バンドル販売とは?意味やメリット、成功のためのポイントなどを解説

2023.03.10

マーケティング手法のひとつである「バンドル販売」は、売上アップのほか在庫品の一掃、客単価アップなどの多くのメリットが得られる。ただし、バンドル販売を成功させるためには、注意点やポイントを把握しておくことも重要だ。この記事では、バンドル販売の意味や事例、バンドル販売のメリットやマーケティングに取り入れるときの注意点やポイントを解説する。

バンドル販売の意味と事例

バンドル販売の意味と事例を解説する。

バンドル販売とは

バンドル販売とは、複数商品のまとめ売りやセット売りを行うマーケティング手法のひとつだ。「バンドル」とは英語の「束」「かたまり」「抱き合わせる」などの意味がある”bundle”に由来している。

商品を単品で販売するよりも、同一商品をまとめて、またはほかの商品と組み合わせてセットにして割引価格で売ることで、消費者は「便利」「お得感」「ついで買い」といった気持ちを持ちやすい。バンドル販売は、消費者の心理を引き出し、販売につなげる手法と言える。

バンドル販売の事例

バンドル販売は、小売店から飲食店までさまざまな業種での販売やマーケティングの手法としてもちいられている。おもなバンドル販売の事例を順に解説する。

ひとつめが、「同じ商品をまとめ売り」するバンドル販売だ。以下のような事例がある。

・靴下3足で●円

・Tシャツ3着購入で●%オフ

・エアコン2台目から●円引き

・コロッケよりどり5個で●円

もうひとつが「異なる商品を組み合わせてセット売り」にするバンドル販売だ。以下のような事例がある。

・ファストフード店での「バーガー+ポテト+ドリンク」のセット

・飲食店での「メイン+ライス+ドリンク」などのセット

・紳士服店での「スーツ+ネクタイ+シャツ2着」などのセット

・家具店での「学習デスク+椅子+本棚+ベッド」などのセット

・家電量販店での「洗濯機+冷蔵庫+テレビ+掃除機+炊飯器」などのセット

バンドル販売のメリット

バンドル販売は売上を上げられるだけでなく、在庫一掃などの点でも活用できる販売手法だ。バンドル販売によって得られる、おもなメリットを解説する。

一度に多くの商品を売れる

バンドル販売は、一度に多くの商品を売ることで販売個数と売上を増やせるメリットがある。たとえば靴下などの消耗品をバンドル販売にすることで、「後から必要になるので今まとめて買った方がお得」という顧客心理に働きかけ、一度に複数個の販売につなげられるだろう。

「新生活家具」「新入社員のスーツセット」など、消費者のニーズに合わせたセットを作るバンドル販売の手法もある。「必要なものをまとめてお得に購入できる」という顧客心理に働きかけることで、セットで複数の商品のまとめ売りが可能だ。

客単価を上げられる

バンドル販売で組み合わせる商品には「単価の高いもの+単価の低いもの」の組み合わせもある。たとえば飲食店でのメイン料理(単価が高い)+ライス・ドリンクバー(単価が低い)のセットが代表例だ。

単価の高いものと低いものを組み合わせて販売することで、バンドル販売には単品で販売するよりも客単価を上げられるメリットもある。

在庫管理の負担を減らせる

バンドル販売は「ヒット商品+売れ行きの悪い商品」の組み合わせでの販売も可能だ。すでに在庫化してしまっている商品も、人気商品と組み合わせてバンドル販売することで、売れる可能性があるだろう。バンドル販売によって在庫の整理をし、在庫管理の業務負担やコスト削減にもつなげられる。

新たな売り方やニーズが発掘できる

バンドル販売は、いわゆる「脇役」というポジションの商品でもメインとして売る手法としても活用できる。たとえば飲食店であまりスポットの当たらないメイン料理でも、サラダやドリンクとのセットとしてバンドル販売することで、メイン料理にスポットライトを当てた売り方ができるだろう。その結果、新しい売り方とニーズの発掘にもつながり、販売戦略の幅が広げられる可能性もある

売り場の活性化につながる

ひとつのテーマで商品をセットやまとめ売りにしてバンドル販売をする場合、売り場のディスプレイや見せ方などにも工夫が必要だ。たとえば「新生活」「リビング」などのテーマに沿った家具のセットをバンドル販売するときには、消費者が実際に商品を手にしたあとに使用するイメージを持ちやすいように、バンドル販売の家具を実際の部屋のようにレイアウトするなどの手法がある。

バンドル販売のテーマやレイアウト、ディスプレイの提案も従業員から多く募るようにすれば、売り場の活性化にもつながるだろう。販売手法や売り場の見せ方のマンネリ化を解決する可能性も、バンドル販売は持っている。

バンドル販売を成功させるポイントと注意点

多くのメリットやマーケティング効果が得られるバンドル販売だが、ただ商品をまとめたり、セットにしたりするだけでは販売にはつながらない。バンドル販売を成功させるポイントと注意点を踏まえておこう。

利益率を踏まえて商品の組み合わせを考える

バンドル販売で大きなマーケティング効果を得るには、利益率を踏まえて商品の組み合わせを考えることが重要だ。たとえば、利益率の高い商品と利益率の低い商品を組み合わせてバンドル販売することで、利益率と客単価が上げられる。

フロントエンド商品とバックエンド商品を組み合わせる

フロントエンド商品とは、お手頃価格やお試し価格など消費者が手に取りやすい「集客商品」、バックエンド商品とは、一度フロントエンド商品で商品の価値を知ったうえで購入してほしい「本命商品」を指す。たとえば、ゲームの序章のみプレイできる「お試し体験版」がフロントエンド商品、最後までプレイできるゲームソフト本体がバックエンド商品に当たる。

ところが、フロントエンド商品のみ売れてバックエンド商品が売れず、在庫化してしまうことがある。フロントエンド商品とバックエンド商品をバンドル販売でセット売りし割引価格にすることで、在庫を一掃できる可能性が高くなるだろう

付加価値を持たせる

バンドル販売は利益率の高い商品や在庫品の販売に有効な手法だが、ただ抱き合わせて販売するだけでは当然ながら販売にはつながらない。

特に、売れ行きの悪い商品や在庫品をバンドル販売することで、消費者に商品のマイナスイメージを持たせてしまう可能性もある。バンドル販売をするときには、商品同士を組み合わせることで得られる付加価値を考えて組み合わせを決めると良いだろう。

ユーザーニーズから組み合わせを考える

バンドル販売での組み合わせや、付けるべき付加価値が分からないときには、ユーザーニーズを分析して組み合わせを考えるのが有効だ。たとえば小売店における冬のユーザーニーズを考えると、ひとつの候補として「鍋」がある。

バンドル販売では「土鍋+カセットコンロ+カセットボンベ」「つくね+鶏肉+しゃぶしゃぶ肉+水餃子+ロールキャベツ」「葉物野菜+豆腐+きのこ」「その他具材+鍋スープの素」などの組み合わせが候補となるだろう。さらに利益率の高い旬の食材と一緒に、在庫化しやすい土鍋やカセットボンベ、コンロなども売れる可能性が高まる。

バンドル販売のプロモーションを行う

バンドル販売の効果を出すためには、顧客にお得感や利便性を伝えるためのプロモーションを行うことも重要だ。たとえば、単品での販売価格とバンドル販売によるまとめ買いやセット買い価格を同時に提示すると、顧客が割引前後の価格を比較でき、購入につながる可能性が高くなる。

リピーターとなるための施策を行う

バンドル販売で一時的に利益が上げられたとしても、継続的な利益を出すためには顧客にリピーターになってもらう必要がある。取り扱う商品の特性を考えて、リピーターになってもらうための施策も同時に実施しよう。

たとえば季節に応じたバンドル販売をイベントのように繰り返す、バンドル販売の商品を購入したら別の商品が割引になるクーポンを販売するなどの方法がある。

会計処理を効率化させるための仕組みを導入する

バンドル販売を取り入れることで、複数の商品の同時会計や、セット売りによる割引などの会計処理が発生する。従来の会計システムでは会計処理が煩雑になってしまうため、効率化するためのシステムの導入がおすすめだ。

たとえばPOSレジをバンドル割引対応にするなどの方法がある。POSレジにバンドル販売を利用、または購入した顧客のデータも蓄積されるので、ほかのマーケティングにも活用できるだろう。

ほかの施策と組み合わせる

バンドル販売とほかの施策を一緒に組み合わせることで、より高いマーケティング効果が得られる。バンドル販売と相性の良いマーケティングの手法には、以下のものがある。

ニッチ戦略…すきま戦略とも呼ばれる。特定の分野に資源を集中させることで、独自性やシェアを拡大させる方法。十分な資金源などがなくても競合よりも優位性を持てる可能性が高い。

サンドイッチ戦略…「極端の回避性」という人間心理を利用した手法。極端の回避性とは、一番上や下を避けて、平均的なものを選びやすい傾向のある人間心理のこと。真ん中の価格帯の商品やサービスに利益率の高いものを配置する。

バンドル販売で利益向上や在庫管理負担の軽減につなげよう

バンドル販売の概要や事例、メリット、バンドル販売を成功させるためのポイントを解説した。バンドル販売を活用すれば、売上や客単価のアップ、在庫の一掃、新しいニーズの発掘など多くのメリットが得られる。バンドル販売導入後リピーターや業務効率化のための施策の導入も同時に行うことで、よりバンドル販売での購入率アップや利益の最大化につながるだろう。

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