「脱縦割り」目指す意欲店となるマルエツ横浜最戸店

2022.04.12

2020.08.07

マルエツは2020年7月17日、横浜最戸店をオープンした。05年まで最戸店として営業していた物件で、至近にあるイトーヨーカ堂の大型店との競合もあって一度撤退し、他店にリーシングをしていた。

その後、15年を経てそのリーシングが満期を迎え、「この15年間、私たちがやってきたことを集大成としてもう一度チャレンジしてみようと合意した。大きな店にも負けない、小さな店ということで一回やってみようということで、会社としては気合が入っている」(古瀬良多社長)

神奈川県横浜市港南区の北側に位置し、京浜急行本線、横浜市営地下鉄ブルーラインの上大岡駅西口から徒歩約10分、北側550mに位置している。周辺には戸建住宅、マンションが混在し、700m圏内の人口は2万4924人、世帯数は1万2604世帯となっている。19年対比20年の世帯伸長率は101.7%と増加傾向を示す。

世帯当たり平均人員は1.98人。横浜市港南区全体と比較して、1人世帯は39.8%と10ポイント高い一方で、2人世帯は27.1%、3人世帯は17.7%、4人以上世帯は15.4%と、それぞれ4.3、2.0、3.7ポイント低くなっている。

年齢別人口構成比では同じく横浜市港南区全体と比較して、25~34歳が13.8%と3.6ポイント高く、5~24歳が16.3%、65~84歳が19.1%と、こちらもそれぞれ1.4、4.7ポイント低くなっている。

生鮮と惣菜の一体感を組織と店舗設計も含めて強化

同店の特徴は、「生鮮と惣菜(デリカ)の一体感」をこれまで以上に高めた点にある。売場面積は約400坪の中型店だが、売場レイアウトでもメインの入口側に生鮮と惣菜をまとめ、入口から奥の惣菜まで見渡せるような店舗設計になっている。古瀬社長は、「生鮮デリカの一体感を売場でも表現する、新しい店づくりの取り組み」と表現する。

もちろん、今回の取り組みはレイアウトだけではない。スーパーマーケットでは組織の問題もあって、生鮮3部門が持つそれぞれの分野のスペシャルティを、惣菜部門で利用することがなかなかできないという構造上の問題があるが、その問題をできるだけ解決しようとバックヤードの配置にも踏み込んだ。

具体的には、「バックヤードをできるだけいっしょにするというイメージ」で鮮魚の作業場とデリカの作業場に小窓を設けるなど、「たとえ小窓であっても、横で食材のやり取りができる環境を作るという意識」(古瀬社長)での設計としている。目指すのは、生鮮のそれぞれの素材部門が仕入れた食材を使った惣菜の商品だ。例えば鮮魚の作業場から惣菜の作業場に食材が渡るなど、ベーカリーも含めた生鮮、惣菜各部門が連動することで、競争力の高い商品を開発していくといったストーリーが想定されている。

3月1日付でそのための組織改正も実施済み。惣菜を強化するために同日付で「フレッシュデリカ統括部」を新設した他、生鮮各部の横断的なつながりを強化するため、それまでの「精肉部」「青果部」「鮮魚部」「デリカ部」を解消し、「フレッシュデリカ統括部」内に「ミート」「プロデュース」「フィッシュ」「デリカテッセン」を新設した。

「フレッシュデリカ統括部という1つの部門にくくり直すことで生鮮3品、デリカをまとめた。主任も相互に予算を負担しあっている。自部門の数字だけを追いかけていたら、評価されないという制度にしている」と古瀬社長。

鮮魚など生鮮部門の食材を活用した惣菜は以前から一部手掛けていたが、それを強力に推進するための組織上、バックヤードの構造上の強化が加えられた形だ。

肉、魚まで商材の幅が広がったフレッシュサラダ

また、先行して取り組みが進んでいた青果部門が店内製造する「フレッシュサラダ」は、横浜最戸店を含め16店での展開にまで広がってきているが、これまでは青果の食材だけの展開だったが、デリカテッセン部門の担当者が製造に入り込む態勢とすることで食材の幅を拡大。

「スモークサーモンも使えるし、チーズも使えるし、肉系のローストビーフのようなものも使えるということで、劇的にアソートメントが広がった。例えば、『海老とアボカドのサラダ』というように、これまでの『野菜のサラダ』という限定的なものから広がりを実現できている。これをインストア(加工)でどんどんやっていく」(古瀬社長)

また、このように広がりを持たせることで、以前は、フレッシュサラダの売上げがそれほど見込めないことから展開できなかった小型店でも、商品が広がり売上ボリュームが増えることで展開が可能になるという期待もある。

横浜最戸店の「フレッシュサラダ」コーナーには、ローストビーフをサーモン、あるいはオープン日にはデリカ部門で支持の高い『ガブっと旨い!大判竜田揚げ』をトッピングした商品が並んだ。また、青果、精肉、鮮魚の素材を活用した惣菜が惣菜売場で集合展開されている。

惣菜売場は壁面を使わず、平台、平ケースのみというめずらしい展開。平台では生鮮素材を活用した「豚ロース生姜焼重」や専用の鉄板を使用したグリルメニュー、店内で焼成したピッツァなどこだわり商品を多数品揃え。

また、冷蔵平ケースでは店内食材を活用したレンジアップ商品「トマトたっぷりナポリタン」「ガツンと塩レモンパスタ」「具沢山えびパッタイ」なども展開。レンジアップパスタは加工済みのものと野菜など一部生の素材をアソートした商品で500Wの電子レンジで4分加熱して完成する設計の冷蔵商品。

店頭脇で展開するインストアベーカリーでは食事パンとして健康志向に対応した「玄米パン」やトースターで焼かなくてもおいしく食べられる食パンの「パン・オ・ナチュール」などを品揃えする。

また、店内で手作りしたサンドイッチや、ホイップクリームとフルーツ、ポークパストラミを使用したバラエティ豊かなクレープを「デリクレープ」として品揃え。

こうした即食商品を含め、店内で飲食ができるイートインコーナーは23席分設置。

鮮魚の寿司「魚悦」を惣菜売場で販売

もちろん、約400坪の売場を生かし、生鮮食品の売場も充実。青果では平台を活用した単品量販を仕掛ける他、日本全国の農家から直送される「農家の直売所」コーナーなどを展開。

また、ドレッシングコーナーを生鮮売場に展開すると共に手作りドレッシングの提案も行う。

青果に続く鮮魚では横須賀市場直送の朝獲れの生魚をサクや造りで提供する他、メバチマグロは単品造り、盛り合わせ、切り落としを「三崎」限定で品揃えする。

単身世帯への対応としては、温めるだけ、フライパンで簡単に調理できる膳彩(煮魚、焼き魚)、骨とり干物、ミールキットなどを品揃え。

また、鮮魚が手掛ける惣菜として寿司の「魚悦」をコーナー化。マコガレイやキンメダイをはじめとする横須賀市場直送の生魚などを活用し、隣接した惣菜売場で展開。

続く精肉ではA5ランクの「仙台牛」をはじめ、鹿児島県産黒毛和牛、マルエツオリジナルの交雑牛の「優夢牛」、アメリカ産牛肉アンガス種、鹿児島県産黒豚、「桜もち豚」「みちのく森林鶏」、ラム肉などを品揃え。

加工肉では鎌倉ハムなどの他、輸入生ハムを展開。

さらに味付け商品や焼き鳥、焼とんなどの簡便性の高い商品を平ケースで集合展開すると他、「お肉屋さんのオードブルコーナー」では即食性の高いローストビーフやローストポークなどのつまみをそろえる。

日配ではヨーグルトについて銘産・ギリシャなど充実した品揃えで展開する他、代替ミルクとしてオーツミルクなども展開。

冷凍食品は、単身世帯に対応した肉や野菜を一皿にセットした「ワンディッシュ商品」を品揃えする。

また、豆腐、卵などでは地場商品の品揃えを強化。

グロサリーでは、健康志向への対応として「大豆ミート」や「糖質コントロール商品」「グルテンフリー商品」を集合展開。

また、簡便性が高い即席食品として「和洋惣菜」「中華即席」「無菌米飯」などを強化。

日用雑貨については化粧品や毎日の生活に必要な日用雑貨、消耗品に加え、文房具の品揃えを拡大。最近の新店で導入されているスライド式で陳列面を広げられる什器を導入している。

さらに、売場ではところどころで関連販売を実施。「メニューが想起できる売場」を目指し、例えば、豆腐の売場にスンドゥブなどの専用調味料を展開。調味料の他、食材などを組み合わせて展開することによって「メニュー想起」ができる売場づくりを目指していく。

マルエツ横浜最戸店概要

所在地/神奈川県横浜市港南区最戸1-16-15

オープン日/2020年7月17日

営業時間/10時~21時

駐車場/41台(共用)

建物構造/RC造陸屋根/地上6階、地下1階建て (店舗は1階)

売場面積/1326㎡(401坪)

店長/田中俊光

従業員数/54人(8時間換算)

年商目標/11億1000万円

お役立ち資料データ

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