クリスマスまでは動きが鈍く、24日からのチャンスにしっかり対応|「これは押さえたい」惣菜編・2022年12月

2022.12.12

日本フードサービス専門学院学院長 林 廣美
城取フードサービス研究所 城取博幸

12月はクリスマスまで大きな行事がないため、平日の売上げアップが重要。惣菜部門は、冬の味覚の訴求。ホットメニューの訴求。おせち料理、オードブル、ローストチキン、寿司盛り合わせ、天ぷら盛り合わせの予約も終盤を迎える。クリスマス、年末年始は大きな売上げであるため、際物商品の試食、味の確認を含め早くから売場展開を実施する。

2021年12月の家計調査で需要が伸び、前年を上回ったカテゴリーは調理食品が102.69%、寿司が100.39%、焼き鳥が102.62%、料理具材セットが107.26%だった。需要の変化はあまりないが、前年を上回ったカテゴリーは弁当が105.52%、調理パンが107.97%。需要は減っているが前年を上回ったカテゴリーはおにぎりが110.63%、コロッケが101.92%だった。

前年を下回ったカテゴリーは他の主食的調理食品、スナックが99.34%、うなぎかば焼きが90.63%、サラダが97.72%、カツレツが99.37%、天ぷら、フライが99.67%、シューマイが96.77%、ギョーザが89.50%、ハンバーグが97.74%。

昨年12月の家計調査では、食品計が100.27%、食費(外食、給食除く)は97.55%と不振、外食、給食は122.09%と2桁成長であった。

今年は揚げ油、小麦粉、パン粉の値上げから家庭で揚げ物を調理する機会が減っているため、天ぷら、フライ、唐揚げなどの揚げ物類は売上げが期待できる。一方、弁当や寿司、麺類は外食のデリバリー、テークアウトと競合するため注意したい。12月から需要が伸びる「ゴールデンカテゴリー」、前年を上回ったカテゴリーは積極的に販売し、売り逃しがないようにしたい。

寿司

寿司は2月の恵方巻に次ぐ2番目の売上げ。需要が高く前年を上回るゴールデンカテゴリーだ。地域によっては恵方巻を上回っているところもある。ウニ、イクラ、カニが高騰したり品不足が予想されているため、マグロ大とろ、中とろ、赤身のカン数を増やし、不足分をカバーしたい。

売場づくり

大型の寿司盛り合わせはロス対策のために予約販売を最優先し、鮮度の良いものを販売したい。地方では帰省客も増え、昨年以上の売上げが期待できるため販売計画、製造計画の見直しを行う。また、日持ちのするさば寿司、押し寿司、柿の葉寿司、ますの寿司、大坂寿司なども品揃えしたい。

天ぷら、フライ

昨年はコロッケを除く揚げ物類は苦戦した。今年は食用油、小麦粉、パン粉などの値上げがあったため売上げアップが期待できそうだ。クリスマスのフライドチキンはフレーバーの拡大。年末は「天ぷらセット」にも注力して販売したい。

売場づくり

クリスマスのフライドチキンはコンビニの品揃えを参考にSKUを拡大する。「鶏半身揚げ」や「網焼きグリルチキン」にも挑戦したい。

年末の天ぷらはエビ天ぷら、かき揚げの他に「天ぷら盛り合わせ」も販売したい。エビ天の本数を増やした2人前~3人前の盛り合わせがよく売れる。冷凍プリフライで対応するとよい。

焼き鳥

冬は焼き鳥の重要は下がるが、12月は前年をクリアしているため積極的に販売する。

クリスマスのロティサリーチキンの丸、半身、ローストレッグは平均的な値入れとするのでなく販売数量を上げるため「価格訴求品」を決めて販売するようにしたい。

売場づくり

インストア製造の焼き鳥は単品だけでなく盛り合わせや卵焼きと組み合わせて「焼き鳥丼」として販売したい。自家製焼き鳥の隣りに冷凍焼き上げの焼き鳥も併売する。ロティサリーチキン、ローストレッグは月初より販売したい。同じもののチルド商品も品揃えしたい。

惣菜材料セット

料理材料セット(ミールキット)は秋から冬にかけてよく動く。それを参考に惣菜売場でも家庭で少し手を加えたり、組み合わせたりすることで「手作り感」がある料理ができることを提案する。

例えば揚げ物盛り合わせに「甘酢あん」をかけて中華風に、カツ類に卵を絡めた「カツ煮」、天ぷら盛り合わせを使った「天丼」、蒸し野菜を使った「キッシュ」などの提案。

売場づくり

週末には「盛り合わせ」に注力して販売する。フライ、唐揚げ盛り合わせ、天ぷら盛り合わせ、グリル、ロースト肉盛り合わせ、焼き鳥盛り合わせ、グリル野菜、蒸し野菜盛り合わせ、サラダ盛り合わせ、おでん盛り合わせ、煮物盛り合わせ、おかず盛り合わせなどを品揃えする。

トレンド商品

チキンパルマ

アメリカのウェグマンはクリスマスに向けて「チキンパルマ(パルミジャーノ)」の販売に力を入れている。オーストラリアメルボルンが発祥といわれている料理だ。

チキンカツまたはオーブン焼きの上にピザソースまたはボロネーゼソースを塗り、パルメザンチーズ、ピザチーズをトッピングしてオーブンで焼いたもの。

簡易的に作るのであれば既存のチキンカツを揚げてソース、チーズをトッピングしてオーブンで焼けばできる。ブロッコリーやプチトマトをトッピングしてもよい。クリスマスから年末年始に販売したい。

キンパ

写真は韓国料理専門店の約1500円のキンパ詰め合わせ。種類は野菜、プルコギ、チーズ、高菜漬けの4種類各5カン。キンパは野菜が多くヘルシーだ。

冷凍キンパはよく売れているが寿司売場ではあまり見かけない。寿司売場も巻き寿司、いなり、助六寿司だけでなくキンパも販売をしたい。ライフコーポレーションはキンパの入った韓国料理の盛り合わせを弁当コーナーで販売している。製造を外部に依頼して、店内でカットして盛り合わせるのも一案だ。韓国料理の人気が高まっているだけにキンパは定番化したい。

強化するアイテム

毎年の12月の特徴として(1日~23日)は全体的に惣菜商品の動きは鈍い。無理に販促を掛けても商品の動きは弱く、ロスになるので気を付けて計画を立てる。

寒波など気温が低く寒いとさらに動きが鈍くなるので要注意。定番の売れ筋商品を優先的に売り込むこと。

12月の売場のコンセプトは「作りたて」「温かさのイメージ」がテーマになる。「揚げ物商品」は揚げたてを、落ち込みの多い「弁当」「寿司」などの商品は作りたてを売り込むなど、販促の手を抜かない気配りをする。

今年の24日のクリスマスイブは土曜日になるので、売上げが大きく跳ね上がる可能性があり、ここで売上げをしっかりと取りたい。クリスマス商品を再チェックすること。

さらに25日が日曜日なので要注意。クリスマス商品が多少伸びる可能性があるが、24日の10分の1程度の売上げなるとみられるため、多大な期待はしない方がよいだろう。

ローストチキンは24日に売り切るような数量で計画を立てること。翌日はほとんど売れないからだ。

今年の31日大みそかの海老天婦羅は、かなりの売上げがあると思われる。人手があれば冷凍の海老天商品に加えて、手作りのスペシャル海老天、海老かき揚げで売上げの底上げを図るとよい。人手に余裕があれば1、2人前のプチ「おせち重」なども売り込みたい。

三種のプチグラタンセット

グラタンは冬の洋風メニューとして人気も高く重点商品でもある。自社の惣菜センターがあれば、手作りのおいしいグラタンを作ることが可能になるので研究するとよい。

最近ではグラタンが簡単に作れる粉が開発されている。牛乳と合わせてバターを加えて煮込むだけで、だまにならずに誰にでも奇麗に作れる調理技術も開発されたので、製粉メーカーに相談するとよいだろう。グラタンは冬季の売れ筋商品だけに売り込みに力を入れたい。

写真のグラタンは左から、チキンあぶり焼き、ボイルエビ、ベビーホタテをトッピングした3種のプチグラタンのセット。トレーはスチームコンベクションで焼ける紙カップ型。トッピングは焼き上げた後に載せる。

一緒にして焼くと縮んで小さくなったり、焦げてしまったりするので後でトッピングする。3種のカップを並べてトレーに載せ商品化。クリスマス商品としても売れるので一緒に品揃えをして売り込む。

季節の(カニ、アナゴ)炊き込みご飯

年末から正月にかけて、売り込む旬の炊き込みご飯。なぜ炊き込みご飯なのかといえば寒い季節の弁当などのご飯は、寒さの影響で硬くなったりして弁当の人気が落ちる。

炊き込みご飯は寒さに強く、気温の低いときでもご飯が柔らかで硬くなりにくく、食べておいしいので冬場の弁当として人気も高い。冬場の弁当のノウハウでもある。

作る際は、薄味のだし(油揚げ、ニンジン千切り入り)でご飯を炊く。味は薄めにする(トッピングの味を生かすための処理)。

盛り付け時は、まず、炊き込みご飯を2つに盛り付ける。1つはカニの身をほぐして盛り付け、もう1つには業務用のアナゴをたれで煮た物を盛り付ける。刻みアナゴを代わりに使ってもよい。

トッピングは、味の良い太めの錦糸玉子を、形よくトッピングする。常温で販売をする。

手作り国産アジフライ

魚のフライの中で一番人気は「アジフライ」であることが多い。冷凍商材のアジフライも売れ筋ではあるが、冬ならではの身の厚い脂の乗った国産のアジを使ったアジフライの人気も高い。少々高い価格でもおいしい国産アジフライは良く売れる。

漁港や海に近い店なら、地元で揚がった取れたての脂の乗った国産アジフライは特に人気が高い。チラシ特別販促にも使えるので活用するとよい。

アジフライは安い冷凍アジフライもあるが、こちらは特売用に。国産アジフライは手作りとんかつ、手作りカキフライなどと合わせて特設コーナーなどの、手作りフライ売場の展開もできる。手作りカキフライも人気フライの1つであり、冬場の売場を活性化することもできる。

いなり、巻き寿司オードブル

年末の多人数向けの大型商品。手軽な価格で売り込むことが可能な商品である。

①いなり寿司、②玉子とかんぴょう、椎茸の中巻き、③胡瓜芯のカッパ細巻き、④具沢山の太巻き(中心商品)、⑤玉子と穴子の細巻き。

5、6人分の盛り合わせということで大型店向けだが、中小型店では盛り付けを参考にしながら、小さめの商品を作ると良い。

太巻き商品は、次のように作るとよい。のりを縦に2枚、ご飯粒を糊にしてつなぎ合わせて長くする。寿司飯をのり一面に広げて伸ばし、手前に海鮮巻きの具(ネギとろ、エビ、白身魚、マスのイクラなど)を、大葉を敷いた上に載せ、芯にしてくるりとひと巻きする。

残りの寿司飯の上に、通常の太巻きの材料を置いて全体をくるくると巻き上げれば大きな太巻きが完成する。中心を海鮮ではなくスモークサーモン、うなぎ、アナゴ、イクラ、イカ明太などに代えてもよい。

「おせち風」オードブル

「おせち」商品がほとんど宅配になったため、店でのおせち関連商品が少なくなった。店での作りたて「おせち風」として、オードブル仕立てのおせち商品を提案する。

写真時計回りに、具入り薄焼き玉子、串なしばら焼鳥、肉団子、春巻き、シューマイ、酢豚、そして中央に海老チリソースで構成されている。これを参考に自店の得意メニューに置き換えて作るとよい。

問題は中央の海老チリソースで、これはこの位置しか盛り付けられない。他のメニューでは売上げが上がらないからである。人気商品にするなら中央を海老チリソースにすること。中心を「海老チリタワー」にすることで人目を引き、購入願望を起こさせる力がある。これがこのオードブルのこつになる。

サラダ3点盛り

サラダは夏の商品というのは過去の話。暖房の効いた部屋では冬でもサラダをよく食べるので商品開発を怠ることはできない。

このサラダ3点盛りは、サラダの売れ筋ナンバー3で作る。右のナポリタン、左のカニかま野菜サラダ、中央のポテトサラダはどれも売れ筋サラダ。本来は単品で売り込む商品だが、年末には容量の多い3点盛りなどを売り込むとよい。

もちろん、この他に単品のそれぞれの商品を一緒に販売することは言うまでもない。

クリスマスにはポテトサラダが良く売れる。クリスマスのフライドチキンの付け合わせに使われるためである。欠品を起こさないようにポテトサラダの数量を多くする。

クリスマスのまとめ

24日のクリスマスイブの日には、ローストチキンとフライドチキンを売り込むことは言うまでもないが、売り込みの比重はフライドチキンに置き、こちらを積極的に売り込むことにする。

なぜならローストチキン(冷凍原料)は売れ残ると正月などには売ることできないが、フライドチキンは正月にも売り込むことができるので、強気に在庫を持つことができる。フライドポテトも同様である。

31日の海老天と共に手作りの「海老天婦羅」「海老かき揚げ」も売り込みたい。担当者全員で練習をして売り込む店も多い。努力をしてほしい。自店の惣菜を注目商品にするためである。