大手が動き出した日本ワインを売り込む、減税で追い風のビールは引き続き伸長図る|「これは押さえたい」酒編・2023年11月
2023.10.19
酒文化研究所 山田聡昭
11月は減税で追い風のビールの伸長を図り商品単価の底上げを進める一方、オンシーズンになるワインの購買機会を日本ワインと新酒ワインの2つの商材で創出し、最大の売り時である12月で高単価商品を売り込む下地を作る。
目次
糖質オフ・ゼロのビール
ビール類の酒税率改正から1カ月、増税された新ジャンルの買いだめも解消して動き始め、ビールは減税の追い風を受けて堅調に推移しているはずだ。ビール類市場に動きのあるいま、安定成長が見込まれる糖質オフ・ゼロのビールを訴求してビールのユーザーの固定化を図る。
オフ・ゼロビールの提案は糖質やプリン体の摂取を気にするビールユーザーが焼酎やウイスキーにスイッチする流れに歯止めをかける。また、同様の課題を抱える新ジャンル、発泡酒ユーザーに、ビールの価格が発泡酒に近づいたことに気づかせ、ビールへのスイッチを促す。
売場展開
「キリン一番搾り 糖質ゼロ」「PSB(パーフェクトサントリービール)」「サッポロ生ビール ナナマル」の350㎖6缶パックを、平台もしくはひな壇にボリュームたっぷりに陳列し、「お試しください! 糖質オフ・ゼロでおいしいビール」とPOPでアピールする。
その中で「一番搾り 糖質ゼロ」と「PSB」は、糖質ゼロのビールの飲み比べを提案する。さらにプリン体も控えたい方はこちらと「ナナマル」をお勧めする。
大手メーカーの日本ワイン
近年、注目度が上がっている日本ワインで、サントリーとメルシャンというリーダー企業が増産体制を整え、積極的な展開が進んでいる。
サントリーは、昨秋、山梨県の登美の丘ワイナリーを全面改修し、商品ラインナップを一新、統一ブランドとして「フロムファーム(FROM FARM)」を冠した。今後、山梨県で甲州種のブドウの栽培を拡大し、国内外の市場のさらなる拡大を図る。
メルシャンは長野県の塩尻と上田でワイナリーを稼働させた。ブドウ畑に隣接してワイナリーを置き、収穫後すぐに仕込みに入れる体制を整備した上で増産を図り、伸長著しい日本ワインをリードしていく。
日本ワインは一部のマニアックなユーザーによってカルト的な人気となるワイナリーが散見されるが、全体としては零細なワイナリーは品質の向上と販路の拡大に課題を残していた。日本のワイン市場を草創期からけん引してきたサントリーとメルシャンが増産意向を明確にしたことで、マニアから一般の方へとユーザーの開拓が進めやすくなる。
売場展開
サントリーとメルシャンの商品を核に、北海道、山形、山梨、長野、その他の5つの地域カテゴリーでくくって陳列し、日本ワイン産地マップを示して広がりを可視化する。商品の特徴はなるべく平易な日本語で説明し、ブドウ品種は甲州種、メルロ種のように「種」をつけて、産地との混同を避け、詳しい人向けのイメージを払しょくする。価格帯は2000円前後を厚くし、1000円程度のリーズナブルなものは無理して扱わない。
理由は、主に1000円以下の輸入ワインを飲んでいる人は日本ワインと輸入ワインをコスパで比べるため、日本ワインは割高に映り顧客にならないからだ。中心価格帯を2000円に上げることで、この価格帯の輸入ワインを購入する人に気づきを与え、トライアルを促す。この価格帯でなら輸入ワインと遜色ない日本ワインを探すのは難しくない。
さらに11月は新酒ワインが出そろう。8月下旬にデラウェア種などの新酒が出始め、ヤマナシヌーボーの解禁日11月3日にはおおむねリリースされる。甲州種を使った白、マスカット・ベーリーA種の赤など、ブドウ品種も多彩で産地特製と共に紹介するとよい。


安くておいしい大吟醸
気温が一気に下がる日のある11月半ば、ちらほらコートを羽織る人が出てくると日本酒はようやく動き始める。だが、コアユーザーの高齢化が進み、需要減が進行していることもあって供給は過剰気味だ。その一方で技術革新や製造設備の発達で、極めてコストパフォーマンスの高い大吟醸酒(純米大吟醸酒)が登場し、コストパフォーマンスの高い商品が多数発売されている。
また、日本酒マニアに人気の商品は正規流通商品がスーパーマーケットなどのルートに供給されず、一般の人の手元に届かない状態が長年続いている。そのため消費者には「おいしい日本酒はスーパーマーケットに並ばず、あっても高い」という誤解が広がっている。
このギャップの解消を図り、リーズナブルでおいしい日本酒(720㎖で1000円未満)がたくさんあることをアピールする。
売場展開
宝酒造、白鶴酒造、月桂冠、世界鷹グループなど大手メーカーの商品を中心に、価格帯に収まる大吟醸酒を一堂に集める。「安くておいしい大吟醸を集めました!」とトップボードで謳う。商品周りではアワード受賞情報を添える。

トレンド商品
韓国酒場人気でマッコリ&焼酎にヒットの兆し
一世を風靡したマッコリブームから10年余りになるが、芸能や食の分野では韓流人気は衰えない。居酒屋では韓国酒場の人気が高まっており、テーブルにはビビンバやチゲ、プルコギなどの定番メニューが並ぶ。ドリンクはマッコリや韓国焼酎で、どちらもピーチやマスカットなどのフレーバードタイプが人気だ。
まだ、自宅でこうした酒類を飲む人は多くないものの、料飲店で体験している人は少なくない。そこで韓国の酒を取り揃えた韓国料理フェアと合わせて店頭化し、実験的に販売してみる。なお、マッコリは従来品世よりも格段においしい「生マッコリ」(要冷蔵)が流通しており、これにもチャレンジしたい。
売場展開
スポットでの実験販売を経て、動きがよければゴンドラエンドに韓国の酒コーナー常設する。生マッコリは冷蔵ケースで、にごり酒やスパークリング清酒と並べて陳列する。
