春の訪れとともに消費が伸びるイチゴ、トマトを中心に攻める|「これは押さえたい」青果編・2024年3月

2024.02.06

創風土パートナー 代田 実

全国的に気温も上がり本格的な春の訪れを感じられる3月は、ひな祭りや春休み、新生活スタートなどのマーケットチャンスも多い。それに合わせて野菜、果物の消費金額も例年、前月比1割前後伸びるので、このマーケットを取りこぼさぬよう、消費金額の大きい品目、前月比伸長率の大きな品目をしっかり押さえた販売計画を立て、売場展開していくことが重要となる。

特に全品目中一番の消費金額となるイチゴは年間でも3月が最大の消費金額となり、これに続くトマトも最大需要期の夏場に向かって販売の勢いを付ける大切な時季となるので、この2品目を中心に売場を組み立てていくことが商売のポイントとなる。

2023年3月の家計支出金額上位品目と前月比伸び率

出所:総務省家計調査2023年3月全国二人以上の世帯の支出金額
※10位以下は前月比伸び率の大きい品目のみを掲載

目次

年間最大需要期となるイチゴ

例年3月は月間のイチゴの消費金額が800円前後となり、600円前後でこれに次ぐ1~2月、4月を大きく引き離して年間最大の需要期となる。これは気温上昇と共に入荷量が増えることに加え、この時季から中、小粒果が増えて単価が下がり買いやすくなることが主な要因と考えられる。

これに合わせて写真のような中、小粒果の2~4パック売りを拡大させると同時に、大粒のシングルトレーパック、レギュラーパックとの比較販売をする。

その際は、その時々の入荷状況に合わせ、最も買い得な規格を前面に打ち出し「売り手としてお勧めしたい商品」がお客に伝わるように売場展開することが重要だ。

また、近年の気候変動から3月に最高気温25℃以上の夏日を観測することも多くなり、このような高温時に出回るイチゴは品質管理も重要になってくる。具体的には、入荷時の品質チェックに加えてバックヤードでの在庫時は冷蔵管理を行い、売場陳列商品は原則、当日売り切りをするなどの対応が望ましい。

家庭の常備野菜トマト

家計支出の統計では「トマト」というくくりだが、この時季の市場入荷実績を見ると大玉トマトとミニトマトが概ね6:4の比率になっている(金額ベース)。

売場展開もこの比率をベースに、自店の立地特性や客層に合わせた展開とし、「家庭の常備野菜」という位置づけのトマトをできるだけ多く、自店で購入してもらう販売戦略を採りたい。

週末に1週間分の食材をまとめ買いするお客が多い週末型店舗を中心に有効なのがボリューム規格の販売だ。写真の例のように産地パックの小箱が最も売りやすい方法だが、他店と同じ販売規格となってしまい差別化という意味で課題もある。

そのような場合は、少し手間がかかるもののフルーツパックを使った盛り売りで自店独自のボリューム規格商品を作るとよい。

一般家庭でトマトが食卓に出るシーンをイメージした売場展開で、売場全体の買上点数を伸ばすことも考えたい。例えば、写真のようにトマトとアボカドを並べて陳列し、できればトマト+アボカドを使ったメニュー提案を行う。

売場の彩りとしてもアクセントが付く他、提案どおりのメニューをお客がイメージして両方の商品を購入してもらうことで、売場全体の買上点数アップにも結び付く。さらに加工食品、日配食品部門ともコーワークして、ドレッシングやチーズとの同時展開、メニュー提案も実施したいところだ。

3月に実質シーズンインするアスパラガス

家計調査の分類上は「他の葉茎菜」に含まれるので分かりにくいが、3月の「他の葉茎菜」の支出金額でイチゴ、トマトに次いで3番目にランクしている他、2月に比べ2割近く支出金額が増えている原動力となっているのはアスパラガスの存在が大きい。春~初夏が旬となるアスパラガスだが、市場入荷量が一気に増えるのが3月だからだ。

東京中央卸売市場を例に見ると、メキシコ産を中心とした輸入物に加え九州産地のものが加わり、3月のアスパラガス入荷量は一気に2月の倍以上に増え、そのまま8月にかけて一定の入荷量を維持するようになる。

このことからも3月は実質的にアスパラガスがシーズンインする時季と言うことができる。ここでしっかり売場をつくり、固定客を取り込むことが重要であることが分かる。

その際にポイントとなるのが、「味の良い商品を売っていく」ということだ。アスパラガスは多年草であり、春先にその地下茎から出る若芽を食用にするが、時間と共にその柔らかさが失われ、食味も低下してしまう文字どおり鮮度か命となる商品だ。

日々の売り切りなど商品管理を徹底し、写真のように多少高くても鮮度の良い太いものを確実に販売していきたい。

高値が続く果物は販売規格を工夫

昨年夏の猛暑の影響を受け、3月に販売する年一作ものの果樹であるリンゴ、かんきつ類は残量が少なく、高値傾向が続く見とおしだが、その対策として有効なのが販売規格の工夫だ。

今年に入ってからリンゴは約4割、かんきつ類も1割弱前年対比で単価高となっている。こうなると、従来主流であった1玉売りでは粒単価が高くなり、お客が割高感を感じてしまう。

そこで有効なのが写真のような盛り売りや袋売りに販売規格を変えた形の販売だ。写真の不知火の場合、中小玉をばらで1玉198円だと割高に感じられるが、フルーツパックに5玉盛り付けて980円ならお値打ち価格に感じられるはずだ。玉サイズ、単価を考え、店独自の販売規格を考え、試してほしい。

消費が伸びる果菜類をしっかり売り込む

家計支出金額はまだ小さいものの、19位のピーマン、24位のナスは前月比の消費伸び率が約2~7割増と大きく、確実に消費を取り込むことで全体の売上増に貢献できる品目だ。

写真の例では、ピーマンとナスを共に使うことが多い中華メニューをイメージして、チンジャオロースー用タケノコを間に入れて販売している。これに加工食品部門の調味料も合わせて展開すれば店全体の売上増にも貢献できるはずだ。

3月の果菜類は消費金額が増加傾向とはいえ、まだ単価も高めなので、写真のようにばら売りを行い、買いやすさを前面に打ち出したい。また組み合わせ自由のバンドル販売も買上点数アップに効果的だ。