米国アマゾンが「ゼロベースから作り上げたリアルの食品店」を開業
2022.04.12
2020.08.30
「店内で買おうが、オンラインで買おうが関係なく、シームレスな買物体験を提供する」。米国アマゾンが、「アマゾンフレッシュグロサリーストア」と名付けられたリアル店舗をオープンした。以前からその存在が伝えられていたが、今回いよいよカリフォルニア州ロサンゼルスのウッドランドヒルズにオープンすることとなった。アマゾン・フレッシュ・ストアーズのジェフ・ヘルブリング・バイス・プレジデントが同社のブログで発表した。
8月28日にウッドランドヒルズの一部お客に招待状の形でメールを送信し、今後数週間のうちに広く全てのお客に対してオープンしていく見込み。アマゾンとしては、お客のフィードバックを収集し、学習するためにこのような方式を採用しているという。営業時間は7時から22時まで。
なお、リアル店舗であるため、今回の新型コロナウイルス対応としてグループ企業のホールフーズと同等の基準による対策を実施するとしている。従業はもちろん、お客に対してもマスクを配布したり、来店客についても通常の50%の密度での営業とする。
ネットでもリアルでも「シームレス」な買物を実現
ネット販売がその事業の発端であるアマゾンは、その取扱商材を広げ続け、アマゾンフレッシュとして生鮮食品を含む食品の取り扱いにも踏み込んでいたが、それは一部を除いてオンラインに限られていた。それがいよいよリアル店舗として本格的に提供されるようになる。
今回のポイントは、「リアル店舗を新たに設ける」という発想ではなく、「ネットの販売を補足する」という色彩が強く感じられることだ。「一貫して低価格で販売し、さらにプライム会員には当日配送までしてきた」ことは大きな強みであるが、今回、リアル店舗を出店することで、さらにそこに「店舗受け取り」と「店内で製造される惣菜」を加えることができるようになるというわけだ。
店舗の商品の当日配送にも対応する他、店舗ピックアップによる店舗受け取りにも対応。店舗受け取りの場合は、サービスカウンターかピックアップパーキングスポットで受け取りが可能。BOPIS(バイ・オンライン・ピックアップ・イン・ストア)と呼ばれるこの方式は、特に「接点を減らす」という意味では、新型コロナウイルス対策が必要な現在では一層関心が高まっている。
この店の出店によって、商圏内の人については、買物時にリアル店舗とネットをどのように利用するかという点に関して、さまざま選択肢が生まれることになる。これかアマゾンのいう「シームレス・インストア・アンド・オンライン・ショッピング」ということになる。
そのときの状態に応じて、お客はリアル店舗とネット上でさまざまに用意された方法を選ぶことができる。リアル店舗とネットをシームレス(継ぎ目なく)に行き来しながらの買物体験を提供することがその中身だ。
「ジャスト・ウオーク・アウト」ではなく、「アマゾンダッシュカート」
そして、今回のリアル店舗の登場は、惣菜といったより鮮度が求められる分野への商品の可能性を広げる取り組みでもある。店内焼成のベーカリーやオーダーメイドのピザの提供やロティサリーチキンやホットサンドイッチなどの店内製造による提供は、リアル店舗があるからこそ可能になる。
もちろん、商品の低価格での提供にもこだわる他、チェックアウト時にアマゾン・プライム・ビザ・シグネチャー・カードやアマゾン・プライム・ストア・カードを使えば5%引きになるなどのロイヤルティサービスも提供。
また、店内で買物する際には「アマゾンダッシュカート」と呼ばれるカートを使用することもできる。映像やセンサーを活用することでカート内の商品を識別するため、お客はサインインした後は商品をカート内に入れるだけでよく、さらにレジに並ぶことなく、レーンを通るだけで買物が完結する。
同社は、商品を手に取ってレーンを通るだけで買物が完結する「ジャスト・ウオーク・アウト(ただ店を出るだけ)」を実現したコンビニサイズのアマゾンゴー、あるいはそれを拡大したアマゾンゴーグロサリーを出店しているが、今回はあくまでアマゾンフレッシュの延長線上のためか、その方式を採らず、カートを採用したことが大きな特徴といえる。この辺りは、店のサイズや投資の大きさなどの点で、どのような方式、技術がベストであるのかを考える上で興味深い事例といえる。
また、今回、AI(人工知能)による音声サービスの「Alexa(アレクサ)」の買物リストを活用できる他、通路上にもアレクサに助けを求めるために利用できるAmazon Echo Showデバイス(キオスク)を設置するなど、買物サポート機能にも自社の既存サービスを生かしていることも特徴だ。アマゾンのさまざまな技術が、「シームレスな買物」という目的に向かって統合されてきていることが実感できる。