ベルクが手掛ける話題のディスカウント新フォーマット「クルベ」分析

2023.08.16

アズライト 榎本博之

ベルクがディスカウントフォーマットの「クルベ」を群馬県高崎市の江木店を改装する形で7月29日(土)にオープン、有力企業が手掛ける新たなディスカウントフォーマットということで、話題になっている。今回、同店の売場のレポートを通じて、ディスカウントの可能性などを考察したい。

訪店したのは8月7日(月)で、チラシは日曜立ち上がりの第3弾となっていた。表面は土曜日までの日替わりアイテム、裏面が日配、グロサリー等の通しアイテムで構成している。14時時点の駐車場は、1階部分はほぼ満車で盛況であった。各部門の特徴を説明していきたい。

青果は目視カウントで野菜75SKU、果物25SKUの合計約100SKUで、アイテムはかなり絞り込まれている印象だ。カット野菜やカットフルーツは惣菜売場に併設され、売場が分かれている。

売場のトップはスイカの玉売りがステージ状に陳列され、旬のアイテムであるモモを試食と併せて展開していた。試食は青果に加え、精肉、日配でも行われており、単なるディスカウントではなく、買物の楽しさや体験を提供する仕掛けが用意されている。

果物の価格訴求としてはモモ1玉159円(本体価格、以下同)、種なし巨峰399円、シャインマスカット799円などが目立っていた。

野菜は2桁売価が中心の構成で、この日はレタス78円をはじめ、市場仕入れを考えると競合より2割程度安い売価設定で訴求している。モヤシは200g17円、1㎏79円であった。

購入頻度の高い青果部門では、割安感を前面に出した展開が特徴になっている。少量アイテムは限定され、大根(写真)やキャベツ、長芋、レンコンなどが用意されていた。これらはすべてプレパッケージのアウト加工であり、インストア加工商品は見当たらなかった。青果においては陳列に専念するオペレーションが構築されている。キャベツが青果売場奥に陳列されている点は、ヤオコーのディスカウントフォーマットのフーコットの展開と似ていると感じた。

値頃商品を打ち出す一方で高単価商品も差し込むめりはり

続いては精肉で、チルドピザや焼き鳥、スライスハム、ベーコン、ひき肉、鶏肉、豚肉、牛肉へと続く。平台は2台あり、冷凍肉、1㎏パック、味付け肉などを展開している。

壁面は価格訴求を意識した単価が割安なものから先頭に並べている。その上で下段2段を使用してメガパックを並べ、大容量商品を売り込む姿勢が明確になっている。上段にある中小パックとはユニット単価が異なっており、メガパックがより割安な設定となっている。

売価は500円台から800円台の幅で展開されていた。効率性を意識して、インストア加工だけでなく、ノントレーやアウトパック商品を併用し、売場ボリュームを維持しやすいように商品構成を組み立てている。

牛肉は国産、輸入を含めた構成で、1000円前後の売価設定となっていた。注目点として冷蔵ケースに塊肉をそのまま陳列するスペースがあり、中には1万円以上する商品もあった。購入頻度は高くないだろうが、陳列のアクセントとなりめりはりが付く。

平台についてはより割安感を意識しており、200円~300円台の商品を並べ、味付け肉では「ベルク発祥の地『秩父』味噌を使った味噌漬」(写真)など、地域性を意識した商品も併せて展開していた。

鮮魚はマグロからサーモン、カツオ、タコのサクが並び、刺身パックは5SKUと絞り込みがされている。刺身を経て寿司売場から惣菜につながる流れである。

平台は生の切り身を1台使用している他は、解凍うなぎ、冷凍切り身、冷凍塩干が並ぶ。マグロはチラシ掲載のメバチマグロや値頃感を出しやすいビンチョウマグロがメインであるが、本マグロも並べるなど品揃えは充実している。

サクではジャンボパックの打ち出しは少なかったが、マグロたたき(写真)でボリューム感を演出するなどまとめ買いの意図を感じる取り組みがみられた。

寿司売場については巻き物については割安感、握りについては質を追う姿勢が感じられる。握りは手まり寿司など手間のかかる商品化もみられるなど、見た目もかなり意識されている。単価アップ貢献商品として位置付けたいのではないか。また、冷凍魚においても大容量パックを用意しており、単価アップに向けた仕掛けが行われていた。

価格帯を広げる惣菜、効率的陳列方を徹底する日配

惣菜は壁面から焼き鳥、揚げ物のばら売り、パックものとなっている。平台では弁当、丼、おかず単品が種類も豊富に並んでいる。割安感とボリューム感を意識した商品構成であり、弁当では199円のから揚げ弁当やハンバーグ弁当をはじめ、300円以下のメニューがスペースを大きく割いて展開されている。

ランチ需要を終えた時間帯にもかかわらず、陳列量は多く、お客の立ち寄りも多いことからマグネットとして機能しているのが分かる。ボリューム感のあるメガシリーズは、コストコから派生し、近年ディスカウント形態のスーパーマーケットでの取り組みが目立っているが、クルベでは300円~500円台の価格設定を目玉商品で実施、割安感のインパクトが出ている。

その一方で、豚丼980円、牛タン丼1380円など、ワンランクアップ商品を差し込むなど、価格幅を意図的に広げる取り組みを行っている点が興味深い。家庭の調理で負担の大きい揚げ物が目立っていたが、目玉焼きのみのパック売りなどシンプルなものも提供されている。

青果でも触れたが、カット野菜やカットフルーツは惣菜売場と一体になっている。カットフルーツは2種類で、パイナップルとスイカ。パイナップルはアウトパックの大容量、スイカは1サイズのみと絞り込まれている。

カット野菜は袋物が10SKU、パック入りが8SKUとなっていた。パック入りにジャンボパックが用意され「2日分の野菜が取れる」とシールの貼られたサラダは499円であった。

惣菜においても、インストア加工とアウトパック加工を組み合わせて提供しており、商品回転率の高いアイテムについては集中的にインストア加工で提供されている。

日配はデザートから乳飲料、チルドドリンクとなり、リーチインケースでヨーグルトが展開されている。乳飲料では依然、品薄感の強いヤクルト1000が大量陳列されていた。ヨーグルトは、400gの大容量パックではなく、小分けパックのまとめ買いをメインに展開。

第2主通路突き当たりの第2磁石では牛乳を展開。ベルクのプライベートブランド(PB)商品を159円で販売している。日配品は冷ケース内においてケースの投げ込みか、ジャンブル陳列を採用、手間をかけない効率的な手法として1アイテム当たりのフェーシング数を確保しつつ、陳列補充を最小限にしながら売場が維持できるオペレーションで対応していた。

購買頻度の高い豆腐は最安29円、納豆最安59円と、目玉商品に据え、展開場所も定番ではなく、平台の奥深ケースを使用して大量陳列で展開しているのが特徴的であった。常温品と併売されている漬物は売場スペースを広げず、値下げロスを出さない工夫をしている。

押し出されるように、日配売場の最後に位置する場所に加工肉と卵を配置しているのもこれまでとは異なる。このように生鮮と加工品を併売するのではなく、管理形態によって売場レイアウトを組むことでお客の購入にどのような変化が表れるかが注目される。

日配の1本隣りの通路は冷凍食品とアイスクリームとなり、ここには冷凍の海産物や精肉、野菜も含めて展開されている。そして、カート陳列をメインとした飲料とバンジュウからそのまま陳列されたパン売場につながる。

そしてグロサリーはジャンブル陳列が中心であるが、上部に吊り下げ型の什器を使用することで、商品のフェースがより際立つ形の陳列を行い、装飾性のある売場づくりとなっていた。

競合より2、3割安い売価設定、一方で売場演出にもこだわり

売場全体を見ていくと、やはり割安感、ボリューム感を狙った取り組みが強く出ている。売価設定については周辺競合よりも2、3割安い設定を意識している感じだ。ナショナルブランド商品に加え、日配やグロサリーではベルクのPB商品を活用しながら売価設定を行っている。

来店していたお客からも「ツルヤよりも安い」との声が聞こえた。群馬県や栃木県は他エリアからの進出が激しく、お客が店を選ぶ目がよりシビアになっている。その中で、クルベの集客状況を見るとスタートダッシュに成功しているように見える。

アメリカンコミックを彷彿とさせるイラストや空港の案内放送を意識したオリジナルBGMが店舗に訪れるワクワク感にもつながっている。さらに、ベルクでも見られなかった試食販売や高単価アイテムの差し込みを実験的に行うなど、エンターテインメント的要素を加えながら、どのようにベルクの限界を突破していこうとしているのか、今後の展開に注目していきたい。

その後、約200m離れたヤオコー高崎高関店を訪れたが、こちらも集客があった。野菜についてはキャベツやレタスなどクルベに対抗した価格で提供していた。また、売場のトップにはトマトベリーといった差別化を図るアイテムをPOPの説明を加えながら展開するなど、クルベとは異なる切り口で店の魅力を訴求していた。お互いの魅力を高めていけば、エリア全体の魅力向上につながっていくだろう。