特約店とは?代理店などとの違いや特約店のメリット、デメリットと併せて解説

2023.02.22

特約店とは、メーカー等の会社と特約店契約を交わした卸業者のこと。商品やサービスを提供するメーカーと、顧客の間には特約店や代理店、販売店などのお店が存在している。例えばスーパーは販売店で、お菓子や飲料メーカーと顧客の間に入り、販売を行っている。

本記事では、特約店とはどのような形態なのか、代理店や販売店、取次店、フランチャイズといった他の店舗形態との違い、特約店契約を結ぶメリット・デメリットなどを解説していく。

特約店とは?

「○○(メーカー名)特約店」と書かれた看板や、「○○(メーカー名)特約店証」が置いてあるのを見たことがあるだろうか。特約店とは、メーカーと特約店契約を結び、特別な契約関係のもと販売を行う小売・卸業者のこと。特約店は食品、酒類、自動車、医薬品など様々な業界で利用されている。

特約店契約を結ぶことで、メーカー側は流通経路の確保や安定して希望小売価格での販売をできること、卸業者側では特定のブランドを取り扱っているというブランド力の強化や新商品情報を他よりも早い段階で入手できるといった、メリットがそれぞれにある。しかしながら現在は、消費者のニーズも様々で、商品の種類が多い量販店や、ECが台頭し、特約店で販売をすることの魅力は減りつつあるという側面もある。

代理店、取次点、販売店、フランチャイズとの違い

特約店以外にも代理店、取次店、販売店の店舗形態がある。それぞれの特徴を見ていこう。

代理店

メーカーなどの会社から委託されて、代理店契約を結び、商品、サービスの販売や仲介を代行するのが代理店だ。例えば保険代理店、旅行代理店、携帯ショップが挙げられる。保険商品を提供するのは保険会社だが、お客に営業をしていくのは保険代理店だ。お客と保険の契約をするのは代理店ではなく、保険会社だ。保険代理店には保険会社から手数料が入ることで利益を得ている。ガソリンスタンドも代理店の一つで、石油会社から委託を受け、ガソリンを販売している。

代理店とは広い意味を持つ概念であり、広義の意味では特約店も代理店に包含されるともいえる。ただ。特約店の場合はより製造元や販売元からの販売フォローや独占権などのメリットを得られる傾向にある。一方で、契約によるしがらみや強制力なども強まる傾向にあるとされている。

販売店

販売店はメーカーから商品を仕入れて販売するお店のことでいわゆる小売店だ。例えばスーパーやコンビニなどが当てはまる。販売店は、商品の仕入れ先であるメーカーや卸売業者と販売店契約を締結し、商品を再販売できる。メーカーの商品を販売店で一度購入し、再度販売するようなイメージだ。基本的に販売価格から仕入れ価格や人件費等を引いた金額が利益になる。

販売店の特徴は、販売価格の決定に一定の裁量があることだ。スーパーでの割引シールのように、割引をして価格を低く設定することも可能だ。また、在庫を抱えなければならないという特徴もある。仕入れた商品が売れ残ってしまったとしても自分たちに責任が生じ、メーカー側が処理をしてくれることはない。

取次店

取次店では、サービス・商品を提供元に流すことを行っている。例えばクリーニング店は、お客から衣服のクリーニングの注文を受けてクリーニング工場に取り次いでいる。また、コンビニの物流サービスは、荷物をお客から預かり、運送会社に取り次ぐ。

取次店の特徴は、あくまでも取り次ぐことを担当するだけで、その後のフォローや対応に関しては関与しないことだ。コンビニで荷物を送ってきちんと届かなかった場合、対応するのはコンビニではなく配送をした運送会社になる。代理店と似ているが、代理店では営業、販売、その後の対応まで行うケースが多いのに対し、取次店では商品の購入やサービスの申し込みを提供元に流すという業務範囲に違いがある。

フランチャイズ

フランチャイズは代理店の一種。特徴は、メーカーからのサポートがあることだ。フランチャイズでは営業に必要となる制服やマニュアル、調理器具、営業ツールなどをメーカー側から提供されるというサポートがある。初めから認知度の高いお店を、確立されたマニュアルを基に運営できるといったメリットがある。

フランチャイズで事業を始めるには、店舗側はフランチャイズ権の購入、土地や従業員の確保が必要だ。フランチャイズ権の購入には多くの費用が必要になる可能性もあり、費用面でのデメリットも把握しておかなければならない。

特約店契約のメリット・デメリット

特約店契約は、契約内容によって異なるため、企業ごとに発生するメリットやデメリットは異なる。その上で、いくつか特約店契約において発生し得るメリットやデメリットについて紹介していく。

特約店契約のメリット

メーカー側のメリット

・希望小売価格で販売ができる

特約店契約を結ぶことでメーカー側の希望する小売価格でお店側に販売をしてもらいやすい。

・安定した流通経路

特約店契約によって特定のお店が販売をすると決まれば安定した流通経路を確保できる。

卸業者側のメリット

・ブランド力を高め、お客からの信頼に繋げられる

営業力が少ないお店であっても、「このお店にはこのブランドの商品が置いてある」というお客からの信頼に繋げられる。例えば看板などで「○○(メーカー名)特約店」と書かれているお店もある。

・新製品の情報が早く手に入れられる

次に出る新製品の情報を他店よりも早く提供を受ける場合もある。

・安定して仕入れられる

メーカーとの直接のやり取りになり、商品を安定して仕入れられる。契約内容によっては、安く仕入れられる可能性もある。

・資金援助が受けられることも

メーカーからの資金援助、リベート、報酬金といった資金面でもメリットが発生する場合がある。

特約店契約のデメリット

卸業者側のデメリット

・価格設定の自由度が低い

価格設定を比較的自由に決められる販売店に対し、特約店では価格設定の自由度が低い。メーカーからすると希望小売価格が通りやすいが、特約店側は価格に制限が生まれやすいというデメリットになる。

・営業や取り扱える商品に制限がかかることも

お店ならではの営業ができないことがある。また、特定のメーカーやブランドを取り扱うことができるが、他のメーカーの商品を取り扱えない可能性がある。特約店契約ではメーカー側の支配力が強く出てしまうため、それにより様々な顧客ニーズに対応しにくくなるデメリットがある。

・在庫リスクがある

販売店では在庫リスクがあるという特徴があるが、それは特約店でも同様だ。仕入れた商品の在庫はメーカー側で何かしてくれるわけではなく、特約店側で処理をしなければならない。

独占禁止法抵触への注意が必要

独占禁止法は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」という正式名称だ。独占禁止法では、市場での企業間の競争がなくなり、消費者が商品を選択できなくなるような行為を禁止している。

特約店契約は、内容によっては独占禁止法に触れるケースがある。特約店契約が独占禁止法に全て抵触するのではない。しかし価格統制など、契約内容によっては抵触する可能性があるため、特約店契約の内容は精査が必要となる。

メリット、デメリットを把握して店舗形態の選択を

特約店契約には、特定のメーカーの商品を販売できることや、安く仕入れられるなどのメリットがある一方で、価格設定の自由度が低い、取り扱い商品の制限などのデメリットもある。契約内容はよく精査をしてデメリットが大きくないか確認することが望ましい。特約店だけでなく、どの店舗形態が一番合っているかよく考えて選択をするのがいいだろう。

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