変化するバレンタインの対策を改めて考える|「これは押さえたい」日用品/雑貨編・2024年2月

2023.12.26

2月の定番の商品・売場についてはこちらの月別対策をご覧ください。

トータルプラン 横島宏一

今月のピックアップカテゴリー「バレンタインデー」

2月のビッグイベントといえば、「バレンタインデー」。日本では女性から好きな男性にチョコレートを贈るイベントとして知られている。店舗では、チョコレートギフトを並べたバレンタインコーナーが特設される。

当然、チョコレートが売れるわけだが、では、日用品・雑貨部門では、どのようなアプローチができるのだろうか。バレンタインデーの歴史や日本のバレンタインデーの変遷を踏まえて、考えていきたい。

バレンタインデーの起源

バレンタインデーの起源は諸説あるが、ローマ帝国の時代だとされるのが有力である。ローマ帝国皇帝であるクラウディウス2世は、兵士が戦争に行きたがらないのは、家族や愛する人を残して行きたくないからだという理由で、兵士たちの婚姻を禁止した。

キリスト教の司祭だったウァレンティヌス(バレンタイン)は、婚姻を禁止されて嘆き悲しむ兵士たちを憐れみ、彼らのために内緒で結婚式を行っていたため、処刑された。彼の処刑の日は、西暦269年2月14日。殉教した「聖ウァレンティヌスに由来する記念日」だとして、主に西方教会の広がる地域において伝えられていたこの日が、キリスト教でも恋人や家族など大切な人に贈り物をするならわしとなっていった。

日本のバレンタインデー

日本では、1958年ごろから流行し、70年代後半に定着した。毎年2月に売上げが落ちる菓子店主が企画を発案したといわれている。文化的に日本の男性は女性にプレゼントをする習慣があまりなかったため定着しなかったが、女性から男性に贈るというキャッチコピーに変えたことで徐々にはやりだした。

菓子店の企画と広告、キャッチコピー、宣伝方法、百貨店とのタッグなどの販売戦略により、日本型バレンタインデーは、「好きな男性に女性からチョコレートを贈る日」になっていったのである。

これは、「記念日マーケティング」の成功例でもある。記念日マーケティングとは、特定の日にちとブランドを結び付け消費を促す企業活動のことである。この戦略は古くからあって、例えば、平賀源内が生み出したと言われている「土用の丑の日」も記念日マーケティングである。

最近では、中国の独身の日を「アリババで買い物をする日」、日本でも見られるようになってきたアメリカ発祥のブラックフライデー(11月第4木曜日)などがある。記念日マーケティングは、「〇〇の日は○○を買う(使う)」のように、購買意欲を促進する効果がある。

日本のバレンタインデーの変化

日本のバレンタインデーは、70年代に小学校高学年から高校生までの学生層から広まり始め、80年代後半ごろには夫や父親、義父に贈る主婦層へと広まっていった。

女性から親愛の情を込めた「本命チョコ」だけでなく、80年代には友人や上司や同僚に贈る「義理チョコ」などが生まれ、バレンタインデーの返礼としてホワイトデーが習慣化されるようになった。

以降、2000年代には女性から女性へ贈る「友チョコ」、自分用にチョコを購入する「自分チョコ」なども見られるようになった。他に、家族へ贈る「家族チョコ」、お世話になっている人へ贈る「世話(感謝)チョコ」などもある。

一方で、学校などでの禁止や義理チョコがパワハラやセクハラなどに該当するという考え方もある。

最近の傾向としては、家族チョコや自分チョコが多くなり、半面、義理チョコは減っているといわれている。これらは、意識の多様化やパワハラ、セクハラなどの浸透、新型コロナウイルスによる影響があると思われる。

また、女子高生の間では、「友チョコ」のニーズが高いという。また、チョコレートなどの商品そのものも「インスタ映え」するものが人気だという。これも、スマホやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が当たり前の現代の特徴なのだろう。

このように、バレンタインデーは、時代の流れとともに変化しており、これからも変化するはずである。日用品・雑貨部門も提案次第では、今後に続くバレンタインギフトになる可能性もある。バイヤーや担当者がさまざまなアイデアでチョコ以外の提案をしてほしい。

参考:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』(https://ja.wikipedia.org/wiki/)

日用品・雑貨部門のバレンタインデー

バレンタインデーの主役は、チョコレートギフトである。しかし、集客力のあるイベントに手をこまねいているのはもったいない。日用品・雑貨部門としての提案方法や商品は何だろうか。

キーワードは、「スペシャルのギフト」である。いまや多様性の時代である。特に「本命チョコ」を贈りたいなら、他の人と同じものではなく、オリジナルティのある、他の人とは違った特別な贈り物で差別化したい。そこで、チョコレート以外の提案を紹介する。

手作りチョコレート

2月は、製菓用品が最も売れる時季であるので、これを逃さずに、売れ筋商品をメインに展開する。チョコづくりからパッケージ用品、トッピング材料までを一括展開し、「手作りチョコ、ケーキをプレゼントする」品揃えにしたい。最近では、製菓用品が充実している100円均一店も多く、バレンタインデー用にさまざまなグッズが販売されている。定番で製菓用品を販売している店舗なら、バレンタインデー用の用品に特化した商品をエンド展開したい。

ラッピング、デコレーション

手作りチョコレートを贈るためには、ラッピングが不可欠である。リボン、マスキングテープ、カード、シール、ボックス、トレー、カップ、ジップバッグ、ペーパーバッグ、クッション材、ラッピング紙など、普段展開していない店舗でも、短期的な展開を試み、ギフト提案を行いたい。

雑貨ギフト

バレンタインデーを「男性から女性に花を贈る日、フラワーバレンタイン」として花業界がフラワーギフトを提唱しているように、チョコレート以外のギフトを贈る取り組みはなされている。

特別な人に贈るギフトには、チョコレートにこだわらずに贈りたいものを贈る。例えば、財布や化粧品、キーホルダー、ハンカチ、箸や飯わんなど通常のギフト提案を行う。

プチギフト

日本では、結婚式や披露宴でゲストに渡されるちょっとしたギフトを「プチギフト」と呼んでいるが、海外では、クリスマスや誕生日などでも贈られている。このプチギフトは、義理チョコの代わりに贈るのにも適している。

クッキー、キャンディー、チョコレートなどの菓子をはじめ、コーヒー、紅茶、ジャム、せっけん、入浴剤、ハンカチ、タオルなど低額のギフト商品である。ちょうどこのころは、卒業や新生活前の時季ということもあり、卒業式や謝恩会、退職や引っ越しなどの感謝やあいさつの気持ちとして多数の人に贈る機会が増える。プチギフトの提案をしたい。