ライフ市谷薬王寺店は300坪タイプながら、最新コーナーフル展開、インストア加工も多用し、差別化図る

2023.01.18

ライフコーポレーションが同社296店目、首都圏132店目、東京都新宿区4店目として、ライフ市谷薬王寺店を12月3日にグランドオープした。売場面積は1000㎡以下で、ライフコーポレーションの中でも小さな店になる。しかしながら、コンパクトな売場にインストア加工も通常店と同様に実施する最新コーナーを極力導入するなどこれまでの同社の小型店と比べても、マーチャンダイジング(MD)の強化が図られている。

約300坪の売場での取扱SKU数は1万を超える。年商目標は21億円とハイレベルだ。

都営大江戸線牛込柳町駅から約300m、徒歩約5分、都営新宿線曙橋駅から約600m、徒歩約10分に位置する賃貸マンションの1階にオープンした。

商圏の特徴としては、単身世帯が多く、店舗から1km圏内の単身世帯比率が59.8%を占めるなど通常店と比べ10ポイントほど高い。2世帯比率が19.8%と全体の8割が少人数世帯。

年齢別人口構成は30代が18.3%と最も高く、次いで40代が18.2%と若年層が多い。

さらに世帯所得が700万円以上の割合が平均より高く、高所得の単身世帯が多い傾向にある。店舗から500m商圏は住戸密集エリアで、直近5年間で世帯数が6.3%増加している上、今後も増加が見込まれている。

そうした背景もあってか、21時以降の売上高構成比が通常店の1.5~2倍ほど高く、通常は21時以降に売上げが落ちるところ、夜になっても継続的に売上げが上がる店になっている。

日本コカ・コーラの営業所跡に開発されたマンションの1階への出店。都市部ということもあって、周囲に大型の競合店はなく、大型店の最寄りの競合は1.4km離れた売場面積約499坪のヨークフーズ新宿富久店といった状況で、近隣の店とも差別化が図れるとみる。

一方で、都市部の小型店ということ要素もあって、レジについてはかなり踏み込んだ態勢とした。スマートフォンでお客自身が商品バーコードをスキャンしながら買物する形の「ピピットセルフスマホ」を導入し、貸し出し用のスマホの端末を40台用意している。

お客は自身のスマホに専用アプリをインストールするか、もしくは貸し出し用の端末を使用して買物をし、セルフ方式の専用レジで会計操作のみを行えばよい。これによってレジに並ぶ時間が短縮できる。スマホ会計機は3台導入。

「ピピットセルフスマホ」は、カートにタブレットが設置されているタイプ、貸し出したスマホ、あるいはお客が自身のスマホをカートに設置するタイプといったように幾つかのパターンがある

それに加えて、「キャッシュレスセルフレジ」を8台、「現金支払い可能セルフレジ」を2台、セルフレジを10台設置することでセルフレジ中心とし、結果としてレジに関しては省人化を図った他、スペースもかなりコンパクトになった。対面式のセミセルフレジは2台導入するのみだ。

売場は入口と出口を分けたエリアごとのワンウエーコントロールとなっていて、最後にレジで会計をして出口から出る形で、極力、人の行き来を減らすことで売場の狭さをカバーしている。

農産は野菜380、果実220、花35の計635SKUを品揃え。

カットフルーツ、杏仁豆腐といったデザート系をコーナー化して展開する他、都市部の小型店ではあるもののバックヤードを設けてインストア製造のサラダも展開する。

有機野菜や世界の珍しいフルーツを展開する「ワールドフルーツ」コーナーなど高単価の商品も差し込んでいる。

店頭では花と並んでドライフルーツの量り売りを展開
「ワールドフルーツ」は最近の新店では定番として展開される。珍しい、高単価の商品も多いが、固定客が付くなど他への相乗効果も見込まれる

ミールキットについては、農産、畜産、冷凍食品で展開。農産売場では「八百屋さんのミールキットコーナー」を展開。他、畜産売場では「あまに豚」「あまに鶏」を使用した商品、冷凍食品売場ではBIO-RAL(ビオラル)のミールキットを展開する。

続く畜産は、首都圏ライフ初めての取り組みとして冷凍の鹿肉を取り扱う。三重県の天然鹿である「芭蕉鹿(ばしょうじか)」の肉で高タンパク、低脂肪で健康志向にも向けた商品。商圏内に健康意識の高い層が多いと考え、チャレンジとして取り入れた。

豚、鶏などはプロセスセンターを活用しながらも、牛肉は店内加工を行うなど、品質重視の姿勢で差別化を図る。畜産は精肉500、加工肉150の計500SKUを展開する。

水産は対面コーナーをしっかり設け、調理サービスと共に丸魚を展開。特に鮮魚についてはこの対面コーナーを競合店との差別化要素として打ち出す。鮮魚は220の他、塩干150の水産計370SKUの展開。

惣菜も小型店とはいえバックヤードをしっかり設け、「ライブキッチン」として店内加工の商品を展開。寿司30、弁当85、フライド55、要冷120の計290SKUは通常店並みの品揃えだ。鉄板も導入し、ライフ名物「だし巻玉子」や「鉄板チャーハン」など最新店で展開される商品をしっかりそろえる。

弁当では人気の「アジアン」コーナーを設け、「カオマンガイ」などアジアンメニューも品揃え。こちらも同社最新店のMDを踏襲している。

さらにコンパクトながらインストアベーカリーも設定し、ピザやバーガー、サンドイッチを含め60SKUを店内加工中心に展開している。

インストアベーカリーも設置。一部、ベーカリーセンター製の商品以外は店内で加工

寿司に関しては、惣菜の寿司に加え、生鮮惣菜として水産の「うを鮨」もコーナー化して展開するなど小型店ながら、ライフの最新のMDがほぼ網羅に近い形で実現されている。

他、惣菜ではスイーツとしてフルーツに粒あん、生クリームを乗せ、ふわっとした食感の餅で包んだ「フルーツ大福」を新発売。ソーシャルネットワーキングで「映える」ような商品化を目指した。

また、新店で積極的に導入される「BIO-RAL」についても、ゴンドラ8本、2つの島を設けたコーナー化でしっかり展開。「オーガニック・ローカル・ヘルシー・サステナビリティ」のコンセプトに沿った商品210SKUを集積させている他、一部商品はぞれぞれの売場でも展開している。

売場はコンパクトながら、強化中の冷凍食品はリーチインケースで品揃えを充実。日常使いできる商品の他、世界のグルメ、専門店の味、スープ、ワンプレートなど広範に展開。

他、加食3090、菓子885、酒1145SKU、和日配600、洋日配590、冷食430、アイス130、卵25、パン・和洋菓子330、日用雑貨625、家庭用品400、文化用品50といったSKU展開で、合計のSKU数は1万365となっている。

酒は特にワインを強化し、内数で445SKUの展開。狙いどおりクリスマス、年末年始商戦では高単価の商品が動いたという。

生活関連では新店では強化分野のベビーフード、ペットフードについて、柱回りを活用して展開。定番商品に加え、健康に配慮した商品の品揃えを強化している。小型店の制約がある中で、品揃えを確保するためのさまざま工夫が見て取れる。

全般的には価格志向の高まりもみられるが、この店については売場がコンパクトということもあって、大きく打ち出すことはしない。

部門別の売上高構成比計画では農産約15%、水産約8%、畜産約12%、惣菜約10%、インストアベーカリー約2%、他加工食品、日配が約50%、生活関連が約2%といった構成で、これもどこかが特別高いというわけではなく、標準的なものとなっている。

ライフ市谷薬王寺店概要

所在地/東京都新宿区市谷薬王寺町80-1

オープン日/2022年12月3日

建物構造/鉄筋コンクリート造地上7階建て

売場面積/997㎡

営業時間/9時30分~24時

駐車場/なし

売上目標/21億円

店長/浅見和義

従業員数/93人(社員18人、パートナー75人)

お役立ち資料データ

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