昨年の「エッグショック」から今年は供給安定化、需要が大きい「プリン」を売り込む|「これは押さえたい」菓子・スイーツ編・2024年3月

2024.01.25

トルティーノ代表 中村 徹

2022年から続く商品の値上げは23年3月にも続き、3000品目以上の商品が値上げされた。これは4月にも続き過去に例を見ない値上げラッシュとなっていた。3月の春闘ではこういった物価高を踏まえ満額回答が続いた。

曜日回りは土曜日4回、日曜日4回と通常の曜日回りであったが、春分の日が火曜日のため、特に大きな連休とはならなかった。今年は土曜5回、日曜5回と昨年より週末の多い曜日回りとなる。

今年はうるう年のため春分の日が20日となり、水曜日である。こういった曜日回りの影響で昨年と比べると週末型店舗では3%程度の増収効果があるだろう。

23年3月は非常に暖かい春であった。月平均気温は北、東、西日本でかなり高く、月平均気温平年差は、北日本でプラス3.4℃、東日本でプラス3.4℃と記録的な暖かさであった。東京では下旬に25℃を超える夏日を記録する日もあった。このため桜の開花も早く、東京が全国一番で3月14日開花、22日にはもう満開となるなど全国的に早いお花見シーズンとなった。

今年の菓子関係の催事カレンダーを見てみると、毎月の催事日である6日(水)ロールケーキの日、15日(金)菓子の日、19日(火)シュークリームの日、22日(金)ショートケーキの日など菓子関係の日が存在し、この他、ひな祭り3月3日(日)、ホワイトデー14日(木)、春分の日、お彼岸の中日20日(水、祝)などお祝いやイベント関連の日が存在する。

この冬の暖冬傾向は3月も続くであろう。3カ月予報でも3月は昨年ほどではないかもしれないが、気温が平年に比べ高めに推移する予想である。降水量は今のところ平年並みかやや多いとの予想である。

総務省家計調査の「<品目分類>1世帯当たり年間の品目別支出金額,購入数量及び平均価格」を見てみると、品目別令和4(2022)年年間の月別支出金額が掲載されている。

菓子類の3月を見てみると、年間平均金額に対し高いものはまんじゅう111.3%、他の和生菓子125.5%、カステラ109.6%、ケーキ101.3%、他の洋生菓子116.5%、キャンディーが104.8%、チョコレートが121.9%、チョコレート菓子が125.5%と高い。

これらの商品群のトレンドを見るために「令和4年年間消費金額/平成12(2000)年年間消費金額」を計算してみると、まんじゅう42.3%、他の和生菓子98.9%、カステラ88.4%、ケーキ98.2%、他の洋生菓子209.3%、キャンディ105.4%、チョコレート174.7%、チョコレート菓子263.9%(平成17〈2005〉年比)となっている。これらを考えてみるとホワイトデーに向けて早めの仕掛けをしつつキャンディ、チョコ系の菓子で売上げを取ることが必要になる。また3日のひな祭りの和菓子、洋菓子や春分の日(彼岸)に向けての和菓子の展開が重要になってくる。

アソートケーキ

ひな祭りの歴史は古く、3世紀前後までさかのぼるが、現在のような形になったのは江戸時代といわれている。もともとひな祭りは5節句のうちの1つである。5節句とは1月7日人日(じんじつ)七草がゆの日、3月3日上巳(じょうし、じょうみ)ひな祭り、5月5日端午(たんご)こどもの日、7月7日七夕(たなばた)、9月9日重陽(ちょうよう)の節句のことをいう。

この中で3月の上巳の節句はもともと字のとおり3月の最初の巳の日であったが、5月5日端午の節句が男の子の節句、3月3日女の子の節句と固定された。上巳の節句は女の子の健やかな成長を願う日ということで、ひな人形を飾り、ひなあられを食べ、ちらし寿司も食べ、ハマグリの吸い物を飲むような風習がある。

ただ最近ではケーキや洋菓子、ピザなどを食べる家庭もあり、他の節句と同じように自由度が高く、多様化している。ひな人形絡みではひなあられやひし餅、手まり飴などを訴求したいが、3月3日(日)当日に向けては、ケーキや洋菓子、和生菓子を訴求したい。

最近ではナショナルブランド(NB)メーカーからひな祭りの洋菓子アソートなども発売されているので活用したい。トレンド的にも他の洋生菓子が伸びているので、カップデザート系を訴求すると良いであろう。この他和生菓子も桜餅などを中心に訴求するとよい。

アソートケーキイメージ

マカロン、ダクワーズ

3月14日(木)はホワイトデーとなる。ホワイトデーはバレンタインデーのお返しの意味が強い。ところがバレンタインデーで一昔前は一般的であった義理チョコが年々衰退していって、最近では自分へのごほうびの「自分チョコ」、お世話になった人に贈る「世話チョコ」などが増えており、ホワイトデーの「お返し」という意味が衰退していっている。

もちろん本命だったり義理だったりという文化は残っているので、お返しという文化も残ってはいるであろう。こういった環境なのでホワイトデーの仕掛けは難しい。

単に普段よりおいしそうなチョコレートであったり、焼き菓子だったりを訴求するのも自分チョコには対応できるかもしれない。これにホワイトデー定番のクッキー系やマシュマロなどを足して訴求する方が現実的かもしれない。チルドの他の洋生菓子類もカップデザート中心に訴求したい。またマカロンとかダクワーズといった普段あまり品揃えしていない商品も訴求したい。

マカロンイメージ

3月17日(日)は彼岸の入り、20日(水)は春分の日、23日(土)が彼岸の明けとなる。この期間にはあの世とこの世が最も近づくとされ、墓参りや仏壇の掃除、お供えなどを行うのが一般的である。また「暑さ寒さも彼岸まで」といわれ、寒かった冬もそろそろ終わり、桜の季節となり本格的な春を迎えるころとなる。

春の彼岸にはぼた餅を供えるのが一般的である。ぼた餅に似た菓子におはぎがある。どちらも基本的には同じものであるが、強いていえば春の彼岸のぼた餅はこし餡が一般的で、秋の彼岸のおはぎはつぶ餡が一般的な違いである。

どちらもそのときに咲く花に由来しており、春はボタンの花から来ている。最近では春も秋もつぶ餡、こし餡両方訴求している店舗も多く、どちらかといえばお客の好みに合わせた品揃えになっているようだ。

この他、この時季は桜の開花も始まる時季なので、桜餅やうぐいす餅など春の和菓子も前面に打ち出していきたい。

ぼた餅イメージ

売場展開

昨年3月は鳥インフルエンザの全国的な流行により「エッグショック」というほど卵が不足し、価格も高騰した。その影響で卵ベースのプリンが製造中止になったり、値上げになったりした。その結果プリンを訴求することができず、家計消費を見ていてもプリンのトレンドが上がっていない。

今年は今のところ昨年ほどの鳥インフルエンザ流行は発生していないので、卵の供給も安定してきた。そこで3月にはぜひ「プリン祭り」を実施し、昨年比を大きく伸ばしたい。もともとプリンの売れる時季であるので、訴求さえすれば必ず売上げがプラスになるであろう。

トレンド商品

冷やしクリームパン

一部コンビニでも発売されているが、冷やして食べるクリームパンが見直されているようである。広島の八天堂クリームパンは有名であるが、洋菓子メーカー各社が冷やして食べるクリームパンを発売してくるかもしれない。

もともとカスタードクリームやホイップクリームの製造には慣れているので、開発自体それほど難易度は高くないといえる。イチゴなどフレーバー商品も含め冷やして食べるクリームパンが広がってくるかもしれない。

冷やしクリームパンイメージ」