平和堂が滋賀県大津市で建て替えオープンした平和堂石山の「コンパクトな総合業態」の店づくり

2020.12.03

2020.12.05

平和堂は滋賀県大津市の平和堂石山店を2018年8月に閉店し、建て替えを進めていたが、11月12日に「平和堂石山」の新たな店名で新規オープンした。これで同社店舗は大津市内18店、滋賀県内75店、全社では155店となった。

1970年9月に開店した旧石山店は平和堂の4号店で、建物の5階に当時人気を集めていたボウリング場を併設。「ショッピング&レジャー」をうたった注目の商業施設として、全国から視察者が多数訪れた。

同店のオープン以前、平和堂では店舗ごとに商品仕入れを行っていた。商品部を新設してセントラルバイイングに踏み出したのは、オープン前年の69年のこと。ビル管理の子会社もその後すぐに設立した。すなわち旧石山店は、「当社がその後展開する多店舗化の起点となった店」(平松正嗣社長)なのである。

平和堂石山はJRおよび京阪石山駅の南西約400mに位置する。東へ約300mの距離に、琵琶湖から大阪湾に流れる瀬田川(淀川の滋賀県内の名称)があり、南へ約1kmには名神高速道路が東西に走っている。

石山駅から京都駅まではJRの新快速電車で13分、大阪駅までは同43分といずれも通勤圏内だ。石山周辺はベッドタウンとして人気のあるエリアで、近年は駅前を中心にマンションが増加。特に500m圏内には新築マンションが多く人口増加が続いている。駅乗降客数はJR石山駅が滋賀県内で第3位、京阪石山駅が同1位の多さである。

そうしたポテンシャルの高い立地で、平和堂石山は衣食住にわたり商品を取り扱う総合業態として、3層の売場を構えている(建物は4層)。売場面積は計約9060㎡(約2741坪)で、旧石山店の約7716㎡(約2334坪)から1344㎡(約407坪)増加(17.4%増)。特に大きく売場を広げたのが食品。旧店舗の1218㎡(約368坪)から、1.5倍の1830㎡(約554坪)となった。逆に衣料と住居関連は売場を縮小し、それぞれ2065㎡(約625坪、旧店比75.4%)、1036㎡(約313坪、同68.6%)とした。

また専門店テナントを15店(ATM、フィットネスなどを含む)導入したが、うち6店が食関連だ。中でも注目店は、地元滋賀県発で全国的に人気の高い和菓子専門店「叶匠寿庵(かのうしょうじゅあん)」。今回が平和堂への初出店である。他に、地元大津市に本社を置く近江牛の老舗「肉のげんさん」(元三フード)や、大津市瀬田で人気のベーカリー専門店「パン工房 バオバブの木」、石山駅前のたこ焼き専門店「粉もん おかちゃん」などを導入。地元店に強くこだわった店ぞろえになっている。一方、浜松市に本店がある抹茶ジェラート専門店「抹茶香房こくる」は、大津初出店である。

自社店舗が周囲にある閉鎖商圏ゆえにコンパクトな総合業態

平和堂石山は「MY日(まいにち)」「集居(つどい)」「健幸(けんこう)」を店舗コンセプトに掲げている。言い換えれば、地域住民の人たちが毎日便利に利用できる店、人と人をつなぐ地域コミュニティの一角を担う店、健康に配慮した品揃えやイベントなどで幸せな生活を後押しする店、となろうか。

同店は直営売場面積が1万㎡未満と、比較的コンパクトな総合業態である。また半径2km前後の距離内に、自社店舗のアルプラザとフレンドマートが計5店点在している。さらに瀬田川や鉄道架線などに囲まれた商圏は、やや閉鎖的な要素がある。

それらの条件から、「地域にお住いの方に毎日使っていただく、近くて便利な店」(國松正義店長)というコンセプトを掲げ、滋賀県の中では人口密度が比較的高い足元商圏の深耕を図っている。開発に際しては、「地元の人にとって使い勝手のいい店と売場構成」(平塚善道・執行役員滋賀第三営業部部長)を目指した。地元専門店の誘致にこだわったのもそうした狙いからだろう。

同社提供の資料によると、平和堂石山の商圏人口は半径1km内が7024世帯、1万5450人で、2km商圏の合計は2万5228世帯、5万9216人。500m圏内で30~49歳の構成比が高く、ファミリー層が多いのが足元商圏の特徴で、これは新築マンションが多いためだ。

旧石山店の最盛時における年間売上高は63億円だった。一方、平和堂石山の初年度売上高目標は32億4000万円(テナント売上高除く)と、約半分。しかし食品の売上高に限れば、最盛時の25億円に並ぶ数字を見込んでいるという。

売場づくりの特徴を挙げていくと、まず1階食品フロアでは1万507アイテムをそろえ、中でも「毎日来てもらう」ために生鮮とデリカを強化した。青果売場では、出入口からすぐの対面売場にジュースバー、フルーツサンドイッチ、フルーツタルトのコーナーが並ぶ。これらのコーナーは既存店でもお客の支持が高く、「新しいお客様も含め毎日来ていただける売場として、しっかり設けた」(平塚執行役員)。

また地場野菜も、「びわ湖~四季の彩~」と銘打って小松菜や水菜、パプリカなどを島陳列コーナーに集めている。青果の品揃えは660アイテムで、直営売上高のうち10.6%の構成比を見込む(食品売上高の14.2%、以下同)。

鮮魚売場は381アイテムをそろえ、売上構成比は6.4%(8.6%)を目標とする。対面売場では旬の生魚をその時期一番の産地から取り寄せ、毎日販売。また旧店舗にはなかった鮮魚寿司コーナーを設け、天然魚を使った寿司を提供する。

296アイテムをそろえた精肉売場は、7.8%(10.5%)の売上高構成比を見込む。日本三大和牛の1つで地元のブランド肉である「近江牛(滋賀県産)」の他、平和堂指定農場で飼育された国産オリジナルブランド(あじわい牛、あじわい豚、健美味どり)を販売。「あじわい牛」を使ったローストビーフをはじめ、生食アイテムを強化し、ステーキコーナーも広く設けた。

デリカ売場は500アイテムとしっかりそろえた。売上高構成比の目標値も9.4%(12.6%)と高い。旧店舗になかったガラス張りの対面売場「TEPPAN KITCHEN(テッパン キッチン)」を設け、ライブ感を演出しながら出来たてのお好み焼きや焼きそば、だし巻き卵を提供する。

「極旨いなり」や「肉コロッケ」などの平和堂名物商品もそろえる。また管理栄養士監修「500kcal以下のお弁当」をはじめ、健康に配慮した弁当、惣菜を販売。

ベーカリーでは、最近の改装店でヒットしている「店内焼き立てピザ」やハンバーガーが新たな目玉商品だ。

加工食品のアイテム数は6790で、22.8%(30.6%)の売上高構成比を見込む。減塩や糖質オフ、オーガニック、ローカロリーなど健康対応商品や、プライベートブランド商品の「E-WA(イーワ)」もそろえた。地元銘菓や地酒など、地場商品にもこだわっている。

日配売場は1880アイテムで17.5%(23.5%)を見込む。特に地元商材にこだわったのが品揃えの特徴だ。22年に創業100年を迎える八木製麺所のうどん、そばや、丸長食品の漬物をはじめ、各カテゴリーで大津に生まれ親しまれているメーカーの商品を集めた。

丸長食品の漬物

また加工食品と同様、E-WAも数多く品揃えしている。

日配のE-WAの1つ、「やわとろとうふ揚げ」

百貨店の代替も担いつつ、食品、地元、健康志向の要素を強化

今年8月31日に、同店から北西へ約3kmの距離にあった百貨店、西武大津店が多くの人に惜しまれながら閉店。現在、県庁所在地に百貨店(日本百貨店協会加盟の百貨店)がない県は、岩手と徳島、滋賀の3県のみである。

平和堂石山にも百貨店利用客が流れるのではと考えられるが、同店の銘店売場などは通常の規模と品揃えだ。しかし、西武閉店後は大津駅周辺の平和堂店舗で売上げが上向いており、石山も「主に衣料と住関の部分で(品揃えを)補強していかなければと考えている」(平塚執行役員)という。

その衣料品(2階「ファッション&ドラッグ・コスメのフロア」)の品揃えは、先述の通り旧店に比べ大幅に絞り込んだ。衣料品の1万1211アイテム中、インナーが7993アイテムで7割以上を占める。売上高では3割強を占め、商品単価の高いレディスやメンズのアウターよりも構成比が高い。

アウターもデイリーカジュアルが中心で、メンズスーツやドレスシャツなどは思い切って絞り込んだ。ただし、「アルファキュービック」や「ハッシュパピー」などをはじめ、売場の顔となるファッションブランドはしっかりと押さえられている。

2階フロアには、医薬品やサプリメント、コスメの各コーナーを配した売場「Beauty Road(ビューティロード)」を設けた。同売場には、カウンセリング化粧品を取りそろえて平和堂のビューティアドバイザーが接客応対するコーナーも設置。

「平和堂では何十年にもわたり、自社で独自に美容部員を育ててきた。全国的にメーカーからの派遣が減少している中、そうした取り組みがここへきて生きており、当社の売場ではどのメーカーのどの商品でも、お客さまに合ったアドバイスができる」(平松社長)

住居関連品も旧店舗から売場を縮小し、売上高構成比は12.4%を見込む。ドラッグ・コスメが7.9%と、6割以上を占める。3階「暮らしと子供のフロア」に設けられた「テレワークコーナー」が新しい。

平和堂石山は総合業態としてはコンパクトな商圏を設定している。その中で食品強化、地元商材拡充、健康志向対応というトレンドの流れに沿った商品戦略を打ち出した。また特にデリカ売場では、従来からのシニア客に加え、足元商圏に多い30代~40代ファミリー層の集客に注力している。

一方で、物販だけでなくイベント企画にも力を入れているのが同店の特徴だ。新型コロナ禍の中で大規模なイベントの実施は控える方針だが、幼児向けに絵本の読み聞かせや塗り絵、じゃんけん大会など、状況に合わせながら工夫をしていく。また旅行やサイクリングなどをはじめ、同店を起点に様々な企画や情報の発信を展開していくという。

平松社長は「3年前に創業60周年を迎えたときに、100年企業にしようと話した。そのためには、地域のライフスタイルに合わせた様々な取り組みによって地域の活性化に貢献しなければならない。50年近く前、石山店は当社の発展の起点となった。これからは地域が元気になっていくための店にしたい」と語った。(取材・文/渡辺米英)

平和堂石山概要

所在地/滋賀県大津市松原町13-15

オープン日/2020年11月12日

基本営業時間/9時30分~21時

建物構造/鉄骨造4階建て

テナント/15店舗(ATMなど含む)

駐車台数/170台

駐輪台数/195台(バイク25台含む)

敷地面積/約1万1688㎡(建物敷地と駐車場)

延べ床面積/約1万1894㎡(後方含む)

売場面積/約9060㎡

店長/國松正義

従業員数/社員29人、パート・アルバイト122人(8時間換算)

売上目標/32億4000万円

投資額/約31億6000万円

お役立ち資料データ

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