ローソンが環境配慮の新型店を公開、電気使用量40%削減、CO2排出量55%削減目指し、24年3月以降の新店標準化視野

2022.11.05

ローソンは11月3日、8時に2013年度対比で電気使用量を40%、CO2排出量を55%削減する店舗を神奈川県川崎市にオープンし、メディアに公開した。

昨今の電気料金高騰を受け、店舗での節電は大きな課題となっている中、店内約8割の冷蔵、冷凍ショーケースへのガラス扉設置や太陽光パネルの設置などによって1店舗当たり約100 万円の年間電気料金削減を目指すとしている。

たとえば、冷蔵ショーケースの実験は6店ほど、太陽光発電は約2000店で過去、実施しているが、そうした個別の取り組みを今回集約した。

ローソンでは脱炭素社会の実現に向けて、環境ビジョン「Lawson Blue Challenge 2050!」を策定。1店舗当たりのCO2排出量を13年対比で30年に50%削減、50年には100%削減することを目指している。

今回オープンする店舗はこの取り組みの一環として設計された。今後は同様の店舗を他の地域の各エリアにも出店し、客動線や売上げ、オペレーションなどの検証を24年2月まで行った上で、24年3月以降の新店標準化とする計画。また、既存店についても、同じく24年度以降の改装時に店内設備の導入を目指すとしている。

取り組みには当然、投資がかかるが、廃止する什器、建築の工夫などの他、高騰する電気使用量の削減などで収支の黒字化を見込む。

また、これまでオープンだったケースに扉を付けることによる買い上げに対する影響なども同時に分析。来年の1月までの時限的なものではあるが、店内にカメラを設置し、お客の立ち寄りや買い上げなどの行動面を見ていく。

検証される主な取り組み、設備は以下のとおり。

①冷蔵ショーケースへのガラス扉の設置

オープンの冷蔵ショーケースに扉を付ける。ペアガラスの強化ガラスを使用し、冷気の漏れと外気の影響を抑え、店舗全体の電気使用量の6%程度を削減する。

ガラス扉は開き戸タイプ。縁も透明で商品の見やすさには配慮されている
冷蔵ケースで販売されるスイーツに関してはケースの奥行きが狭いといったこともあり、今回の扉の設置対象にはなっていない
店内調理の「まちかど厨房」展開店では、店内製造の惣菜と20℃の惣菜、冷蔵という3つの温度帯で惣菜が展開されるが、今回、そのうちの冷蔵売場に扉が付いた形になる

②冷凍平台ショーケースへのアクリル扉の設置

冷凍ケースに付けられたアクリル扉はスライド式で開ける形

オープンの平タイプの冷凍ショーケースにアクリルの扉を付ける。こちらも冷気を漏らさないことと外気の侵入を防ぐことで、店舗全体の電気使用量の1%程度を削減。

④ドリンク剤ショーケースの統廃合(ドリンク用冷蔵ショーケースで販売)

レジ側のゴンドラエンドで展開されるドリンク剤などのショーケースを廃止し、ドリンク剤を要冷飲料売場でまとめて展開、統廃合することで、店舗全体の電気使用量の約2%を削減。

ドリンク剤が要冷飲料売場に集約されることで、ソフトドリンクの売場が圧縮されるが、その分を通常壁面に配置される冷温切り替えの飲料売場を売場前のゴンドラに配置し、冬は温、夏は冷に切り替えて販売することで、まかなう計画

③ドリンク用冷蔵ショーケース扉の省エネ化

結露防止用のヒーターを最小限にして省エネを図り、一方で商品を見やすくするため扉枠を小さくした。今回、初めての取り組みとなる。

⑤エネルギーマネージメントシステム(EMS)

各所に設置したセンサーで店内外の環境を検知し、店舗の消費電力量、どこで使われているかといったことを「見える化」。 店内の一部機器、設備をEMS経由で外部から制御可能とし、節電要請などに対応。あくまで本部でのモニタリングとなる。既存店でも約770店で導入済み。

冷蔵ショーケースの扉の効果を「見える化」した結果の電力使用量の数値。左側が扉を付けた今回の店、右側が同じ川崎市内の同規模の既存店。オープン日の11月3日の24時間の数値
こちらは全体の使用量。青色が200ボルト、赤色が100ボルトの数値。左が今回の店、右側が川崎市内の同規模店。左側の店の赤色の数値が昼間に大きく減っているのは太陽光発電の効果による

⑥太陽光発電システム

建物屋根上に19kWの太陽光パネルを設置して発電。発電した全量を、本店舗の消費電力に充当する。店舗全体の15%程度の電気をまかないたい意向。また、それによって従来の電気使用量の約10%削減を目指す。

ローソン川崎中島三丁目店概要

神奈川県川崎市川崎区中島3-6-16

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