イオングループの新フォーマット「パレッテ」はアルディ、リドルのようなハードディスカウントだ

2021.01.31

城取フードサービス研究所代表 城取博幸

イオンが新会社パレッテを設立して開業した新フォーマットの「パレッテ」の1号店が、昨年12月5日、神奈川県大和市にオープンした。

イオングループには都市型小型店のまいばすけっとや経営統合したビッグ・エーとアコレがあるが、それらとは大きく異なり、売場面積が300坪以上はある比較的大きな店だ。訪店した感想は、「ドイツ発祥のハードディスカウントが日本にも出現した」というもの。

最近のアルディやリドルの大型店に比べると少し小さめだが、店内に入ればヨーロッパのハードディスカウントの「臭い」がする。コロナ禍明けには、価格競争が激化するとの声も多い中、そうした時代への布石となるか。

アルディ、リドルとの10の類似点

ハードディスカウント、リミテッドアソートメントストア、ボックスストア、バジェットストアなどと呼ばれているアルディ、リドルとの類似点を幾つか挙げる。

①立地の類似

ドイツではレーベ、エデカなど、現地のスーパーマーケット(SM)の隣に出店していることが多い。地域によってはレーベの両側にアルディ、リドルが出店している。パレッテもSMのいなげやの隣に出店している。

②パレット陳列、段ボール陳列、コンテナ陳列

ハードディスカウントの特徴は、段ボールをカットして、パレットや陳列ケースでそのまま販売すること。一部ばら陳列はあるものの、ほとんどが段ボール、または専用コンテナ、専用クレートで販売されている。

さらに補充風景を見ているとパレットキャリアに商品を載せて移動している。そのため、通路幅を広めに確保している。パレッテの名目の由来はマテハンの「パレット」からきているのだろう。大型店のコストコもパレット陳列を行っているが、それに近い。

また、バックヤードから店内にはスイングドアではなく、おしゃれな絵がプリントされた電動シャッターを設置している。これもアルディなどと変わらない。

③お客のワンウエーコントロール

お客の動線は一方向にコントロールされている。入口のドアは「入」と「出」に分かれている。多くの客がそれに従って買物をしている。ハードディスカウントは基本的にレジを通らないと外へ出られないようになっている。

④エブリデーロープライス(EDLP)価格政策とエブリデーローコスト(EDLC)

基本的にハイ&ローではなく、EDLPの価格政策を採っているようだ。単品量販、プライスカードの貼り替え作業がないこともEDLCにつながっている。

⑤アイテムの絞り込み

商品を絞り込み、オリジナル商品なども加えて販売している。アルディ、リドルのようにプライベートブランド(PB)商品主力ではないが、幾つかの商品には「!!!ここでしか買えません」のPOPを付けて販売している。まだ1店であるため商品開発はこれからかもしれない。

⑥冷蔵商品の包装とロングライフ化

ハードディスカウントでは精肉売場で2℃以下の陳列ケースにスキンパック、深絞りパック、MAP包装などの日持ちがする商品を販売している。パレッテでも国産ステーキはスキンパック、鶏肉は深絞りパックを0℃程度のケース温度で販売している。消費期限の延長は発注、補充、日付チェックなどの作業が減り、EDLCにつながる。

⑦小型家電、寝具、PCR検査キットまで販売

ハードディスカウントでは、食品以外に小物家電、衣料品、小物雑貨、大工用品、ホビーなど多様な商品を取り扱う。パレッテはまだ品揃えは少ないが、加湿器、非接触体温計、羽根布団、クッションなどの他、PCR検査キッドまで販売している。

⑧アウトパック商品が主流だが、インストアベーカリーを導入

アルディもリドルもインストアベーカリーを設置して焼きたてのパンを販売している。パレッテもパンだけはインストアベーカリーを導入している。クロワッサンが目玉のようだ。

⑨冷凍食品はケース裏から陳列

ハードディスカウントの新店は冷凍食品を主通路の最後の方にレイアウトしている。陳列ケースの裏側が冷凍庫になっていて裏から段ボールカットの商品を陳列している。パレッテも同じく裏から補充。段ボールではなくコンテナで陳列されている。これも商品の移動距離が短くなり、EDLCにつながっている。

⑩従業員の少なさ

ハードディスカウントではレジ担当1、2人。補充担当1、2人。インストアベーカリーは1人といった陣容で作業を行っている。パレッテはまだ出店したばかりなので授業員の数は多いように見えるが徐々に適正化されていくと思われる。

米国のリドル大型店の精肉の納品。冷蔵コンテナ(上部に蓄冷材)をパレットに積んで売場まで移動。通路がしっかり確保されている

パレッテとアルディ、リドルとの違い

①オリジナル商品、PB商品比率

パレッテは残念ながら欧米のハードディスカウントに比べてオリジナル商品、PB商品の比率が低く、まだナショナルブランド商品に頼っている状態だ。イオンのトップバリュの扱いも見られない。

②非食品のゾーニングの違い

アルディ、リドルは非食品を店の中央部分にレイアウトし、平台展開(一部セミ多段)しているが、パレッテは店の入口付近にレイアウトしている。食品が非食品を囲むように中央部分にレイアウトされればハードディスカウントと変わらないが、現状は食品と分離している。

③電子棚札の導入

全商品ではないが、パレッテでは生鮮部門を含め電子棚札を導入している。果物、惣菜の寿司、おにぎり、鮮魚、精肉、ドライ食品売場の一部に見られる。

④セルフレジとキャシュレス決済

ハードディスカウントにもセルフレジが徐々に導入されつつある。英国のアルディには10台導入されていて、対人レジは1台であった(2019年11月)。かつてはレジ待ちでピーク時には20人ほどが長蛇に列になっていたが、それもなくなりつつある。

パレッテはセミセルフレジを導入している他、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスが導入している「Scan & Go」を導入している。登録が必要だが、スマホを使って自分で商品をスキャンしながら商品を買い集め、そのままスマホで支払いを終える仕組みで、決済後はスマホに表示されるコードを店にある専用の機器にかざすだけでよい。

非接触で会計ができるだけでなく、現金を扱わないことでEDLCにつながる。この点は欧米のハードディスカウントとは異なる日本オリジナルの要素。

英国のアルディ。セルフレジが10台、対面レジ1台。レジに並ぶ行列がなくなった

今後の期待と要望

①「ストリーテリング」がいかにできるか

AOP(産地が守られた表示)認定のバターを使ったクロワッサン、長期熟成のバナナ、熟成ギンザケ、国産鶏モモ肉の焼き鳥など、商品化のストーリーが書かれた商品が今後どれくらい増えるかに期待したい。

例えば、米国のトレーダージョー(アルディの子会社)で店内ツアーを希望すれば、従業員が一緒に店内を回り商品説明をしてくれる。従業員が説明することまではしないまでも、POPなどで、商品が出来上がった経緯を説明して欲しい。しかもそれをクロワッサンのように驚きの価格で販売して欲しい。

②小型家電、家庭雑貨、衣料品、寝具などのさらなる拡大

アルディ、リドルの品揃えの特徴は、非食品が店の中央の平台で販売されていること。衣料品、小物雑貨、小型家電、寝具、DIY商品、小型農機具などが販売されていてとても楽しい売場だ。

以前は残り物のような雑多な売場であったが、最近はきちんと整理された売場をつくっている。パレッテのPCR検査キット、非接触体温測定器、羽根布団、加湿器などとてもユニークな品揃えには驚かされた。今後も話題の商品をいち早く導入し、驚くような低価格で販売して欲しい。

②名物商品の育成

レギュラーコーヒーやパックご飯、缶詰など「!!!ここでしかかえません」のPOPにどうしても目が行く。

イオングループでありながらPBのトップバリュは扱わない意図を考察する。前述したが、ハードディスカウントはSMの隣に出店している。そう考えると将来マックスバリュなどの隣の出店もあり得るのではないか。独自の商品開発に舵を切ったのにはそうしたことも影響しているのではないか。

英国リドルのクロワッサンの補充。100個ほどを一度に補充している。それでも従業員は1人。それを前提にしたバックヤードシステムができている
クロワッサン(78円)。フランス産AOP発酵バターを使用したクロワッサン。パレッテ自慢の逸品。袋に入っている(新型コロナの影響のためと思われる)が、がサクサク感は失われていない
パンオショコラ(98円)。デニッシュ生地にチョコレートを混ぜて焼いたパン。チョコレートの品質も高くておいしい。専門店の半額ほどの売価であるが価値がある
「お造り6点盛り」(598円、本体価格、以下同)。6×3=18枚、1枚当たり33円。マグロの色や鮮度がよく刺身だけでなく海鮮丼にも使えそうだ
「にぎり寿司10貫」(498円)。1月27日に購入、消費期限は28日午後11時。1カン約50円。ケの日の寿司にはちょうどいい。D+1が特徴
「いなり3個入り」(98円)。2カンで100円程度はよく見かけるが、3カン98円は安い。冷蔵売場で販売されているが寿司飯は硬くない
塩おむすび(48円)。こしひかり使用の塩おむすび。国産米と塩しか使っていない「リーンな」おにぎり。カップ麺と一緒に食べるには何も入っていないおにぎりがちょうどいい
「ポテトチップス コンソメ味」(60g48円)。入口の一番目立つ場所に大量陳列されていた商品。48円は破格値

過去の延長のオペレーションを脱却できるか

日本の「ディスカウント」はSMの延長であった。SMのオペレーションで価格を下げただけであった。それではEDLCは実現できなかった。いまの仕組みのまま価格を下げれば自分の首を絞めるだけだ。

これからはさらに商品力の戦いになる。「ストーリーテリング」ができる商品をいかに低価格で販売できるかが勝負の鍵となりそうだ。「こだわりの商品を高価格販売」はだんだん通用しなくなるように思う。

以前、ドイツのアルディに行ったとき、メイドを連れた女性がメイドに指示しながら買物をしていた。次に隣のSMのエデカに向かうと、再度その2人に会った。これは何を意味するのか。

つまり、「まずアルディで買物をしてから、SMで不足分を買う」ということだ。この行動を見て驚いた。ハードディスカウントは低所得者向けの店ではないことを実感した。

パレッテもSMの隣。まずパレッテで買物をしてから不足分をSMで買うようになれば本物だ。21年は「本物のディスカウント元年」になるかもしれない。パレッテに大いに期待したい。

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