マーケットチャンスごとの突出商品を少し前からの展開で押さえ、本番にしっかり取る|「これは押さえたい」青果編・2023年12月

2023.11.02

創風土パートナー 代田 実

1年の商売の集大成ともいえる12月の歳末商戦だが、月前半は節約志向の強まる中で静かにスタートし、後半は冬至、クリスマス、年末年越しと次々にやってくるマーケットチャンスに特定商品の売上げが突出する波動性の高い商売となる。

また、昨年12月は中旬を中心に強い寒気が入り込み、葉物や果菜類の入荷が減ったことから青果市況は全般に高値で推移したことで、販売計画が乱れがちとなった。

これに対して今年は、猛暑の影響で秋冬野菜の播種、定植の遅れ、果実全般に小玉、障害果が多いなどでの減収で、秋以降高値が続いていたが、12月になると天候次第で入荷が増えるという見方も多く、商品、相場動向を注視することが必要だ。

こうした前提のもと、図表に示した昨年の品目別家計支出の上位金額品目並びに、前月比伸長率の高い商品を中心に商品状況を注視しつつ、マーケットチャンスに合わせためりはりのある売場展開を行うことが12月青果商売の基本的な方向性となる。

図表 2023年12月の家計支出金額上位品目と前月比伸び率

出所:総務省家計調査2022年11月全国二人以上の世帯の支出金額
※10位以下は前月比伸び率の大きい品目のみを掲載

果実はミカンを昨年対比どこまで伸ばせるか

今年の果物の特徴はリンゴが猛暑の影響などで不作であるのに対し、ミカンが味も良く、入荷量も安定し順調であることだ。特に昨年不作だったミカンは、着果数が多かったことに加え、秋口に雨が少なく食味が向上したことで、シーズン当初より順調な販売が続いている。

これに対し、リンゴ、カキ、洋ナシはいずれも暑い夏の影響が残り、減収となっており、価格も高めだ。

こうした環境から今年の12月果物商売は、味の良いミカンをどこまで伸ばして、入荷が少ない品目のマイナスをカバーできるかがポイントとなる。

ミカンは得用規格で単価アップを狙う。前述の通り、今年のミカンは味も良く、入荷量も安定していることから果実の売上げをけん引する動力源となっている。あとは売り方の工夫で単価、売れ数をどこまで伸ばすことができるかがポイントだ。

その際に重要であるのが「買い得感」の演出だ。普段販売している定番規格の袋物はそのまま品揃えし、箱売りやスタンドバックで割安感のある得用規格を比較販売するのが良いだろう。

近年は箱売りが縮小する中、次の写真の例のように1.5kg~2jg詰めたスタンドバックでの得用規格が売れ数を伸ばしている。商品状況見ながら、比較的売りやすい価格のサイズを使い、680円~980円の高値頃を狙いたい。

また、店舗では人手不足が深刻化しているが、こうした規格であれば比較的簡単に商品化もでき、外部加工に比べ値入高も確保できるのでぜひ、チャレンジしてほしい。

リンゴは果肉先行型、品質管理がポイント

昨年実績ではミカンに次ぐ消費金額のリンゴだが、今年は夏の暑さを受け、例年以上に果肉の熟度が進む「果肉先行型」となっている。そのため売場での棚持ちが例年に比べて短くなる傾向があり、産地側も収穫後の予期せぬ品質低下に警戒しているところだ。

こうした環境から、今年のリンゴ商売は前年実績を無理に追わず品質重視の商売を心がけたい。陳列日からの日付管理を行うなどして、売場では適切な売り切りを行い、常に鮮度、品質の良い商品を販売するようにすることが重要だ。

売場展開

12月青果商売の特徴の一つがマーケットチャンスごと、突出して売れる商品の存在だ。少し前から売場展開を行い、お客に「当店では積極的に販売しています!」とアピールしておき、本番にしっかり買ってもらうことがポイントとなる。冬至のカボチャ、ユズ、クリスマスのイチゴやカットフルーツ、年末のおせち商材がこれに当たる。

冬至のカボチャ、ユズ

昨年不作高値だったユズが今年は順調である半面、輸入カボチャの主産地の1つ、ニュージーランドがサイクロン被害の影響で入荷減が見込まれるため、商品相場状況見ながら販売単価、規格を決め、売場展開をしたい。

展開に当たっては冬至当日の12月22日(金)の前週末から売場展開を実施し、冬至カボチャのレシピ紹介も併せて行うとよい。その際、カボチャは4分の1カットを中心に2分の1、1玉、すぐに調理できるブロックカットを並売、売れ数の比率によってスペース調整しながら売り切るようにしたい。

また、全国各地方にある冬至カボチャレシピの中で代表的な「いとこ煮」や「カボチャぜんざい」に使う煮小豆を関連販売するのも良いだろう。

クリスマスのイチゴ、カットフルーツ

今年のクリスマスは24日クリスマスイブが日曜日と、ホームパーティ需要が見込める曜日回りとなっている。このマーケットを取り込み、売上げを作るためにも押さえておきたいのがイチゴとカットフルーツだ。

イチゴは今後の天候次第で相場動向が左右されるため、それに合わせた展開ができるようカットフルーツや他の品目とトータルで売上目標を設定し、商品状況に合わせた売場商品構成を組むようにすると良いだろう。

例えば、イチゴの商品状況が良ければイチゴ売場を広げる計画を組んでおき、もし状況が悪くなったらカットフルーツの中でも比較的手のかからないパイナップルハーフカット(パイナップル1玉も含め)やスライス、ブルーベリーなど彩りある輸入果実を広げるなどの対策が有効だ。

ただし、クリスマスに売れそうな輸入果実であっても、クリスマスを過ぎれば売れなくなるリスクもあるので発注計画は慎重に立ててほしい。

年末おせち商材販売の注意点

近年の年末おせち材料の販売に関しては、注意しなくてはいけない点が2つある。1つは年始休業する店が増える中、売り切り手じまいをしっかりと行い、商品の値下げロスを最小限にとどめる工夫が必要なこと。もう1つ、コロナ禍の反動や生活様式の変化で年ごと売れ数が変化しているということだ。

まずは、売り切り手じまい。近年、正月休業する店が増え、大みそ日の31日には売り切り手じまいが重要な業務となっている。その際に重要になってくるのが「優先順位」を付けて売り切り手じまい作業を行うことだ。その手順を簡単に表すと次のようになる。

①在庫確認…年末3日間は毎日閉店後に、年内に売り切らなければならないおせち材料品目の在庫、消化状況をチェックし、何が何ケース残っていて何ケース売れたかを把握する。

②優先順位付け…次に在庫品目を見て、三つ葉など鮮度低下の早いもの、八つ頭やクワイなど鮮度が維持できても年明けには商品価値が下がるものなど、売り切らないことで生じる損失の大きさを基準に売り切りの優先順位付けを行う。

③優先順位に沿って売り切り…売り切りを行う際は、優先度の高い商品から売り切るのが原則だ。その際は利益の歩留まりを考え、いきなり価格を下げるのではなく、余裕を持って次の方法を試した後、最終的な売り切り手段として価格を下げるようにすることが大切だ。

・販売場所を変える、または広げる、複数カ所で展開するなどを試す

・販売規格を変える(量目を増やす、減らす、セット販売を行う、形態を変えてみるなど)

昨年末の傾向として、おせちを「作って食べる→買って食べる」という消費動向の変化が見られたと感じる店が多かったようだ。具体的には青果売場での里芋、レンコンなどの煮しめ材料が伸び悩み、裏表の関係にある惣菜売場の煮しめが売れたという変化に表れている。

そのため今年は、関係性のある他部門商品の動向もつかみつつ、慎重な発注、売場計画を組んでいきたい。併せて年末、年始期間の航空、鉄道の予約状況も把握し、人の動きに合わせた販売計画も必要だろう。特に帰省のタイミング、Uターンのタイミングは地方、都市部の客数と密接に関係するので、それに合わせた発注をしたい。