前半は夏商売の継続相場安商品、相場小康状態の商品を積極的に|「これは押さえたい」鮮魚編・2023年9月

2023.08.09

エバーフレッシュ研究所 堀内幹夫

9月となれば秋商材の展開がスタートし、売場は秋色に染まるが、東京では6月よりも平均気温が高く、9月の中旬迄は最高気温30℃超えの日々が続く。9月前半は秋商品の投入をしながらも、夏商品に全力投球する必要あり。

この10年、秋の旬訴訟材についてもさま変わりしつつある。生サンマが9月に取れなくなって久しいが、今年のサンマ漁についても早くも不漁説が出始めている。この数年は生秋サケ(生スジコ)、生秋イカ、生カツオ(戻りカツオ)など他の秋商材も不漁、不順が続き、秋商材の拡販が難しくなっている。

出ないものを待っていても仕方がない。アフリカ産蒸しダコ、うなぎかば焼き、バーベキュー商材など9月前半は夏物商材の販売強化で商売をつなぐ。

ここにきて相場安や相場高から小康状態となり始めた商材が増えてきた。養殖ブリ、マグロ赤身(メバチ、キハダ)、養殖バナメイエビ、ギンタラ。他にはノルウェーサーモンを除いた輸入サーモン類も相場下げとなりつつあり、こうした商品を中心に売りの仕掛けを強化したい。

9月18日(月)の「敬老の日」を含む3連休(9月16日~18日)は、暑さも少し和らぎ、台風さえなければ絶好のバーベキュー日和。バーベキュー、鉄板焼きの展開を強化。

敬老の日から彼岸まで刺身、寿司需要が高くなる。事前に刺身盛り合わせ規格や寿司規格を見直し、販売強化。

敬老の日の刺身は、ちょっと良いもの少量多品種盛り、もしくは少量高品質刺身の提案(売価980円まで)。量は少なくて良い。売価は1000円以内に抑える。

彼岸の刺身は、墓参客へのおもてなし料理の刺身、寿司となる。

以前は、8月の終盤から9月初旬に実施する企業も多かった「北海道フェア」。北海道の秋の味覚を訴求するものだが、現在は早くても9月中旬以降、できれば9月下旬から10月初旬の開催が適切と考える。

生秋サケ

相場高の中、「骨取り」「小切れ」がトレンド。輸入サーモンが相場高の中、期待が集まる生秋サケだが、今年もあまり大きな期待はできそうにない。相場的にも高値推移が予測される。高値相場の中でも売れるポイントは1つ。「骨取り」切り身の展開だ。通常の切り身、厚切り切り身、小切れ、ブロックなどのすべてを骨取り化することは無理でも、必ず1フェース、2フェースでも良いので「骨取り」切り身を品揃えする。

骨取りにすることで、子どもたちの好きな洋風メニューにも用途が拡大でき、安く売ることよりも販促効果が高いはずだ。バーベキュー、鉄板焼きシーズンでもありサケのホイル焼きセットやチャンチャン焼きセットなども品揃えもしたい。

生秋サケ売場展開例。切り身、厚切り切り身、小切れ、ブロックなどの展開。中でも「骨取り」切り身の品揃えは必須
骨取り切り身によるアルミホイル包み焼きセット(写真はギンザケ使用)。このままトレー代わりのアルミホイルで包み、フライパンに載せるだけ

売場展開図

解凍サンマ刺身

生サンマの入荷は期待できないが、解凍サンマであれば、事前にある程度準備することが可能だ。解凍サンマの仕入れに早くから着手し、9月、10月販売分くらいは確保しておきたい。

1匹、2匹の原体販売が基本だが、最近ではフライパンで焼く人も多く、下写真のような切り身も重宝される。頭、内臓を除去し、輪切りにして販売。1匹から2切れが基本だが、中には1匹を4切れ程度に小さくカットする切り身もよく目にする。

また、生サンマの入荷はなくても「サンマ刺身」も強化したい。サンマは生と解凍の見た目の差が他の魚ほど大きくないのがメリット。下の写真のサンマ造りも皮付きフィーレを48時間冷凍にしたものをたねにしているが、見た目に大きな鮮度感の差はない。ただし、刺身にしてからの鮮度劣化、変色は生より速いので早めの値引き、造りすぎないよう注意する。

最近では、生サンマも切り身が喜ばれる時代。フライパンで焼く場合、原体のままでは長くて焼きにくい
解凍フィーレ使用による刺身。アニサキス対策のため、外部加工、インストア加工にかかわらず冷凍フィーレを刺身にする企業、店舗がほとんどとなってきた。ただ外部加工のフィーレには形状的にも鮮度的にもいま1つの商品があるので商品選定は慎重に行う

トレンド商品

アフリカ産蒸しダコ

今年の6月、7月、アフリカ産蒸しダコの販売が絶好調。大幅に前年実績を伸ばしている企業、店舗が多い。9月の前半はまだ暑さも厳しく、アフリカ産蒸しダコの販売チャンスが多い。 9月にはラグビーワールドカップのフランス大会が始まる。日本戦は9月10日(日)20時(日本時間)スタート。ビールなど家飲みしながらのテレビ観戦の機会も増える。酒のさかな、つまみ提案としてもお勧め。

今年の半夏生での売場展開例。既に販売の中心が足ではなく、バジル、キムチ、ゴマしょうゆなどさまざまなフレーバーによる味付けの展開に移っている
たこバジル料理サンプル例。ブロッコリー、枝豆、ジャガ芋、たこぶつに粉チーズ、バジルソースをかけてでき上がり

今年もやって来ました! 新米の時季、新米を海産物と味わう「炊き込みご飯」の提案!

新米の出回る時季の毎年恒例の企画、「炊き込みご飯特集」。新米での炊き込みご飯に合う食材を提案。ベビーホタテ貝、むきアサリ、蒸しダコ、骨取りギンザケなどの食材の他に炊き込みご飯のもとシリーズの提案。

炊き込みご飯のもとシリーズは、この種の商品としては異例に息の長い商品となっている。この新米の出回るタイミングに再度、品揃えと売場展開の拡大をしてはどうか。生サンマ、生秋サケなど秋の主役の不漁、不順が続く中、秋訴求に欠かせない商品となっている。料理レシピは必須。一度食べておいしければ、必ずリピートにつながる。秋の訴求にも水産部門にとっても大切な企画となる。

売場展開例