大規模複合開発「有明ガーデン」内に「都市型イオンスタイル」有明ガーデンがオープン

2022.04.12

2020.08.07

大規模複合開発「有明ガーデン」内に「都市型イオンスタイル」有明ガーデンがオープン

イオンリテールは5月15日イオンスタイル有明ガーデンをオープンした。同店が出店する「住友不動産 ショッピングシティ 有明ガーデン」は、住友不動産の開発による店舗数200店超のリージョナルショッピングセンター(RSC)に位置づけられる大型商業施設であるが、もともと4月24日にグランドオープンする予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期。6月17日に施設開業、8月1日に全体のグランドオープンを迎えた。

イオンスタイル有明ガーデンとクリーニングとベーカリーといった生活必需品の店舗のみ、5月15日に先行オープンしていた。施設1階に2285㎡(約691坪)の食品主体の売場面積で出店。

都心へのアクセスがよいこともあって、周辺ではマンションの開発が多数計画され、30代~40代のファミリー層を中心に、その人口は2020年に1.5万人、30年には3.8万人にまで増加すると見込まれている。また、今回の施設が中核となる大規模複合開発の「有明ガーデン」には、総戸数1539戸のタワーマンションの他、ホテルや劇場などもある。近隣にはスポーツやイベント施設も多い。

そのため、イオンリテールとしては近隣の住民はもちろん、国内外からの集客も期待。マーチャンダイジングとしては、店舗から2㎞にある豊洲市場から仕入れた鮮魚や野菜の他、「こだわり」の商品を充実させると共に、観光需要や近隣でのイベント時の需要を見据えて、ソフトクリーム、抹茶ドリンクなど歩きながら片手で食べられる「ワンハンド」商品を拡充している。

また、既存のイオンスタイルと同じく店内で購入した商品や出来たての食事をその場で食べられるグローサラント的な機能である「ここdeデリ」を導入。

近隣の住民の他、スポーツやイベントなどのお客も多いことから向けに店内で調理した惣菜を充実させる他、「ここdeデリ」ではステーキや海鮮丼、ピッツアなどを、注文を受けてから1食ずつ調理して提供。イートインコーナーは約100席の規模で展開し、多様な「食」のスタイルに応える。

出来たてを含む食事を対面で提供するショップは、全てイオンリテールの直営で3ショップの展開。素材にこだわった「デリ」「サラダ」「ごはん」をワンプレートで提供する「リワードキッチンプラス」では、栄養の偏りや野菜不足を気にしている「働く女性」をターゲットに、「美と健康」「トレンド素材」を取り入れた惣菜(デリ)やサラダなどを提案。雑穀米などのグレインズやキヌア、ケール、アボカドなどの栄養価が高いと言われる食材を使用するなど内容にこだわる。

提供方法も、980円(本体価格、以下同)の「えらべるデリBOX」として6種類のメイン(単品398円)と5種類のサラダ(同298円)、5種類のサイド(同258円)、3種類のご飯の中から、各1品ずつ選択する方式を採用するなど、バランスの良い食事が取れるように配慮。なお、同ショップでは、イオングループのコンビニのミニストップのソフトクリームも提供する。

水産部門が運営する海鮮丼ショップの「魚魚彩(ととさい)」では、出来たての海鮮丼や握りたての寿司を提供。本マグロにこだわった丼や握り寿司のほか、女性や子供向けメニューも用意する。また、今回、ランチの新メニューとして一度に3種の丼が味わえる「海鮮玉手箱」(総額1000円、店内飲食)を提供。店内飲食がメインだが、テイクアウトメニューも用意している。

また、デリカ部門が運営するステーキショップ「ガブリンググリル」では、イオンの自社牧場で肥育された「トップバリュ グリーンアイ ナチュラル タスマニアビーフ」などを使用したステーキやハンバーグを提供。また、三元豚を店内でパン粉付けし、コレステロールゼロの油で調理した、こだわりの「とんかつ定食」も提供。さらに「ひれかつ」「海老フライ」を組み合わせた「ひれかつ&海老フライ定食」や「ロースかつ&海老フライ定食」などの「選べる定食」も提案する。

以前は「ガブリングステーキ」のショップ名だったが、提供メニューの広がりを受け、「ガブリンググリル」に変更した。

これらショップは直営であるが、物販部分のバックヤードとは独立している。ただし、例えばリワードキッチンプラスの商品について、物販部分のデリカのバックヤードで一部作ったものを持って行って対面販売したり、また、魚魚彩では握り寿司、ちらし寿司、海鮮丼は魚魚彩の作業場で作っているが、たねの一部は水産のバックヤードで加工したものを持って行って仕上げるなど、物販部分も活用した形の運用となっている。

物販売場でも惣菜は売場も広く、アイテム数も多く、メイン惣菜になっている。カウンター越しに対面販売を行う「リワードキッチン」は、「がんばった自分へのご褒美に、ちょっぴり贅沢なご馳走をお手軽に!」をコンセプトに、メインディッシュとなるハンバーグや彩り豊かなサラダなど約30種類のメニューを展開。

サラダでは、健康志向の高いお客にスーパーフードなどを使用したフレッシュな手作りサラダを提案。栄養素が高いケールとキヌアを使用した「カラダに優しいケールとキヌアのサラダ」などを量り売りする。

セルフサービスの売場でも「だし巻き玉子」や「グリルチキン&ハンバーグ」といった核商品を中心にセット物や周辺商品にまで品揃えを広げ、コーナーの形で売場を構築している。

生鮮では豊洲市場が近いという店舗特性を生かし、農産では毎日、旬の野菜や果物を仕入れて販売する他、ミズナやトマト、ホウレンソウなどの旬の京野菜も品揃え。また、「トップバリュ グリーンアイ オーガニック」や千葉県産のオーガニック野菜などを約30種類を取り揃えるなど、こだわりの需要にも応える商品構成としている。

水産でも毎朝、豊洲市場から仕入れた鮮魚を対面コーナーで提供。お客の要望で開きや3枚おろしなどの調理サービスも実施。また、本マグロの上質部位のカマトロを使用した刺身や「本鮪づくしの握り鮨」「とろ入り鮪丼」などを品揃。さらにサバ開き干し焼きやエビフライなどの魚惣菜まで展開するなど、加工品も強化。

フロアレイアウト上、水産とデリカが隣接しているため、握り寿司を中心とした水産の寿司と巻き物などを中心としたデリカの寿司を温度帯を変えながら1つのケースで販売することができている。

インバウンドや土産需要に対応した品揃え

前述のとおり、店舗周辺にはイベント会場やスポーツ施設、劇場などが多数あるため、国内外から多くの来店があることを想定し、明治31年(1898年)創業の「茂助だんご」の餅菓子やどら焼き、饅頭、羊羹などを品揃えする他、銘店コーナーでは「ラ・メゾン白金」や「東京ラスク」「銀座ブールミッシュ」など、東京銘菓の商品を取り揃える。

また、スポーツ時のおやつとして近年人気のナッツやドライフルーツなどを組み合わせた「トレイルミックス」の他、国産原料にこだわったドライフルーツも品揃え。さらに近年、注目度が高いハーブティーやフルーツティーの品揃えを強化すると共に和柄のリプトン紅茶タンブラーも用意した。

酒コーナーの「イオンリカー」では専属ソムリエ3人がワインを提案。ワインは需要が高いと判断しており、ワインだけで800種類という地域最大級の品揃えとした。オープン後約1カ月の段階でも好調に推移し、中でもワインは酒の中で30%以上の売上高構成比となっている。これは全国のイオンの店舗の中でも上位の構成比だという。ブルゴーニュやボルドーなど高級産地のワインを値打ち価格で提供する他、近年話題となっている「自然派ワイン」や「山梨ワイン」、東京の「深川ワイン」をコーナー展開。

酒ではワイン以外でも日本酒では、東京都心に百年の時を経て蘇った東京23区唯一の酒蔵「東京港醸造」の「どぶろく江戸開城」をイオンで初めて導入。

他、新潟県の銘酒「八海山」「越乃寒梅」「久保田」なども取り揃える。また、ビール職人のこだわりが詰まったクラフトビールは、日本のクラフトビールに加え、本場アメリカのクラフトビールを中心に品揃え。

また、冷凍食品では、グループ企業が日本事業を展開するフランス発の高級冷凍食品「ピカール」の商品を導入している。売価はピカールの店舗と同じで、この地域のお客には良いものを望むお客が多いと判断し、導入した。オープン後の売上げは計画以上だという。

また、「帝国ホテルキッチン」の商品も導入。冷凍というと弁当材料、アイスクリームが中心になりがちだが、マンションに住んでいる層などにワンプレートの食事になるようなものの需要があると想定して品揃え。こちらも週末を中心によく動いているという。

谷本和彦店長は、「有明地区には食品を買えるスーパーマーケットがほぼ1店しかなく、また、物販、飲食がほとんどないため、お客さまはわざわざ車、公共交通機関を使って東雲地区、豊洲地区に行っていたようだ。今回、有明地区にイオンスタイルができたことで、お客さまの声では『近隣で日々、あるいは週末の食品が買える』というお言葉が非常に多い。『便利になった』との声もある。オープン1カ月ではこだわったもの、良いものが非常によく動いた」と語る。

同店から1.5kmのところにイオン東雲店があり、イオンスタイル有明ガーデンの商圏は、「実際にはいままでは東雲店がカバーしていた。ただ、東雲店のキャパシティも飽和状態にあったので、店を作ることできちっとすみ分けができるとは思う。地域にあった品揃えという面では商圏特性が東雲と有明が全然違うため、有明にあった品揃えを意識して作った店」と石河康明・南関東カンパニー 東東京事業部事業部長は説明する。

SCのグランドオープン前は近隣からの集客がメインなっていたが、全体のオープンによって商圏の拡大に期待する。

「都市型」のキーワードは「ファミリー・単身」「人口増加エリア」

イオンリテールでは、「30~40代のファミリーや単身世帯が多くお住まいの人口増加エリア」を「都市型」と定義している。今回のイオンスタイル有明ガーデンを1つのモデルとして今後、都市部の店舗展開をしていくという。

もともと「イオンスタイル」フォーマットは、そのときの店舗規模と地域ニーズに基づき、食品をベースに品揃えやサービスを設定、提供することを方針としている。

イオングループは、モール型のRSCや近隣型のネイバーフッド(N)SCを多数開業し、日本のSC開発をリードしてきた代表的存在だ。イオンリテールにとっても、RSCに入る総合スーパー(GMS)の出店が大きな成長エンジンになってきた。一方で、日本が人口減に入る中、昨今ではSCをはじめとした商業施設の競争が激化し、特にこれまでのように大型のRSCを出店することが困難になっている。そうした中、NSC出店を含め、食を中心とした「イオンスタイル」がイオンリテールの成長にとっても重要な位置づけを担うことになる。

さらに都市部への人口集中が続く中、人口減などの影響も受けづらい都市部はこれまで以上に有望なマーケットとなっている。特にイオングループは都市部への出店が多いとは言えず、今回のような「都市型」フォーマットの開発と出店は、今後のグループの成長にも大きな影響を及ぼすことになる。

「いま、日本の中でみても人口が増加するエリアは東京に集中している。イオンはどちらかというと郊外に出店してきて、首都圏中心にまだまだ店が少ない。まずは人口増加エリアに店を出していきたい」と石河事業部長は力を込める。

イオンスタイル有明ガーデン概要

所在地/東京都江東区有明2-1-8「住友不動産 ショッピングシティ 有明ガーデン」1階

オープン日/2020年5月15日

売場面積/直営約2285㎡

営業時間/8時~23時

店長/谷本和彦

駐車台数/約1900台

駐輪台数/約1700台

お役立ち資料データ

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