うなぎの成功なくして売上達成なし、盆刺身は6月から準備|「これは押さえたい」鮮魚編・2023年7月
2023.06.07
エバーフレッシュ研究所 堀内幹夫
今年の「土用の丑」は7月30日(日)。昨年は7月23日(土)だった。土用入りは7月20日(木)。「二の丑」はない。
土用の丑の日程としては、週末よりも平日の方が全体売上げに与えるプラス効果が大きく、その点において今年は少し不利。しかし、ポジティブに考えれば遅い日程でもあり梅雨明けしている可能性が高いなど良い点もある。
うなぎの売上げは土用の丑当日の天気に左右される。土用の丑当日が雨でも売上げが担保できるよう予約販売は不可欠。予約販売のメリットを訴求し、予約率高める。
また、今年の「半夏生」は7月2日(日)。7月1日(土)、2日(日)の週末は、売り込み強化。昨年と比べるとアフリカ産蒸しタコを中心に相場が下がり、売りやすい環境にある。売上高前年比150%以上を目標として大胆な計画を立てよう。有人で試食販売も実施する。お勧めは、バジルソースでの試食だ。
7月7日(金)は七夕。週末に向けてちらし寿司を中心に仕掛ける。保育園児、幼稚園児のいる家庭では幼稚園での行事もあり、家庭でのパーティの機会も増える。
7月9日(日)と16日(日)は、夏のボーナスサンデー。特に15日(土)~17日(月、祝日)は3連休でもある。特上握り寿司、特選刺身盛り合わせなど、ちょっと豪華な商品規格を展開。
7月13日(木)~16日(日)は7月盆。7月盆でない地域でも1カ月後の8月盆に向けて、刺身盛り合わせ規格の見直しを図る。今年の帰省客は、コロナ以前の水準に戻ることが予測される。食材の相場環境や消費傾向もコロナ前とは激変していることが考えられる。準備万端、怠りなく盆商戦を迎えよう。
小、中、高校生の夏休みは、全国的に7月21日(金)ごろからのスタートが多い。子どもたちのランチメニューの提案と、週末はバーベキュー、鉄板焼きメニューの提案を強化する。
7月は家計消費支出の面でも、うなぎかば焼きは年間1位と金額の大きさで群を抜く。うなぎの成功なくして売上達成なしと考える。
うなぎかば焼き
昨年2022年の土用の丑は、梅雨明けが21年より2週間早く、北海道、東北が曇から雨、他地域は晴れだった。東京の気温は33.6℃だった。
製品相場は前年21年に対して国産1.5割高、中国産3~4割高。製品はジャポニカ種、大型サイズが中心だった。
シラス採捕量は前年は58.8tから42.4tまで減った。池入価格は前年比2.5倍の1kg当たり250万円、新仔の生育遅れもあった。
一方で土用の丑当日の売上げは好調だった。昨対超えの企業、店舗が多く出た。かなりの企業、店舗で2桁伸長だったようだ。
今年は国産が高騰、販売苦戦が予想される状況の中、中国産の売り込みが必須となる。ただし、単価ダウンには十分に注意。国産1匹の金額で、中国産がほぼ2匹買える、といった中国産の割安イメージ訴求で2匹、3匹買いを誘う。
一方の普段の日は相場高による単価アップで苦戦が予想される。普段の日は中国産が販売の中心となるが、1匹1000円を超える売価で動きは鈍い。ハーフカットだけでなくカット済みのうなぎの販売で値頃追求と簡便性の訴求。最近ではカット済みうなぎが普通に売れるようになってきた。必ず品揃えすること。
うなぎ握り、うなぎ太巻き寿司、うな重、うな丼やうなぎわっぱ飯、うな玉丼、ひつまぶしセットなどの簡便商品を強化。昨年もうな丼、うな重、ひつまぶしセット(ライス付き)やうなぎ寿司、うなぎ太巻きセットなどが多くみられた。うなぎかば焼きだけを売る時代ではない。手間はかかるが事前に商品規格を決めて、商品作りの訓練など準備万端に整え、本番に備える。


バーベキュー、鉄板焼きセット&商材の展開
昨年の夏休みスタートから盆商戦にかけて、バーベキュー商材の動きは好調であった。今年もいまの状況が続けば、昨年よりも大幅な需要増が見込まれる。新型コロナウイルスが落ち着いたことで、職場仲間や近所の仲間など多人数でのバーベキュー、鉄板焼きパーティも増えるものと予測される。
小規模でのバーベキューパーティが多かった昨年と違い、今年はセット物よりも単品訴求の方が効果があると思われる。鮮魚系では、活サザエ、殻付ホタテ貝、殻付牡蠣、生アユ、生スルメイカ、アルゼンチン産アカエビなど。冷凍系商材としては壺抜きイカ、スチームホタテ貝、冷凍ホタテ片貝、冷凍アワビ、骨取りチリギンザケなど。他にシマホッケ、ピリ辛シシャモなど塩干系商品もある。アルゼンチン産アカエビ(大)6匹580円、片貝ホタテ貝3枚580円、解凍アユ(大)3匹580円など。1パック580円、どれでも2パック980円(1000円)のバンドルセールもお勧めだ。



トレンド商品
「盆刺身」企画、準備万端怠りなく
相場高の中、刺身が変わりつつある。正確には変わらざるを得ない状況といった方が正しい。例えば刺身盛り合わせ4点盛り。1山各4切れで本マグロ中とろ、養殖マダイ、生サーモン、養殖ブリの4品を、1切れ15g(養殖マダイだけは1切れ12g)で原価計算し、3、4割の値入れをすると1580円~1880円の売価となる。養殖本マグロ中とろ入りなのでことさらに強調される形となってはいるが、3、4年前の1.5倍以上の売価である。
養殖本マグロ中とろを入れなければ、もう少し安くはできるが、正月、盆商戦という1年の2大イベントでもあり、養殖本マグロ中とろは欠かせない。
そうなると1山4切れ→3切れにし、山数を4山から5山に増やすとか、1切れ当たり重量14g、15gを10g~12gに減らすなどの変更をせざるを得ない。1山当たりの切れ数が減って、1切れ当たりのg数も減るとなると、面が埋め切れず大根つまが目立ってしまう問題が発生する。
切り方を平切りから削ぎ切りに変更し、面を拡大してつまを目立たなくする工夫が必要になる。また盛り付けるたねも養殖本マグロ中とろはマストとしても、養殖ブリを他のたねに代えるなどの検討が必要という風に課題は山積している。
例年の踏襲型では値入不足が発生するし、相場高をストレートに反映した刺身規格では売上げが大幅にダウンしてしまう。一方で消極的になれば、せっかく3年ぶりに帰省客も増えることが予測される盆商戦に大きな機会ロスを発生させることになる。今年は早いうちから、最低でも2カ月前の6月から「盆刺身」企画の検討に入ってほしい。
刺身規格例
➀刺身盛り合わせ4切れ×5列盛り1980円
削ぎ切りで面を広く取った切り身で5列盛りした刺身。トレイ全面を刺身で覆う形になるため、売場に陳列したときに売場が華やかに見える利点がある。通常の4切れ×5点盛りよりもボリューム感を訴求できる。
➁(つまなし)刺身盛り合わせ3切れ×8点盛り1980円
つまなし刺身も少しずつ売れるようになってきた。つまを盛らないのでつま代が節約できる、つまを盛る時間と手間が節約できるメリットがある。何より大きいのは切り手と盛り手の分業制が敷けることだ。
