食生活の変化に合わせて売場商品構成も変化させる|「これは押さえたい」青果編・2024年1月

2023.12.08

創風土パートナー 代田 実

新年を祝う正月が過ぎ、日常生活が戻ると青果売場の販売動向にも大きな変化が表れる。

先ず第1に12月に比べると青果物の消費金額が野菜で約1割、果物は3割近く落ち込むので、それに合わせた売場陳列量にすることで商品回転を良くしていく必要がある。

それによってロス削減、鮮度維持を図る必要がある。第2に、厳寒期を迎え旬の葉物やかんきつなどの出回り量が増えるとともに食生活も変化する。これは次の表に示した家計支出上位品目の前月(12月)対比伸び率を見るとよく分かるが、この品目別支出金額の増減に合わせた売場商品構成にしていくことが、1月の青果商売で効率的に売上げを作っていく上でのポイントとなる。

2024年1月の家計支出金額上位品目と前月比伸び率

出所:総務省家計調査2023年1月全国二人以上の世帯の支出金額
※10位以下は前月比伸び率の大きい品目のみを掲載

ミカンとかんきつ類

果実はミカンとかんきつ類をどこまで伸ばせるかがポイント。昨年1月のミカンの消費金額は前月比で57%に低下するものの、それでも全品目中第1位の消費金額であった。

しかも昨年ミカン、かんきつ類は裏年に加え、天候にも恵まれず、平年作に比べ約1割減の不作、高値であり、1月のミカン需要がいかに高いものであるかを示している。それに対し今年は、夏の猛暑と秋口の干ばつ傾向から小玉が多いものの食味良好で、収穫量も平年並みで売りやすい環境だ。

これは1月から本格的な販売シーズンを迎えるかんきつ類にも共通しており、商品状況が昨年に比べて良いミカン、かんきつ類をどこまで伸ばせるかが1月の果実全体の数字を押し上げるポイントとなる。

ミカンはロス管理に気を遣いつつ拡販したい。1月に販売するミカンの大部分は年内に収穫したものだ。それを貯蔵して出荷することで、減酸して味がまろやかになり「おいしさ」が増すことで1月のミカンには根強い需要がある。

今シーズンのミカンは糖度は高いものの、酸味が平年よりは低い傾向であり、年明けの品傷みにつながる懸念もある。また、例年年明けのミカンは、春が近づくに従い萎びやヤケ、腐れなどが出やすくなるので、品質チェックをまめに行うことでロス管理を徹底した上で拡販していくことが大切だ。

イチゴ

イチゴは商品状況に合わせた展開で売上げ、利益を確保する。1月のイチゴ販売は天候に左右されやすい。寒波や曇天で果実の成長や着色が遅れると入荷が少なくなり高値となるためだ。

昨年1月は西日本の産地が寒波で入荷が少なかったものの、最大産地の栃木をはじめ関東の産地が天候に恵まれ、出荷量が多かったことで売りやすい価格となり、イチゴの販売は順調だった店舗が多かった。

今年については、栃木県の主力品種が従来の「とちおとめ」から収量が多い「とちあいか」に代わって入荷が増える期待も含め、天候や産地状況に合わせて売りやすいタイミングには一気に売場拡大し、攻めの商売を行うことが重要となるだろう。

リンゴ

リンゴは品質管理徹底しつつ値頃販売に徹する。シーズンのリンゴは猛暑などの影響から前年比2~3割の減収となった。そのため高値推移しているリンゴだが、食味は良好であるため値頃販売に徹して売上げを確保していくことがポイントとなる。

その際、注意したいのが品質管理だ。例年春先になると発生する果肉褐変や果皮のヤケなどの品質低下が今年は早めに表れる可能性がありそうだからだ。夏から秋にかけ日照は十分にあったことから糖度は高く食味良好ではあるものの、猛暑の影響で果肉熟度は進み気味なので前述の品質低下が1月に表れても不思議ではない。

リンゴの販売に関しては、買いやすい価格を販売単位や商品化の工夫で作りつつ、品質管理を徹底することが重要だ。

春野菜

野菜は旬の「葉物」と「煮物、鍋物」商材を売りつつ、「春野菜」の打ち出しも行う。

厳寒期の1月は旬の葉物野菜やキャベツなど、霜に当たることで甘みが増し、冬の食卓を賑わせる時季だ。新年正月から展開する「春の七草」に代表される旬の「葉物」に加え、冬の食卓での出現率の高いシチューや煮物、鍋物に使うジャガ芋、玉ネギ、ネギ、白菜をしっかり販売しつつ、出回り始める菜花や豆類などの「春野菜」を売場の目立つ場所で展開していくことで、春が近づいていることを売場でアピールしたい。

鮮度が命の「葉物」野菜は日々売り切ること。近年はFG袋入り産地パックを販売することが多くなった葉物野菜だが、この時季はできる限り裸の結束ものを販売していきたい。商品ボリュームもさることながら、絶対的な鮮度感を出すことができるからだ。

ただし、こうした裸の葉物は陳列当日に売り切りを原則とし、夕刻以降売り切った後は一般的なFG袋入りを販売するなどの工夫を行いたい。裸陳列品に比べ日持ちするFG袋入りのものも、陳列から時間が経つと袋内部に水滴が付着し、著しく鮮度感を低下させるため、そうなってきたときは早めに値下げして売り切るとようにしたい。

「煮物、鍋物」商材はメニュー提案も取り込む。スーパーマーケットの商売セオリーの1つが「買上点数をアップさせること」だ。1人のお客に青果売場でできる限り多くの点数を買ってもらうために好適な売場展開方法が、「メニュー提案」を含めたコーナー展開だ。

この時季は「煮物、鍋物」のコーナー展開がこれに当たる。例えば鍋物であれば、白菜、長ネギ、春菊、水菜に加えキノコが数品、これだけで買上点数は5、6点になる。それに従って売上げも伸びるはずだ。

ところが、ここに登場する商品全てが値ごろであることは稀である。つい最近も白菜は安かったがネギやニンジンが高値など、おいそれと鍋材料をかごに入れにくい環境であることも多い。

そこでお勧めしたいのが、メニュー提案だ。その時々に比較的買いやすい価格となっている野菜を組み合わせて作ることができるメニュー提案を行い、それに合わせた値頃感ある材料を並べて展開する。そうすることで比較的容易に買い上げ点数を上げることが可能となるはずだ。