秋冬メニューのしゃぶしゃぶはやはり「牛」で提案、エスニック料理はインドに注目|「これは押さえたい」精肉編・2023年11月

2023.10.05

月城流通研究所代表 月城聡之

秋冬メニューの王道「しゃぶしゃぶ」を、定番商品と付加価値商品ですみ分けをして売上げを確保していく。

「しゃぶしゃぶコーナー」の売上げの核となるのは、豚ロースや牛カタロースの薄切りであるが、変わり種商品があることで、さらにしゃぶしゃぶコーナーのボリューム、売上げのボリュームが上がる。

畜種、部位、食べ方含めてさまざまな角度から、しゃぶしゃぶコーナーに幅を持たせていく。

牛肉

国産黒毛和牛ザブトン(カタロース)牛しゃぶ用 100g当たり980円

黒毛和牛カタロースの中でも「ザブトン」を使用した商品化を行う。希少部位人気でザブトンのネーミングを知っている消費者も多く、その価値をしゃぶしゃぶでも展開する。

ザブトン、カタロース芯など希少部位として、焼肉コーナーで展開されることで認知度が高くなったことから、しゃぶしゃぶでも食べてみたいという消費者の心理をくすぐる提案としたい。

豚肉のしゃぶしゃぶが登場してから牛肉のしゃぶしゃぶが下火になり、豚肉がしゃぶしゃぶコーナーを牽引している。

高級なイメージのしゃぶしゃぶだが、豚肉の場合、安価でさっぱり食べられる料理として家庭の食卓でも食べることができるメニューとして認知された。

しかし、外食のしゃぶしゃぶ業態では、あまり家庭でも食べられていない「牛しゃぶしゃぶ」を、注文することも多く、また高級店でもやはり牛肉を使用している。

その意味では牛肉のしゃぶしゃぶを食べたいニーズは存在していることから、特に牛肉しゃぶしゃぶを食べてきた高齢者層をターゲットに、少量で満足感の得られるアイテムとして品揃えする。

豚肉

メキシコ産トントロ(ネック)豚しゃぶ用 480円/300g

焼肉用として人気の「トントロ」を薄切りにして、しゃぶしゃぶ提案する。焼肉カットの商品は、しゃぶしゃぶにすると硬い食感となってしまうため、薄切りを使用する。

牛肉ほど単価が高くないため、量目を多めに設定しパック売価を上げて商品化すると良い。「トントロ」は、しゃぶしゃぶ以外でも、定番の焼肉、塩だれでネギや玉ネギと一緒に炒めて野菜炒め、ショウガ焼きなどにも活用できる。

アレンジメニューと一緒に売場で提案する。秋冬では、鍋の素材としても食感の異なる豚肉として、豚ロースやカタロースと一緒に販売できる。

商品化は、高ぶた付き丸トレーなど、ボリュームのある商品化にすることで、売場でもボリューム感が演出できる。その際は、一緒に購入してもらいたい商品も、同じトレーで商品化することで、関連性を付けることができる。

ラム肉

豪州産ラム肉モモ ラムしゃぶ用 100g当たり298円

羊肉を使用したしゃぶしゃぶ提案を実施する。日本では一般的ではない羊肉であるが、その要員の1つに羊肉の香りがある。

特に日本ではジンギスカンの用途で羊肉は用いられるため、焼いたときの香りが部屋に残ることを懸念して家庭では料理しないという消費者が多い。

しかし、羊肉のしゃぶしゃぶは、焼いたときに出る独特の香りがなく、家庭でのネガティブ要因は軽減される。たれはジンギスカンのしょうゆベースのたれで食べるとおいしいので、ジンギスカンが家庭で楽しめないという人でも、同様の味を家庭でも楽しめるようになる。

商品化は、ラム肉ランプを使用してスライサーで薄切りにする。

カタやカタロースでも商品化は可能であるが、カタはばらけやすく、カタロースは面が広くないため商品化に時間がかかってしまう。そのため、比較的面が取りやすく、残った部分をサイコロステーキのようにして販売することができるランプがお勧めである。

個体によってやや粘り気のある水分が多いラムも存在するが、半凍結させるとスライスしやすい。冷凍原料を使用するのも一つの手段である。

簡便商材

ガーリックペッパービーフ 牛味付け 680円/230g

簡便商材で売れ筋となっているガーリックペッパービーフは、根強い人気となり、各社オリジナリティのある商品化を実施している。

そのまま焼いておかずにもなるが、ご飯と一緒にガーリックライスにも商品化できる部分で、消費者にも受け入れられたと思われる。

さらに味の強化をするに当たり、ガーリックバターの添付を行うと良い。ステーキにも添付できるガーリックバターであるが、ガーリックライスだけでなく、ガリバタチキンなど、鶏モモなどにも添付して汎用性の広い調味料として活用する。

ガーリックペッパービーフは数量が売れ始めてきているため、ドーム型の高ぶたではなく、重ねることができるタイプのふた付きトレーを使用して商品化する。

ふたにたれが付かないように注意する。また、肉だけでなく、コーンなどが入っていることが分かるように盛り付けることも売れ筋となる1つのポイントである。

エスニック料理の売場

コロナが落ち着き、海外旅行ができるようになり、東南アジアを中心に連休などに頻繁に海外旅行するようになってきている。

特に、女性に人気の東南アジアはエスニック料理を求めて渡航するケースも少なくない。台湾やベトナム、タイの料理は、最近日本でも外食店が増え始め、広く一般的に食べられるようになってきている。

ここ最近、日本で増えているのがインド料理である。インド料理はインド人が経営している場合もあるが、ネパールやバングラディシュ、パキスタンなど、周辺国の方が経営していることも多く、これらの地域でもインド料理が食されていることがうかがえる。

代表するメニューとしてはカレーがあり、香辛料が店舗によって少しずつ異なることも、このメニューのおもしろさにある。このような楽しみを味わえるのが、エスニックで、エスニック特集を行うと、若い女性を中心に購買につながる。

精肉でインド料理と言えば、「タンドリーチキン」であるが、本来、タンドリーチキンは「骨付きモモ」など骨の付いた鶏肉を使用する。

骨が付いていないムネ肉などを、タンドリーチキンのようにしたメニューは「チキンティッカ」という別の料理名が付いているので知っておきたい。

このタンドリーチキンのたれを使用して、日本独自の進化を遂げたのが「タンドリーポーク」となる。本場インドでは、豚肉を食べる習慣はほとんどない。

牛肉のように宗教上食べないということではなく、豚は汚い不浄な動物というのが、食べない理由だそうだ。日本では豚肉を上手く活用したい。

国産豚バラ タンドリーポーク味付け 380円/200g

豚バラ肉を使用したタンドリーチキンのアレンジ商品。タンドリーチキンの味付けを、豚バラ角切りで行い商品化する。

オペレーションも容易で、たれさえあればすぐに商品化することができる。タンドリーはインド料理で使用する「タンドール」という壺型のかまどで焼く料理のこと。ナンを焼く土釜のことである。ナンはタンドールの内側の壁に貼り付けて焼くイメージだが、タンドリーチキンなどは長い串に肉を刺し、壺の内側に立てかけてオーブンのように加熱していく。

日本の家庭にはタンドールはないので、フライパンで焼き上げることで、メニューを再現する。

また、インドの串料理に「シークカバブ」がある。インドでは、羊やヤギのひき肉を使用して香辛料、玉ネギ、ニンニク、クミンなどを混ぜ、串に刺しタンドーラで焼き上げたメニューである。

日本ではなかなか羊やヤギのひき肉は手に入らないため、合いびき肉や生ソーセージなどを代用して、串に刺して焼くと、エスニック感が出て食卓が楽しくなる。

2023年AIによる精肉売場予想

現在、AI(人工知能)が進化を遂げ、さまざまな情報を素に、精肉を考察することも可能な時代となっている。2023年の日本の精肉売場でトレンドとなるテーマについてChatGPTに質問したところ、以下のような回答が得られた。


1.持続可能性: 持続可能な肉供給がますます重要になります。消費者は環境に配慮した製品や、動物福祉に配慮した肉を求めています。スーパーマーケットは、この需要に応えるために持続可能な肉の品揃えを強化するでしょう。

2.プラントベースド・ミート: プラントベースド・ミートやベジタリアンオプションの需要が増加しています。肉食者から非肉食者まで幅広い顧客をターゲットに、肉の代替品を提供することが期待されます。

3.地元産品: 地元産の肉や家庭製品に対する需要が高まります。地元の肉加工業者や農家と提携し、地元産品を強調することで、地域コミュニティへの貢献をアピールポイントにします。

4.健康志向: 健康意識が高まる中で、低脂肪、高タンパク質、無添加の肉製品が注目されます。スーパーマーケットは、健康に配慮した肉製品を提供し、栄養情報をわかりやすく表示することで顧客に訴求します。

5.デジタルプレゼンス: オンライン注文、デジタルクーポン、お得な情報の提供など、デジタルプレゼンスを高めることが不可欠です。顧客はスマートフォンアプリを通じて商品を探し、価格を比較し、注文することを好む傾向があります。

6.国際的な料理の影響: 国際的な料理からの影響を受けた肉製品や調味料の提供が増えるでしょう。エキゾチックな調味料やスパイスを使用した料理の素材として、新しい商品が店頭に並びます。

7.調理とレシピサポート: スーパーマーケットは、顧客に調理方法やレシピの提供、料理アドバイスを強化し、料理の手助けを行います。これにより、料理のアイデアを提供し、売上を増加させる機会が生まれます。

Written with ChatGPT 2023/09/18 17:35


何も情報を与えていない状態で、ChatGPTは上記の7項目についてのコメントを出してきた。精肉の現場レベルでは、持続可能な調達の話までは、なかなか行き着かないが、バイヤーや経営者は、すでに1、2のSDGs(持続可能な開発目標)や代替肉などについての情報収集と展開を検討している。現時点では、大豆タンパクでの代替肉が日本では主流であるが、元来日本では豆腐なども普段の食生活で摂取しているため、大きく大豆ミートへのブランドスイッチは行われなかった。

3の地産品商品は、今後の海外からの調達難を想定すると、より身近な場所からの商品調達が鍵となることをAIも予測していると考えられる。また、スマホを活用したEC(電子商取引)は、すでに競合がたくさんいることから、価格がポイントとなることにも言及している。6を見ると、海外の調味料や料理の影響を受けることも想定しており、今回提案したエスニック料理のフェアなども、売場づくりには必要であると考えられる。科学技術の進歩で、少しずつ世の中の情報源や当たり前が変化している。20年前はレシピと言えば、テレビの料理番組や一部レシピサイトがあった程度であるが、いまとなってはほぼ1人1台持っているスマホで調べると、数多くのレシピが検索できる。

食材の調達もいまはネット決済、クリック1つで、当日に食材が配送されたり、外食が届けられたりする世の中になっている。精肉に関しても進歩は著しく、冷凍の技術、工場の3Dスライサーでの定貫商品の実現など、さまざまなカテゴリで変化が起きている。

AIが進歩するにつれ、さまざまな業種で業務が簡素化され、生活も楽になる半面、やはり、人間がその時々の感情でトレンドが生まれたり、おいしいと感じることができる精肉商品を作ったりすることができるのは、人間ならではのおもしろさでもある。

精肉でおいしいと言ってもらえる商品づくり、商品を見て購入したいという心のこもった商品づくりを忘れず、日々の商品化を行ってもらいたい。