ベイシアが新フォーマット・ベイシアフーズパーク大田原店をオープン、「新鮮さ」を提供する「食のテーマパーク」がコンセプト
2022.11.29
2022.11.22
ベイシアは11月23日、新フォーマットとなる「Foods Park(フーズパーク)」1号店を栃木県大田原市にグランドオープンする。前週にソフトオープンした。
同社は食品主体の総合小売りのフォーマットとして、主力のスーパーセンター、フードセンター、スーパーマーケット(SM)、ベイシアマートなどを展開しているが、今回、そこに5つ目の新たなフォーマットが加わった形となる。
ベイシアは2020年9月、生鮮食品売場について「人に勧めたいと思うか」を問うNPS(ネットプロモータースコア)の形で消費者調査を実施した。その結果、生鮮食品に対する課題が浮かび上がり、お客はベイシアに「新鮮さ」を期待していることが分かったという。
そこで、結果を基に部署横断的に改善プロジェクトを発足、生鮮食品の仕入れ方法の見直し、最新テクノロジーを駆使した配送方法の採用、さらにその鮮度を伝えるための情報発信など、社を挙げてさまざまな鮮度改善を推進、その成果を大田原店に結集した形となる。
「“毎日のおいしい”が揃うお店」として、食品の新鮮さとおいしさにこだわり抜いた食品強化の新フォーマットの位置づけ。
一方で、コロナ禍を経験した現在、SMに求めるお客のニーズは大きく様変わりしたとも判断。新鮮さとおいしさに加え、買物がしやすく、分かりやすい店内環境を実現することで、買物自体を楽しんもらえるような「食のテーマパーク」を体現し、現代のお客の食に対する多様なニーズに応える店づくりを目指した。
具体的には、コロナ禍でショートタイムショッピング傾向が高まったことを受け、各売場の適正規模化を推進。結果、食品強化、特に生鮮食品強化型の売場配置としてワンウエーコントロールに近い形の主通路動線となっている。
また、ライフスタイルの多様化から食の「簡便化志向」が高まっている中、簡便商品を強化。店内で食材を加工し、バリエーション豊かな食品を提供することで、「鮮度ニーズ」「簡便化志向」を満たす店舗を目指す他、例えば加工度を高めた惣菜などへと売体を変えて商品化することで「フードロス対策」にも寄与することも期待する。
大田原店周辺は単身世帯や2人世帯など少人数世帯が多く、比較的若い世代が多く居住する地域ということもあって、そうした周辺地域の顧客ニーズともマッチするとみている。新フォーマット1号店が大田原店になったのもそうした背景からという。
創業来、「For the Customers(すべてはお客様のために)」の理念の下に「より良いものをより安く」をモットーとしてきた同社が、「食品のプロとして、最良の品を最良の状態でお客様にお届けすることにこだわり、また食品を通して得られる体験を楽しんでいただきたい」との思いを込めた。今後、同フォーマットを多店舗展開し、次世代のSMのスタイルを確立していくとしている。
商品を絞り込み、作業性を改善しつつ、名物化を図る
売場では、「採れたて」「切りたて」「出来たて」「つきたて」「揚げたて」など鮮度にこだわった商品を展開。また、近年高まる簡便ニーズに応えると共に、店内加工、調理を充実させ、新しい価値の提供を目指す。
青果は特徴的で、平台は入口付近に1台置くのみ。第1主通路は青果を両サイドで壁面展開する形となっている。
差別化商材として、栃木県内の地場農家生産の「下野野菜」を販売するが、こちらはあえてコーナー化せず、定番の売場に組み込んでいる。
店頭近くでは、加工度を高めた商品として、カットフルーツ、スイーツを販売。大きな特徴としてはそれぞれアイテムを絞り込んでいる点。
カットフルーツはパイナップルのみ、スイーツは旬のフルーツを使用した店内加工のフルーツパフェ1アイテムのみを販売している。オープンの段階では、パフェは第1弾として「苺パフェ」となっている。
品揃えを広げず、あえて1アイテムに絞ることで作業性を向上させたり、しっかり名物商品として育成したりすることを意図した展開となっている。
第1主通路の青果に続く売場は精肉となる。オリジナルブランド牛の「ベイシアとろ牛」が今回の大田原店から販売開始となった。国産の交雑種だが、肉質4等級で、ベイシアでは一頭買いすることで、赤身から霜降り肉までさまざまな部位の商品化ができるとしている。
たれ付けの簡便商品では名物商品として「ガーリックペッパーポークステーキ」「牛プルコギ」の他、パッケージ入りの「上州名物もつ煮」などの特製肉料理を売り込む。
また、新商品としてとろけるような柔らかさとジューシーな肉感が楽しめる「THE!煮豚」を肉惣菜として展開。こちらも肉惣菜は煮豚1アイテムに絞り込んでいる。
続く鮮魚売場は、豊洲など全国の市場から直送で丸魚を品揃えし、要望に合わせて下処理を無料で受け付ける。
朝入荷した丸魚は時間の経過によって適宜調理し、切り身や刺身、惣菜のフライや塩焼き、煮付け、さらには店内加工の自家製干物にもするなどに売体を加工度の高い商品に変えていくことで、フードロス対策にも寄与する。
半加工では刺身用、フライ用、唐揚げ用、煮つけ用、焼き魚用、天ぷら用、干物用などへと売体を変えることを今回、「丸魚の七変化」として訴求する。
最終主通路で展開する惣菜売場では、壁面先頭でベイシア史上最大規模のフライ売場を展開。約7.4m、 2段に30種類のフライを展開。売場では、人気順に「三元豚のロースカツ」「ざく切り玉ねぎメンチカツ」「北海道産男爵芋使用牛肉コロッケ」の順番に商品が展開されている。
また、かつて人気を博したセルフサービスで盛り付けるカレーバイキングが約5年ぶりに復活。同じく約5年ぶりにギガ盛りの焼きそば、ナポリタンも復活させるなど、値ごろ感のある商品は商圏内に多い若年層の需要にもマッチするだろう。
その他、弁当に使う白米は山形県産「はえぬき」を店内で精米して炊飯するこだわりぶり。炊飯直前に精米することでふっくら、みずみずしいご飯に炊き上がるという。さらに冷めてもおいしいご飯にもなるという。
続くインストアベーカリーも商品を絞り込んだ展開。商品としては、クロワッサンとピザ中心にアイテムを絞りつつ、それぞれの商品についてはバリエーションを作り出している。クロワッサンはフランスから仕入れた冷凍生地を店内で焼き上げ、13種類の商品化を試みている。
買物環境面では、買物の楽しさの演出として、わくわくする買物体験を充実させるような店内装飾、媒体を志向。例えば店頭入口や各売場にはサイネージを設置し、鮮度感やおいしさを伝えることを目指したりしている。
また、お客の利便性向上を目指し、無料の給水コーナーをベイシアとしては初めて設置。繰り返し来店のきっかけづくりにもなるだろう。
さらに、休憩スペースや給水コーナーの壁面の木材は栃木県産の間伐材を使用。自然環境への配慮や地域の素材を使った取り組みとして、アピールする。
今回のベイシアの新フォーマットは、商品へのこだわりと絞り込みを同時に徹底した点が大きな特徴といえる。商品にこだわり、特に店内加工などが増えていくとその分、生産性の問題が大きくなり、特別な環境下の店以外では展開を拡大していくことが難しくなるのが一般的だ。
ベイシアではそれに関して商品を絞り込み、作業をはじめとしたさまざまな要素を単品に集中させることで生産性を上げ、解決しようとしているように見える。
特に絞り込んだ分野の商品が想定どおりの動きをするのか、また、どのように変化させていくのかには大いに注目したい。
ベイシアフーズパーク大田原店概要
所在地/栃木県大田原市住吉町1-14-12
営業時間/10時~20時(11月23日~12月13日までの期間は9時オープン)
駐車場台数/250台
総敷地面積/1万4642㎡(4437坪)
営業面積/3307㎡(1002坪、住関連48坪、食品567坪、衣料1坪、共用その他254坪)
レジ台数/通常7台、セルフ6台、コーナーレジ2台、合計15台(オープン時は21台)
従業員数/正社員10人、パートアルバイト社員60.5人(8時間換算)