定番商品を中心に確実に売上げ確保、一方で回復するインバウンドなども視野に|「これは押さえたい」精肉編・2024年2月

2023.12.26

月城流通研究所代表 月城聡之

年間を通して売上げを作りにくい月の1つが2月。年末年始で出費がかさみ、3月、4月で新年度に伴う異動や新生活に際しての出費も見込む時季となる。

また、ひと月の日数が少ないことで、曜日回りの影響が出やすい月でもある。しかしながら、精肉では定番のホットメニュー、大容量パック買い得商品、ウィークデーや弁当商材でも使えるアイテムが多いことから、定番商品を中心とした確実に売上げを確保していく地に足の付いた提案で、売上確保を狙っていく。

商売としてはオフラインからオンライン、キャッシュレス決済に変化を遂げており、もしかすると、近い将来リアル店舗は必要なくなるかもしれない。  

しかしながら、リアルタイムでの商品を目で見て選んで、おいしそうな香りをかいだり、試食ができたりなど、ネット上ではできない体験が、リアル店舗の精肉売場ではできる。

いままで当たり前と思い込んでいる精肉業界のシステムや販売形態、常識は一度取り除いて、本当に売れる商品が何か、売れる環境が何か考える時間を設けてもらいたい。

店内はスマホの撮影禁止となっている企業が多いが、見た目にこだわった「映える」商品が売れる時代、むしろ撮影して拡散してもらった方が、多くの顧客を集客でき、売れる店舗となるのではないかと思う。

イタリアのイータリーでは、店内の撮影はもちろん、どんどん拡散してほしいと従業員も話す。「こんな商品がこの店にあるなら買いに行く!」という心理が働くからである。

いままで当たり前と思っている常識を変えて行くことができなければ、日々の売上げも、私たちの生活も変わらない。変化を恐れず、新しい取り組みをどんどん取り入れて精肉から売場を変えて次のステージに向かいたい。

ホットメニュー

2月はホットメニューのラストスパートをかける時季でもある。何もしなければ、ホットメニューがマンネリ化して売上げが確実に下がっていくため、メニュー提案と商品化で差別化を図っていく。また、秋冬で販売してきたホットメニューや鍋つゆのランキングを店舗で抽出して、店舗オリジナルの売れ筋ランキングを発表して展開するのもおもしろい。

米国産牛大腸もつ鍋セット(しょうゆ味) 980円

2人前の野菜入り鍋セットは今シーズンの売れ筋商品。特に牛大腸を使用したもつ鍋セットは家庭でも簡単に調理することができる鍋として人気となっている。

セットにはキャベツ、ニラ、モヤシの他にニンニクチップ、タカノツメを入れることで、本格的な外食で食べることができるもつ鍋が家庭で作れるため、人気キットとなっている。

もつ鍋のもつは、外食では小腸やセンマイなども含まれるが、各社、仕入れしやすいアイテムを選別すると良い。

もつは脂肪が多く付いている規格がお勧め。脂肪は売れにくいが、もつ鍋を家庭でも食べる場合、背徳感あるメニューが好まれるケースが多いため、それを踏まえて商品化すると良い。

タイ産合いガモ、鶏だんご鍋セット 680円

カモ鍋を2月に売り込み、ホットメニューのマンネリ化を防いでいく。合いガモは単価が高いため、分厚く商品化するとパック単価が上がってしまい、ロスになりやすい。

合いガモは凍結をかけてから2mm厚でカットすると、枚数を多めに商品化しても比較的安価に単価を抑えることができる。

鍋セット提案は生鶏だんごをセットする。見た目のボリューム感、買い得感を出すことができるだけでなく、パック単価を上げることも可能となる。

本格的なカモ鍋提案では、生だんごにもカモ肉を使用すると良いが、所得層が高い地域での展開に限られる。そのため、鶏肉を使用した生だんごをセットアップして商品化する。

商品化で注意すべきポイントとしては、凍結したカモ肉はドリップが多く離水してしまう。そのため、吸水紙は必ず敷くこと。

当日販売ができなかった商品に関しては、必ず翌日にドリップが出ていないか確認をして販売を継続する。

合いガモは、モモ、ムネをそれぞれ販売すると、モモが余りがちになることが多い。そのため、モモとムネを抱き合わせて凍結してスライスすることで、バランス良く部位を消化していくというテクニックも使っていきたい。

焼きメニュー

弁当商材や夕食の1品メニューとして焼きメニューを拡販する。外気温は低く、冬真っ只中であり、そのような時季には、キッチンに立って長時間調理をしたくないという生活者も多い。

その場合、簡単に味付けした味付け商品が、販売している側が思っているよりも多く売れる。ホットメニューだけに注力せず、ウィークデーの売れ筋や週末でもウィークデーに使用すると思われるような商品の品揃えは、売上げを大きく左右するため、拡販を強化していきたい。

メキシコ産牛中落ちカルビ味付け焼肉用 100g当たり248円

中落ちカルビ味付け焼肉用は2cm角程度のサイコロ状にカットして販売する。味なしのプレーンだけでなく、ガーリック味や山賊味など味付け商材の展開でバリエーションを増やすと良い。

大型パックは週末に品揃えして拡販するが、商品的には平日使用する肉であるため、メガパックは通常パックよりも割安感を出して販売すると良い。

中落ちカルビは、米国、豪州、メキシコなどさまざまな産地のものが手に入る。仕入先から安定供給できる産地やブランドを使用して展開する。商品化のポイントとしては、骨肌を奇麗に除去することである。

中落ちカルビを骨肌除去することなくカットすると、オペレーションとしては当然この方が楽であるが、食べたときに砂を食べたような食感の場所が出てきてしまう。当然のことながら、リピートにはつながらない。ちょっとしたトリミングではあるが、リピートにつながる商品になるか否かの一線であるので、手間と思わずに作業を実施してもらいたい。

メニュー提案としては、そのまま焼いてコロコロ焼肉やサイコロステーキという定番のものの他、煮込んでカレーに入れるなどのアレンジ提案など工夫次第で、バリエーション豊富に展開することができる商品である。

米国産豚ロースカツレツ用(ガーリック&チーズ風味) 100g当たり158円

米国産豚ロースを使用したカツレツを拡販する。実はロングセラーの商品であるが、ここしばらくプルコギなど人気の味付け商品に売場を取られてしまっていたが、最近またカツレツブームに火がつき始めている。

商品化は簡単で、米国産豚ロースをカットして、カツレツの粉を両面にまぶして振りかけるだけである。ロース1枚60gカツレツ粉10g程度での商品化。

手切りでロインをカットしたとしても、パートタイマーでも難しくない作業である。味のバリエーションとしては、カツレツ粉、香草焼き、スパイス焼きなど多めの油で揚げ焼きするタイプの商品を品揃えすると良い。

実は、CCロインやMMロインなど、輸入豚ロースが売れるタイミングがある。それは、景気が良くないタイミングや、生活者が食費にかけるお金が出せないタイミング、豚の相場が高く値入れが取れにくいタイミングなどである。店内加工をすることで、利益率が改善することも要因の1つであり、商品化が容易であるため、利益改善のアイテムとして活用されやすい。

いま、この商品が売れ始めているのは生活防衛の意識が高まっていることの現れであるともいえる。生活者が購入しやすい商品をしっかりと品揃えして、競合に負けない売場づくりを心がけたい。

即食肉惣菜

肉惣菜コーナーでは、冷惣菜でローストビーフやローストポーク、焼き豚、焼き鳥、フライ商品の豚カツやコロッケ、唐揚げなど、精肉での惣菜にバリエーションが出てきた。

惣菜売場に負けないこだわりの肉が売りとなるため、ブランド牛や銘柄豚など精肉でも販売している商品を使った商品展開が、リピートにつながっている。

商品の一部、例えばハムやソーセージ、ベーコンの品揃えや吊しベーコン、焼き豚などに焼き色を付けて惣菜にして提供するパターンも増えている。

この加工品を使用して、サラダやおつまみメニューに商品化することで、仕入れリスクと在庫リスクを軽減する商品展開をしている店舗もある。

肉惣菜 ベーコンとポテサラピリ辛ソース 298円

銘柄ポークを使用したベーコンをカットし、ローストビーフサラダでも使用しているポテトサラダとサラダを併せて、ベーコンとポテトサラダのサラダを展開。

アクセントにピリ辛ソースをかけるとオリジナルのポテトサラダが完成する。ソースはバリエーションを出すことができ、ガーリックソース、ブラックペッパー、シーザーサラダ風など水平展開することができる。

肉惣菜の価格帯は1人前298円までがベスト。大容量パックを品揃えするよりも、少量多品種で、種類を多く品揃えすることが選ぶ楽しさ、次回への期待感につながる。ベーコン以外にも、ハムやボロニアソーセージ、サラミなども展開アイテムとしてはおもしろい。

店内でバラベーコンやボロニアソーセージなど、メーカーの業務用ハム、ソーセージ、ベーコンの商品化をしている店舗は、安定して加工品の売上げが付いていることと思う。

最近ではOEM先で、精肉で使用している銘柄肉を使用した加工品を展開している企業も出てきている。メーカー任せではなく、自社の在庫として製造して展開しているパターンもある。

プライベートブランド商品は、こだわりの製法や着色料、添加物不使用など、こだわりを出すことができる。一方で、在庫リスクを伴うため、今までメーカー任せだった在庫や、日付管理、食品ロスに対する意識が高まるといったことがある。

インバウンドの訪日外国人を精肉に取り込む

新型コロナウイルスが5類になってから、インバウンド需要が急速に回復してきている。円安もインバウンド需要を大幅に伸ばしている一因となっている。

例えば、輸入牛肉は円安の場合は為替の影響で、日本で販売する価格は高くなり、日本に住んでいると損していることばかりに目が行ってしまう。

しかし、海外から見ると円安は日本に旅行に行くと円高のときよりも、旅行代金もホテル代も食事代も為替で安くなるということである。

円安と叫ばれるようになる前までは1ドル110円前後だったので、それが1ドル140円になったとすると、海外から見ると1ドル30円分、およそ80%程度の支払いで済むことになる。

さらに、米国や豪州など工場で働くワーカーの賃金が年収1500万円以上になっていることも多く、この時点で、日本の平均年収の3、4倍の賃金格差があり、海外の人にとっては、日本への観光は相当魅力的に見えていると思われる。

その中で、ホテルの部屋のみ需要やおつまみ需要は大きな売上げを作る1つの施策にすることができると考えられる。

精肉では、即食の簡便惣菜やサラミやジャーキーなどの酒のさかな、そのまま食べることができるピンチョスのような商品も今後は品揃えをして、インバウンド需要をしっかりと捉えていきたい。POPでは英語など多言語表記をすることで、需要を喚起することもできる。

海外への和牛の輸出量が年々増加していることもあり、日本旅行の1つの目的が日本食や本物の日本の和牛を日本で食べることであったりもする。その中で和牛ローストビーフや和牛ジャーキーがスーパーマーケットで購入できるとなると、新たな需要を喚起することが出来るので、しっかりと取り組んでいきたい。