二の丑なく、うなぎは6日までの拡販を、盆商戦以降は販促テーマにひと工夫|「これは押さえたい」鮮魚編・2023年8月

2023.07.14

エバーフレッシュ研究所 堀内幹夫

今年の(ゴールデンウィーク)GWの人流をみても、今年の盆商戦の人流は久々にコロナ前の状況に戻ることが予測される。ただ、人流は戻っても、コロナ前(2019年)の商戦とは、相場環境や消費傾向が大きく違ってきている。

安易な19年盆商戦の踏襲は危険だ。特に食材の相場高が続く刺身盛り合わせ、寿司盛り合わせについては、抜本的な見直しが必要。

8月11日が祭日の「山の日」となってからの盆商戦帰省は、11日を起点として早く始まるようになってきた。早く始まった分、都会へのUターンも早くなった。昨年は「短期集中」「早めに帰省し早めにUターンする」傾向。台風の影響もあり東日本、関東圏では帰省のピークは12日。都会へのUターンは15日、16日がピークだった。今年も同じ傾向とみるが、曜日回りが昨年よりも1日早いので、Uターンは少し早まる可能性もある。

バーベキュー、鉄板焼きについては、昨年の盆商戦でも好調企業多かった。売れ筋商品は地域によって異なるが、殻付カキや片貝ホタテ貝などの貝類、バナメイエビの大型サイズやアルゼンチン産アカエビなどエビ類が大きく伸びた。

昨年の二の丑は8月4日(木)。気温が高く、うなぎの動き良く大きな売上げを作った店舗多かった。今年は二の丑がない分、何もしなければマイナスが大きくなる。今年は8月3日(木)~6日(日)までうなぎの拡販につとめ、少しでもマイナスを減らす仕掛けを考える。

毎年、盆商戦までは盛り上がるが、盆商戦以降は盛り上がりに欠ける。秋物商材(生サンマ、生秋サケ、秋イカ、戻りカツオ)に期待したいところだが、今年も当てにできない。盆商戦以降の販促テーマとしては「スタミナメニュー」「あっさりメニュー」や「この夏最後のバーベキュー、鉄板焼き訴求」、そして8月終盤には学校が始まる前の「朝食、弁当特集」などの仕掛けが考えられる。

それでも売上げが不足する場合は、相場の上げ止まった「アフリカ産蒸しタコ」「養殖ブリ」「おかずマグロ(キハダ、メバチ)」「エビ各種」「ギンザケ」などの「品群祭り」がお勧めだ。

「盆商戦」対策

昨年(22年度)盆商戦の営業結果は、営業数値的には、相場高や猛暑、台風直撃、豪雨などの悪天候を考慮すれば健闘したといえる。特に11日(木、祝日)、12日(金)の売上げが好調。それ以降については14日(日)以外は不振だった。水産部門としては盆期間(8月11日~15日)については前年実績をキープできた企業が多かった。だがスーパーマーケット全体数値よりは少し低い前年数値で終わった。

好調商材としては寿司、エビ、うなぎが絶好調で売上げを大きく伸ばした。他には刺身盛り合わせ、珍味、貝類、カニ、なども健闘した。不調商材としては、マグロ、生食鮭鱒、タコ、魚卵などであり、相場高の影響をまともに受けた形だ。また、寿司は全国的に好調を維持し、刺身盛り合わせから寿司への流れ、傾向が加速していた。

刺身盛り合わせは企業間格差が生じた。同じ帰省客を迎える地域でありながら、ますます高額刺身や大型刺身の動きが好調な企業と年々縮小均衡となっている企業に二極化しつつあった。

「盆商戦は気温が高く刺身など生食類は売れない」「最近の集まり(パーティ)では刺身が主役でなくなってきた」など理由付けは幾らでもできるが、要は盆刺身に対する意識や計画性(販売政策)、商品化技術の優劣により生まれた格差といってよい。

今年は久し振りにコロナ前の水準に客数が戻ると予想されることから売上拡大のチャンスとしたい。今年の人流パターンは昨年とほぼ同じとみる。図表①をみると曜日回りが昨年よりも1日早い分だけ、都会へのUターンは昨年よりも少し、早まるかも知れない。いずれにしても、今年のGWを見る限り人出は、ほぼコロナ前に戻った形なので、帰省客を迎える側の地域は、3年ぶりにお盆商戦らしい活気を取り戻すことが予測される。

図表①

「昨年より強化する商品」「新たに加えるべき商品」については、図表②のとおり。

図表②

この3年間、刺身盛り合わせや寿司盛り合わせについては、小型化、縮小化、前年踏襲型で進んできた企業も多い。この盆商戦は仕切り直し。年末商戦も意識し、どこまで刺身、寿司の大型化が可能なのかの試金石となる。

新たに加える商品では、魚惣菜と「カニ」。昨年の成功例の中でカニが売れたとする事例が少なくなかった。対象はズワイガニ、タラバガニなどになるが、単価的には年末商戦と違い2980円~3980円までが限界と考えるが、バーベキューパーティにお勧め。魚惣菜は、夏の暑い日が続く中、火を使う料理を嫌う一定の需要があると考える。

トレンド商品

つまなし大型刺身盛り合わせ

少しずつ売れ始めている。昨年の年末商戦でも2、3位グループに付けている企業多く、売れるようになってきたと実感する。人手不足で刺身盛り合わせ拡販を諦めている企業、店舗は「つまなし刺身」を検討してみてはどうか。

トレーについても改善あり。従来のトレーは値段が高く、大根つまでコストダウンしても大きな影響がなかったが、現在では全サイズが発泡系トレーになって少し安くなっている。さらにトレーの材質が変わって盛りやすくなった。

つまなし刺身盛り合わせのメリットはつま代が節約できること、つまを盛るための時間と人手が節約できること、そして、一番のメリットは分業制が敷けること。仮に1山3切れの場合、3切れずつ切り溜めしておけば、パートタイマー、アルバイトでもへらなどで仕様書どおりに盛り付けていけば良いので生産効率が高い。 

魚惣菜

猛暑が続く中、火を使う料理を減らしたいと考える主婦が多いと考える。そうした需要に応えるために、可能な店舗は魚惣菜強化を考えてはどうか。

一番、手っ取り早いところでは、年々動きが良くなっている「うなぎ寿司」と「うなぎ惣菜」の強化。

うなぎ寿司…うなぎ握り寿司、うなぎちらし寿司、うなぎ太巻寿司の単品あるいはセット物を企画し、強化

うなぎ惣菜…うな重(丼)、ひつまぶしセットなど

他にビールのつまみ(タコ、小エビ、ベビーホタテ唐揚げ)や海鮮オードブル、おかずにもう1品欲しい時の焼き魚や揚げ魚の提案。

ボイルズワイガニ、タラバガニ

各企業の昨年の盆商戦レポートの中に「カニ」の動きが良かったというレポートが多くあった。昨年の盆商戦のチラシを分析してみてもボイルズワイガニを中心にチラシ掲載されている企業が意外と多い。お勧めはボイルズワイガニ、タラバガニの1パック売価2980円~3980円商品。相場も下がっているので探せば、あるはずだ。既にボイル済みのカニではあるが、バーベキューの際に軽く炙って食べることを勧める。軽く炙ることでうま味が凝縮され、より美味しく感じられる。少しあるだけでもバーベキューパーティが一段と華やかになる。

アフリカ産蒸しタコ

北海ダコ(北海道産の主にミズダコ)も水揚げ減から超高値となっている中、アフリカ産蒸しタコを販売強化する企業、店舗が増え、売上前年比120~130%の勢いで伸ばしている。販売主力は足、スライス、ぶつ切りだが、中、小サイズが多いことからぶつ切りが売れている。また、コンビニも販売されている「タコバジル」「タコキムチ」などのようにさまざまなフレーバーによる品揃えが増え、しかも売れている。

今年、品揃えが増えているタコバジル、タコキムチなどの商品。他にもごましょうゆ、レモンペッパーなどさまざまある。一様に動きが良い。野菜類でかさ増しでき、安く売れるメリットもあるが、味と簡便性が受けているように感じる。

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