ローソンが、アフターコロナを見据えた「都市型」「個店最適」小容量惣菜を専用売場で発売、約1200店で展開
2022.04.22
2021.06.27
ローソンが、都市型の個店最適化の取り組みの一環として、新惣菜ブランド「マチのデリ」シリーズを開発。関東、近畿の1都2府4県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、京都府、兵庫県)で展開している店舗の約2割に当たる約1200店舗で6月22日から順次を展開している。これら約1200店舗は同じエリア内のローソン店舗の約2割に相当する。
ローソンは、新型コロナウイルス感染症拡大によって大きく変化した社会やお客の価値観に対応するため、2020年10月に「ローソングループ大変革実行委員会」を立ち上げたが、「この委員会の目指すところは、コロナ禍で変化するお客さまのニーズに対応するために、これまでの全国一律の店舗づくりではなく、そのマチ、マチに合った個店の最適化を目指すもの」(大谷弘子・執⾏役員マーケティング戦略本部副本部⻑兼商品本部副本部⻑)だという。
今回、緊急事態宣言やリモートワーク、飲食店の時短営業などの影響を大きく受けている「都市部」の展開から開始した形だ。
新型コロナウイルス感染症拡大以降、自宅で調理する傾向が強まったが、ローソンとしては在宅勤務の長期化や忙しさによる調理疲れや外出自粛の影響などから、中食へのニーズが高まっていると判断。
一方で、家族でも異なる食事を取ったり、異なる時間に食事を取るなど「食のパーソナライズ化」が進む中、特に女性においては「自分の好きなものをちょっとずつ自由に組み合わせて食べたい」というニーズが多いことがローソンの調査で分かったという(2019年6月~20年3月で3 回実施、対象人数約5500人)。
また、自分や家族に対する健康意識の高まりもある。ローソンが調査したところ、「できるだけ野菜を多く取りたい、取らせたい」というニーズを多くの人が持っていると分かった。
「マチのデリ」シリーズは、これらのニーズに対応するため、彩り豊かなサラダを中心とした小容量の惣菜11品の新商品として発売した。展開するメニューは、調理工程が複雑だったり材料が多いなど「自宅で作るには手間がかかる」「他の商品では展開していない、凝った」メニューを意識。それらを惣菜として「手軽に楽しめる」ことを訴求する。
また、事前のモニター調査では特に女性のお客の魚介のニーズが高かったことから、魚介のメニューが多くなっていることも特徴だ。メニュー選定に際しては、「デパ地下」も意識されている。
エスニックなものも含む①サラダや②軽食、店内で揚げた一口サイズのライスコロッケなど③フライドフーズの大きく3つのカテゴリーで開発した他、既存の揚げ物についても組み合わせでの購入がしやすいように小容量サイズ5品を追加するなど、全般的に「小容量」の商品を「組み合わせて買える」環境を整備した。
「メイン、サイド、サラダ、スープなど、自分の気分や体調などそのときに欲しているニーズに合わせて選んで組み合わせて楽しむことができる」(大谷副本部長)
サラダについては1ポーション100g程度を基本に設計。「プラス一品に適切な量に設定している」(奥⻄真名・デリカ・FF部マーチャンダイザー)。買われる際も、1回当たりの購入個数が1つを想定していたところ、2つ買うお客が非常に多く見られたという。
酒のつまみとしての利用もあるようで、一部メニューはそれも意識した設計としている。
今回の展開に際しても、お客の予算を昼食時には600~700円、夕食時は900~1000円と想定し、その中での買い合わせを前提とした売価としている。
第一弾は、夏に向けたものでサラダなどがメインになっているが、今後秋や冬に向けては電子レンジ加熱のスープやグラタン、ドリアなどホットメニューをラインアップしていく。
売場は短時間での買物ができるように買い回りを重視し、カラフルな装飾を施した専用の売場を設ける。選びやすさや楽しさなどを買物体験の観点も重視した。
お客の不満から見えた解決ポイントとして、「⾒やすく、買いやすく、ワクワク楽しい買物体験ができる」ことと設定。
アテンションの高い販促物を導入することで、「①店内外から⼀瞥で分かる売場に」、また、「②買い合わせしたい商品がすぐに⾒つかる陳列⽅法の⾒直し」「③商品が⾒やすく取りやすい陳列&食べ物が美味しく‘映える’ライティング」の3点を売場コンセプトとしている。
什器は従来と大きく変え、スーパーマーケットの冷蔵ケースのように最上段の奥に鏡を設置して豊富感を出している他、棚照明を採用するなどこだわった。
個店の特性に応じて、大型のアイランド型什器を導入店、デザート什器を背中合わせにしたような什器を導入する店、あるいは壁面のオープンケースに装飾を施して集合陳列する店など幾つかのパターンで導入を図る。
アイランド型の什器には「マチのデリ」の商品だけでなく、デザートなどいっしょに買われることが想定される商品を併せて展開する。「デリカ関係を集合し、マチのデリを核として展開することで、通常の店舗よりも選ぶ幅を広げる」(マーチャンダイザー)
さらに、「わざわざ混んでいる遠くのスーパーやデパートに行って買物をしなくても、自宅やお勤め先の近くにあるローソンで」(大谷副本部長)という、コンビニの「近さ」というメリットも訴求する。
サラダ類で30%、惣菜類で20%の売上増を目指す
今回、展開を開始する約1200の店舗は、リモートワークや飲食店の時短営業など、外食機会が減る中で、一方で家での手料理にも時間と手間がかけられないというニーズが多い関東、近畿地方の都市エリアから選定。
20年3月24日~7月13日の期間に一都三県の13店舗で実施した1回目、20年11月16日~12月7日の期間に同じく一都三県の12店舗で実施した2回目の2回の先行実験結果などを受け、都市エリアの店の中から個店の販売動向や商圏人口、特に昼間人口やターゲットとなる女性の比率などの定量、お客のインタビューなど定性の調査をもとに約1200店を選出した。
抽出条件は、商圏内の昼間⼥性が⼀定以上、あるいはサラダや揚げ物などの販売高が⼀定以上など潜在顧客と顕在顧客が平均以上の店舗であること。
立地については、住宅立地、オフィス立地、駅前立地などに分散している。
今回の約1200店の結果を見て、今後、8月いっぱいをめどに同エリアでの他店への拡大や他県への水平展開を検討していく。
販売面での実験結果では、1都3県の6店舗での実験で1日の1店舗当たりの売上げがフライドフード、サラダ共に30%の売上増に結び付いたという。
「昨年度重なる実験を行い、お客さまの満足度がアップして、購買が促進されることを確認したので前に進んだ」(大谷副本部長)
それらの結果を受け、今回の1200店での展開について、該当店の売上げをサラダ類で30%、惣菜類で20%増加させたいとしている。