パーティシーズンの家飲み、ぜいたくなマイホーム酒宴ニーズに応える|「これは押さえたい」酒編・2023年12月

2023.11.09

酒文化研究所 山田聡昭

今年の12月はアフターコロナ最初のパーティシーズンを迎える。個人の忘年会やクリスマスパーティはほぼコロナ前に戻ると予想され、なかなか復調しない会社関係のパーティも7割くらい回復するであろう。ただし、どちらも1軒で腰を落ち着けて飲み食いし、2軒目には行かない。早く帰宅する生活習慣は崩さないとみられる。

家飲みでのパーティも盛り上がるはず。3年間の家飲み暮らしで、自宅で上質な酒を楽しむ経験を積んできており、家族や友人とぜいたくな酒宴が広がる。12月はこれにいかに応えるかが鍵だ。

プレミアムウイスキー

ウイスキーハイボールが外飲みですっかり定着し、ウイスキーユーザーの間口は老若男女すべてに広がった。サントリーやニッカ、あるいはベンチャーウイスキー(イチローズモルト)などジャパニーズウイスキーの人気はうなぎ上りで、プレミアム市場も活性化している。

ウイスキーは開栓後も保存ができるため、12月での購入は年末年始の家族団らんの夕げを広くカバーする。ビールや日本酒、ワインを飲んだ後、だらだらと飲むにはウイスキーはぴったりで、久しぶりに家族がそろえばぜいたくなウイスキーの飲み比べも楽しい。

こうしたシーンを想定して1本5000円くらいのウイスキーを提案する。必須カテゴリーはブレンデッドスコッチ、シングルモルトスコッチ、アメリカン(バーボン他)、ジャパニーズの4つで、アイリッシュや台湾など他の産地の代表ブランド、さらに日本のクラフトジンを加えてもよい。商品数は4カテゴリーごとに3、4点で計15点ほどそろえると、品揃えの豊富さ、あるいは販売店の本気度が伝わる。

関連販売としてテイスティンググラスと、ナッツ、ドライフルーツ、チョコレート、ようかんなどウイスキーに合うつまみを添える。

売場展開

ひな壇もしくはエンドで、各アイテム3、4フェース取って「面」でブランドを見せる。香味の特徴やストーリー、アワード受賞歴などを記した大型のプライスカードを用意すると効果的だ。また、カテゴリーごとにブロックを作り、ブレンデッドスコッチやジャパニーズなど、どんなタイプの商品がまとまっているか分かるようにするとよい。

部屋に集まっている人たち
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ウイスキーイベントはどこも大盛況。ウイスキーのファンは幅広い

日本ワイン&オーガニックワイン

クリスマスの酒と言えばスパークリングワインや赤ワインが定番だが、ただワインを並べるだけではもはや満足できない。いま注目のワインであることをしっかり伝え、いつもよりワンランク、ツーランク上のワインに手を伸ばす気分になるように仕掛ける。

注目のワインカテゴリーとして推したいのは2つ。

1つは「日本ワイン」であり、フルボトル3000円前後でなら、海外の同価格帯のワインと肩を並べるクオリティのものをそろえやすい。白ワインは甲州種を中心にシャルドネ種にも良いものがある。

なお、これまで甲州種は山梨県で多く栽培されていたが、近年は栽培地が広がり山梨以外の地域のワインも出ている。飲み比べると産地や造り手の個性が出ていておもしろい。赤ワインでは長野県のメルロー種は安定感があり、日本固有品種のマスカット・ベーリーA種は新潟、山梨、山形のワインに上質な仕上がりのものがある。スパークリングワインは瓶内二次発酵(クラシック製法)にこだわらず、コストパフォーマンスの高いものを選ぶとよい。

もう1つはオーガニックワインだ。オーガニックをうたう酒類は日本酒やビールにもあるが、オーガニック、あるいは自然派という切り口で選ぶユーザーが多いのはワインだ。上級品には個性的で好みが分かれるが、価格のこなれたものは広く受け入れられるように飲みやすい。

「人気急上昇中オーガニックワイン」とPOPを添えて、入門用にイタリアの1000円台のオーガニックワインを提案する。

売場展開

酒売場でのクリスマスセールとして平台でワインを展開する。木箱などで高低を付け、緑や赤のクロスをかけてクリスマスムードを盛り上げる。一画に「日本ワイン」と「オーガニックワイン」もしくはいずれかのコーナーを設けてアピールする。

人, 立つ, 男, 女性 が含まれている画像
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日本ワインは有力メーカーが続々とリニューアル。サッポログランポレールは6月に誕生20周年を迎え、新コンセプト「想いをつなぐ日本ワイン」にリニューアルした

ノンアルコール酒類

普段、酒を飲まない層も酒と触れる機会が増えるパーティシーズンは、ノンアルコール酒類の需要が拡大する。パーティが続き、飲み疲れしている人の休肝日での利用や、長時間の飲み会でのインターバル利用など、飲用シーンはバラエティに富む。

現在、ノンアルコール酒類はビール、ワイン、酎ハイ、ハイボールなどに商品ラインが広がっている。飲用経験率はビールが圧倒的に高く、他のノンアルコール酒類はトライアルしてもらい、その良さを知ってもらいたいところだ。需要の拡大する年末年始はその絶好のタイミングであり、「ノンアルコールも酎ハイ(ワイン)が良くない?」と投げかけ利用を促す。

売場展開

定番売場(冷蔵ケース&ドライゴンドラ)に「あった方がいいよね、ノンアルコール」というメッセージを、トップボードや商品周りのアイキャッチャーで伝える。

アルコールのボトルが並んでいる
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トレンド商品

甘くない酎ハイ

さまざまなメーカーから多くのフレーバーが登場している缶酎ハイ&ハイボールだが、顕著な伸びを見せているのは甘さを控えたドライタイプや糖質ゼロのタイプだ。

レディトゥドリンク(RTD)は10月の酒税率の改正で税率が据え置かれ、新ジャンルとの価格差が広がった。定価販売のコンビニではその差は目立たないが、ディスカウントするスーパーマーケットでは価格差が顕著で新ジャンルからRTDにもう一段シフトすると思われる(完全にスイッチするのではなく併売率が上がる、あるいはRTDの購買頻度が上がる)。

RTDに税改正に伴う追い風があるいま、力点を置くべきRTDはこの「甘くない酎ハイ」だ。甲類焼酎やウオッカベースのレモン酎ハイや本格焼酎のシンプルソーダ割りをそろえて、甘くない酎ハイを打ち出す。

売場展開

自社の甘くない酎ハイカテゴリーで売上げランキングを作り、トップ5をゴンドラエンドで大々的にアピールする。