2024年問題を精肉の商売の在り方を考える機会に、改めて羊肉に注目|「これは押さえたい」精肉編・2024年4月

2024.03.18

月城流通研究所代表 月城聡之

4月は新生活が始まり、またアウトドアなど、屋外での活動も活発になるタイミングである。外部環境に合わせて、商品をうまく切り替えて売上げにつなげていくタイミングとなる。

店舗運営の面では、「2024年問題」が待ったなしの状況にある。「働き方改革関連法」によって2024年4月1日から物流業界にさまざまな影響がある。オンライン販売が拡大していることもあって、物流量は急速に増加しており、業界全体で人手不足となっている。

厚生労働省による「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)」を見ると、この問題においてのドライバー1人当たりの拘束時間は1カ月274時間に収める必要があることも分かってきている。21年度はトラック全体では66.3%がその274時間内に入っているが、残りの3割強はこの拘束時間を超過している。

このうち1割のドライバーは293時間以上(320時間を超える層も数%いる)のため、ドライバーの10人に1人は1カ月20時間以上の労働時間短縮をしなくてはならないという計算になる。

つまり、このまま4月に突入すると、物流の3割が輸送できなくなる可能性が現段階もあるという状況は変わっていないことになる。店内加工で自由度の高い精肉では、物流で仕入れができなくなる可能性があるため、1回当たりの発注量を増やし、チャンスロスを減らす工夫が必要となる。

ただし、在庫日数はやや上昇するため、会社としても容認する必要がある。いままでと同じ考えの経営、仕入れ体制を強いていると、結果として自社に商品が届かないという自分の首を絞めることになるため、すぐに改善しなければならない。

「発注業務をしていないから関係ない」と思っている担当者も、冷蔵庫在庫が増えることを想定して整理整頓、日付管理を徹底してもらいたい。

また、ドライバーの労働時間が短くなることで運搬量が減少する。また、割増賃金が適用されることから、物流コストが3月までとは異なってくる。納品する商品の単価が上がることが想定されるため、いままで以上に歩留まりの良い商品化やロスが出ないような取り組みが求められることになる。

いままで、物流便について考えることは、ほぼなかったと言っても過言ではないと思う。商品が届かなくなる事態にもなりかねないということを認識して、今後の発注を見直してもらいたい。

また、4月は新入社員や新しいアルバイトが入ってくるタイミングである。毎日ルーチンで行っている仕事が、目的を失った作業になっていないか、いま一度確認をしてもらいたい。基本の徹底を行うことはもちろんであるが、時代と共に時間管理や衛生基準も厳しくなっている。その部分は、さらによりよい環境づくりを行いながら仕事に従事してもらいたい。

24年4月は、先述したように2024年の物流問題や、新型コロナウイルス禍でアルバイトがあまりできなかったり、大学時代の人間関係の形成にも影響があったりした新卒が入社するなど、いままでとは違った外部環境が一度に押し寄せる。

日本の人口が減っていく中、「この職場でずっと働きたい」と思える環境、「この精肉の商品をずっと買いたい」と思える商品化、「持続可能な精肉」を目指し、新たな気持ちで4月を迎えてもらいたい。

新生活応援簡便食

4月から始まる新生活。3月後半から異動や進学に伴い、新たな気持ちで朝食や弁当、夕食を始める新生活応援メニューを展開する。

精肉コーナーでは、簡便メニューを中心に、よりどりセールや均一セールを行うことで、買上点数アップによる売上げを期待できる。

加工品でも、弁当特集を組むことで、より新生活や弁当需要を喚起することができる。特に、ミニサイズのソーセージやミニハンバーグは弁当需要、ハムやベーコンは朝食需要、本格ハンバーグ、中華名菜などのような夕食需要を喚起させる提案も4月に行うと、食生活を豊かに、食事のバリエーションも広くすることができる。

国産牛切り落とし味付け焼肉用 498円/150g

朝食や弁当、夕食の一品として国産牛の味付け肉を展開する。切り落としを味付けすることで、朝の時間のない時間帯にも簡単に調理できる。

ターゲットは、主婦と会社に弁当を作って持っていく20代~30代となる。野菜もいっしょに食べる客層がターゲットとなるため、白髪ねぎなど野菜を多めにトッピングするなど、購入意欲を起こすための工夫をするとよい。

味のバリエーションとしては、焼肉のもみだれだけでなく、塩だれ、ニンニク、バジルオイルなど、多くのバリエーションの品揃えが、購入の頻度にもつながる。

米国産牛豚ハンバーグ豚バラ巻き 138円/100g当たり

夕食でも登場頻度の高いハンバーグを展開する。

ハンバーグを成型する手間を省く商品で、豚バラスライスにハンバーグのたね(ハンバーグミックスで味付けしたひき肉)を乗せ、巻いてステーキのようにカットする。

手作りハンバーグは、こねて成型するのに時間がかかることから、オペレーション上、断念している店舗もあるが、このパターンだと簡単に仕上げることができる。

産地が多くなると、原材料表示を多く記載しなければならないため、国産や米国産など、産地を統一することがお勧めである。

業務用のハンバーグミックスであれば、一括表示はシール対応可能であると想定されるため、簡単に商品化することができる。

スプリングバーベキュー

いよいよアウトドア、バーベキューのシーズンがやってきた。

新型コロナウイルスの影響もあって、アウトドアグッズ、ギアが売れたことで、バーベキュー人口が一気に増加した印象がある。キャンプ施設は軒並み予約困難な状況となったが、現状は一時の過剰な反応はなくなった。

しかし、新型コロナウイルス前に比べると、キャンパーが増加していると思われ、しかも日本全国にいることは間違いない。実はアウトドアでキャンプが快適に楽しめるのは春と秋といわれている。

真夏は気温が高く、冬はあまりの寒さに防寒のキャンプグッズを持ち込む必要があるため、3月から梅雨が始まるまでの3カ月程度が、キャンプ需要が高まる期間と捉えるとよい。

そこに合わせて、アウトドアメニューの展開をしっかりと品揃えしていく。

米国産牛ザブトン(カタロース)厚切りステーキ用 498円/100g当たり

厚切りカットの米国産チャックテールフラップを2cm厚のステーキカットで商品化し、アウトドアの豪快バーベキュー、家庭での夕食需要として展開する。

どちらのシーン提案でも、平日よりも週末や祝日が売りやすい。

アウトドアでは粗目のハーブ入り岩塩、インドアの夕食提案ではいま人気のニンニクが効いたステーキソースを関連販売する。

商品化で注意すべき点は、骨肌と太い筋が残っているとリピートにつながらないという点。トリミングは比較的簡単な部位であるが、除去することを忘れないようにすること。

トレーは、アウトドア主体の売場づくりをする場合、銀色トレーに盛り付けると雰囲気が出るが、実際はノントレーの方が実用的である。

夕食需要が主体の店舗では、黒赤トレーなど夕食でも少しぜいたく感が出るようなトレーを選択するとよい。

国産豚スペアリブ味付け焼肉用 198円/100g当たり

バーベキュー需要商品でポイントとなる骨付き肉を定番で品揃えしていく。

味なしの商品に加えて、塩だれ、スパイス、照り焼きなど品揃えをしていくと、食欲をそそられる商品へと変化する。家庭でも出現頻度が高くなってきている骨付き肉を強化するとよい。

商品化のポイントとしては、スペアリブの原木の形状が三角形で、長い骨から短い骨までを使いこなすということである。

原木販売でカットをしない場合は、特段問題がないが、骨を1本1本カットする場合は、同じ長さの骨を、1パックに入れていくことが重要になる。

なたが店舗にない場合は、骨を半分にカットすることが難しいため、長い骨のスペアリブと短い骨のスペアリブができる。

それぞれ、長いものは長いもの(短いものは短いもの)で集めて商品化することで、商品が奇麗に見えるだけでなく、調理する際も加熱時間のばらつきがなくなるので、混在させないことがポイントとなる。

スペアリブやバックリブは店舗によって品揃え具合が全く異なる。競合調査をすると分かるとおり、品揃えしている店舗は3フェースしっかりと売場を確保しているが、強化していない店舗は、そもそも品揃えしていないか、品揃えしていても数パックを1フェースで品揃えしている程度である。

しっかりと売場で展開すると売れる商品であるが、売れるか分からないから(いままで売ったことがない、売った実績がないからなど)、少量で展開してみるというスタンスの店が、ロスを怖がるあまり、チャンスロスを起こしていることが多い。

思い切って売場づくりを変えてみると、新しい売れ筋が見えてくるのでトライしてもらいたい。

「羊肉の日」を活用する

4月29日は「羊肉の日」。今年は月曜日、昭和の日で祝日となる。一般的には土日を絡めた3連休となるが、ゴールデンウィークで大型連休となる企業もあり、アウトドアや旅行が活発になるタイミングである。

豪州産ラムカタジンギスカン用(たれ付き) 680円/250g

チルドの豪州産ラムショルダーを使用し、3mm厚でスライスしてジンギスカン用に展開する。

ジンギスカンのもみだれや付けだれが添付できる場合は添付し、できない場合は、ジンギスカンのたれを関連販売する。ジンギスカンのたれは家庭には常備していないことが多いので、「たれ」の有無が商品が売れるかどうかの鍵を握ることになる。

商品化の際は、スライサーに入れる前に脂肪を奇麗にトリミングして、形を整えてからスライスすると奇麗なスライスができる。

カタ肉には、肩甲骨回りの骨肌が残っているため、トリミングをすることでざらざらした砂のような触感を除去することができる。トレーは、ジンギスカンを思い起こさせる丸トレーが良い。丸い銀トレーはまさにジンギスカン店に行ったような気分にさせる。

ジンギスカンが売れにくい原因の1つに、焼いたときの羊肉独特の香りもある。家庭で調理すると、部屋に匂いが付くので懸念する人も少なくない。

外食のジンギスカン店でもあまり匂いが強くない店舗があるが、工夫として肉に油をコーティングしているケースもある。

サラダ油など油を肉の表面に付けて焼くと比較的香りが出にくく、一工夫として注目を集めている。

提案としては、アウトドア、バーベキューでは香りも気にせず豪快に食べることができることから、キャンプ需要としての展開が最も食シーンとしては有効。

北海道では川辺や庭で穴の開いたバケツに火を起こし、ジンギスカン鍋で食する。焦げ付きを防止するため、牛脂を商品といっしょに付けるとよい。

インドアでは香りを気にする消費者も少なくなく、食卓で豪快にジンギスカンを行う家庭は少ない。実は家庭での羊肉の活用はジンギスカンではなく、羊肉を使用したラムカレーや煮込み、しゃぶしゃぶなど多岐にわたる。3mm厚ではしゃぶしゃぶは難しいが、カレーやラム煮込みなどはおいしく食べることができる。

地域によっては、中国系の人が多く住んでいる場合がある。中国人は日常的に羊肉を食べる。

羊肉串や羊肉しゃぶしゃぶは日本では食べる文化がないため、中国食材店にわざわざ購入しに行く人もいるため、冷凍カールのしゃぶしゃぶ、羊串なども展開できればさらなるプラス需要となる。

以前、レストランチェーンで「アロスティチーニ(羊肉の串焼き)」が展開されてよく売れていたが、地域性があるため、よく自店のエリアを観察して売上げにつなげてもらいたい。

ただし、POPに「ラム肉」と書くと、羊肉と認識されにくいこともあるので、羊肉や仔羊肉など、漢字での表記をお勧めする。