地盤の新潟県ドミナント強化の一手、原信が五泉市内2号店の寺沢店を出店
2022.04.21
2020.11.11
アクシアル リテイリングは、新潟県の原信、ナルス、群馬県のフレッセイを傘下に収め、129店、年商約2408億円の有力リージョナルチェーンになっている。原信は11月7日、新潟県五泉市に原信寺沢店をオープン。地盤とする新潟県では58店体制となり、長野県5店、富山県3店を合わせると66店体制になった。
五泉市には、ウオロクが1店、キューピットが2店、魚さいとう ピアレマートが3店、スーパー山田、エスマート、新津フードセンターが各1店と、地場スーパーマーケット(SM)が乱立、原信も既存店の五泉店を出店している。
五泉店は2000年にオープン、年商25億円を売り上げているが、旧村松町を含めた手薄の市北部を取り込むため、カニバリによる五泉店の売上げの10~15%減少も見込んだ上で、地域内シェアを高めるために寺沢店の出店を決めた。
寺沢店は、ドラッグトップス、均一ショップのセリア、ヘアカット、クリーニング、コインランドリーのサービス機能も備えたネイバーフッドショッピングセンター(NSC)に出店。店舗面積は五泉店とほぼ同じの2158㎡(約653坪)。標準店の店として年間17億円の売上げを見込んでいる。
地場の商品を投入し、需要を取り込む
一番の特徴は青果の生産者直納の地場野菜コーナー「五泉げんき市」。もともと五泉店で展開していたもので、名物となっていた。支持が高いコーナーになっていて年間売上げは1億円。青果部門の約3割を占め、地場野菜コーナーとしては驚異的な数字をたたき出していることから、寺沢店でも展開し、集客装置としても期待する。
農産物だけではなく地場商品もそれぞれのカテゴリーに投入している。精肉では「にいがた和牛」「妻有ポーク」「越のハーブ鶏」といった県産を前面に打ち出し、水産でも新潟、佐渡をはじめ県内の漁港より鮮度の良い近海魚を豊富に取りそろえる。
渡六菓子店の和洋菓子、たいまつの餅をはじめ、豆腐、納豆などの日配やみそなどの調味料、コーヒー、菓子、日本酒などでも、人気の地元、県産アイテムをそろえて、地域ニーズに対応している。
食文化や食習慣は、それぞれの地方・地域で異なる。きめ細かくニーズを把握し、需要を取り込むのは、やはりリージョナルチェーンに一日の長がある。原信も長年、取り組んでおり、今回も手慣れた対応だが、常に地域への貢献も考えているという。
直近では、コロナ禍で出店しているエリアの飲食店が苦境に立たされた状況を少しでも改善できるよう支援活動に取り組んでいる。
4月からそれぞれの店が作った弁当の販売を引き受けており、ランチタイムなどその場で売り切る飲食店とは異なり、作り置きの惣菜など「冷めてもおいしい」といった1日中販売するノウハウもあることから、新商品や改廃なども含めてアドバイスも行っている。
今後は年末年始や盆などの時季のオードブルといった商品を協同で開発するなど、さらに取り組みを発展させていくことも視野に入れ、ウィンウインの関係を構築していきたいと考えている。
簡便性、健康などライフスタイル、ニーズの変化にも対応
地域に親しまれる店を目指す一方で、原信では生活者のライフスタイルやニーズの変化に応じて、きめ細かい対応や新たな提案にも積極的に取り組んでいる。
1つは有職女性の増加に伴う時短ニーズに対して簡便性の高い商品を拡充していること。同社で26店目となる「魚菜屋」を導入し、惣菜売場で展開。店内調理で焼き魚や煮魚を提供している。
水産で漬け魚、精肉では店で作るミートデリやミールキットを投入、青果でも店内でカットした野菜を拡充している。
時短消費への対応は、現在のSMの主要テーマとなっていて、各社対応が求められているが、原信は出来たてや鮮度にもこだわって取り組みを強化している。
簡便性だけではなく健康を意識した商品づくりにも力を入れている。365日・朝昼晩、毎日毎食サラダのある生活を提案する「365×3 Salad life」を展開、店内調理でおいしさと鮮度を打ち出し、おかずにもなるアイテムもそろえる。
野菜をしっかり手早く簡単に摂取できるようにカットサラダも強化。専任の30代の女性担当者を置いて、月間、2、3品の新商品を開発している。
惣菜全般においても、野菜摂取を意識した商品を各カテゴリーに投入、対応を強化している。
健康面で「減塩」が大きなテーマとなっているが、単なる減塩アイテムだけだはなく、減塩特有の「味が薄い」という問題と向き合ってもいる。各社、おいしく健康的な商品を提供しようと、「だし」を利かせることで塩分を抑える取り組みを進めているが、原信でも「だし香る」シリーズを展開。人気を集めてお客からの支持も高い。惣菜で78SKUをそろえているが、ユニークな取り組みとしてメーカーとタイアップしてポテトチップなども登場。総計113SKUまで拡大している。
新たな展開も11月から始まった。新潟県では、全ての県民が生き生きと暮らせる「健康立県」の実現を目指し、いつでも健康に配慮した食事ができる環境づくりを推進している。その一環として、「からだがよろこぶデリ」を、SMなどと連携して販売することになった。
主菜は100g当たり250kcal、食塩相当量2.5g以下、肉、魚、卵、大豆製品など食品が全体の8割を占め、副菜では野菜、キノコ、芋、海藻などの食品が8割以上を占め150kcal、食塩相当量1.2g以下という県独自の「おいしくてからだがよろこぶ」基準を設けて、取り組みを進めている。
原信では、まず、「国産鶏ささみ塩にんにく唐揚げ」が認定され、今後、新たな商品も開発し取り組みを推進していく。
こだわり、専門性を打ち出す惣菜は充実のラインアップ
こうして健康と簡便性を追求しながら、地域密着のSMとしてきちんと機能を果たすべく各カテゴリーで対応を強めている。
基本的な考えとして、2010年から「ニューコンセプトⅡ」として、①新しい商品・売場展開 、②あかぬけた売場、 ③生産性の向上をテーマに掲げた店づくりをスタート、15年にはさらなる「豊かさ・楽しさ・便利さ」を提供する「ニューコンセプトⅡ+」の展開を図り取り組みを進めている。
ますます需要が高まる惣菜では、各カテゴリーで、「てっぱん屋」「五泉のかつ屋」「五泉中華街」など屋号を掲げて、こだわりや専門性を深めて、店内加工のアイテムも豊富で出来たてを提供、おいしさを追求している。
中でも焼き鳥は、15年に「月間売上げ1億円」を目指してブラッシュアップに取り組み、こだわりのしょうゆや藻塩などを使用することで、たれのレベルアップを図った他、備長炭の炭火焼にもこだわり、年々改良しながら高い支持を得ている。
単品では「旨み醤油香るとりからあげ」が、日本唐揚協会主催の「からあげグランプリ」で2年連続金賞を受賞するなど、商品開発力のレベルも高い。
さらに新商品を投入したり、既存のアイテムにも随時手を入れて魅力アップにも取り組んでいる。
10月中旬からは、ハンバーグで外食に近い本格的な味を実現した「肉弾ハンバーグ」を発売。つまみアイテムの燻製「SMOKED DISHES」シリーズもリニューアルを実施した。
インストアベーカリーでは、「サラぱん(海老ポテトマト)」「グラハムパンのソイミートバーガー」といった特色ある商品も目立ち、ピッツァは約3分と、焼き上がり時間が短い窯を導入。注文に応じて素早く提供が可能で、新たに投入したアヒージョタイプなどユニークなアイテムもあるなど品揃えも豊富だ。
また、「お弁当・お惣菜大賞2020」で優秀賞を受賞した「濃厚とろけるプリン~とろプリ~」も人気を集めている他、最近では店内で焼き上げるソフトタイプのクッキーの発売も始めるなど品揃えの幅を広げている。
寺沢店でもこうしたマーチャンダイジングを踏襲、さらにブラッシュアップした売場づくりを行い、自社の五泉店とも競い合いながらウオロクや地元勢との厳しいバトルを繰り広げていく。
独自視点の商品開発がヒットを生むプライベートブランド
プライベートブランド(PB)商品も戦力となる。アクシアル リテイリングでは現在377品目を展開。最近のヒットアイテムはチルドの「旨みじゅわっと肉焼売」。新たに「ごろぷり海老焼売」も追加して、さらなる需要の取り込みを図る。
PBや留め型を企画・開発するのはアクシアルレーベルだ。廉価で品質の良い商品を、お客の声を基にしながら独自の視点で開発している。
過去の取り組みの失敗事例も盛り込んだ開発手順書を作成し情報を共有化。意思統一を図り、マニュアルに沿って開発することで、誰が行っても開発意図や商品設計がぶれないようにしているという。
現在のところ加工食品や日配品が中心だが、近年は冷凍食品、生鮮、惣菜、日用消耗品にも広がり、レトルトカレー、ペットボトル飲料、ヨーグルト、チーズなど、それぞれのカテゴリーで売上げトップ、もしくは上位のものも多く、全体の売上げをけん引している。
3年前に単身者からファミリー層へターゲットを切り替えたカットサラダの「5種類の炒め野菜」は、量目を1.5倍にし、98円という低価格で提供することで爆発的なヒットとなった。一昨年4月に発売した「抹茶香るまろやかラテ」も人気を持続している。
ユニークなものが、辛くない柿の種。子どもに食べてもらいたいと開発されたものだが、辛いものが苦手な人にも好評で、隠れた人気アイテムとなった。
こうして数々のヒットを飛ばしてきたが、幾ら商品がいいものであっても、売場での取り組みが弱くてはPBは売れない。店舗従業員の理解と協力を得て、商品陳列を工夫、試食、イベントなどを実施し、売場で売り込みに力を入れてきたことも大きい。
寺沢店でも、オープン時、「だし香るポテトチップス」を大量陳列し、関連アイテムも集積して売り込みを図っていた。
原信は地盤の新潟県では、ウオロクという手強いライバルを抱えつつも、トップ企業としての存在感を示している。グレードアップフォーマットで、①専門性、②ライブ感、③情報発信をコンセプトに、最新の商品政策について店舗でさまざまな実験を行いながら新たな提案をする「セントラルマーケット」、小商圏型店舗フォーマット「エクスプレス」などマルチフォーマットを立地創造も行いながら展開。当面その座は揺らぐことはないだろう。(取材・文/西川立一)
原信寺沢店概要
所在地/新潟県五泉市吉沢1034
オープン日/2020年11月7日(プレオープン6日)
営業時間/9時~24時
駐車台数/220台(SC全体)
敷地面積/1万9068.29㎡(5768.1坪、SC全体)
原信店舗面積/2158.4㎡(652.9坪)
店長/大貫真介
Interview1
アクシアル リテイリング社長
原 和彦
価格競争とは一線を画して画して「生活の質の向上」をサポート
五泉市はニット生産やボタン栽培などが盛んで一定のブランド力がる他、新潟市のベットタウンでもあり魅力あるエリア。今回の出店で地域の活性化にも貢献していきたい。原信は今後も新潟県内で良い物件があれば出店していきたい。県外では昨年11月には富山市に初出店し、好調に推移している。
セントラルマーケット、品揃えの見直しを行ったエクスプレスも順調だ。PBも売れ行きが非常に良く、これからも一品一品地道に磨きをかけていく。システムでは11月から自動発注をバージョンアップ、精度を高めた。
昨年10月からスタートした原信ナルスのスマホアプリもクーポンが好評で、ダウンロード数が増え続けている。最近のトピックは、長年取り組んできたQC活動で、アクシアル リテイリングが食品小売りで初めて日本科学技術連盟の日本品質奨励賞・TQM奨励賞を受賞したこと。ドラッグストアなど低価格攻勢もあるが、価格競争とは一線を画して「生活の質の向上」をサポートする役割を果たしていきたい。
Interview2
原信寺沢店店長
大貫真介
大好評の地場野菜直売を導入
前任の五泉店にあった地場野菜直売「五泉元気市」が大好評だったので寺沢店でも導入した。40人いる生産者が売場にも煩雑に足を運び売れ行きなどの情報を交換し、売場づくりに反映させているのも好調の理由だ。近くに魚が強いウオロクさんがあるので、水産は意識して強化した。力を入れている惣菜では、火曜日は全店「コロッケの日」となっているが、店独自で月水木で、「カツの日」と、テーマを明確にした日を設定し売り込んでいく。五泉市北部を新たに開拓し市の南側の五泉店とはすみ分けを図っていきたい。