涼味立ち上げのタイミングに合わせさわやかな酒を提案|「これは押さえたい」酒編・2024年4月

2024.04.01

2024.04.22

酒文化研究所 山田聡昭

4月の酒類販売のテーマは「気分一新」「涼味立ち上げ」「ゴールデンウィーク」の3つ。新年度で心機一転、多くの人が新しいポストや環境で動き出し、新しいことを始める好機だ。気温は日々上昇し、大型連休が始まるころには夏日にもなる。酒も涼味立ち上げのタイミングでさわやかな酒を薦める。

「試してみよう糖質オフ・ゼロ」

近年の酒類消費のキーワードの1つは「オフ・ゼロ」で、糖質やプリン体を含まないものが好んで選ばれている。ビールや発泡酒はもちろん、缶酎ハイも無糖が人気だ。焼酎やウイスキーなどの蒸留酒はもともと糖質やプリン体はゼロだが、ベネフィットとしてそれをあえてうたうコミュニケーションも散見される。

そうは言うものの、ビール、発泡酒に占めるオフ・ゼロ商品の割合は2割強にすぎない。香味は、昨今、著しく改善されて一般ビールとほとんど変わらなくなってきているから、伸びしろは大きいと見るべきだ。

これまでは、体調を気にしている人に選ばれてきたが、そうでない人も「おいしいならオフ・ゼロの方が良い」と思い始めたら大きく伸びる。ターゲットを変えることで、市場の拡大を狙えるのである。

それには世の中に新しいことを始める気分が満ちる4月は好機だ。ビール類や缶酎ハイでオフ・ゼロ商品を前面に出し、「始めましょう!」と提案する。

売場展開

ビール、発泡酒、缶酎ハイの糖質オフ・ゼロ商品を取りそろえて「群」でアピールする。続いて「さらにプリン体ゼロ」として焼酎、ウイスキー、ジンをまとめ、炭酸水をクロス陳列する。

また、連休などパーティの増える時季には、さらにノンアルコールや低アルコールの商品群を加えての展開も試みたい。

「涼しさわやか、ジンソーダ。いとおかし」

ジンは最も涼しげなイメージの酒の1つだ。ジュニパーベリーを主とし、かんきつのピールやコリアンダーなど数種類のボタニカルの香気はさわやかで、中でもベースにニュートラルスピリッツ(アルコール度数が高くくせのない蒸留液)を使ったドライジンは軽快で飲みやすい。

多くの商品はアルコール度数が40%以上ありカクテルにしたり何かで割ったりして飲まれるが、家庭で容易に楽しめるのはソーダ割りだ。

ウイスキーハイボールが広く飲まれるようになって、炭酸水を常備する家庭が増えた。すっかり定着してソーダマシンを導入している家庭も珍しくない。花見シーズンが終わる4月中旬、酒売場での涼味立ち上げとして、ジンソーダを取り上げる。

売場展開

700㎖で1500円くらいまでのスタンダードジンを数種類取りそろえる。「ビーフィーター」「ゴードン」「ギルビー」などのロンドンジン、ジャパニーズは「サントリー翠SUI」「香り雫」のほかクラフトジンの「SAKURAO」や「槙KOZUE」など比較的リーズナブルなものを加える。商品ごとに「初めてならこれ。スタンダードなジン」「ユズが香る“和”を感じるジン」「バーの定番と言えばこれ」などの推奨コメントを添えると動きはぐんと良くなる。

カリブ海の南国イメージのあるラムも割りの酒のイメージだ。ジョイントさせ「ジンソーダ? それともラムソーダ?」という2項対立で薦めるのもグッド。ラムは「モヒートだったらラム」と情報を付加する。

ガラスのコップに入った飲み物
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「集まったらスパークリング」

ゴールデンウィークをターゲットにスパークリングワインとスパークリング清酒を売り込む。スパークリングは開栓したら飲み切るものが常識となっており、自宅でフルボトルを開ければ持て余すと考える人が多い。そのため1人やパートナーと2人の食卓にはなかなか登場する機会がない。

しかし、ワインや日本酒の試飲会で人気が高いのはスパークリングだ。一杯目に飲むせいもあるだろうが、爽快な味わいと華やかな雰囲気は多くの人に好まれ、香味評価はたいへん高いのである。

大型連休は家族や友人が集まりホームパーティが頻出する。こんな機会こそスパークリングの出番であり、香味タイプ、価格帯、サイズなどバラエティ豊かに品揃えして提案する。

売場展開

「皆がそろったら今日はスパークリング」を打ち出し、ワインと日本酒を同時に見せる。冷蔵ケースには定番商品だけ、イベントスペースでは常温で展開する。

品揃えは次のサブカテゴリーを踏まえてバラエティ豊かに見せる。

①香味タイプ

ワインでは白とロゼのそれぞれ甘口と辛口、日本酒は甘酸っぱい低アルコールタイプとアルコール度数が10%~13%のドライタイプをそろえる。

②価格帯

フルボトルで2000円までで、シャンパンを加えるなら5000円前後のスタンダード品。日本酒は500㎖~720㎖で2000円まで。高価な商品はこの企画ではいらない。

③サイズ

ワインはフルボトルの他、トライアルしやすい缶製品をそろえる。日本酒は300㎖が中心になるが、ドライタイプは720㎖でよい。

併せてカジュアルなワインをソーダ割りで薦めてもよい。ワインを常飲する欧州ではワインをソーダで割ったり、オンザロックで楽しんだりするのは一般的だ。

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トレンド商品

「ソーダ割りでおいしい本格焼酎」

ウイスキーやジンの製造に乗り出す焼酎メーカーが増えており、本業の焼酎の製造技術に洋酒の知見が加わって、香りに特徴のある商品が登場している。こうした商品は総じてソーダ割りに向き、グラスに氷をたっぷり詰めてハイボール感覚で楽しまれるようになった。これを前面に出してアピールする。

割り方は25度の焼酎なら1(焼酎):2(ソーダ)で、これでアルコール度数は約8%となり缶酎ハイとほぼ同じくらいだ。グラスに氷をたっぷり詰めて楽しむから、売場で「おいしい氷にすると味わいはワンランクアップ」と伝える。