物価上昇が進む中、2つに分かれる中間層を両にらみの展開|「これは押さえたい」酒編・2024年1月

2023.11.24

酒文化研究所 山田聡昭

国際的な人流が急回復し日本の物価安がクローズアップされている。2024年は賃上げと物価上昇が基調となり、デフレ脱却の動きが加速するに違いない。そして、物価高を容易に受けいれられる富裕層&アッパー中間層と、賃上げが追い付かず生活防衛に走る層に分かれ、年金受給者は後者を象徴する存在となろう。

こうした環境下では富裕層&アッパー中間層向けの価値ある酒の提案と、リーズナブルな良酒の提案を用意し、イベント消費の提案でメリハリをつけることがポイントになる。

プレミアムウイスキー

前月に続いて1月もプレミアムウイスキーは一押しの商品群だ。スコッチは3000~4000円で上質なブレンデッドやシングルモルトが購入でき、数日で飲み切ってしまうワインや日本酒に比べると割安感がある上、ブランドイメージは高く保たれている。

よって富裕層が安心して手を伸ばせ、生活防衛に走りたい人も遊びで買える。加えてこのクラスのウイスキーはソーダで割ってもオンザロックでも間違いなくおいしく、自信を持ってお勧めできる。

また、外国人観光客の来店が多い店舗では「免税店より安いかも」とアピールし、土産や滞在中の消費を促すと良い。空港の免税店に並ぶ「シーバスリーガル12年」や「グレンフィディック12年」「ジャックダニエル」「メーカーズマーク」などのメジャーブランドは、日本のスーパーマーケットとの方が安いことが珍しくない。

売場展開

ゴンドラエンド1本すべてにプレミアムウイスキーを並べ強烈にアピールする。特に重点商品は1段を1アイテムで埋める

ローアルコールビール

老若男女、所得の高低にかかわりなく、気を配るのは健康だ。糖質ゼロやプリン体ゼロのオフゼロ商品をあえて求めることはせずとも、おいしさが変わらないなら、体への負担が小さいアルコール度数の低いものがいいと考える人は少なくない。

10月にビールのトップブランドであるアサヒスーパードライシリーズに加わった「クリスタルドライ」は、アルコール度数が3.5%と通常のスーパードライの5.5%より4割弱低い。それでも十分な飲み応えがあり、食事をしながら気楽に楽しめる。また、酒をあまり飲めない人も試しやすく、ユーザーの裾野も広げやすい。

ただ、アルコール度数が2~4%のいわゆるライトビールは日本ではあまり流通しておらず、サブカテゴリーとして打ち出そうとすると商品がそろわない。代替案の1つはフルーツビールの活用だ。ベルギー産のリンデマンスは「ペシェリーゼ(桃)」と「フランボワーズ」がアルコール度数2.5%、「アップル」は3.5%だ。250㎖で400~500円であるから量販は難しいが、新年会や誕生日などのイベントでプラス一本の購入が期待できる。国産ではベアレンビールの「レモンラードラー」が2.5%で350㎖350円前後だ。

もう1つの代替案は脱アルコールの微アル、ノンアルビールだ。一度ビールを醸造してからアルコールを除いたもので、調合によってつくられたノンアルコールビールより香味評価が高いものが多い。

売場展開

ゴンドラエンドでローアルコールビールのくくりをアピールする。上段でフルーツビールを展開し、中段、下段でアサヒスーパードライ、クリスタルドライを大々的に陳列する。

日本酒パック

日本酒のコアユーザーは60代以上と高齢化しており、年金生活者も多い。物価高でリーズナブルの酒を求める傾向を強めると予想される。そこで提案したいのは経済的な日本酒のパック製品だ。

このタイプの商品は量産技術が確立しており、良質なものが廉価で安定供給されている。さらに、味わいはオーソドックスなものだけでなく、吟醸酒のように華やかに香るタイプ、アルコール度数の高いストロングタイプ、フルボディの濃醇タイプ、糖質オフゼロタイプなどバラエティも豊かだ。

ちなみに紙パック容器は環境負荷が小さい点でも注目され始めている。軽量でコンパクトなため輸送効率が高いだけでなく、破損しにくく、遮光性があり、酒が紫外線の影響を受けない。素材は植物由来で、製造工程での二酸化炭素排出量は瓶よりも少ない。こうした理由からこれまで経済酒の容器として位置づけられてきた紙パックは、上質な商品の容器としても活用されるようになっていく可能性が高い。

売場展開

リーズナブルでおいしく自然にやさしいパック酒をひな壇やゴンドラエンドでアピールする。500㎖、900㎖、2000(1800)㎖など容量のバラエティを見せ、日本酒コンテストでのアワード受賞歴を添えて味わいが良好であることを伝える。

トレンド商品

焼酎のソーダ割り缶

糖質ゼロをうたうドライの缶酎ハイの人気の高まりは、焼酎をソーダで割っただけのシンプルな焼酎ハイボールの支持につながって行く。缶酎ハイは食事中に飲まれるケースが増えており、甘さや強い果汁の味わいを嫌う層が少なくない。

これまで焼酎メーカーの宝酒造や三和酒類(いいちこ)、高橋酒造(白岳)、薩摩酒造(さつま白波)、西酒造(富乃宝山)などから発売されていたが、サントリーから「タコハイ」が、キリンから「キリン 上々 焼酎ソーダ」が発売されて認知度は急速に高まっている。

売場展開

現在は焼酎のドライゴンドラに陳列されている売場が多いが、缶酎ハイおよびウイスキーハイボールの新しいジャンルとして冷蔵ケースのレディトゥドリンクコーナーの一画にコーナー取りする。さらに導入時にはゴンドラエンドで大量陳列して登場感をアピールする。