大掃除に向けた商品提案、日常の掃除とは異なる、現代の暮らしへの対応を|「これは押さえたい」日用品/雑貨編・2023年11月

2023.09.22

11月の定番の商品・売場についてはこちらの月別対策をご覧ください。

トータルプラン 横島宏一

今月のピックアップカテゴリー「大掃除用品」

大掃除は、「すすはらい」が原型であり、12月13日に正月事始め(正月の準備を始める日)として、江戸時代に江戸城の「すすはらい」がこの日であったことから、一般家庭にも広がった。

新年の安泰と五穀豊穣を祈って、正月に年神さまを迎えるために、家中を掃き浄める、神事だったようである。やがて、年末に近くに繰り下がっていった。

大掃除は、昔ほど大々的ではないが、行事的(年末だから大掃除をしよう)、心理的(新しい年は奇麗な家で迎えたい)動機から行われている。新しい年には奇麗な家で過ごすために買い替える需要も高いが、掃除をすることで需要の発掘につながる。

例えば、トイレを掃除したら、便座カバーの汚れが目立ってしまい、新しいものに買い換える。風呂の掃除をしたら、蛇口の水漏れが気になって補修する。フローリングを掃除したら、床の傷が気になって補修する。

ガス台を掃除しても奇麗にならないから買い換える。このように人は、汚れがある中や雑多の中では気にならなかったことが、全体を奇麗にしたことで、その中の汚れや故障が目立つようになって購買意欲が湧くのである。つまり、大掃除のニーズには、掃除という行為による需要と大掃除をすることによって買い替える需要があるのだ。

大掃除用品が売れる理由

なぜ、大掃除の際に掃除用品が売れるのか? それは、日常の掃除をする場所だけでなく、普段しない場所までも掃除をするからである。しかも、年末に集中して行う。浴槽の掃除は、日常的に行っているが、さらに、カビ取りを行い、風呂釜洗浄までする。

日常行う掃除の頻度は高く、販売数量も多いが、普段行わないところを掃除する用品こそが、年末に売れることになる。

年末にガラス洗剤の指数が高まるが、ガラス洗剤がバス、トイレ用洗剤より売れているのではなく、年間の中で、この時季に集中していることを示している。これは用具も同じで、フローリングワイパーや粘着式クリーナーは日常的にも使用されている商品であるが、窓、レンジ、換気扇、床などの商品は、大掃除の時に売り逃してはいけない商品であり、他の時季では売ろうと思っても売れない商品なのである。日常掃除商品と大掃除商品を見極め、売り逃しを減らすことが重要である。

掃除用品の販売方法

掃除用品は年間を通して販売されるが、そのピークは3つある。

①新生活~ゴールデンウィーク(生活の変化、長い休暇)、②お盆(長い休暇、来客)、③年末(長い休暇、来客)である。新型コロナウイルスによる制限時の外出ができない時期に掃除用品が売れたように、長期の休暇や家に長期間いるときに行われる。この中でも最も売れる時季が年末の大掃除のときであり、意識的にも一番高い。

掃除用品というと洗剤などの消耗品や用具である掃除用品で完結してしまう売場が多い。「清掃用品は雑貨売場」「洗剤は日用消耗品売場」と分離されている場合もあるが、できるだけ近い場所で提案したい。掃除をするという作業は、清掃用具と洗剤を一緒に使う行為だからである。

まず、「掃除をする」という動詞で考え、さらに「どこ(場所、モノ)を、何(洗剤)を使って何(用具)で掃除する」のかを考えると必要な商品が見えてくる。例えば、部屋の畳を掃除するには畳用洗剤や漂白剤という消耗品が必要である。雑巾やばけつ、炊事手袋などの用品を使って掃除を行う。そのため、陳列には場所、用途別の陳列を行い、分かりやすい提案をしたい。

大掃除販売のポイント

清掃用品は、定番商品として年間陳列されている。

大掃除用品としてコーナーを設けて展開するのは11月の勤労感謝の日からが一般的となっている。年末まで長いようで短い期間である。その期間に最大限の効果を挙げるには、次のような注意が必要である。

①ヒット商品の提案

掃除用品の売れ筋は、基本的には同じ商品であるが、プラスアルファの売上げを目指すには、ヒット商品が必要である。かつて、さまざまな商品がその年のヒット商品となった。重曹、回転モップや高圧洗浄機、メラミン樹脂やマイクロファイバー、不織布などの素材を使用した新素材商品。今年のヒット商品や流行商品を展開することで、売場の鮮度が高まる。

②共通商品の関連販売

掃除用品というとモップやグラスワイパー、化学モップなどの大きな商品ばかりに注目されがちであるが、雑巾やスポンジ、手袋などのような、どの場所でも使用される共通商品の方が使用される頻度は高い。使用される頻度が高い方が売れる確率が高いのだから、量が必要な商品である。

③売場のメンテナンス

掃除用品は柄が長く、大量に陳列するには不安定で、ボリューム感も出しにくい。よく使われるのが、箱型什器や紙管什器である。特価コーナーでの展開には便利であるが、見栄えが悪い場合が多い。この陳列は商品の展示が崩れやすいので、従業員によるメンテナンスは、きちんと行いたい。

④専用洗剤、用具を提案する

場所別のグルーピングの中で、さらに細かな専用洗剤、用具を提案する。例えば器具、モノ(電子レンジ、冷蔵庫、ポット、仏壇など)や素材(畳、銅、ステンレス、プラスティックなど)の専用洗剤、器具の効果を提案する。徹底的に掃除する時ほど、専用の掃除用具が必要になる。

⑤POP、販促ツール

付加価値商品には「便利さ」や「簡単さ」、「効果」をアピールする。POPやツールで特徴をアピールすると良い。通信販売の商品が売れる理由は、その効果や特徴が分かりやすくアピールされているからである。

時代の変化に対応することの重要性

「十年一昔」と言われるが、大掃除用品も時代と共に変化している。昭和の時代には、家族総出でふすまの張り替えや障子の張り替え、畳干しをしたりしていた。しかし、いまやそんな風景を見ることは少ない。

それは、家の住宅環境が変化し、暮らし方が変化したからである。最近の住宅はフローリングの部屋が増え、畳やふすま、障子のある和室は少ない。当然、ふすまや障子の張り替え作業もなくなってきた。

また、技術の進歩による新たな商品の出現も生活を変化させている。粘着式クリーナーや不織布ワイパー、さらには、ロボット式掃除機など日常の掃除様式は変化している。

こうした時代の変化の中で行われる大掃除に使う用品を見極め提案していくことが大切になる。掃除用品に限らず、日用雑貨カテゴリーはいまの時代の暮らしを知り、半歩先の暮らしの提案を行うカテゴリーなのである。