VUCA時代の顧客ニーズをいかにつかむか 予測不可能を可能に変える 人流データ活用でデータドリブン実践の「第一歩」を踏み出そう

2023.01.04

先行き不透明な時代に、企業が事業を展開するためにはデータの活用が必須だ。「人手なし」「活用できるデータなし」「活用するイメージも湧かない」という壁にぶつかってデータドリブン実践の「第一歩」でつまずく企業は何をすべきか。利用できるデータを提供するサービスを検討するのも一つの手段かもしれない。

[PR/ITmedia]

 世界情勢や社会環境が激動する今、顧客のニーズや行動を予測することはますます難しくなっている。先行き不透明な時代に企業が生き残るための判断材料を提供するのがデータ分析だ。しかし、人材不足や活用できる状態にデータが整備されていないことを理由に、データ分析に踏み出せない企業は多い。

 2022年11月2日に開催された「リテール未来会議2022 -Retail DX Conference-」で、「リテール業界の多様な導入事例から学ぶKDDI人流データ活用」と題してKDDIの山本隆広氏(経営戦略本部 データマネジメント部 部長)が講演した。

 山本氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で多くの企業が一気にリモートワークへとかじを切ったことに言及し、「オフィス出社が当たり前だった頃にこんなに短期間で働き方が激変するなど、誰も想像しなかっただろう。昨日の常識が明日には通用しない、まさに予測不可能なVUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字を取った略語。予測不可能)時代に突入した」と述べた。

予測不能を可能に変える「人流データ」とは?

 予測不可能な状況下であっても、企業は未来を見越して事業を展開しなければならない。どうすればVUCA時代を生き抜くことができるのか。「そのヒントはデータにある」と山本氏は言う。

 「変化を察知して予測し続けるには、人の行動など現状を示すデータが必要だ。こうしたデータを収集、分析することで今の顧客ニーズや市場動向、社会情勢などが見えてくる。より精度の高い未来予測が可能になり、ビジネス課題を解決するヒントが得られる」

KDDIの山本氏

 KDDIが注目するのは、人流、位置情報データだ。山本氏は、例として次の図を示した。

図1 位置情報データからさまざまな示唆が得られる事例(出典:KDDI 山本氏の講演資料)

 このグラフは、東京都のCOVID-19対策に関する情報Webページ「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」(注1)にある報告日別の陽性者数推移のグラフと、KDDI契約者のスマートフォンから取得した位置情報データから抽出した滞在者数推移(2021年4月1日~2022年7月31日の東京駅を中心とする半径500メートル圏内)のグラフとを突き合わせて作成された。

 「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置」が適用された2022年1月21日からの2カ月間、第6波で感染者数が大きく伸びる中、東京駅の人流は目立って減少している。一方で、第7波の2022年7月は同措置が適用されなかったこともあり、人流は第6波のときに比べて変化が少なかったことが読み取れる。

 人流データを時事や天気などの各種要素と組み合わせて分析すると、「平日にもかかわらず特定の場所になぜ人が滞留しているのか」「近隣からの来訪者と遠方からの来訪者のどちらが多いのか」といった疑問に対する解が浮き彫りとなる。

 「人流データによって最適な施策を打ち出すヒントが得られる。予測不可能と思っていた近未来を予測可能な未来へと変えるカギだ」と山本氏は語る。

トリドールホールディングスと栃木県はどう活用している? 商圏分析や周遊戦略への活用例

 KDDIは、人流データを可視化するクラウドベースのセルフ分析ツール「KDDI Location Analyzer」を提供している。

図2 KDDI Location Analyzerの概要(出典:KDDI 山本氏の講演資料)

 KDDI Location Analyzerは、KDDIの移動通信サービスの契約者から取得した位置情報データや性別、年代などの属性データを公的な統計データや自社保有データなどと組み合わせることで、地図上で指定した施設や地域の推定来訪者に関するさまざまなデータを可視化できる。

 数年前から直近数日前までの全国にわたるデータを活用できることから鮮度が高く、日単位や時間単位で125メートル四方の通行、滞在人口も把握可能だ。施設来訪者の居住地域も把握できる。

 山本氏は、KDDI Location Analyzerの活用事例としてトリドールホールディングスと栃木県の事例を紹介した。

トリドールホールディングスの出店戦略事例

 丸亀製麺などさまざまな飲食店ブランドを展開するトリドールホールディングスにとって、新規出店や既存店舗のリロケーションといった出店戦略は事業の肝だ。数年に一度しか調査が行われないため公的な統計データは鮮度が低く、分析結果が実態と乖離(かいり)し、売り上げ予測の精度も上がらないことが課題だった。

 KDDI Location Analyzerを導入した結果、KDDIが保有する対象エリアの人流データ(人流の増減、性別、年代、居住地域などの属性情報)に、トリドールホールディングスの売り上げデータを組み合わせた商圏分析が可能になった。その結果、売り上げ予測の精度が向上し、複数地点の人流データをまとめて抽出できることで出店の判断もスピーディーに行えるようになったという。

 「ポイントは、複数地点の人流をピンポイントで一括集計、把握できることだ。商業ビルやホテルについても細かい人の動きが分かるので客数を推測しやすくなり、施設内店舗であるビルイン物件への出店を判断する際の有効な材料になった」(山本氏)

栃木県の観光誘客促進事例

 有名な観光スポットを抱える栃木県はホテルや旅館の稼働状況や観光施設の入場者数などを年1回調査し、観光客数や観光動態を推測して観光施策を練ってきた。しかし、COVID-19のまん延で緊急事態宣言が発令された結果、観光客は一気に途絶えた。年1回取得する調査データでは現状の変化を十分に観測できないことが判明し、リアルタイムの人流を把握することが急務だった。

 KDDI Location Analyzerの導入後は、数年前から直近3日前までの人流データを基に、観光地ごとの来訪者数を把握して属性分析を実施した。観光客数変動の実態について、来訪者の動線を含めて分析できるようになったことで需要回復のための効果的な観光振興施策を練ることが可能になった。

 「きめ細かい人流動態を定点観測することで、変化を追えるようになった。複数地点の来訪分析によって、観光客がどのようなルートで周遊しているかが分かり、周遊戦略の検討にもつながった」(山本氏)

 KDDI Location Analyzerの活用シーンとして山本氏は、来訪者の属性に基づく広告内容の設計や決定、来訪者や通行人の属性に基づいた開催イベントの検討、店舗の運営方針の決定といった投資判断の材料にすることを挙げた。全機能が試せる2週間の無料トライアルで、自社に合った活用シーンを探すことも可能だ(注2)。

人流データ活用をデータドリブン実践の「第一歩」に

 山本氏は、KDDI Location Analyzerを特に薦める企業として「データ活用にハードルを感じる企業」を挙げた。

 KDDIが主催する位置情報データの活用法をテーマとするセミナーの参加者にアンケートを取ったところ、「社内データを活用したくても活用イメージが湧かない」「分析できる状態にデータが整備されていない」「分析メンバーが不足している」など、活用したくても踏み切れないという悩みが多く寄せられたという。

 KDDI Location Analyzerの利点は、クラウドベースのサービスであるため開始手続きのみで利用を開始できることだ。利用可能な人流データが用意されているので簡単な分析であればすぐに始められる。データは個人が特定されないように加工されており、プライバシー保護にも配慮している。サービスを使いこなすためのトレーニングオプションも用意されている。

 「人の動きは、多くの業界で普遍的に活用できるデータだ。まずは人流データからデータ活用の第一歩を踏み出してほしい。良い感触が得られたら、さらに踏み込んで自社データの整備や活用へとステップアップしていく。データドリブン実践に向けたスタートダッシュに最適なサービスだ」(山本氏)

 KDDIはKDDI Location Analyzerの他、次世代型都市シミュレーター、メッセージ配信サービス「KDDI Message Cast」、データサイエンティストによる分析サービスなど、フィードバックを収集してデータ分析に基づく戦略や施策の立案、経営サイクルを支える各種ソリューションをそろえている。

 「今後もこうしたサービスを通じて、企業のデータドリブン実践に貢献していきたい」(山本氏)

(注1)「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」(東京都防災ホームページ)

(注2)商圏分析ツール KDDI Location Analyzer の無料トライアルの申し込みはこちら

関連リンク

提供:KDDI株式会社

お役立ち資料データ

  • 2023年 下半期 注目店スタディ

    2023年下半期注目のスーパーマーケット7店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・オーケー/銀座店 ・ヨークベニマル/仙台上杉店 ・ベイシア/Foods Park 津田沼ビート店 ・ヤオコー/松戸上本郷店 ・カスミ/…

  • 2023年 上半期 注目店スタディ

    2023年上半期注目のスーパーマーケット5店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・ ヤオコー/トナリエ宇都宮店 ・ サミットストア/川口青木店 ・ 原信/紫竹山店 ・ ライフセントラルスクエア/ららぽーと門真店 ・ …

  • 有力チェーントップ10人が語る「ニューノーマル時代のスーパーマーケット経営論」

    有力スーパーマーケットチェーンの経営者10人にリテール総合研究所所長の竹下がインタビューを実施し、そのエッセンスをまとめています。 インタビューを通じ、日本を代表する有力トップマネジメントのリアルな考えを知ることができ、現在の経営課題の主要テーマを網羅する内容となっています。 変化する経営環境において、各トップマネジメントによる現状整理と方向性を改めて振り返ることは、これからの新しいスーパーマーケットの在り方形を模索する上でも業界にとって大変有用と考えます。 ぜひ、今後のスーパーマーケット業界を考える材料としてご活用ください。 ■掲載インタビュー一覧 ライフコーポレーション 岩崎高治社長 ヨー…