無印良品が顧客層を拡大、より日常に踏み込み、板橋南町22は「全ての人を対象に、トイレットペーパーを買う店」を目指す
2022.11.21
良品計画は無印良品板橋南町22を11月17日にオープンした。
売場面積は無印良品東京有明(東京・江東)、無印良品銀座(東京・中央)に次ぐ約1180坪の関東最大級の広さ。都内生活圏で日常生活の基本を担う商品、 サービスを提供すると共に地域活性化の活動を行っていく。
日用品を中心とした商品とサービスを提供する「ふだん専門店」
良品計画は、21年9月に第二創業として、企業理念を再定義し、「『人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会』を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて『感じ良い暮らしと社会』の実現に貢献すること」とした。
その上で「日常生活の基本をささえる商品やサービスを提供すること」「地域課題に取り組み、地域への良いインパクトを実現すること」を2つの使命とし、店舗としては「“お客様”と“地域”の役に立つ」ことの実現を目指している。
板橋区においても日常生活の基本を担う無印良品の衣料品、生活雑貨、食品やサービスを取りそろえると共に、今年9月には板橋区と包括連携協定を締結、加えて近隣地域の経済活性化や地域課題解決に向けた店舗づくりを進めていくとしている。
特に今回の板橋南町22は、「お客様に近いお店」を標ぼうし、半径5km圏内150万人という商圏に対し、「すべての人が毎日使う日用品、毎日着る日常着、毎日食べる日常食、を便利に、気軽に、安心して買うことができるお店=ふだん専門店」となることを目指すという。
「いままで無印良品というと、カレーやバームクーヘン、化粧品などを思い付くが、全ての方が毎日使う商品かというとやや異なる。全ての方が毎日使える、便利で、買いやすい商品を全面に打ち出すということで見直し、無印良品の印象を日常的に使えるお店に変えていきたいと思っている」(成松宏晃店長)
無印良品は、現在、スーパーマーケット(SM)と共同出店など隣接した形での出店を重ねている。今回もマルエツに隣接した場所に出店している。
今回、そのSMと同等の週に2、3回の来店頻度を目指すという。「(アプリの)MUJI passportメンバーのダウンロード数は約2500万人。日本の人口からすると1億人くらいの方にまだ無印良品の製品が届いていない。いままでは30代~40代の女性を中心とした顧客層だったと思うが、今後は幅広く全てのお客さまにご提案できる商品ということで、無印良品の顧客層を広げていきたいと思っている」(成松店長)
無印良品としては、毎日使う日用品をこだわりを持って開発してお客に近づいていきたいとしている。その上で、代表的な商品としてトイレットペーパーを挙げる。1個150円ではあるが、通常の4倍、圧縮して巻いているため、物流などサプライチェーンの他、お客としても収納におけるスペースの効率化が図れる。こうしたこだわりを持って開発した商品を印象付け、日常的に使ってもらいたいとしている。
出店を重ね、店舗数が増えていくと、当然、1店当たりの商圏は次第に狭くなっていく。そして、その小商圏に対応するためには客層を広げ、より日常的な商品を販売していく必要が出てくる。これはチェーンストアの原則だ。
日本全国に大型店から小型店までさまざまな店を出店している無印良品が、今回、客層の拡大を図り、さらにより日常の領域に踏み込んだことは、チェーンストアとしての大きな意義がある。
今回、「普段の生活」をサポートする店舗としてキッチン用品や消耗品、布団やタオルなどのファブリックス、収納用品や日常着、食品など無印良品のほぼ全てのアイテム、普段の暮らしをより快適にするためのサービスを展開。さらに周辺住民の日常生活に役立つ店舗になるため、地域で活躍する人にも参画してもらいながら品揃え、店舗サービスを検討したという。
店舗外にはロッカーを設置し、24時間、商品を受け取れる「ロッカー受け取りサービス」も展開する。駐車場で車に乗ったまま商品を受け取れる無印良品初の「駐車場受け取りサービス」、地域限定で当日配送などの便利な「近隣配送サービス」にも取り組む。
受け取れる商品はロッカーに入る大きさのものに限られるが、一部ロッカーでは冷凍食品の受け取りも可能となっている。
クラフトビールとハンバーガーを提供
2階は「食とテラス」のフロア。東京都産を中心とした旬の野菜や果物、切り花の他、無印良品の食品やキッチン用品など、生活の基本となる商品や地域の顔が見える商品をそろえる。商店街のような賑わいや活気のある売場を意識したという。
店内で調理した惣菜を販売する「MUJI Kitchen」を東池袋に続く2号店として展開。家事の簡略化や時短になるような商品、店舗の周辺にある仕出し・弁当販売を行う「アホウドリ」監修のメニューやクラフトビール工房と協力の下、限定商品を販売する。
2つのクラフトビール醸造所から1種類ずつ、限定のビールを醸造し販売。また、御徒町のワイナリーで醸造した国産ブドウのみを使ったスパークリングワインも販売する。
品揃えは、「板橋22エール」265㎖Sサイズ600円(税込み、以下同)、480㎖Lサイズ1000円、「板橋22IPA」 265㎖Sサイズ600円、480㎖Lサイズ1000円、「板橋22スパークリング」680円。
また、板橋南町22限定メニューとして、「てりやきハンバーガー」(780円)は店舗で作った手ごねハンバーグを使用したハンバーガー。
現状、ハンバーガーの単品品揃えだが、メニューは今後、増やしていく意向で、さらに地域と連動した形の商品を展開していきたいという。
また、板橋区では平成15年(2003年)度、17年(05年)度、平成20年(08年)度に区民に親しまれているパンや惣菜、菓子などの商品を区民から募集し、現時点で53商品を「板橋のいっぴん」に認定しているが、現在、これまでの商品を「殿堂入り商品」とし、新たな「板橋のいっぴん」を選定中。そこで新たに選定した「板橋のいっぴん」のコーナーを設け、認定商品の販売も行う。
また、さまざまな年齢層の人が集い、情報交換ができる場としてくつろげるオープンテラスとイベント開催などに使用できる「Open MUJI」を設置。オープンテラスには板橋区内の園芸店が手掛けた植栽を置き、さらに「MUJI Kitchen」で提供しているクラフトビールやバーガーなどのイートインスペースとしても利用できる。
イベントスペースである「Open MUJI」内のMUJI BOOKS売場では板橋区が推進する「絵本のまち板橋」と連動し、東京家政大学児童学科の教員、学生と学習プログラムの一環で選書した絵本を展開、絵本の読み聞かせイベントも開催予定だという。店内壁面には絵本作家の三浦太郎さんのビジュアルを展開し、「絵本のまち」ならではの無印良品を表現する。
4階では家具と収納を展開。「ねむる」「くつろぐ」「しまう」「なおす」をテーマにした「くらしなんでも相談所」も設置。商品購入前の相談から購入後までをサポートする。さらに店頭での相談に加えてオンラインや訪問での相談も受ける。
インテリアアドバイザーによるインテリア相談や整理収納のアドバイスの他、眠りの環境改善相談や体に合った枕の高さを測る測定器を導入するなど、一部有料サービスを交えたサービスを提供。
また、3Dプリンターでつくる自助具プラットフォームを持つ「ファブラボ品川」と協業し、 無印良品の既存商品に追加できる「拡張パーツ」を3Dプリンターで作れるサービスを開始。ファスナーフックやプラグを抜きやすいつまみなど小型で便利な道具をその場で製作し、販売する。
洗剤やヘアケア製品の量り売りを導入
さらに地域活性化や地域の課題解決に向けて、 一緒になって考える地域井戸端会議「22会議」を設置。同店が立地する番地である「22」とかけて、毎月22日に開催する。この会議を通じて、「人と人がつながり、お店とまちがつながり、新しいコトやモノが創造され、そしてそれらが循環することで、地域がさらに豊かになる。」取り組みになることを目指していく。
その他、環境に配慮した取り組みに注力。必要なものを必要な分だけ購入できる洗剤やシャンプーなどのヘアケア製品の量り売りやナッツ、ドライフルーツ、穀類の量り売りも実施。包装ためのプラスチック容器の削減にもつなげる。
また、店舗屋上にコンポストを設置し、MUJI Kitchenから発生する生ごみをたい肥化し、店頭で取り扱う野菜や果物を生産する農家に活用してもらうことで資源循環できるよう仕組化も進める。
他、農産物は売れ残りなどの問題があるが、フードロス対策としてバックヤードに急速冷凍機を導入。素材として冷凍にした上で、スムージーやスープなどで提供することを検討している。
2階には資源回収ステーションを設け、繊維製品、体にフィットするソファ、ユニットシェルフ、プラスチック製品などの自社製品やペット素材、保冷剤の回収をする他、板橋区と連携して古着回収やフードドライブにも取り組む。
また、本、CD、DVDを回収し、古本買取会社と連携した取り組み「つながる絵本プロジェクト」を通じて地域の幼稚園や保育施設へ寄付する取り組みも行う。
3階は「服と生活雑貨」のフロア。「ただ、洋服をコーディネートしているわけではなく、背景に日常的な生活が想起できるようなコーディネート」(成松店長)の展開を図るが、ビジネスウエアなどもそろえている。
無印良品板橋南町22概要
所在地/東京都板橋区南町22-14
オープン日/2022年11月17日
営業時間/10時~20時
売場面積/約1187坪(3924.36㎡)