正月準備の需要を知るため、地域の慣習・風習の深掘りを|「これは押さえたい」日用品/雑貨編・2023年12月

2023.10.26

12月の定番の商品・売場についてはこちらの月別対策をご覧ください。

トータルプラン 横島宏一

今月のピックアップカテゴリー「キッチンの正月準備」

年末の売場は、売るモノがいっぱいである。「師走」といわれるように、お客も忙しいが、店舗も忙しい。

ニーズは、お客の行動にある。掃除をすれば、そのための道具が必要だし、クリスマスパーティには、パーティグッズが必要になる。多くのニーズの中で、お客の行動ニーズに合わせて、「いつ」「何」を売るのかを計画的に行うことが必要である。

重要な点は、「欲しいものがある」ことである。12月は、ボーナス、歳暮、クリスマス、大掃除、正月準備とイベントが多く、普段以上に売れる商品(欲しい商品、ニーズ)が変化する。このニーズに対して、的確に対応していくことが重要である。その中でも、正月の準備は、さまざまなニーズが発生するテーマである。

12月は1年の最後の月であり、新年を控えて正月の準備をすること、「新年が来るから~をしなければならない」という思いが、大きなニーズの要因となっている。従って、売場においても「新年が来るから~が必要になる」という売場づくりを提案していかなければならない。

正月準備用品のキーワード

正月準備用品を考えるには、正月に何をするか、どんな慣習や行動があり、それを行うために何が必要になるのかを考えなければならない。正月は、昔からの慣習が影響するため、地域によって、そのニーズは、変化する。

キーワードとしては、次の3つが主なものとして考えられる。

①慣習・風習による正月の準備…正月飾りやおせち料理などの正月ならではの慣習、風習などから必要とする商品。

②新年に向けて新しくする…大掃除や年が変わることで必要となる商品。

③来客を迎える…帰省や年始のあいさつなどで来客があると、そのために必要な商品が発生する。

④正月の過ごし方…正月を家で過ごしたり、外出したりという行動によって、必要な商品は変わってくる。家で寝正月をする人には、くつろげる空間を提供する。

正月の慣習・風習を知ろう

正月は、旧年の無事と新年を祝う行事である。本来は、新年の豊穣を司る歳神さまを迎える行事である。新年の作物が豊かに実り、家族が元気で暮らせるようにという願いを込めて、門松や〆飾り、お供え餅を飾り、歳神さまを迎える。

時代の変化と共に、新年を迎える行事として、さまざまな行事、慣習が各地に定着している。初詣で、お年玉、年始回り、お年賀、年賀状、書き初め、凧上げ、羽つきなど、正月特有の慣習、行事、遊び、行動などが数多くある。

小売業からすれば、これらの慣習、行動が、正月のニーズになる。地域におけるこれらの慣習、行事を知ることで、ニーズを的確に捉え、提案することが、正月用品の売場提案には欠かせない。

正月の「食」としては、おせち料理を食べ、屠蘇(とそ)を飲み、雑煮を食べる。おせち料理は、もともと季節の変わり目の節句(節供)に、神さまにお供えした食べ物が「お節料理」だった。やがて、最も重要な節句である正月料理のことを「おせち料理」と呼ぶようになった。

おせち料理は歳神さまに供える料理であり、家族の幸せを願う縁起ものの料理でもあるので、おせち料理の中身も、それぞれが縁起を担いだ料理になっている。重箱に詰めるのも、「しあわせを重ねる」という意味があるとされる。

料理は、日持ちする物が多い。これは、火の神である荒神を怒らせないため、正月に台所で火を使うことを避けるという平安時代後期からの風習により、正月には台所仕事をしないからである。

屠蘇(とそ)とは、一年間の邪気を払い長寿を願って正月に呑む薬酒である。「悪鬼を屠(ほふ)り、死者を蘇(よみがえ)らせる」という意味があり、地方によって違う場合もあるが、元旦に家族が杯を回して、年の若い者から順番に飲んだといわれている。

日本では、平安時代に宮中の元旦の儀式として、屠蘇を飲むようになり、やがて庶民の間にも広まっている。基本的には関西以西の西日本に限られた風習であり、他の地方では、単に正月に飲む祝い酒のことを「御屠蘇」と称している場合もかなり多い。

雑煮は、主となる歳神さまに供えた餅を、野菜や鶏肉、魚介などといっしょに煮込んで作る料理である。地方や家庭によってさまざまな調理法や具材が使われ、主として白みそ仕立ての関西風、しょうゆ仕立て(すまし仕立て)の関東風と大きく分けられる。餅の形も関西では丸餅、関東では切り餅(のし餅、角餅)が一般的となっている。

おせち料理作り

料理を食べるには、誰かが料理を作らなければならない。料理を作り、器に盛り付け、食卓で食べるという工程をたどる。最近ではおせちセットを購入する家庭も増えているが、それぞれの家庭の味を大事にし、独自のおせち料理を作る家も多い。

おせち料理というと重箱や祝箸などのテーブルウエアが中心となりがちだが、料理を作る道具が一番活躍する時季でもある。これは、おせち料理の「作り置きしておく」という特性にもよるが、その分、料理は年末に集中するし、作る量も多くなる。

「おせち料理を作る」というテーマから見れば、商品的には、通常販売している定番商品であるツールや鍋、フライパンなどの料理道具の提案となるが、煮炊き料理が多いおせち料理の中心は「鍋」である。

鍋はサイズ、素材、機能などで分別される。素材としては、アルミ鍋、アルミキャスト、フッ素加工などがある。また、サイズも用途によってさまざまなニーズがあるため、サイズをそろえた品揃えとしたい。特に田舎立地では、多くの量を作るために、大型鍋のニーズが高くなる。最近では、IH調理器の普及によって、IH対応の商品の展開は不可欠である。

この時季に多く売れるようになるのが、機能性鍋や、普段、使用頻度の低い鍋である。特に、時短、節約の効果がある圧力鍋や保温鍋は、忙しい年末に多くのおせち料理を作らなければならない家庭には最適である。また、寸銅鍋や蒸し器などの普段使用頻度の低い鍋もこの時季は活躍する。その特徴を最大限にアピールして提案を行いたい。

おせち料理には、もう1つ大切な工程がある。「保存」である。おせち料理は、保存食でもあるので、多めに作って、重箱に詰めた料理が減ったら補充していく。多く作った料理を保存するための容器が必要となる。保存容器は、プラスチックの密封容器が中心だが、電子レンジの使用可能のものやホーロー製のものなど、さまざまな商品がある。素材や機能性、サイズが提案のポイントとなる。

新しくする「キッチン」

正月準備のキーワードの1つである、「新しくする」、つまり、「交換、買い替え」である。年が変わることで、気分も一新し、使い古したものを新しく交換する。カレンダーや手帳のように、日時が入っているものはもちろん、身の回りで使用しているものも、新しくする。例えば、歯ブラシや箸、茶わん、湯飲みなど毎日使用しているものである。

もう1つの購買動機は、「大掃除」である。掃除をするといままで見えなかった汚れや放置していた不具合がクローズアップされ、気になってしまう。そこで、大掃除の後に取り替えるものをきちんと提案する。

キッチン商品では、洗い桶や三角コーナーなどの用品、食器棚用シート、シンク下収納やキッチン収納棚、換気扇のフィルターなどである。これらの商品は、定番商品として品揃えされているので、定番商品の欠品をなくすことで、ある程度フォローすることができるが、積極的に販売するためには、特価コーナーでの提案を試みたい。定番位置で欠品しやすいカテゴリーを特価コーナーで展開することで、定番商品の欠品が減るはずだ。

大掃除をするのは、新年を迎えるためだが、来客があるとなおさら掃除にも力が入る。来客のための用品を新調したり、客が見える場所は奇麗にしたりしておきたいものだ。最近は、オープンキッチン、カウンターキッチンなどの住宅が増え、来客時にもキッチンがよく見えることから、キッチン回りの商品はデザイン性なども重視される。また、レンジもIHの普及により、アルミ製よりもシートやフィルターなどのIHレンジ対応商品の提案を行いたい。

おせち料理の食器のバラエティ、テーマによる品揃えに留意を

正月の食卓には、地域や家庭によってさまざまなおせち料理や雑煮が並ぶ。これに合わせて、おせち料理を詰める重箱や雑煮を入れる汁わんにもさまざまな形や素材がある。例えば、汁わんでは、木目のものや漆塗り、ABS樹脂加工のもの、食器洗い機対応のもの、深型、浅型、大型のたっぷりわん、亀甲模様、京型などさまざまである。

これらの中から、その地域で使用されているものを中心に、品揃えの豊富さを加えて、提案する。地域密着とは、その地域のニーズに対応することである。

正月準備用品は、キッチン用品だけでなく、さまざまなテーマや商品で提案することができる。例えば、「正月飾り」「正月の遊び」「福財布」「年賀状・ポチ袋」「書初め」「年始のあいさつ」「正月の過ごし方」「帰省・来客」「旅行」など多くのテーマの中で、よりニーズに対応してスペースを拡縮しながら売場づくりを計画していこう。