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第8回 「Free From」 進化論、多様化するFree Fromの行間から見えてくる「世界のいま」

2022.10.27

世界の食品トレンドを読み解く上で、「Free From」は欠かせないキーワードだ。直訳するとxx不使用という意味。「シュガーフリー」「グルテンフリー」のように、「xxフリー」という感じで、サラッとかっこよく使われる。

INNOVAが毎年発表している「世界の食品トップ10トレンド」の、さかのぼること2010年版には、Free Fromトレンドがランクインしていた。10年以上前から世界のメインストリームなのだ。最近日本でも「xxフリー」という表現を見かける。

一般的には、特定の原材料やアレルゲン物質を使っていない、または無添加を意味するシンプルな用語である。

いや、「シンプルであった」と過去形で言うほうが妥当であろう。

いまの時代において、「xxフリー」と訴求されていたら、ちょっと意識的に注目した方がよい。作り手が、この言葉に強い主義主張を込めているケースがあるからだ。この行間を読み解ければ、「世界のいま」が見えてくる。

多様化するFree Fromの、事例を挙げてみよう。

Soy Free:欧米では大豆を避ける人が意外と多い。あらゆる製品パッケージに「でかでか」と大豆不使用が訴求されている。

もちろん大豆はアレルゲンであることも要因だが、欧米では家畜飼料のイメージが強く、印象が良くないのだ。大豆文化を誇りにしている日本人には理解しがたい概念だが、これが世界の実情。文化的な違いを反映したFree Fromである。

Guilt Free:ギルトとは罪悪感のこと。もはやこれは原材料や添加物どうこうの話ではない。感情面のFree Fromだ。

甘いものや脂っこいものを、ついつい食べ過ぎた後に、お腹のお肉が気になって、後悔の念を持つ人は多いだろう。だから、おいしさはそのままに、糖分を減らすなど健康志向に傾けた食品において、ギルトフリーがPRされる。

Alcohol Free:日本でもノンアルや低アルコールが増えているように、世界的に、特に若い人たちがお酒を飲まなくなってきている。

健康意識の高まりなど、理由は人それぞれだが、お酒を飲んで酔っぱらうことを、かっこ悪いと考える若い世代は多い。中年以上とは異なる感性だと言える。世代間ギャップを想起させるFree Fromだ。

Crash Free(Jitter Free):世界のエナジードリンクで最近よく見る訴求。カフェインを大量に摂取すると、瞬間的に力がみなぎるが、そのあと反動で急にパワーダウンした経験はないだろうか? この状態をクラッシュと言う。身体への負担が小さいボタニカル原料を使った「Crash Free」エナジードリンクが注目だ。頑張ったあとの、極端な電池切れを避けるFree Fromである。

Slave Free:Slaveとは直訳すると奴隷のこと。特にチョコレート業界でよく使われる表現だ。カカオ農家の子どもたちが、学校に通えず、危険な作業場で働かされていることが、社会問題となっている。だから児童労働を使わずに作ったチョコレートは、Slave Freeなのだ。社会を良くしたいという想いが詰まったFree Fromである。

Slaughter Free:家畜の命を奪う必要がないという意味。動物福祉、また地球環境への負荷を低減する観点から、細胞培養でお肉を作る最新テクノロジー分野にて、よく使われる表現だ。エシカル消費の価値観に基づいたFree Fromであり、細胞培養技術が広まるにつれ、この表現が多用されることになるだろう。

この先も、世界各国で、意味深な「xxフリー」がたくさん出てくるはずだ。この表現に出くわしたら、その背景にある意味合いを、一度立ち止まって考えてみてほしい。作り手は、世の中から何を取り除きたいと考えているのか? – そこには強いメッセージ性が存在するのである。

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