野菜消費が落ち込む2月は1品でも多く買ってもらう「買上点数増」対策を|「これは押さえたい」青果編・2024年2月

2024.01.12

創風土パートナー 代田 実

例年2月は年間で最も野菜の消費金額が低くなる月だ。厳寒期となる2月は野菜の単価も比較的高く、値頃的に売り難いことや、冬の食卓メニューがマンネリ化することも一因と考えられる。

そこで重要になってくるのが、買上点数を上げて、たくさん野菜を食べてもらうための「売り」の工夫だ。鍋物や煮物料理など、もともと複数の野菜を使う料理に「もう1品」野菜を入れるメニュー提案や、買いやすい単位での販売など、自店の客層に合わせてさまざまな工夫をしたい。

これに加えて「春の訪れ」を感じさせる菜花や豆類など春野菜の売場展開も行い、お客の購買意欲を少しでも盛り上げていくことが大切だ。

一方、果物では例年2月~3月に消費のピークを迎えるイチゴ、他のかんきつ類(雑感類)でどれだけ売上げを作ることができるかが2月の果物商売のポイントとなる。

2023年2月の家計支出金額上位品目と前月比伸び率

出所:総務省家計調査2023年2月全国二人以上の世帯の支出金額
※10位以下は前月比伸び率の大きい品目のみを掲載

野菜は買いやすい単位で買上点数増目指す

売上高算出の公式の「1品単価×買上点数」を考えたとき、売上げを作る方法として1品単価を上げるボリューム規格の販売が有効だ。ただ、野菜のボリューム規格はどうしても重くなるため、週末型店舗では有効な販売方法だが、平日は次の写真のような「ばら売り」など買いやすい単位での販売が有効だ。

2月は家計支出金額のデータを見ても分かるとおり、玉ネギ、ジャガ芋といった煮物商材が良く動く時季でもある。これらに加え、ばら売りをしやすいピーマンやニンジンなど、家庭で使用頻度が高い野菜を買いやすい単位で販売することで買上点数を増やしていきたい。

また、ばら売りを行うときに注意したいのがロス対策だ。ばら売りではどうしても、小さ目のものや形状の良くないものが残り、ロスの原因となる。

それを防ぐため1日1回は売り減らしをして、残った商品のうち小さ目のもの、形状の良くないものを袋詰めして買い得価格で売り切るようにする。それを行いつつ、新しい商品を補充陳列すれば、売上げを落とさずロスも削減できる。

旬の葉物

家計支出の統計では「葉物」というくくりはないが、それに該当するその他葉茎菜、ホウレンソウ等を合計すると、かなり大きな支出金額となっていることが分かる。

加えて厳寒期のこの時季、霜や冷気に当たることで植物は、自らが凍結することを防ぐため、甘くなりおいしさが増すといわれている。まさに葉物にとっては旬の時季なのだ。

半面、この時季は空気が乾燥し売場陳列商品がしなびてロスになる他、しなびによる商品価値の低下で売上げが伸びないという事態にもなりかねない。

それを防ぐ意味で次の写真のように、FG袋入りのものは袋の口をテープ止めして風が入らないようにし、裸の結束ものはシート巻きして乾燥を防ぐようにしたい。また、平台など常温販売の場合は、当日売り切れる数量の陳列に抑えて、日々売り切りを心がけたい。

春の訪れを売場でアピール

厳寒期の2月は多くの人々が春の訪れを楽しみにする時季でもある。それに合わせて春を感じさせる菜花や豆類などを売場前面の目立つ場所で展開し、お客の購買意欲を湧き立たせたい。

ただし、これらの品目は単価も高めで、ロスも出やすい。そのため売場展開に際しては、できるだけ少ない陳列量で目立つ陳列を行うことが求められる。かごや上げ底を活用して、少量で目立つ陳列を心がけたい。特に菜花は売場陳列して光に当たり、品温が上がることで開花するので注意が必要だ。

こうした品質低下をできるだけ軽減するために有効なのが「蘇生」技術となる。一般的には氷温水に商品を浸けることで品温を落とし呼吸作用を抑制すると共に、蒸散作用で失われた水分を補給するのが蘇生だが、簡易的に陳列前の菜花のつぼみ部分を氷で冷却してから陳列するだけでも開花を抑制することができる。

また、呼吸量が比較的大きな豆類に関しては、しっかり蘇生処理することが効果的だが、陳列前に十分冷却しておくだけでも鮮度低下を抑制できるので試してみてほしい。

イチゴ

広く全国各地で生産されているイチゴだが、その多くは生産量全国1位の栃木県を中心とした関東と、生産量2位の福岡県を中心とした九州で生産されている。

気温や日照など天候に左右されやすいイチゴの出回り量、相場はこれらの地方の天候によって変化し、関東、九州産地がそれぞれ違う出方になることが多い。

そこで、これらの産地の出荷傾向に合わせ、売場展開する品種、産地構成を変え、状況の良い産地のものを広げる柔軟な対応を行うことが大切だ。

また厳寒期とはいえ、温度によって品質低下が早く進むイチゴは売場、バックヤードでの品質管理を徹底したい。

まず第1に行いたいのが、入荷時の品質チェックだ。入荷したイチゴの産地、品種ごとにパックの上、下からの目視での品質チェックを行い、へたのしなびや果肉の変質などがないかをよく確認する。

2番目は売場に出さずにバックヤードに在庫する商品について、必ず冷蔵保管すること。3番目は平台で常温販売を行った売場陳列品は基本的に当日売り切りを行うことだ。

これらの3つの品質管理対策などを行いながら2月の販売品目中、最も構成比の高いイチゴの利益をしっかり確保することが、青果部門全体の利益を下支えすることになる。

イチゴ柄の陳列シートの活用で売り切りの際のボリューム感を維持

かんきつ類

2月に出回るかんきつ類の品種は多く、何も考えずに品揃え、売場展開を行うと「品揃え品種だけ多く、分かりにくい売場」になってしまう。そこで売場展開の際、意識したいのが「めりはりあるスペース配分」と「商品化の工夫」だ。

まずはめりはりに関して。2月に市場入荷するかんきつ類の数は数多くあるので、旬の時季や出回り量を考慮して売場スペースを配分するとよい。スペースを割いて拡販したい品種は、生産量多い順を基本として考えるとよい。

品種の傾向は次のとおり。不知火(デコポン)はかんきつ類の中で生産量ナンバーワンで、これからが拡販期となる。伊予柑は2月~3月は酸味もマイルドになり販売の本番となる。ぽんかんは昨シーズン不作の反動で今年の伸長率期待できる。せとか、はるみ 2月~3月が旬の新かんきつといったところ。

この他、この先、増えてくる日向夏、河内晩柑、文旦などもスポットでスペース拡大して販売するとおもしろい。

ただし、かんきつ類はどれも同じような形状、色をしていて、ぱっと見て見分けがつきにくいものだ。そこで商品化の工夫で違いを分かりやすくすることが販売のポイントとなる。

パック盛り、袋売りなど販売形態を変える他、次の写真のようにフルーツキャップの色で品種分けするのもよい。その他、木の葉シートや和紙の色違いで分ける方法もある。