃えして販売していきたい。

リンゴは主力品種のふじが本格的に出回る。国内で生産されるリンゴの約半数を占めるふじ。前年産のふじは冷蔵され翌年の夏まで販売されるが、このふじの新物が出始めるのは早い産地でも10月中旬以降だ。

それまで出回っている早生ふじは、本来のふじではなく、ふじの血筋を引いた早出しできる品種の総称だ。このため早生ふじはもともと本来のふじに比べ食味が劣る他、品種間の食味のばらつきもあるので販売するに当たっては注意しなくてはならない。

これに対して収穫期が遅いふじは、食味も良く生産量も多いことから食味、品質とも安定するので安心して販売拡大を行える。また、その年の天候にもよるが、11月後半以降は蜜入りとなることも多いので写真のように輪切りにしたものを見本として展示するのもよいだろう。

年末に向けドライフルーツ類の売場拡大

昨年11月の家計支出でも8位に入っている「果物加工品」、その中身の大半はドライフルーツと中旬以降本格的に出回り始める干柿だ。

これらの品目はこの先、年末から年始にかけさらに消費が伸びるため、少なくとも11月中旬以降はコーナー展開スタート、売場拡大をしていることが必要だ。

その際、必ずやっておきたいのがSKUの絞り込みと品揃えの改廃だ。ドライフルーツの主力となるナッツ類はその品種の他、内容量の変化により多くのSKUを持つ品群である。その最大需要期となる12月~年始を前に、とりあえずは11月に最大SKUでの展開を行い、売れ筋、死に筋の仕分けを行う。

死に筋商品はカット、売れる可能性のある新規商品導入を行うなどして、販売ピークには最も効率の良い商品構成となるようにいまのうちから準備しておきたい。

気温高ければ商品状況見つつサラダ材料拡大も

昨年11月の家計支出では、3位のトマトの他、12位にブロッコリーがランクインしている。これは好天に恵まれ気温が高く、サラダ需要が堅調だったことに加え、秋冬取りのブロッコリーの生育が良く一時的に市場入荷が増え、売りやすかったことも要因だ。

このように気候変動が進む中、11月はセオリーどおり煮物、鍋物商材の売場に軸足を置きつつも、気温と商品状況によって売りやすい品目をスポット的に広げるタイムリーな商売も必要だ。

同じく17位にランクインしているホウレンソウも昨年は生育が進み、市場入荷が増えたことで売りやすかったことを見ても、近年の気候変動で商品、販売状況が変化しやすいことが分かる。このように気温など天候与件、産地商品状況を見た臨機応変な売場商品構成が結果に結び付くのが近年の流れだ。