ダイエーがNTTデータのCatch&Go(キャッチアンドゴー)を活用したウォークスルー店舗をオープン

2022.04.12

2021.08.30

ダイエーとNTTデータは、レジを通すことなくキャッシュレス決済が可能な「ウォークスルー店舗」を9月2日にNTTデータ社内にオープンした。

店舗外観

少子高齢化が進み、国内では労働力不足が社会問題になる中、特に労働集約型産業である流通、サービス業ではデジタル技術を駆使した業務効率化の推進が業界全体で不可欠となっている。

また、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、消費者の価値観や行動が変化し、「できるだけ非対面、非接触で買物を済ませたい」「レジで並ぶ手間や時間を省きたい」というニーズが高まっている。

今回のウォークスルー店舗の取り組みは、効率化の推進という社会課題の解決に加え、消費者のニーズの変化に基づく新しい買物体験の提供の実現に向け、デジタル技術を用いたこれまでの取り組みで得たノウハウを生かしたものだ。

店舗では、NTTデータの「Catch&Go」サービスを活用。技術面では中国のCloudpickと提携し、2019年から実験を重ね、今回、実際の店としてのオープンに至った。

店舗の上部に設置したカメラと商品棚の重量センサーによって、お客が手に取った商品を認識する。

今回の店舗は、国内のウォークスルー店舗の中で最大規模の面積(NTTデータ調べ)として、品目数は約600品目。弁当、飲料、菓子、冷凍食品などの多様な商品をそろえた。

売場面積は37㎡だが、理論上は相当の大型店の展開も可能だという。ただし、その分、カメラなど機器の投資や経費がかさむことから、売上げとのバランスを見極める必要があり、現状は大型店よりは小型店の方が、採算性が良いと判断しているようだ。

カメラと重量センサーで買物行動を把握

利用者はまず、専用アプリをインストールし、クレジットカード情報などを登録する。入店に際しては自身のスマートフォンに表示されるQRコードをゲートにかざし、個人を認証。商品を手に取って退店するだけで自動的にクレジットカード決済されるため、レジ精算やバーコードのセルフスキャンなどの作業が一切不要となる。

カメラと重量センサーを組み合わせて買物行動を把握していくが、誤認識の確率はかなり低いという。非常に多くの人数が入店したり、意図的に複雑な動きをするといったことをすると間違えてしまうこともあるが、標準的な買物行動であれば問題なく認識できている。ただし、店内での手渡しは禁止としている。

また、重量センサーを活用しているが、かなり軽い商品でも対応可能になっている。

入店できる人数にシステム的な制約はないが、人数が増えれば誤認識の可能性が高まることもあり、現状は上限人数を10人と設定、11人目はゲートから入れないようになっている。ただし、設定の人数は変えることができる。

アプリには個別のQRコードが表示される。入店に際してはこのコードを用いる
QRコードをかざして入店。同じコードで複数人でも入れる。その場合、その人たちは1つの買物客のチームとみなされる
バックヤードに置かれた商品を登録する機器。スキャナーで商品のバーコードをスキャンした後、機器内でターンテーブルを回ることで360度の画像を撮影、重量も量ることで登録となる
棚の重量センサーは、アクリル板で仕切られた商品ごとに設置されている(写真は商品が置かれていない状態)。重さの増減とカメラが捉えた人の動きを総合して商品の動きを認識する
今回の店では、カメラは店舗上部に32台設置。カメラの台数は天井の高さによるところが大きく、天井が低いと画角が狭くなることから台数が増え、天井が高いと少なくて済む
カメラは2種類設置。丸いカメラが全方位で人の動きを捉え、長方形のカメラは人がどのような動作をしたかを捉える。それによってどの人が何を買ったかを把握
今回の目玉としては冷凍商品の取り扱いが挙げられる。Cloudpick、什器メーカーと協業して重量センサー付きの冷凍庫を開発。冷凍の商品が取り扱えるようになった。重量センサーを冷凍の什器に入れることは技術的な難易度が高かった
レジはなく、商品を持ったままゲートを出ることで決済が行われる
ゲート通過後、しばらくするとアプリに決済の明細が送られてくる。商品画像付きで分かりやすい

見切りを遠隔で行い、購買機会増大とフードロス削減

今回、見切りを遠隔で行う仕組みも導入。基本的に1日、朝1回の補充であることもあり、弁当など消費期限が短い、その日に売り切る商品などについて、時間を決めて値引くような仕組みとしている。

現状、プライスカードは紙であるため、お客が買う際には値引きについての情報はなく、買った後に値引かれていたことに気付くようになっているが、アプリでお客に通知するといったことも実施する他、今後は電子棚札の導入による表示の変更も視野に入れるなど、人手をかけずに購買機会を増やしフードロスの削減にも取り組むとしている。

また、販促の観点で、アプリでプッシュ型の情報提供なども実施していく。

スマホアプリで見切り販売を通知

両社は、今回の店舗によってレジ待ちが無い購買体験の利用者の反応と購買機会の増大、あるいは従業員のレジ作業や商品補充・発注作業の効率化などの効果を検証する。

また、何を、どのような組み合わせで買ったか、あるいはどの商品を見て、取ったり、戻したりしたか、さらには何も買わなかったといった全ての買物行動を捉えているため、データは豊富に集まっていく。当然、そうしたデータを分析し、商品や棚割り、売場の改善に生かしていきたい意向だ。

最初に使う際に、アプリのインストールと登録が必要であるため、通常の買物と比べ面倒ではあるが、1回登録すると、その後はリピーターになってもらいやすいのではないかと見込む他、レジのないことによる買上点数の増加効果も見込む。

特にダイエーとしては、小売業として今回の仕組みを実店舗でどこまで効率的に適用できるかを検証したい意向だ。半年程度かけて事業性、生産性、採算性を見極めたいとしている。現状は、商品を絞り込んだ省スペースの売場、コンビニサイズのショートタイムショッピングの店に適しているのではないかとみているという。

慢性的に人手不足の状況が発生すると見込まれる中、発注は自動発注を導入するなど効率化が進む一方で、レジの人時は比率も高く課題となっている。今回のようにレジの人時がなくなることのインパクトは大きく、今後の店の形として「ウォークスルー店舗」への期待も大きいといえる。

店舗の利用方法

CATCH&GO概要

所在地/東京都江東区豊洲3-3-9豊洲センタービルアネックス22階

オープン日/2021年9月2日

営業時間/9時~20時

売場面積/約37㎡

対象商品/約600品目(弁当、飲料、菓子、冷凍食品など)

お役立ち資料データ

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