PB強化型まいばすけっと、こう見る! 酒類編 M&Z世代に向けた意図が分かる一方、ストロング比率の高いRTDはヘビーユーザー狙い?

2024.07.02

コンビニサイズの都市型小型スーパーマーケット(SM)のまいばすけっとは、イオングループのプライベートブランド(PB)の比率を5割以上に高め、かつM&Z世代(1980年代前半~2010年代前半に生まれた世代)にターゲットとする実験店を新横浜駅に近い仲町台にオープンした。このコンセプトが酒売場にどう反映されているのかを見ていこう。

イオンのPB

M&Z世代はRTDとウイスキーが好き

最初にM&Z世代(20代~30代)の酒類消費の特徴を見ておこう。飲酒習慣者率(週に3回以上かつ1回に日本酒換算で1合以上飲む人)は、男性で2割以下、女性は1割以下で、どちらも50代の半分に満たない(国民健康・栄養調査)。

酒類消費支出も20代世帯の支出金額は50代世帯の3割、30代世帯でも6割に止まる(2人以上世帯)。単身世帯も「34歳以下」は「35歳~59歳」世帯の3分の1でしかない(家計調査)。

このように上の世代に比べて酒類の消費に積極的ではないM&Z世代だが、酒類別に見ると酎ハイ、ハイボールへの支出額は50代並みで、また、ウイスキーへの支出割合が他の年齢層よりも高い。M&Z世代向けの酒類マーチャンダイジング(MD)はこの2つのカテゴリーとノンアルコール酒類を重視し、彼らの好みに合う商品を選ぶことが鍵になる。

まいばすけっと仲町台南店の酒売場は、店奥の壁面に3尺のオープンクーラーが3台ある他、3尺常温ゴンドラが3本ある。さらに主通路の惣菜売場にあるハム、ソーセージコーナーの下段に、ノンアルコールを含む缶入りワインが8アイテム、フルボトルワインが2アイテム並べられている。

売場写真はオープン前の内覧会時のもの、訪店時とは異なる部分もある。以下同

コンビニに近い利用のされ方も多いこの売場では、こうした即食系商品と酒類のクロス展開は有効だ。フードに合わせて選ぶイメージの強いワインを組み合わせることが多いが、M&Z世代をターゲットにするこの店では酎ハイやハイボールも試すべきだろう。

価格重視のビール類とレディトゥドリンク(RTD)販売

冷蔵ケースはビール類とRTDで3尺を1.5本ずつ使う。ビール類の中でのビールと発泡酒(旧新ジャンルを含む)の割合はフェース数でおおよそ4対6となっていて、ダウントレンドではあるが割安な発泡酒を重視していることが分かる。

これはPB比率が影響している。ビールのPB比率は2割ほどだが、発泡酒では5割近い。割安さを支持するユーザーが多い発泡酒は、PB比率を高めやすく、店舗としてPBが5割占めることもあり、発泡酒の構成比が高まったわけだ。

PB比率はRTDでは6割を占める。PBの中身としては、アルコール度数9%のストロング酎ハイが5割前後あり、酒ヘビーユーザー向けの商品構成比が高いといえる。酒と距離を置く傾向があるM&Z世代向けのMDとはいえないように感じた。

ノンアルカクテルはM&Z世代をつかむか?

M&Z世代を意識した売場としては、冷蔵ケース内にPBのノンアルコールのカクテルコーナーを1本設けている点を挙げられる。

ただし、酒売場との間にソフトドリンクの棚を挟んでいることもあって、「ノンアルコール」とはうたっていない。「Bar-iSh」「19Nineteen」とブランド名を見せる帯型のPOPを設置し、新しいソフトドリンクとしての訴求だ。

「Bar-iSh」はいわゆるフレーバードウオーターで、ボタニカルを組み合わせて香りでバリエーション展開する。味わいはいずれもドライに仕上げており、ノンアルコールカクテルとしても楽しめる。パッケージは白を基調とした落ち着いたデザインだ。

これに対して「19Nineteen」は「寂しがりピーチミントティー」や「大胆クラフト人事ジャーエール」といった具合に、ハーブティーやジンジャーエールなどの既存カテゴリーをクラフト訴求する商品展開だ。カラフルでポップなデザインのパッケージは、クラフトビールを想起させる。

いずれも270㎖ボトル缶を使用し、価格は280円の設定だ。PB新ジャンルが350㎖缶108円、PBストロング酎ハイが98円の酒売場を見た後では割高感は否めない。

だが、酒と距離を置き、飲むならチューハイやハイボールを選ぶM&Z世代が、このプレミアムPBを受容するなら、今後、開発は一気に進むだろう。

PBが8割を占める酒売場の常温ゴンドラ

さて、他の酒類が並ぶ常温ゴンドラを見てみよう。棚1本で展開するワインはほぼ自社輸入品とPBで構成する。ナショナルブランド(NB)がないカテゴリーでこの展開は当然であろう。中心価格帯は500円と低く、もっとも高いものがスパークリングワインの1080円だ。徹底してデイリーユース対応している。

2本目は蒸留酒の棚でフェースの半分をウイスキーが占め、その半分はPBだ。国産NBは「サントリー角瓶」「同トリス」「ブラックニッカ」のみで、輸入も「バランタイン」「ホワイトホース」「ジョニーウォーカー赤」など10点ほど。同じ棚に並ぶ甲類焼酎はNBで宝焼酎とキンミヤ焼酎、「眞露」をそろえるものの、主力はPBだ。

3本目は和酒(日本酒と本格焼酎)だが7割以上がPBで、品揃えや人気商品でお客の関心を惹く仕掛けとは無縁だ。

このように酒売場の常温ゴンドラは、酒類のコモディティ需要をPBで満たすことを目指し、驚きや楽しさの要素を重視していないようだ。酒と距離を置くM&Z世代向けの店舗では妥当な展開とすべきであろう。

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