ミニストップがフラッグシップ店をオープン、FFとSM型品揃え強化+OMO実現目指す

2024.05.21

ミニストップは、フラッグシップ店として「ニューコンボストア」を5月20日にグランドオープンした。ミニストップ神田錦町1丁目店を全面改装し、同社が創業以来強みとしてきた「ファストフード(FF)」と「コンビニエンス(CVS)」を融合した「コンボストア」を進化させた。

外観も標準店と異なっていて、ミニストップを想起させる黄色、オレンジ色がない青色ベースになっている

同社としては、昨今の環境変化や生活者ニーズの多様化に応えるため、2023年度から「Newコンボストアモデル」の確立に向けた商品改革、オペレーション改革を推進すると共に、デジタル事業であるEC(電子商取引)、QC(クイックコマース)や職域事業を育成してきた。

今回の店はそれらを集大成したような店となる。

ファストフードについては、「専門店品質」を目指した強化が図られた他、サービス、品揃え、さらに提供方法についても磨き込み、「新たなコンビニエントにお応えするフラッグシップ店」としてオープンさせた。

今回の店の役割について、藤本明裕社長は次のように語る。

「当社のミッションは、『私たちは、「おいしさ」と「便利さ」で、笑顔あふれる社会を実現します。』。これは当社のパーパスと位置付けている。『おいしさ』と『便利さ』が当社の提供価値であり、創業以来、FFとCVSを融合させたユニークなスタイルであるコンボストアで実現してきた。一方で、お客さまのニーズや生活スタイル、価値観の変化が急速に進むいま、提供価値の定義も進化しなければならない。『おいしさ』は専門店品質のユニークな価値ある商品、『便利さ』はサービス、品揃えと提供方法の両面で新たなコンビニエントニーズにお応えすること。コンボストアを構成する2つの要素、FFとCVSそれぞれを磨き上げ、魅力的にしていくことが、ニューコンボストアの取り組み。当社はこの提供価値を引き上げることで社会課題の解決につなげていく」

強みのFFの品質を「専門店品質」にまで高める

今回のオープンから今後に至る取り組みを2つのフェーズ(段階)と捉え、23年度に取り組んだFF、CVSの磨き上げを第1フェーズ、その後、24年から取り組むデリバリー、EC、OMO(オンラインとオフラインの融合)、他社協業+個店モデルの競争力を第2フェーズと位置付ける。さらにその根底には「商品力」としての「SPA(製造小売業)化」が流れている。

第1フェーズではラボ店舗で商品改革、オペレーション改革を実施し、その成果を成功カセットとして切り出して既存店への導入を進めてきた。第2フェーズでは、これまで新規事業として取り組んできたEC、QC、アプリや職域事業を機能として統合し、OMOを実現していきたいとしている。

今回のフラッグシップ店を新たなラボ店舗として今後、成功カセットを既存店に水平展開していく研究開発拠点としながら、第2フェーズを進化させていく意向だ。

今回のニューコンボストアの特徴は、大きく分けて4つ。

FF提供の世界観、専門店品質のFF、ワンストップ・ショートタイムショッピングの実現、そしてOMOの実現の4つである。

1つ目のFF提供の世界観では、入口正面にFFのカウンターを設置し、注文にはキオスク端末、あるいはモバイルオーダーで対応することで、フルセルフでの注文を実現。その上で出来たての商品を提供する際には対面にこだわる。

「売場全体の省人化を進める一方で、有人スペースとしての価値を高めていく」(藤本社長)

2つ目の専門店品質のFFでは、これまで培ってきた注文を受けて作り、提供するという同社が「オーダーフォーユー」と呼ぶ方式にこだわった上で、主食の核商品をおいしさだけでなく、健康の価値も追求して提供する。

3つ目はCVS売場を進化させ、既存店の品揃えと比較してスーパーマーケット(SM)型の商材を拡充し、さらに値頃を訴求しつつ、決済についてはキャッシュレス化、フルセルフ化とすることで、ワンストップ・ショートタイムショッピングの機能を強化すること。

農産、畜産の他、一部ではあるが、水産の品揃えに加え、弁当、さらにはイオンのプライベートブランドのトップバリュなどSM商材が強化されている。

4つ目は、4月末に160万ダウンロードを突破したミニストップアプリをインターフェース(接点)とした時間、場所を選ばない利便性を提供し、OMOの実現となる。店外には留め置きロッカーを設置している他、ECのための店内QR表示などを実施している。

FFの売上比率を10%ポイントアップの約25%に

「FF」は、創業から45年間培ったノウハウを結集し、出来たての商品を「一番おいしい状態」で、専門店品質でスピーディに提供することにこだわる。

FFはタッチパネルを用いてセルフサービスで注文する

商品については全粒粉を使用するなど素材へのこだわりや野菜をふんだんに使用するなど、おいしさだけでなく、新たな価値として健康にもこだわる。

今回、毎日食べても飽きないおいしさのホットドッグ、野菜が取れるトルティーヤのサラダラップ、生野菜とチキンを挟んだカンパーニュ(バジルチキン)を発売。もちろん、ソフトクリームをはじめとしたコールドデザートも注文を受けて店頭で作る態勢で提供する。

ホットドッグのドッグロールは、北米産主体のフランスパン専用粉とオリジナルブレンドの強力粉を使用し、国内工場で生産。焙煎した胚芽を使用することで、小麦胚芽の豊かな風味が味わえるようにした。

このドッグロールに天然羊腸を使用し、うまみとこくがある粗びきポーク100%のソーセージを挟む。これを本体価格199円、税込み214.92円で提供。食べ飽きない、毎日食べ続けられる商品を目指した。

今後、販売時季が限られがちの中華まんの什器がスチーム調理で使え、さらに提供までの時間が30秒で済むというオペレーション面にも留意した。

紙に包んで提供されるホットドッグ
ドッグロールに全粒粉を使用していることが分かる。ドッグロールにソーセージのみが挟んであるシンプルな仕様。ケチャップとマスタードはセルフサービスでかける

ホットドッグなどの主食メニューとコーヒー、スープのセットも提供する。スープは国産野菜のみを使用し、冷凍の状態で納品のため添加物、化学調味料無添加を実現、さらに食品ロスの削減を目指し、カット野菜の端材を活用している。

カウンターコーヒーは、加圧設定によってバリスタのような多様な味の変化を楽しめるエスプレッソマシーンで提供。ホットコーヒー、アイスコーヒーに加え、今回、北海道産特選牛乳を使用したカフェラテを発売。エスプレッソマシーンで抽出することでさらにコーヒーの深い味わい、ミルクのおいしさが楽しめるようにした。

左がプレミアムコーヒーとミルクメニュー専用のエスプレッソマシーン

また、神田錦町1丁目店はオフィス街ということもあって事業者需要も見込んで大人数向けポットサービスも展開。約10杯分、税込み1800.36円と、「コンビニコーヒー」からすると高い印象もあるが、ポット専用のコーヒーとして、豆にコロンビア産のオーガニックの豆を使用し、専門店に匹敵するコーヒーと自負している。これは後述する職域事業とも関連した取り組みとなる。

ミニストップのソフトクリーム専門店事業の「MINI SOF(ミニソフ)」で人気のスイーツドリンク「シェイクソフト」も提供する。

シェイクソフトは、フルーツとソフトクリーム、氷をカップに入れ、トップシールで密封して提供する商品。シェイクする回数によって食感が変わる楽しさも含めた新感覚のフルーツシェイク。

シェイクソフトのイチゴ

また、ソフトクリームについても、コーンにグラノーラコーンを使用することで、おいしさに加えて、健康も意識した仕様としている。

注文はモバイルオーダーも含めセルフサービスだが、商品を渡す際は、対面にこだわる

対面で提供する商品に加えて店内調理の弁当も含めたFFの売上高構成比は、従来は約15%(23年度15.6%)だが、同店では約25%にまで高めたい意向だ。

当然、FFを強化すると人時もそれなりにかかることになる。人手不足が深刻化している折、人時をかけることの難易度は上がっているが、レジについては完全にフルセルフにしていることから、それで浮いた分の人時を調理やサービスにあてる形で成り立たせる設計としている。

レジは全てフルセルフレジ。ただし、たばこなどの購入の際は、従業員が確認をする

カウンターFF以外の惣菜類も大幅強化している。弁当や惣菜類はゴンドラで展開する通常のCVS商品に加え、入口正面の常温平台でも展開。一大弁当ゾーンを形成している。特に朝食、昼食時の時間のない中でも買いやすい売場づくりを目指す。

結果的に弁当、惣菜に関しては、ゴンドラで展開するCVS商品、平台で展開する店内製造の商品、また、同社が職域事業で展開するカフェスタイルの店「cisca(シスカ)」で取り扱う弁当、さらにイオンの調達網を生かした商品ということで、4ラインを展開していることになる。

店内調理の弁当
「cisca(シスカ)」で取り扱う弁当、こちらはアウトパック
トップバリュを含む、イオンの調達網を生かした弁当。これもアウトパック

トップバリュは1.5倍の1000アイテム以上、商品構成比3割以上に

「CVS」の要素については、いまの時代の「コンビニエント」を追求する。長時間営業、近い、便利、使いやすいなど従来のコンビニエント、即食の要素に加え、生鮮食品や「くらしの品」の品揃えを拡充すると共に値頃で提供。トップバリュの品揃えは従来比約1.5倍の1000アイテム以上に拡充した。商品構成比では3割以上まで高める。

全体のアイテム数は約3500だが、これは従来比2割増しの水準となる。

生鮮食品については、農産など一部既存店でも取り扱いがあるが、従来の枠にとらわれず、今回、新たにイオン商品調達やイオンフードサプライといったイオングループの調達網を活用して品揃えする。農産が約70アイテム、畜産が約30アイテム、水産が約20アイテムで、生鮮で約120アイテムの品揃えとしている。特に入口近くでは農産品を展開し、季節感、鮮度感を演出しながら生活密着型、普段使いの店を印象付ける。

壁面側の売場先頭は農産
農産売場の前に立つ藤本社長
畜産と水産のトレー商材はごくわずか

需要が高まっている冷凍食品では野菜、おかず、弁当・米飯類、パスタ・ピザ類、麺類、氷など、これまでのミニストップの約3倍の商品数を取りそろえ、簡便ニーズや買い置きニーズに応える。

ワントレータイプの冷凍弁当、冷凍米飯、パスタ、麺類などではトップバリュやトップバリュの低価格ラインのベストプライス、冷凍野菜ではトップバリュベストプライスの他、付加価値ラインのトップバリュ グリーンアイを中心に取りそろえ、値頃と価値の両面で訴求していく。

商品面の他、レイアウトについても、買い回りしやすさを重視したレイアウトにしている他、セルフレジ、モバイルオーダー、キャッシュレス化といったタイムパフォーマンス重視の需要に応える施策でショートタイムショッピングの実現を図るなど、さまざまな形でコンビニエントを追求する。

韓国コスメはすでにフェースマスクなど数アイテムは全店展開となっているが、今回は品揃えを強化し、3尺3段の30アイテムを展開。売れ筋を見つけて水平展開を予定している

「OMO」の実現については、これまで「パーツ」として成長させてきた新規事業を機能としてリアル店舗と融合させる段階と位置付ける。その上で、進化したファストフードと新たなコンビニエントを備えたコンボストアに、オンラインサービスが融合したOMOの実現を目指す。

ミニストップアプリをリアルとデジタルをつなぐインターフェースとして、注文した商品の店頭受け取りや宅配ロッカーでの留め置き、デリバリーやモバイルオーダーの注文の際も利用できるなど、ECやQCといったデジタルサービスへのアクセスを容易にする。

同時に、アプリ自体を進化させ、ワントゥワンマーケティングによる顧客情報、購買行動分析に基づく最適なクーポン配信やキャンペーンの告知、あるいは利用金額に応じたプレミアム会員制度を試験展開しながらロイヤルカスタマーを増やしていく。新たなロイヤリティプログラムとして導入するプレミアム会員は一定条件を満たすお客に対して毎日コーヒー1杯が無料になるなどのベネフィットを用意する。

さらに、イオングループ内外の企業との相互送客も目指しながら、これまでにない商品、サービスを提供するという展望もあるという。

ECに関しては、自宅への配送だけでなく、フラッグシップ店での店頭受け取りも可能。さらにEC専用商品の店頭販売を実施すると共に店頭告知からECサイトへと誘導するなど、リアルとネットがシームレスに接続する状態を目指す。

外部プラットフォームを活用するQCは現在、約1300店で実施しているが、今後はいままで取り扱っていなかった即食カテゴリーの拡充、品切れを防止するオペレーション態勢の確立を進める。

取り組みを切り分け、成功カセットとして水平展開を図る

また、今回のフラッグシップ店では近隣事業所において、B to Bビジネス実証を先駆けて実施する。先述のコーヒーのポットサービスもその一環だ。

オフィスなどの施設内に設置する無人コンビニ「MINISTOP POCKET(ミニストップポケット)」を関連サービスの拠点含め全国で、24年4月末時点で1440拠点展開するなど、拠点の拡大を通じて昨年黒字化した職域事業では、ECと連動させることで近隣のオフィス需要を取り込むサービスを展開する。

また、地域という点では、他企業との協業についても今後、取り組みを強化し、地域の産業とデジタル化で連携を図ることで、第2フェーズで目指す「新たなコミュニティ拠点」を構築していく。

「EC、QC、地域がつながり、リアル店舗と融合することでOMOを実現していく。フラッグシップ店舗を新たなラボ店舗として、FFでは核商品や提供方法改革、コンビニエントではSM型品揃えやアプリをインターフェースとした時間も場所も選ばない注文方法といった取り組みを成功、実証する」(藤本社長)

これらの取り組みは細かく切り分けることで、導入率を上げ、成功カセットとして当面は新店60店、活性化店100店、さらには既存店への水平展開を図っていくという。

今回のミニストップの取り組みは、単に店舗やECにとどまらず、地域とも連動した壮大な視野に立つものだが、いずれにしても都市部、郊外を問わず、店舗に加え、オンラインも活用した小商圏型のフォーマットの追求が、コンビニにとどまらず、SM、ドラッグストアも加えた形で進んでいる。

異なる業態から結果として共通のフォーマットに向かっているように見えるが、同社の平松恭輔・執行役員戦略本部本部長は「われわれはニューコンボストアということで、特に強みであるFFとCVSが組み合わさったところが非常にユニークな業態であると考えている」と、他社との差別化ポイントについて語る。

さまざまな経緯を経て現在の店舗数は海外を合わせても2000店強と、大手3社とは1桁違う水準にとどまっている他、同じイオングループで、低価格を強みとするまいばすけっとが直営出店で1100店を超えてくるなど、取り巻く環境は厳しさを増す。まいばすけっとが24年度約100店の出店を目指すのに対し、ミニストップは同約60店。ミニストップは25年度は倍増の約120店の出店を目指すとしているが、出店する物件を含め、競争が激しいことは確かだろう。

創業以来、培ってきたFFの強みを生かしながら強いフォーマットが構築できるか。今回、具体的な形として誕生したニューコンボストアに期待がかかる。

売場では「お掃除ロボット」が清掃を担う

ミニストップ神田錦町1丁目店

所在地/東京都千代田区神田1-1

オープン日/2024年5月20日(グランドオープン)

営業時間/23時間営業(3時~4時休業)

店舗面積/約79坪(約262㎡)

取扱アイテム数/約3500アイテム

お役立ち資料データ

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