気温の変化を受けながらホットメニューへ、焼いてご飯に混ぜるシリーズにも注目|「これは押さえたい」精肉編・2023年10月

2023.09.08

月城流通研究所代表 月城聡之

2023年は気候変動により外気温が例年よりも高いといわれているが、徐々に冬に向けて気温が下がり始めてきている。

例年、9月から「ホットメニュー提案」も充実した売場づくりを目指しているが、外気温が高いと「焼きメニュー」での売りが強く、無理にホットメニュー展開するよりも、焼きメニューでの売上げを作る方が容易であったことと思う。

10月に入り、徐々に下がる気温を見越して、秋冬で売上げを確保していくすき焼きや鍋の提案を挟んでいくことで、今後の売上確保につながる売場づくりを行なうことができるようになる。

秋冬メニューの展開と共に、定番の夕食メニューや肉惣菜提案を充実させることで、基板となる売上げを作っていきたい。

牛肉

国産黒毛和牛切り落とし 100g当たり398円

すき焼き用スライスは、高価な印象があるため、切り落としタイプの商品化ですき焼き提案を行っていく。部位を混合にすることで、割安感を出すことも1つの工夫となる。

ブリスケット、中バラ、ウデ、モモを上手く組み合わせて安価な切り落としを製造する。赤身と脂肪の多い部分を組み合わせることで、味のバランスも良くなり、歩留まりも上げることができる。

脂肪のトリミングは5~8mm程度にすることで、消費者の購入の許容内に入ることができる。

価格設定は、和牛でも100g当たり398円ラインで販売したい。そのため、セットでの仕入れや安価な単品仕入れで値入調整を行う必要がある。

高すぎる売価は、購買の促進にはつながりにくいため、売価設定やパック単価には十分注意をして販売する。

外気温が高いタイミングでは、すき焼きではなく薄切り焼肉提案を行う。この時季の薄切り焼肉は、焼きしゃぶやすき焼きのように生卵で食べる提案とすることで、秋冬メニュー提案となる。

国産牛乱切り焼肉盛り合わせ(カタロース、モモ) 1980円/400g

乱切りの商品化で作業オペレーションの改善が行なわれてきている。

スライサーでのカット+最終調整の手切りカットを行い、大型トレーに盛り付けるだけで簡単に商品化ができる。商品化に慣れると乱切りしている商品も奇麗に並んでいるように見えるので、乱切りの雰囲気を残した商品化でも良い。

部位は都度店舗にある商品を使用すると良いが、比較的余剰となりがちなカタロースと希少部位で希少感の出せるモモ系をうまく組み合わせて商品化すると良い。

カタロースの特に下側部分(芯側)がネックに近づくにつれて硬くなる。そのため、商品化ではスライサーを用いて3~4mm程度の厚みで、やや薄めの焼肉スライスにすると良い。

トレーは大型のふた付きトレーを使用し、高さを出すことで、ボリューム感を出せる。販促シールなども企業でそろえることで、アイキャッチとなる商品をつくりたい。

肉惣菜

中国産合いガモロースあぶり焼き(ネギ塩付き) 480円/210g

合いガモスモークをそのまま販売している店舗もあるが、皮面をバーナーであぶる一手間を加えるだけで全く風味が変わる。

合いガモとネギは切っても切れないおいしい組み合わせだ。刻みネギをトッピングする商品化も良いが、牛タン用にネギ塩を調達している店舗が増えているため、このネギ塩だれを添付して販売する。合いガモの風味とネギ塩だれが絶妙にうまさを引き出してくれる商品となる。

冷凍を急速解凍するとドリップが販売中に大量に出てしまうため、緩慢解凍をして温度管理をしっかりと行ってもらいたい。

商品化は、合いガモをカットしていない状態で、皮側に軽く焦げ目が付く程度にバーナーであぶる方が、スチームコンベクションなどを使用するよりも作業性が良い。5mm厚程度にカットして脂肪を上側にして商品化する。

値付けラベルや裏張りシールでネギ塩だれの原材料表示をしなくてはならないため、注意が必要となる。売り込みのタイミングとしては、10月31日のハロウィーンなど洋風メニューが食卓に登場する食シーンで活用しやすい。

お肉屋さんのおつまみネギチャーシュー&メンマ 100g当たり258円

ネギチャーシューを展開している店舗は多いが、そこにメンマを入れるとさらにおいしさが増す。ネギチャーシューメンマは、インターネットレシピサイトのつまみメニューでも人気メニューとしてよく作られている。

家庭で作られるネギチャーシューは薄切りの焼豚などを代用して作るため、スーパーマーケットの精肉部門などが作る厚切りカットのチャーシューを用いたネギチャーシューは、家庭でもまねすることが難しい。

ネギは千切り、または薄い斜め切りの刻みネギを散らすことで、ネギチャーシューのネギをしっかりと味わうことができる。味付きメンマをゴマ油とあえてその上にチャーシューを載せる簡単レシピだ。

ラー油があれば辛めが好きな人にも楽しんでもらえるため、別添でラー油を添付しても良い。普段の夕食の一品として定番で販売していくと良い。

焼いてご飯に混ぜるシリーズで売場づくり

ガーリックビーフライスのもとやキーマカレーのもとなど、フライパンで焼いてご飯を混ぜるとできるシリーズがある。進化形味付け肉のカテゴリで、本格的なメニューができるシリーズが人気となっている。

いままでは、肉に味付けして、それがおかずとなるしょうが焼きやみそ漬けなどをメインに販売してきたが、焼いた肉にご飯やパスタを混ぜるだけで、主食カテゴリーへの進出を果たすことが可能となる。

ガーリックビーフライスは特に人気となり、多くの店舗で展開されるようになった。

今年の夏は、海外旅行に行った旅行者も多く、台湾などもその旅行先の1つ。家庭で簡単に食べることができる、思い出のルーローハンを作ってみる提案で売場づくりを行ってみても良い。

ルーローハン風 国産豚バラ粗びき肉(味付け) 680円/500g

ルーローハン(魯肉飯)は、甘辛いたれで煮込んだ豚バラ肉をご飯に盛りつけた、台湾料理の人気の屋台丼飯である。

八角のスパイスが香る東南アジアならではの味が特徴である。煮込み料理となると簡便性が低くなるため、豚バラひき肉をフライパンで焼いてご飯と一緒に食べる提案としている。

お好みでゆで卵をトッピングして食べるとさらに本格的なルーローハン再現できる。

焼いてご飯やパスタと一緒に食べる簡便商品は、メニューの幅を大きく広げることができる。ご飯やパスタは、キット商品として同梱しなくても、ほとんどの家庭に常備している炭水化物である。そのため、その具材を提案するだけで、私たちが思っているよりも手軽に調理をしてもらえる1品となる。

今後は中華や丼メニューの具材提案で、さらに幅を広げた簡便メニュー提案が期待できるカテゴリーであると考えられるため、メニューの開発もオリジナルで進めるとおもしろい。

売場では、ご飯と混ぜて調理するタイプの簡便商品が分かるように訴求する。

トレンド商品

和牛輸出の現実

日本から和牛が海外に輸出されていることはニュースでも知られているが、実際にどれくらいの規模で輸出されているかというと、2022年7545t輸出されている(日本畜産物輸出促進協議会資料より、以下同)。

過去最大となったのは実はコロナ期間の21年の7879tである。23年は現時点の集約が1月~6月の半年間で3759t(258億円)輸出されており、過去最大の輸出量に向けて後半戦に臨んでいるというところである。

輸出国では、アメリカを筆頭に今年は台湾からの引き合いが強くなっている。21年まではカンボジアへの輸出なども多く見受けられたが減少している。

やはりロイン系(ロース、サーロイン、ヒレ)などの輸出量が多く、高級レストランやホテルで利用されることが多い。台湾や香港向けでは、それ以外に高級焼肉店向けの商材として、三角バラなどの焼き商材も輸出されているのが特徴である。

現在、日本では黒毛和牛を食べる頻度が下がってきており、特に出現率の高いA5等級などは小売店では消化できていないのは、ご存じのとおりである。そのため、海外への高級部位の輸出は、国内の販売にも大きく影響していると言える。

黒毛和牛は5等級などハイグレードの等級が6~7割程度と出やすくなっているため、日本の小売店では、安価なモモ、カタなどの部位を使用せざるを得なくなってきている。それでも価格帯が合わず苦慮している場合が多い。そのモモ、カタ系を、日本の小売店でも定着させるため、モモ部位の希少部位提案、カタ部位のミスジ提案は有用である。

ミスジ以外のカタ部位の切り落とし提案などもうまく利用して利益を確保しながら売り込みを続けてほしい。

海外へ輸出されている多くは黒毛和牛であるが、海外産WAGYUの多くは肉専用種(WAGYUとアンガス種などの掛け合わせ)であることもあり、日本の交雑種も同様に輸出量が増えている。

交雑種に関しても、黒毛和牛同様高い等級が出やすいよう生産者の努力が行われており、奇麗なサシが入ることから海外でもうまくブランディングされている。

ブランドのストーリーや打ち出しは工夫次第で、指名買いにつながるため、丁寧にブランドを育てることが重要である。

「#アルモンデ」節楽志向

「#アルモンデ」というハッシュタグをつけた料理レシピがソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上でトレンドになるなど、「家にある、ありものでなんとかする」という行動を楽しむ傾向に近年意識が変わってきているという。生活者の意識は「節約」から「節楽」志向に変化してきているといわれている。

節楽は単純に節約してがまんをするということではなく、無理せず最大限に楽しさを追うことで、より多くのアイデアやメニューが広く家庭からも生まれてくるということを表しているようだ。

新型コロナウイルスによる制限から解放され、海外旅行や国内観光も比較的容易に行われるようになった一方で、所得の格差が広まったこともこの数年で顕著に表れてきている。

アルモンデという言葉に表れているとおり、「新たなものを購入する」意識から、「家にある食材を上手く活用して、おいしい食事を作ろう」としている。そのため、いま私たちが求められる提案も、常備食材をうまく活用した提案へ舵を取ることも必要であると考えられる。家にある常備食材や常備野菜を活用し、今の生活者にあった提案を行っていくようにしたい。