コロナ時代の新生活時「外せない」ポイントとは?お店はどうなる?何を売る?
2022.10.25
2021.03.17
トータルプラン 横島宏一
ワクチン接種が始まり、コロナ感染拡大も第三波が収束傾向に向かいつつあるものの、依然として油断ができない状況にある。
その中でも季節は廻り、生きていく上でのさまざまな変化が発生する。特に、春は変化の時である。学校や会社は新年度を迎え、入学や進学、就職、転勤などのライフイベントが発生する。
これらのライフイベントの時には、生活環境が変化し、新しい環境でのニーズが発生する。(図表①)これらが春の時期に集中することで、小売業にとっては「新生活」という大きな販売テーマとなっているのである。
コロナ禍において、「新しい生活様式」が提唱され、外出自粛やマスクの着用、手洗いの励行など人の生活はコロナ以前とは変わっていっている。「テレワーク(リモートワーク)」や「オンライン授業」などの普及である。当然、「新しい生活様式」は、これから新しい生活を始める人々にも影響する。「新生活用品」もそのニーズに合わせて提案していく必要がある。
新しい生活様式における新生活
新しい生活様式によって普及している「テレワーク」は、ネットを利用して家で仕事をする、「オンライン授業」は学生が家で授業を受ける。このために必要なものは、ネット環境やパソコンなどの周辺機器はもちろん、長時間デスクの前で仕事するには、会社のデスクほどではないにしろ、必要なモノが増えるはずである。当然、デスク周りの環境も居心地のいいスペースになるようにするし、それは、会社にいるよりも自由度が高い。それぞれの好みや個人の裁量で快適な空間を作ろうとするのである。
テレワークやオンライン授業に必要なモノは、
①ネット環境…パソコン、プリンター、デスク、チェアなど
②パソコンの周辺機器…イヤホン、ヘッドセット、マウスなどの小型周辺機器、スマホスタンド、タブレットスタンドなど
③デスク回りの環境…クッション、ステーショナリー、ファイルスタンドなど
④デスク回りの空間…パーソナル加湿器、パーソナルファン、デスク用ヒーターなど
⑤疲れを癒すグッズ…腰痛対策のクッションやヨガマットなど
⑥休憩・ランチ用品…1人用のコーヒー用品、マグカップ、電気ケトルなど
これらの商品を既存の新生活用品に加えながら、また、ピックアップし提案することが必要になる。
新生活様式に合った商品の展開は必要だが、当然、「これまでの」新生活用品も必要になる。テレワークの普及率は、東京都では2月後半の時点で58.7%(2021年3月5日、東京都新型コロナウイルス感染対策症本部発表)である。
つまり、残り40%余りは従来の働き方のままである。テレワークができる業種や職種はあるが、実際に職場に行かなければならない場合もあるのである。従って、今までの新生活用品のニーズがなくなったわけではない。新しい働き方という要素が加わっただけなのである。
新生活のターゲットは誰か?
新生活用品は何を売れば良いのか?
そのためには、「どのような人」が、「どのような行動」をし、「何が必要になるか」を考えれば良い。
新生活のターゲットは、生活環境が変わる人である。「就職する」「入学・進学する」「転勤する」「新築する」人たちが主なターゲットである。さらに、この周辺に関する「お祝いをする」人などもターゲットにすることができる。(図表②)
それぞれのターゲットでの行動(アクション)が同じならば、それだけニーズが大きいということになる。ターゲットごとのニーズは違う場合もあるが、売場的には、まとめることで、1つのテーマの売場ができる。
大きく分けると、入園、入学、入社などの「社会環境による変化」と入学、入社、単身赴任などのよる1人暮らしや転居などの「生活環境の変化」に分けられる。これらの変化に伴って発生する「必要なもの」を提供することが新生活用品である。
その中でも、1人暮らしを始めるということは、新たな生活の場所(家、部屋、世帯、暮らし)を構築することであり、住関連商品のニーズが発生する。衣食は個人を対象にニーズが発生するが、住に関しては、家、部屋、世帯、暮らしなどの単位でニーズが発生するからである。
例えば、同じ家に暮らしていれば、洗濯機や掃除機は、1つで足りるが、その中の1人が1人暮らしを始めたら新たに洗濯機や掃除機が必要になる。それだけでなく、共有していたあらゆる生活用品が新たに必要になってくる。これは、住関連商品にとって大きなニーズである。
入園、入学、入社による新生活(社会環境の変化)
入園や入学、入社などの新しい生活環境の変化は、新たなニーズを生み出す。特に、入園、入学のニーズは、ランドセル、机だけでなく、幼稚園、保育園、学校などの指定という半強制的なニーズがある。地域の幼稚園、保育園、学校のニーズを調査し、商品に反映させるだけでなく、入学式、卒業式、説明会などの行事日程を確認し、売場に反映させることが重要である。
①入園・入学準備
小学校への入学に準備するものの中で初めに売れるのは、ランドセルや机などの高額品で、祖父母からのお祝いという例が多い。最近のランドセルは、色も豊富になり、1年も前から予約購入することもある。
細かな入学用品は入学式までに準備するが、準備する用品が分かるのが、2月の中旬ごろに行われる入学説明会である。この説明会で準備するものが分かり、購入を始めるのである。売場では、近隣の学校の準備用品情報を基に、必要な商品を再度確認し、売場を充実する必要がある。ただし、画材や書道用具は、授業が始まってから必要になる場合が多い。
②母親の入学準備
子どもの幼稚園や小学校の入園・入学準備を行うのは、親の仕事であり、その中心は、名前を書いたり、付けたりすることである。入園・入学準備のターゲットは、使用する子供よりも、かばんや机を贈る祖父母や入園入学準備をする親だったりする。
入学式の前にも、入学説明会や卒業・卒園式など母親は、公式な場所に出る機会が増える。これに合わせて、衣類では正装のスーツや、これに合わせてヘアカラーなどの身だしなみ用品が売れる。意外と忘れがちなのが、携帯スリッパや傘であるが、ターゲットである30代の女性が買いたくなる柄の商品が必要である。
③入学入準備
高校生や大学生は、受験が終われば、卒業式と束の間の春休みがある。高校卒業生は、運転免許取得の時期でもあり、新車用品として初心者マークや洗車用品などのカー用品の展開も行いたい。
高校・大学卒業生は、卒業旅行として旅行に行く場合も多い。スーツケースのバック類や細かな旅行用品の展開を行う。特にバッグ類は、学生のサイドバックや通勤用のビジネスバッグなど、今後新生活に向けて必要となるため、スーツケースや旅行用バッグだけでなく、バッグコーナーとしての存在感をアピールしておきたい。
1人暮らしや転居による新生活(生活環境の変化)
1人暮らしや転居は、新たな生活環境で生活していくためのスタートとなる。転居は、地域的なニーズは必要となるもののいままでの生活用品を継続して使用できるのに対して、1人暮らしを始めるには、新たな生活用品が必要となる。新生活用品で住関連用品全般の売上げを狙うには、「1人暮らし」生活への対応が不可欠である。
1人暮らしにはさまざまなケースがあるが、大きく分けると、①入学による1人暮らし、②就職による1人暮らし、③転勤による1人暮らしである。
①と②は、生活者の年齢は、18~22歳くらいであり、③においての年齢はさまざまである。従って、大学、専門学校などがある商圏の店舗においては、若者層をターゲットとしたカラー、テイストの商品を考慮する必要がある。
基本的に、収入が少ない世代であるために、低価格の商品が好まれるが、安くてもセンスが重視されるため注意が必要だ。部分的にこだわりを持っている世代であり、ファッションのセンスも磨かれていて優れている。
③の場合においても、すでに家庭を持つ単身赴任者の場合などは、2つの家を持つことになり、低価格商品を求める傾向にある。そのため最近では、1人暮らしを始める際に便利な店として、100円均一ショップが利用されている。総合スーパー(GMS)やホームセンター(HC)においては、1カ所で買物が済むという最大の利点をアピールしながら、低価格商品から価値ある商品までを総合的に提案する必要がある。逆に、スーパーマーケット(SM)やドラッグストア(Dg.S)なら、それぞれの専門分野である食や薬、化粧品を中心に、生活に欠かせない商品に気付いてもらう提案を行うことができる。
新生活用品の売場展開
従来の新生活用品に加えて、テレワークやオンライン授業などの新しい生活様式を加えて、今年の新生活用品は展開されなければならない。
そうは言うものの、新生活用品の中心は、文具や家具インテリア、家電などを扱うGMSやHC、家電専門店、スーツなどの衣料品店などに限られているように思うかもしれない。しかし、SMやDg.Sでも、それぞれの専門分野である食や薬、化粧品を中心に、いま扱いのあるカテゴリーを集めて提案することが可能なのである。
①買い忘れしやすい商品や消耗品を提案する
家電製品や家具、インテリアなどの大型商品は、すでにそろえているが、生活に密着した商品などは、意外と買い忘れが多い。また、実際始まってみて、必要になるものも多い。
つまり、ちょっとした便利用品、あると便利な商品などのニッチ商品を提案する。また、消耗品は、今後も必要になる商品である。新しい居住地で購入するお客を獲得するチャンスである。
他にも、風呂用品は準備するが、風呂掃除用品などは、使い始めてみないと気付かない場合が多い。他にも、トイレ、キッチンなど毎日の使用頻度が高く、メンテナンスを行わなければならない場所に対して、トイレの掃除グッズやキッチンの収納用品や便利用品を提案する。特に1人暮らしでは、最初は、フライパンや炊飯器などの調理器具を用意するが、実際には調理の手間をかけない場合が多い。電子レンジを利用した調理などの便利グッズを提案すると効果的だ。
ヘルス&ビューティケアカテゴリーのメインはシャンプーやコンディショナー、スキンケア化粧品などのいわゆる消耗品なのだが、一緒に使うべくヘアブラシやコットンなどの脇役小物は買い忘れしやすい。
入学用品は、学校に入学する前に準備するが、実際に入学してから必要となるものも多い。また、クラスメイトが持っているものを見て、欲しくなるものもある。実際の授業や行事で何が必要かを調べることも大切だ。
最近では、春に運動会や体育祭を行う学校が増えている。もしも、春に運動会等を行うならば、その準備を提案しなければならないし、遠足ならば、ステンレスボトル、弁当用品などの行楽用品を準備する。
②テーマを絞る
新生活という大きなテーマで、全ての商品をそろえなくても、新生活の売場展開はできる。食を中心としたSMなら1人用のキッチングッズを展開したり、Dg.Sなら安全な生活や新社会人の化粧品などを提案することができる。
「おひとりさま」のキッチングッズ
調理器具においては、通常の家庭が使用するサイズよりも小さめの商品を展開する。フライパンは通常26㎝が一般的だが、1人では大きすぎる。鍋も片手鍋16㎝くらいのものや雪平鍋、ラーメン鍋などの提案を行う。これに、スポンジや電子レンジ用品、マグカップや飯茶わん、箸、キッチン洗剤などの消耗品を提案する。
ターゲットを絞った弁当グッズ
弁当箱やステンレスボトル、ランチジャーなどを展開する。低学年には、キャラ弁づくりのグッズ、OLなどの女性用弁当箱やランチバッグといっしょに関連商品を提案する。
子どもの安全
子どもの安全は親の最大関心事だ。コロナ対策としてマスクや携帯用除菌ジェル、スプレーなどの展開とともに、防犯ブザーや蛍光テープ、防災頭巾などの子供の安全をテーマに商品を展開し、いざと言うときの対応について、親子で話し合える売場にしたい。
春のオーラルケア
オーラルケアは3〜4月にかけての時季が年間で最も売れるピークである。新入学を機に子供の歯ブラシ習慣を身に着けさせる提案を行う。また、一般の人でも、虫歯や口臭に気を配ったり、会社や学校で使う歯磨きセットを買い替えたりとさまざまなケースの需要が考えられる。
歯ブラシや歯磨きペーストの安売りをするのではなく、歯周病予防、美白、超音波歯ブラシなど、効果や使い勝手を重視した商品を中心にした売場づくりをして、それぞれの購入客のニーズに答えられる売場づくりをする。
いざというときに備える
1人で生活する人が最も不安になるシーンは病気になったときだ。それが風邪などのありがちな疾患であっても、1人で医者に行ったり薬を買ったり、さらには食べるものを考えたりするというのは、結構大変なことである。
そういった際に役立つのが常備薬。新生活者やそれをサポートする親をターゲットとしてベーシックな「救急セット」を提案する。
小さいサイズの総合感冒薬、解熱剤、胃薬、整腸薬、消毒薬、救急ばんそうこう、体温計、冷却シートなどのいつでも使う可能性のある商品とそれらをひとまとめに収納できる箱やケースと一緒に販売する。
ニーズは、時代と共に変化し、その時々の流行や生活様式の影響を受けて変化していく。いまの新型コロナによる新しい生活様式による変化もその1つということができる。元々、小売業は変化対応業といわれ、時代の変化に対応し、消費者のニーズに応えることが使命である。
その意味では、いかに変化したニーズに対応できるかが問われている。そして、商品に「新商品」と「定番商品」があるように、「変化させるべきもの」と「変化させるべきではないもの」がある。この見極めとバランスこそが、お客のニーズに応えることにつながるのである。