相場高のタコは野菜と販売し、値頃を実現、サーモンはご当地の時代へ|「これは押さえたい」鮮魚編・2024年3月

2024.02.20

エバーフレッシュ研究所 堀内幹夫

3月はコーナー展開、品揃え面で大きな変化月。本州以西では「冬売場」から「春売場」への大転換月となる。鍋コーナーを解体し、海そう、ちりめん、サラダ系商品、湯煮品、鉄板焼き系商材、活貝、むき貝など拡大する。

敷物(マット)、刺身トレーなどを春バージョンに変更。「冬」「寒」「鍋」「あったか」といった言葉を使ったポスターや販促資材は撤収する時季となる。

ひな祭りの3月3日は日曜日。しかも「大安」。今年はうるう年のため、曜日に注意。今年のお祝いパーティは3月3日に集中すると思われる。鮮魚部門にとっては、またとない販売チャンス。しっかり計画し結果を出す。

3月上旬は卒業式シーズン。商圏内の小学校、中学校、高校の卒業式を調査し、前週末からホームパーティセット、祝い盛り、タイ姿造りなどを陳列する。

子どもたちの春休みの「おかず」対策も重要。ランチ対策としてたこ焼き、お好み焼き、海鮮丼、マグロ丼などを提案する。

新入学、新社会人に向けて「朝食」「弁当」商材の提案。フライ類、洋風メニュー、骨取り切り身の提案。

3月の重点販売商品(群)は、次のとおり。

①タイ…養殖マダイ、3月卒業式、合格祝い、送別会など行事が多く需要増加

②春色商品(ボイル商品、湯煮品)+カニかまぼこで売場を桃色に。アフリカ産蒸しダコ、ボイルヤリイカ、ボイルイカリング、ボイル(殻付き)エビ、ベビーホタテ貝、カニかまぼこ各種

③冷凍カツオ、冷凍カツオたたき…昨年に続いて今年も相場高でピンチ。節売りよりスライス、のっけ盛りなど付加価値商品の販売強化

④エビ…バナメイエビ、および大粒むきエビの拡販。特にボイル(殻付き)エビ、ボイルサラダエビの拡販

⑤サーモン…平日、週末での売り込み商品の明確化。商品作りのレベルアップ。不整形サクの排除

⑥サラダ、炙りセットのリニューアル。売れないといわれつつも、年々、定着度を増している

⑦ギンタラ…相場安続く。ギンタラ切り身の冷凍ケースでの販売が増えている。ギンタラ西京みそなどを中心に漬け魚の販促強化

「ひな祭り」対策

今年の3月3日の「ひな祭り」は日曜日。しかも「大安」。今年のお祝いパーティは3月3日に集中することが予測される。週末にかけて、売場を春色=桃色に染める。毎年のことながら、女性、女の子がターゲットであるため、カラフルな商品作りと売場展開を心掛ける。

そのためにも販促資材やトレーの使い方や、料理サンプルにもソーシャルネットワーキング映えするような工夫を凝らす。販売メインは海鮮ちらし、ばらちらし(コロコロ)寿司、サブとして海鮮手巻き寿司を展開する。

寿司だねセットを使った手まり寿司の料理サンプル。同時にハマグリの吸い物提案も忘れない
ひな祭りがイメージできるトレーを使い、ひな祭り感満載の海鮮ちらし寿司

寿司セット

販売のメインは海鮮ちらし寿司セットとばらちらし寿司(コロコロ寿司)セット、サブで海鮮手巻き寿司セットを品揃えする。この数年、手巻き寿司セットは棒状でなく削ぎ切りによるものが増えている。

実際に使ってみると分かるが、削ぎ切りしたたねを手巻きにしても、何も問題がない。むしろ販売側には歩留りがアップし、生産効率も高くなるなど、良いことづくめだ。

つまなし刺身盛り合わせ。刺身にも、ちらし寿司、手巻き寿司にも使える多用途型ハイブリッド仕様の商品化例

吸い物提案

ひな祭りの吸い物と言えば、基本はハマグリだが、最近ではハマグリの高騰を受けてアサリで代用する家庭も多い。

国産のハマグリは、熊本県産、三重県産、千葉県産などがあるが、今年は千葉県産の漁獲量が増え、相場がやや安くなっている。ただ、千葉県産はサイズが大きく、1個当たりの単価が高くなるので注意。

輸入ハマグリは中国産、台湾産・韓国産などがあり、価格は格段に安くなるが、1年に1回のひな祭りでもあり、国産と中国産の比率は6:4、中には7:3となる企業、店舗もある。他にはタイ、ベビーホタテ貝なども提案。

タイの吸い物セットの商品化例

トレンド商品

アフリカ産蒸しタコ

昨年のアフリカ産蒸しタコは、漁獲好調の割には円安などが影響し、期待されたほどの相場安とはならなかった。今年においても、昨年並みか若干の相場アップとなりそうだ。

この数年、販売の中心は足から、スライス、ぶつ切り、切り落としに移りつつあったが、昨年には素材系商品だけでなくたれ漬け(タコぶつ+野菜+たれ)のシェアが高まり、企業、店舗によってはこちらの方が販売のメインとなりつつある。

今年はその傾向がさらに強まることが予測される。単価の低い野菜(キュウリ、ブロッコリー、ジャガ芋など)を使うことで、かさ増しができ、値入れを確保しながら、さらに相場高にもかかわらず値頃で販売できるメリットがある。消費者の簡便、即食志向とも合致していることから、今年はさらに伸びるとみられる。

タコぶつ+野菜+各種フレーバー(左はバジル、右はキムチ)による商品化例。写真はタコと野菜の比率が1:1。タコと野菜の比率が1:2、あるいは1:3でも商品価値は保てるし、その方が食べやすい

ご当地サーモン

この数年、「ご当地サーモン」と呼べるくらい、国内各地でサーモンの養殖が始まっている。国内養殖サーモンとしては、三陸産を中心に境港産、佐渡産などが先行してきたが、ここに来て岩手県産大槌サーモン、静岡県産富士山サーモン、青森県産海峡サーモンや深浦サーモンなど続々出荷が始まっている。

養殖サーモンといえばチリ産やノルウェー産がすでに定着しているが、遠く海外から多くの化石燃料を使って運ばれてくる輸入サーモンと比較して、「地産地消」ともいえる「ご当地サーモン」はSDGs(持続可能な開発目標)的にも理に適っているし、鮮度的にも有利だ。

今後はご当地サーモンの出荷時期に合わせて産地ラリー的な展開する企業が増えるかもしれない。いずれにしても、ご当地サーモンの特色や出荷時期、出荷量や価格など、早めに動いた方が良さそうだ。