2度の三連休は「今年の鍋納め」&「春よ来い」をテーマに大胆に商品単価アップを狙う|「これは押さえたい」酒編・2024年2月

2024.01.15

2024.02.06

酒文化研究所 山田聡昭

2023年の酒類市場はコロナ前のマイナス6%と推計されるが、家庭内消費(家計調査)は113%と好調が続く。一方、外飲みは75%まで回復しているものの、コロナ前には戻らないという見方が一般的だ。

家飲みにシフトした飲酒スタイルは、このまま定着する気配を見せている。家飲みはマンネリ化しがちであり、めりはりを付けた提案が欠かせない。2月は三連休が2回とめりはりを作る好機、家飲みを盛り上げるように仕掛けて高単価の商品を薦める。

ブーム到来ウイスキー

日本酒や焼酎、そしてワインが停滞する中、ウイスキーは業務用が戻り切っていないにもかかわらずコロナ前の105%と絶好調。消費支出は153%の大幅増だ。3連休は「見つけよう、あなた好みのウイスキー」と新しい商品へのトライを促すとよい。

ほとんどのお客はウイスキーの商品知識は持っていないから、商品のサブカテゴリーをアピールし、基本的な商品情報を知ってもらう。分かりやすいサブカテゴリーは「産地&製法軸」と「香味タイプ軸」だ。

前者では①ブレンデッド・スコッチ、②シングルモルト・スコッチ、③バーボン(アメリカン)、ジャパニーズ・ブレンデッド、⑤その他(アイリッシュやカナディアン)」の5つに分け、中心価格帯を2500円、上は5000円くらいまででそろえていく。

後者の香味タイプ別では①クリーン&ライト、②メロウ(濃醇)、③スモーキー(燻香)、④バランス(なめらかでまとまりがよい)、⑤甘く華やかなど。

初めて試すウイスキーをフルボトルで購入するのはハードルが高いから、各タイプを代表する商品を1点ずつハーフサイズなど小容量で提案するのもよい。

売場展開

ひな壇またはゴンドラエンドでサブカテゴリーをガイドするショーカードを添えて、各カテゴリー3、4点をそろえたい。「迷ったらこの1本」と一押し商品を作ったり、「居酒屋で飲んでいるハイボールはこれ」と飲用経験からの選択をサポートしたり、商品への導線に工夫する。

ブース数は数年前の3倍増、チケットは完売の東京ウイスキーフェスティバル。ウイスキーはブームの様相を呈しつつあり、イベントはどこも超満員だ

今年の鍋納め「ご当地鍋は地酒でうまい!」

前半の3連休は今シーズン最後の鍋になる家庭も少なくない。「今年の鍋納め」をうたい、ご当地鍋と当該地域の日本酒、本格焼酎を売り込む。

ご当地鍋は、北海道の「石狩鍋」、秋田の「きりたんぽ鍋」、山形の「芋煮鍋」、「せり鍋」(宮城)、広島の「牡蠣の土手鍋」、福岡の「鳥の水炊き」、鹿児島の「黒豚しゃぶしゃぶ」など伝統的なものから、「カレースープ鍋」(北海道)、「炊き餃子鍋」(福岡)、「赤から鍋」(愛知)などニューフェースまで幅広く紹介し、各地の日本酒や焼酎を薦める。

高品質な酒を、オープンに供給している各地の日本酒、本格焼酎としては、「千歳鶴」(北海道)、「爛漫」「天寿」(秋田)、「出羽桜」「東光」(山形)、「浦霞」「一ノ蔵」(宮城)、「國盛」(愛知)、「賀茂鶴」(広島)、「いそのさわ」(福岡)、「桜島」「海童」(鹿児島)などがあり、卸店から安定供給可能なものを提案してもらうとよい。

売場展開

レトルト鍋つゆとクロス展開も効果的で、鍋つゆ売場でご当地の酒と合わせて楽しむ情報を露出させ、酒売場で購入につなげる。

ご当地鍋と共に各地の地酒(日本酒や本格焼酎)を薦める。

春よ来い! 甘くないロゼワイン

後半の三連休のテーマは一転して「春よ来い」だ。翌週末にひな祭りを控えており、大人のひな祭り需要への対応も狙う。取り上げるのは春に売上げが大きく伸びるロゼワイン。

日本ではロゼワインは甘いイメージが強い。ロゼ・タンジュに代表される、やや甘く飲みやすいタイプが先に広がったことに加えて、ワインに限らずピンクのドリンクは甘いものが多くしばしば女性向とされてきたため、そうしたイメージを持たれるようになったのだろう。

このプロモーションでは甘いイメージと一線を画して、料理に合わせやすい辛口ロゼや、華やかで特別感のあるスパークリングワインをアピールする。まず、国内外の辛口のロゼワインを10種類程度そろえる。ひと口にロゼと言っても赤に近い濃いものから、白ワインに近いものまでカラーはバラエティに富んでいる。あえていろいろなタイプを選んで、ロゼワインの幅広さを見える化する。

ちなみにロゼワインの製法は大きく4タイプ。

①赤ワイン用のブドウを破砕してそのまましばらく発酵させ、果汁が色づいた頃合いを見て果汁を搾って発酵させる。赤ワインに近い味わいになる。

②赤ワイン用のブドウをゆっくり破砕して搾り、白ワインのようにジュースだけで発酵させる。淡いピンクで、軽快な味わいになる

③赤ワイン用のブドウと白ワイン用のブドウを皮ごと破砕して一緒に発酵させる。後は①と同じ。

④赤ワインと白ワインをブレンドする。EUではスティルワインでは認められていない。

売場展開

ピンクの色が映えるゴンドラエンドでの展開がお勧め。ピンクの面ができて売場が華やかになる。平台やひな壇を使う場合は白いクロスをかけるなど、ピンクが奇麗に出るよう工夫する。

ひと口にロゼワインと言うが淡いピンクから赤に近いもの、オレンジがかったものなどさまざま
白ワインとほとんど変わらない色味のロゼワインもある

トレンド商品

プレミアム酎ハイ

家計調査では今期のレディトゥドリンク(RTD)の消費支出金額はコロナ前の145%と絶好調だ。だが、RTDは商品単価が低く、グレードの高い商品群が未成熟、特に缶酎ハイは主要ブランドが安価で構成比も高い。

また、新ジャンルと缶酎ハイはトレードオフの関係が続いており、新ジャンルが10月に増税され缶酎ハイとの価格差が広がってから、併飲ユーザーで缶酎ハイの飲用頻度の上昇が見られている。価格優先の層はなかなか動かないのだが、そこまで安さにこだわらない層をターゲットに、高単価の商品をアピールしプレミアム市場の形成を狙う。

売場展開

ウイスキーハイボール缶など350㎖で200円前後の商品と、200円を超える酎ハイを横並びで陳列し、プレミアム酎ハイというカテゴリーをアピールする。

3月はひな祭り、ママ友お別れ会、謝恩会、お花見などイベント型の消費機会が多い。2月下旬からプレミアム酎ハイのコーナーを設けて助走期間として、準備を整える。

地域限定で安定した人気の「寶CRAFTチューハイ(タカラ・クラフト・チューハイ)」。こうした商品でプレミアム市場を開拓する