まいばすけっとがトップバリュの比率を約50%に高めた実験として仲町台駅南店をリニューアルオープン

2024.03.29

イオンが都市部での戦略的小型店として2005年から開発を進めてきた「まいばすけっと」が、プライベートブランド(PB)商品であるトップバリュの比率を標準店から2倍以上に高めた仲町台駅南店(横浜市都築区)をリニューアルオープンの形でオープンした。

イオン直営の形でスタートした同フォーマットだが、現在では運営はまいばすけっとが担い、3月29日段階で首都圏に1133店を展開するに至っている。

仲町台駅南店は横浜市営地下鉄ブルーライン仲町台駅から徒歩1分ほどの駅前立地の店となる。今回、3月29日の改装に際し、トップバリュの品揃え構成比は通常店の品揃え構成比は約20%だが、同店では約50%にまで高めた。

仲町駅前南店の売場面積は、83.96坪。まいばすけっとの標準的な規模の1.5倍。アイテム数は約3300。こちらは標準的な数となる。売場面積はリニューアル前と変化はない。

「現在、日本経済がインフレの方向に進んでいる中で、より一層、節約志向が強まっている。食品中心としてPB商品が多くの注目を集めている」(岩下欽哉・まいばすけっと社長)

生活必需品を中心にトップバリュの売れ筋に加え、M(ミレニアル)Z世代(1980年代~2010年までに生まれた世代)を意識した商品を強化。

まいばすけっとの客層は40代~50代が半分ほどを占める他、20代も1、2割ほどに上ることから、イオンのフォーマットの中でも客層が比較的若い。また、男女比は4対6ほどで女性が若干多い傾向にあることから、コンビニとも異なる特性がある。

特に仲町台駅南店はまいばすけっとの中でも客層が若い上、若いファミリー層の方が多いことから今回の実験に適していると判断したという。

節約志向に応える価格の打ち出しと、若年層対応の2つが今回の実験の大きな目的といえる。そのため、同社としてもこのタイプの店を水平展開するというよりは、この店で出た成果を部分的に既存店に導入していくことを想定している。

特に90年代後半以降に生まれたZ世代を意識した味や見た目、ネーミングとした「トキメクおやつ部」シリーズ、グミや干し梅、チョコレート、野菜チップスなどの菓子、ハーブやスパイスの香り、果実などの素材を組み合わせた飲料の「Bar-ish(バーリッシュ)」シリーズなど、新たな軸の商品を強化し、「MZ世代のお客さまにもご来店いただけるようなお店にしていきたいと考えている」(岩下社長)という。

売場内にはサイネージも設置し、情報発信

その上で、リニューアルオープン後はお客からの声を集め、その声をもとに小型店のお客のニーズにマッチした商品開発につなげていきたい考えだ。

トップバリュを開発するイオントップバリュとしても、「『トップバリュがあるからイオンのお店、まいばすけっとに来る』と言われるために、日々商品開発の努力をしている。今回改めてこの店にいらっしゃるお客さまをターゲットにした商品を導入した。これを短いスパンで検証し、しっかりターゲットの皆さんの思いに合った商品であるということを私たちも検証させていただいた上で、さらに商品開発を加速させていく」(森 真紀・イオントップバリュ取締役ブランド&コミュニケーション本部長)と意気込む。

店内にはプロモーションコーナーを設置。売場面積が限られるまいばすけっとでは設置する店は基本的にないが、今回、象徴的な店として設置。商品は固定するわけではなく、「売場に必ず何かがある」ということを来店客に伝えたいという
ナッツやドライフルーツカテゴリーの市場が伸長しているということから開発した「ナッツ&ジョイシリーズ」

また、低価格の打ち出しは、相対的に価格競争の少ない都市部での差別化要素として、まいばすけっととしても戦略上の大きな位置づけとなり、実際に低価格ラインが強化されているものの、今回の場合、特に若年層が多いまいばすけっとを舞台に若年層ターゲットのトップバリュを訴求し、検証した上で商品開発のサイクルを回していくという性格が強いといえる。岩下社長も「ハードディスカウントにはならない」とする。

ただし、ドイツ発祥で世界各国で低価格を武器に勢力を伸ばしているアルディやリドルなどのハードディスカウントストアはPB主体ということで、今回のトップバリュ強化も同じ方向性と見ることができる。

実際、まいばすけっと、あるいはディスカウントストア専売のPBも多数導入されていて、加工食品の価格競争力は高い。機能としてはハードディスカウントストアに近づいているともいえる。

購買頻度が高い豆腐、納豆、麺類などの和日配は今回のリリューアに際して最もトップバリュの品揃え構成比を高めた分野。品揃え構成比は約70%に上る。豆腐は5SKU、納豆は6SKUをトップバリュで品揃え
トップバリュではまいばすけっと専売となる商品も開発。水やお茶など価格を強化したものの他、通常は横にして陳列する商品について、売場面積の狭さゆえに縦にして陳列するためにパッケージを変えたものなどもある
業態の特性があるため、ディスカウントストアの専売商品も多数導入。まいばすけっととしては価格も重要な要素と考えている。専売商品の中にはカテゴリーごとにブランドを付けている商品もあるが、これはアルディなど海外のディスカウント業態にならった展開
チルドレディーミールの売場を拡大し、トップバリュのみを45SKU品揃え。まいばすけっとに多い単身世帯、子育て世帯に向けた施策。「元気をチャージ粥シリーズ」なども品揃え

売場としては、特に冷凍を強化。生鮮に隣接した素材系の冷凍売場も合わせた全体の冷凍売場は通常の店が扉の数で10~13枚くらいのところ、仲町台駅前店は24枚設置。簡便ニーズが高まっている冷凍食品売場ではトップバリュのワントレーの商品などを強化した。

冷凍は強化分野。12年ごろから冷凍の売場の拡大をしてきたが、特に素材系の冷凍野菜の支持が高い。特にトップバリュ グリーンアイのオーガニックの商品が好評。オーガニックは30代〜40代の主婦が良く購入しているという

今回のリニューアルでは低価格の打ち出しも強化したため、1品単価が下がることもおり込み済みだが、売上げをリニューアル前比で10%以上伸ばし、粗利益も増加させることが目標となる。

まいばすけっととしては24年度、約100店の出店を目標としているが、今後も同様のペースで店数を増やしていきたいという。

仲町台駅南店は駅前店舗のため、学生や仕事帰りの人、さらに若年世代のファミリーが多いことから惣菜も強化。今回は少量サイズのカップ惣菜などを投入した
壁面の店頭は青果売場。品揃えが限られる中、オーガニック(有機)の商品も展開
青果の冷蔵ケース
生鮮食品のパック商材は精肉を中心に一部品揃え
ナショナルブランドなど値上げが続く中、菓子などはトップバリュの強みが生きる商品
レジはセルフレジ3台、対面レジ3台を設置。既存店でもセルフ化は進んでいる

まいばすけっと仲町台駅南店概要

所在地/神奈川県横浜市都筑区仲町台1-2-22

リニューアル日/2024年3月29日

売場面積/83.96坪

アイテム数/約3300

お役立ち資料データ

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