絶好調ヤオコーの「原点回帰」戦略に迫る、生鮮は素材中心、調理済みはデリカに集約する
2022.04.12
2020.08.07
ヤオコーは6月17日、所沢有楽町店をオープンした。国道463号線南側と県道6号川越所沢線北側にある深井醤油工場跡地への出店で、北方面約500mに西武新宿線の航空公園駅、南西約900mに西武池袋線・西武狭山線の西所沢駅、南東約1.1kmに西武新宿線・西武池袋線の所沢駅がある。
ヤオコーの他、サイゼリヤ、マツモトキヨシ、クリーニング、美容室、歯科医院で構成されるネイバーフッドショッピングセンターを形成している。深井醤油からヤオコーが土地を借り、ショッピングセンターを開発した。付近にはマンションなども多く、自転車と徒歩での来店が多くなるとみている。
所沢市にはすでに5店出店しているが、所沢市内では南北に走る西武新宿線の付近に店はなく、航空公園駅から徒歩約8分と比較的近い同店は、ちょうど既存店の間の空白地位を埋めるような出店で、地域内でのシェアアップが見込める。
「量目」と「時間」の2軸で品揃えを構築
浅見 充店長が定めたストアコンセプトは、「毎日の食生活が『豊か』になるお店づくり~『美味しさ』と『安さ』を、『量目』『時間』の 2 軸で考え、豊かな食生活が提案できるお店を実現しよう~」。
半径1km圏内の人口が1万人以上ということで、ヤオコーとしては人口密度が高い商圏となる他、人口、世帯数ともに増加傾向にある。その分、競合店も多い商圏内で、優位性を実現するための軸として「量目」と「時間」を定めたという。
商圏内の年齢構成は、30~59歳がボリュームゾーンとなり、広域になるにつれ 60歳以上の割合が高くなる。また、単身、2人世帯の割合が過半数を占め、埼玉県平均に比べて約1割高くなっているという。そこで、メインターゲットを30代~40代のヤング層に置き、サブターゲットにシニア層と若年層の2人世帯を設定。
ストアコンセプトにある「美味しさ」については、まず、「量目」軸では圧倒的なボリュームを打ち出す一方で、買上点数増を狙う「もう1品」の品揃えを強化。「時間」軸では、旬の打ち出しの他、昼食、夕食などそれぞれの食事への対応を強化する。
「安さ」については、「量目」軸ではまとめ買い、均一セール、カテゴリー割引などを強化する他、「時間」軸では夕市の活性化、アイスや冷凍食品の頻度品の毎日低価格などによって「目的来店」につなげることを目指す。
特に商圏として「適量」のニーズが強いと判断し、店内製造の強みを生かしながら、「量目」のコントロールによって適量ニーズに対応していくという。
小量目の商品などを増やし「選べる」売場づくり
各部門、「量目」と「時間」への対応に工夫がみられる。青果の野菜では、小量目に対応した取り組みとして、シニア層、単身世帯への対応の意味も込めて、これまでデリカ部門で取り組んできた「ちょっとがイイネ!!」を導入。単品にシールを貼る他、初めてコーナー展開。果物でもばら売りの売場を拡大した他、旬の果物の半切りやカットフルーツでの展開を強化。
時間という点では、年間を通じてトマトの品揃え、展開を充実させる他、花では「マンスリーフラワー」として毎月旬の洋花やミニブーケを提案することで、「季節を感じられる」売場づくりを行う。
その他、青果では、安さを訴求するため、特設平台で頻度品を中心にボリューム展開。単品大量販売で補充頻度を減らすことでオペレーションの負荷を減らし、低価格販売を成立させる手法で、2017年オープンの八百幸成城店(東京都調布市)から本格的に導入されるようになった手法だ。
新商品としては、台湾マンゴーを先行発売した。
鮮魚では、時間軸による「旬」と「鮮度」の打ち出しを近海魚と切り身で実践し、売り込みを図る。特に切り身のマーチャンダイジングに注力し、保存が利く冷凍の切り身についてはヤング層を意識し、量目対応としてまとめ買いに対応した商品を新たな導入。
量目対応ではその他、その日のお薦めの魚について「今日のこれ!」として、値頃な単品盛りをコーナー展開。刺身、つまみ、ちょっとしたおかずとして「選べる」売場を実現する。
精肉は、「焼肉売場ではなく焼肉屋へ」をコンセプトに、こちらも好きな素材を「選べる」売場づくり。量目対応の意味も込め、牛肉では、焼肉盛り合わせ・大型パック、単品商品、タンやホルモンなどの副素材、キムチやナムル、チヂミ、つまみキャベツなどの焼肉店の定番メニューを品揃え。日常からハレの食卓まで幅広く対応できる売場とした。
店内製造の強みを生かし、ロースカツサンドも店内加工へ
惣菜(デリカ)も、量目対応として、小量目の商品を「ちょっとがイイネ!!」の打ち出しで、「選べる」おかずの1品として提案。また、時間軸では昼には毎日出来たての米飯3アイテムを取りそろえる他、こちらは時間軸と量目軸のハイブリッドとして、夕方に向けて「ちょっとがイイネ!!」に加え、おかずやつまみになる惣菜をワンコインの商品に切り替えることで、こちらも「選べる」売場づくりとする。
寿司は、店内製造の強みを最大限に生かす。時間軸の対応として、昼には焼きたての焼きおにぎり、ワンコインで買える作りたてのちらし寿司や丼物を中心に展開、夕方にはこだわりの本マグロ使用の握り寿司など、夕食のメインになる商品を売り込む。さらに平日と週末で売場に変化を付け、それぞれの利用シーンに対応する。
商品では、ヤオコー名物の鶏唐揚げ「幸唐(さちから)」コーナーを拡大した他、焼き魚、煮魚、魚唐揚げなどの魚惣菜「漁火(いさりび)」もコーナー化することで、一体感のある売場を実現。
また、ヤング層に向けて、所沢有楽町店以外では大型店での展開となる「スイートポテト」を展開する他、青果ではなく、デリカ部門が展開するフルーツタルトも同店から新発売。
他にもトルコ、イタリア、タイなど各国の料理に用いられる食材を挟んだ「ワールドピタサンド」や、部門間の素材共有の一環として青果で取り扱っているメキシコのアボカド専業農家・ミゲールさんのアボカドを寿司に商品化するなど新機軸の商品を多数展開。
インストアベーカリーの「ロースカツサンド」は、これまでデリカ・生鮮センターでの製造であったものを店内製造に切り替えるなど、商品力強化にも努める。
その他、インストアベーカリーでは、フランス産発酵バタークロワッサンなどの食事パンを、「発酵バター」を打ち出すことで差別化を図る。ピザについても、日常からハレまで幅広く楽しむことができる商材として時間ごとに焼きたてを値頃で提供。
日配では洋菓子を強化した他、チーズについて、ワインに合うオードブル系の商品を、改廃を通じて強化。
ドライでは咀嚼力がなくても摂取できる介護食品、高カロリー飲料、アレルギー対応の子供向けのカレーや調理商品をそろえる。
菓子売場では、ナッツなどの豆菓子を豊富に品揃え。他、機能性の高いオーラルケアの品揃えも充実させ、「選べる」売場を実現する。
生鮮は素材、調理済みはデリカに集約
比較的厚い商圏ということもあって、初年度の売上目標は19億円と高め。売上高構成比は生鮮が35.9%、デリカが15.2%、グロサリー(日配含む)が48.9%を目標とする。SKU数は1万2900。生鮮1300、デリカが300、グロサリーが1万300となる。
品揃え全体を見渡すと、ミールキットなどいわゆるレディトゥクック、半加工品の品揃えはかなり限定的で、例えば鮮魚であれば切り身、精肉であれば焼肉商材など、あくまで生鮮は素材を販売し、調理済みの商品はあくまでデリカで販売するという、スーパーマーケットの原点に回帰したような売場となっている。
一部カットフルーツを青果で、オードブル系のミートデリを精肉で取り扱う他は、例えばサラダもタルトも青果でなくデリカでの販売に特化している点などはこれを象徴している。
昨今、多くの企業が半加工品や生鮮惣菜など部門の境界を超えた商品を意欲的に開発する中にあって、こうした商品を先頭に立ってリードしてきたヤオコーがあえて原点回帰、逆張りのような店づくりをしていることは興味深い。
ヤオコー所沢有楽町店概要
所在地/埼玉県所沢市有楽町7-4
オープン日/2020年6月19日
営業時間/9時~21時30分
駐車台数/142 台(駐輪場158台)
延べ床面積(ヤオコー床面積)/2956.19㎡(894.3坪)
店舗面積(ヤオコー売場面積)/1843.94㎡(557.8坪)
店長/浅見 充
従業員/正社員18人、パートナー・ヘルパー・アルバイト約130人(延べ人数)
年間売上げ(初年度)/19億円(予定)
商圏人口/1km圏内3万9000人(1万9000世帯)、3km圏内23万2000人(11万世帯)、5km圏内47万2000人(22万1000世帯)