手巻き寿司セット、ワイン、ビールのさかな、つまみを強化しつつ、今年は洋風メニューに挑戦|「これは押さえたい」鮮魚編・2023年12月

2023.11.02

エバーフレッシュ研究所 堀内幹夫

一昨年、2021年12月前半の大不振(特に週末不振)を受けて、22年は12月初めから売上対策を強化し、前半も前年実績をキープできていた企業が多かった。今年についても12月初めからの売上対策は必須だ。

「歳末商品お試し特集」を展開し、クリスマス、年末商品、歳末際商品を早めにプレゼンし、認知を図る。特に味付カズノコ、塩カズノコ、酢タコ、ボイルタラバガニ、ボイルズワイガニ、ホタテ貝柱干し、スルメイカなどの販売強化。

カニ、刺身、寿司などの予約販売の周知徹底を図り、売上アップを狙う。カニについては相場安く、単価ダウン→売上ダウンにならないよう販売計画を練り、前年比大幅アップを狙う。

12月15日(金)は年金支給日。対象が65歳以上でもあることから水産部門にとってまたとない販売チャンス。普段ちょっと手が出にくい高額商品や歳末商品の試し買いに向けて積極的に仕掛ける。日持ちするカニ、エビ類、塩干、魚卵類を中心に提案。

12月20日(水)は「ぶりの日」。クリスマス前のひと稼ぎ。前週末から仕掛けるか、20日(水)以降の週末で売り込むか、悩むところだが、当週末はクリスマス商戦と被るため、前週末からの展開がベスト。

12月24日のクリスマスイブは日曜日。今年は12月23日、24日の2日間に集中。年末商戦も12月30日、31日の2日間に集中。

盆商戦の傾向から判断して、今年の年末商戦は、帰省客、客の出入りが多く、売上げの大幅アップが期待できる。相場的にも、昨年より状況が良い商品多く、中でもボイルズワイガニ、ボイルタラバガニ、毛ガニの3大ガニの相場が安く、拡販チャンス。また輸入本マグロ(解凍)、生食エビ、ホタテ貝柱、生食サーモン類(ノルウェー産生アトランティックサーモン除く)、養殖ブリなどの刺身、生食商材の相場安商品が多く、刺身盛り合わせ、寿司盛り合わせ共に今年は、拡販チャンス。

正月刺身盛合せ

中とろたっぷり刺身盛り合わせ。正月刺身に本マグロ中とろは欠かせない。本マグロ中とろをたっぷり盛り込んだ商品化例。

解凍本マグロ大とろ、中とろ入り刺身盛り合わせ。売価3980円

中とろ入り直線盛り

お客から見て、いつもの刺身売場の風景とはちょっと変わって見えることも大切。いつもの年末売場にいつもの刺身ではインパクトに欠ける。「あらっ?」と見直してもらえれば成功。

次の写真の4切れ×6列盛り。通常の4切れ×6点盛りと量的には同じだが、見え方が違う。

中とろ入り4切れ×6列盛り。売価2480円

つまなし刺身盛り合わせ

少しずつ定着しつつある「つまなし刺身」。いきなり全量をつまなし刺身で提供などと無理をする必要はない。1割でも2割でも、限定数量でも構わないので始めてみてはどうか。一定の支持はあるはずだ。人手が不足しがちな今年の年末商戦から実験導入してみることを勧めたい。

つまなし刺身盛り合わせ。3切れ×12点盛り。2800円~2980円

トレンド商品

クリスマス商戦の狙い目は「洋風メニュー」「手巻寿司セット」「サーモン」の3つ。

洋風メニュー

この数年、各企業のクリスマスのチラシに洋風メニューの掲載が目立つようになってきた。代表的なところではパエリア、各種グラタン類、アヒージョなど。少しずつでも良いのでテーマを決めて導入を始めてはどうか。

クリスマス商戦で動きの良いグラタン類。カニグラタン、エビグラタンなど種類はさまざまにある

手巻寿司セット

クリスマスのチラシから刺身盛り合わせが消えて、代わりに掲載率がアップしたのが手巻寿司セット。昨年末に比較して相場安となる解凍本マグロ中とろを入れてのグレードアップ、子どもたちに人気のサーモンたっぷり手巻き寿司セットも展開。ワインやビールのさかなにサーモンを中心としたサラダセット、スモークサーモンを中心としたサーモン尽くしセット、夏場に人気が沸騰したタコバジルなどもお勧め。

歳末商戦の狙い目は「刺身盛り合わせ」「寿司盛り合わせ」「3大カニ」の3つ。

予約販売

20年の年末から3年続けてコロナの影響を受けた年末商戦。その間には主力商品の全面相場高の状況にも直面した。今年の年末商戦は久しぶりにコロナから自由になるとはいえ、この間に消費行動も変化している可能性もある。今年のように消費傾向をつかみにくい状況では「予約販売」を強化し、リスクを減らす。特に高額商品である刺身盛り合わせ、寿司盛り合わせや3大カニについては予約販売の強化が得策だ。

刺身用サクセット

昨年以上に増やすものとしては刺身商材のサクセット。1パック2980円などの定額販売の場合、サクの重量調整がわずらわしく、年末商戦などの超繁忙時には商品作りが難しい。例えば生サーモン、メバチマグロ赤身、養殖マダイ、養殖ブリなどの比較的単価の同じような食材をグループ化し、ユニットプライスで販売する。

サクセットを作る際には、形状をトレーに合わせるため、歩留まりが思いの外、悪化する可能性もある。少し値入率に余裕を持たせた売価設定にする。生サーモン、マグロ赤身、養殖マダイ、養殖ブリのサクセットの売価は100g598円くらいが適切であると考える。ユニット単価の高い解凍本マグロ中とろや生本マグロは、サクセットからは除外し、別売りすると良い。

刺身用サクセット100g598円(メバチマグロ、養殖マダイ、生サーモン、養殖ブリ)

魚惣菜

一口に魚惣菜と言っても年越しそば用エビ天、おせち用ブリ切り身塩焼き(あるいは照り焼き)など比較的簡単な商品から焼きダイや「おせちセット」などの難易度の高い商品までいろいろある。チャレンジ1年目は、年越しそば用エビ天、ブリ塩焼きなど料理が簡単な単品から始めてはどうか。

地域の伝統的なおせち料理(宮城県カレイの煮付け、山形県からかい(エイ)の煮物、京都府ボウダラの煮物など)を大々的に展開するのも良い。最初から多くを望むよりも料理を絞り込み、数量限定で始めてはどうか。

ロングライフ商品(冷凍、真空包装商品)

冷凍ケースは「在庫置き場」とまで言われた時代もあったが、いまや冷凍品群でのヒット商品が連発し、真空包装との連動で一躍、脚光を浴びるようになってきた。冷凍商品の一番のメリットは賞味期限が長いこと。賞味期限が長いと売る側も管理が楽だが、お客にとってもある程度時間に縛られることなく、「好きなときに好きなだけ使える」メリットがある。

真空包装にすることで、冷凍ケースに陳列しても霜付きになることが少なく見栄えが良いこと。鮮度落ち、変色も少なく、かつお客にとっては家庭の冷凍庫でかさ張らないというメリットがある。年末、年始に向けて、塩サケ、塩サバ、うなぎかば焼きなどの塩干商品やホタテ貝柱、ベビーホタテ貝など冷凍商品を中心に展開。

長期間保存できる冷凍商品(冷凍切り身、冷凍エビ、冷凍貝)や塩干商品(塩サケ、開き干し、塩サバフィーレなど)の冷凍真空包装商品のニーズは確実に広がっている
冷凍ミールキット商品シリーズ1パック398円。アヒージョを中心にソテー系商品も売れている