サミットストアららテラスHARUMI FLAG店がオープン、中央区に初出店の商業施設内店舗、小型店中心のエリアで600坪超の面積を生かす

2024.03.04

サミットは3月1日、東京都中央区に初出店し、サミットストアららテラスHARUMI FLAG店をオープンした。2月29日にはプレオープンした。同店のオープンでサミットのスーパーマーケット(SM)としては東京都91店、全社では124店体制となる。

東京2020オリンピック・パラリンピック選手村の跡地を再開発した「HARUMI FLAG」の商業施設で、三井不動産が開発した「ららテラスHARUMI FLAG」の1階に核店としてオープンしたもの。サミットとしては三井不動産の商業施設初出店となる。

ららテラスは、三井不動産が開発する商業施設としては、比較的小型の小商圏型「ライフスタイルパーク」の1つに該当する。ショッピングセンターの店ぞろえ、規模で言えばネイバーフッドショッピングセンターになるだろう。

そのため、テナントとしてはサミット以外、サブ核店級のマツモトキヨシ、ダイソーがある他は小規模なものが多く、特に「ウェルビーイング」のコンセプトの3階部分の一部は医療モールになっている。三井不動産としても、「生活密着型施設」を標榜する。

ららテラスHARUMI FLAGは3層で、核店クラスのサミット、マツモトキヨシ、ダイソーの他、飲食店、クリニックモール、フィットネスジム、認可保育所など日常生活を支える39店が出店

HARUMI FLAGは今後、約13万㎡の土地に、約5600戸の住宅と商業施設からなる、約1万2000人が住む街へと開発されていくが、現状、店舗周辺は開発の過程にあることから、マーケットとしてはまだ未完といったところ。

周囲500m圏の人口としては約4500世帯、1万人弱にとどまっている他、そもそも土地の構造が「島」であることから商圏の広がりにも限界があるため、まさに「これから」の商圏となっている。

計画にある住宅約5600戸のうち、竣工済みは約4100戸。入居率は2月29日時点で60%、4月1日時点で80~90%、ゴールデンウィーク後の5月6日時点でほぼ100%になるが、残りの約1500戸については25年秋の竣工予定となっている。

入居後の想定としては500m圏で約1万人世帯、1km圏で約2万2000世帯、1.5km圏で約3万7000世帯と、サミット平均を大きく上回る商圏になる。

一方で、現状、商圏内には共働き世帯や小さな子どもがいる若いファミリーが多いことから、サミットとしても安心・安全につながる商品、大容量商品、簡便、半調理品を豊富に取りそろえた。

また、「新しい街」ということで、サミットとして同店に関して、「食を中心とした生活を支えるだけでなく、地域コミュニティの結びつきを促進する役割を果たすこと」を目指すとしている。

「開店朝礼では、『新しい街の一員として、一からそこに住む方たちといっしょに街づくりをしていくという気持ちでやろう。結果的にそれが、サミットで買物をする習慣が住んでいる方の日常になることにつながり、それが10年、20年、この地で生まれて育った子どもたちにサミットがあって良かったねと言っていただける、そんな存在になるために何ができるかを考えて行こう』と言った。奇麗ごとのように捉えられるかもしれないが、既存店で起きていることを考えると、あながちそれが売上げ、利益に直結しないものでもない。街とのかかわりを強く持つこと自体が来店動機になってきている」(服部哲也社長)

特に立地の特殊性から周辺には大型店がなく、周辺2km圏内には600坪クラスのSMは存在しない。今回、サミットの売場面積は614坪であることから大いに競争優位性はあるとみている。

また、周囲1km~1.5km圏内の勝どき、月島エリアの人口はここ数年、大きく伸びている他、10歳未満と30~50歳代の人口比率が高い一方で60歳以上が極めて低く(2022年住民基本台帳、20年国勢調査より)、またサミット平均、東京都平均と比較しても単身世帯比率が低く、小さな子どもがいる若いファミリー世帯が多いということで、比較的長期に渡って安定した需要が見込める立地でもある。

アクセス面では、鉄道の最寄り駅に関しては店舗から約800mに位置する都営大江戸線の勝どき駅ということで、比較的距離がある。

一方で、東京BRT( Bus Rapid Transit、バス高速輸送システム)の結節点の「晴海五丁目ターミナル」が施設に隣接する他、同拠点がマルチモビリティステーションとして東京BRTの他、都バスの停留所、今後はドコモ・バイクシェアによるコミュニティサイクルポートや船着場の整備も予定されるなど、アクセス面については多様性が増す予定。

ただ、いずれにしても、しばらくは商圏の成熟を待つ必要がありそうだ。年商は33億8000万円を見込むが、これは2年目の目標となる。

主力総菜商品をリニューアル

サミットの売場は間口が狭い一方で奥行きが60mある他、奥側に行くほど幅が広がっているなど変則的な形だが、同社の最新マーチャンダイジングを全面的に投入している他、これまで既存店で実験を重ねた新規商品も多数展開されている。

メインの入口は1カ所のため、店頭には青果と鮮魚を並列させた。写真右手が鮮魚売場

内装も既存店とは変え、床も含め「楽しさ」「家」を意識した色、演出としている他、特に既存商品を含め、オリジナル商品については、順次、サミットのコーポレートカラーである「緑」をあしらった統一感あるパッケージに切り替えている。

自社開発商品を「プライベートブランド」と呼ばず、「オリジナル商品」とし、パッケージなどにも特徴を持たせて展開。今回、加工食品、総菜共に白地にサミットを象徴する緑色をあしらったデザインに統一させている

コロナ禍で商品開発のスピードが落ちてしまった危機感を感じており、取り組みを積極化させている。ららテラスHARUMIFLAG店でも一部デビューしているが、24年度からは新商品が多数登場する見込み。それを試食コーナーの「おためし下さい」やコトPOP、さらに案内係などを通じて情報をしっかり伝えながら販売していきたいという

サミットの特徴ともいえる生鮮総菜については、青果ではフレッシュサラダやカットフルーツ、鮮魚では焼き魚や煮魚、精肉ではグリルキッチンを展開するだけでなく、これらを使用した弁当を総菜で展開するなど、仕事や家事、育児に忙しい層の「簡単に美味しく食べたい」要望に応えることを目指す。

青果の「フレッシュサラダ&カットフルーツ」コーナー
青果のサラダではパスタサラダなど、主食にもなる商品をラインアップ
「フレッシュサラダ&カットフルーツ」コーナーではフルーツを使ったデザートとして既存店でも人気の「フルーツ杏仁」を品揃え
青果の総菜では焼き野菜も品揃え
鮮魚総菜の焼き魚、煮魚コーナー
鮮魚総菜では、今回初めて鉄板焼きの商品を導入
精肉惣菜の「グリルキッチン」コーナー。事前調査で周辺に多いと分かった在宅勤務の人などもターゲットに、昼食に便利なおかずの1品になる商品やご飯に載せるだけで丼になる商品などを品揃えする。グリーンカレーなども品揃え

総菜だけでなく、調理の手間を省き、仕事や育児で忙しい人が時間を節約できるように、フライパンで焼くだけや電子レンジで温めるだけで食べられる簡便・半調理品の品揃えを充実させた。

店内で販売している素材を使用した「レンジアップ商品」を総菜売場で展開。電子レンジ加熱での調理の商品については、これまでそれぞれの生鮮売場で展開していたが、総菜売場付近でまとめたところ、買いやすいためか2~3倍の売上げになったことから順次、既存店も切り替えている。

生鮮部門の素材を使った、電子レンジ加熱するだけで食べられる半加工品は、総菜売場に集積させている。各生鮮売場で展開するより総菜売場でまとめた方が売上げが上がることが分かったため、総菜売場での展開としている
電子レンジ加熱だけで食べられる商品としては、味付けの魚なども総菜売場で展開
同様に電子レンジ加熱の商品については、味付け肉も総菜売場で展開

また、電子レンジ加熱の商品については、今回、店内の素材を使用したスープタイプの「えびのビスク」「スンドゥブチゲ」を新たに品揃え。

生鮮部門では、事前の調査で「子どもに食べさせたいと思える魚が近くで買えない」という声が寄せられたことから、特に鮮魚の品揃えを充実させた。

「築地に行かなくても晴海で魚を買いたい」と思ってもらえる品揃え目指す他、「まぐろ解体ショー」などのイベントも定期的に開催する。売場も青果と並んで入口近くに設置するなどアピール度を高めている。

また、売場中央に設置するL字型の平ケースに刺身を豊富に品揃えし、定期的に「お刺身よりどりセール」を実施。家族がそれぞれ好みの刺身を選んで買えるような仕掛けとしている。

地域住民の「子どもに魚を食べさせたい」という声に応えることを目指し、「骨取り」や食べやすいサイズの「小切れ」、子どもに好まれる「サーモン」といったトレンドの品揃えも充実

精肉売場では、子育てファミリー層に支持の高い「こま切れ肉」や「ひき肉」などの大容量商品をコーナー化する他、調理の手間を省いた簡便商品として、「パン粉付き商品」を平ケースでまとめて販売。

また、店舗周辺には健康への意識が高い人が多いと判断し、添加物の使用を控えた商品やオーガニック商品など健康、自然志向の商品を強化した。

精肉ではオーストラリア産の「グラスフェッド(牧草飼育)」の牛肉を品揃えした
青果売場では、「農家さんから直送」コーナーもしっかり設けている
「ドライフルーツ・ナッツ」のバイキングコーナー(量り売り)を設け、酒のつまみ、朝食やおやつに活用してもらうことを狙う

総菜売場では、温総菜コーナーに、精肉売場で販売している九州産みつせ鶏を使用した「チキンかつ」など「みつせ鶏」の横展開MDを展開する他、新商品として男爵芋のうまみを最大限生かした「チルドコロッケ」を品揃え。

総菜売場での「みつせ鶏」の商品展開。総菜売場では唐揚げ、カツなど揚げ物を販売
精肉売場で展開されるグリルキッチンでも「みつせ鶏」の総菜を展開。こちらでは「手羽もとのうま煮」など煮物、焼き物を販売
主力商品の店内で揚げるコロッケは冷凍の状態での納品ではなく、チルドに切り替え。リニューアル。球状の商品で、1つずつ手作業で丸めるなど付加価値を付けている。

米飯コーナーでは、昼食需要を捉えて、精肉部門で販売している原料を使用した「ローストビーフ丼」や「ロコモコ」などのランチBOXを品揃え。

一方で、寿司コーナーは鮮魚部門に隣接して設置。鮮魚部門の新鮮なたねを盛り込んだ「にぎり寿司」や子どもや女性に向けて「中巻」の品揃えを充実させた。

寿司では「サーモンづくし」といった切り口の商品も品揃え

冷総菜コーナーでは、主力商品の「ポテトサラダ」をリニューアルし、添加物を極力使わないマヨネーズを用いることで素材をそのまま味わえる、家庭で作るようなやさしい味に仕上げた。マヨネーズについては今後、加工食品でも商品化する計画もある。

カツ重は調理器具から見直すリニューアル

ベーカリー売場では、専用窯で焼き上げた本格的なナポリピッツァに加え、若いファミリー世帯に向けた「ドーナツ」や「ミニパン」などの大容量商品を品揃えする。ドーナツに関しては、子どもの軽食やおやつ向けに10アイテム展開。

ナポリピッツァは平台ではホールを販売するが、6分の1カットなど、食べやすい量目もしっかり品揃えしている

ベーカリー売場の冷蔵ケースでは鮮魚、精肉部門の素材を使用した「ライ麦パンの海老アボサンド」や「ローストビーフサンド」の他、「フルーツタルト」や「チーズケーキ」など、店内手作りスイーツの品揃えも充実させている。

グロサリー売場では、アレルゲンフリー商品をコーナー化したり、調味料などの使用頻度が高い商品を中心に「プラントベース(植物性)」商品の品揃えを拡充。「ZENB」や「2foods」などの話題性のあるブランドの商品も取り扱う。

さらに酒売場と隣接させる形で冷蔵ケースを設け、「インストアカットチーズ」や「オリーブ」、鮮魚部門の素材を使用した「燻製商品」などし好性の高い商品についても品揃えを試みている。

燻製商品は、精肉の商品も開発、こちらは精肉売場で冷蔵展開(左側のコーナー)

また、酒ではクラフトビール、輸入ビール、およびビール風のノンアルコールビールの品揃えを強化、つまみと併せて販売する。

さらに女性や若年層向けに甘い酒や低アルコール度数の商品、見た目を重視した商品を強化すると共に手軽に試しもらえるように小容量の商品も充実させた。

冷凍食品は通常300SKUほどの品揃えだが、今回は最大、2倍となる約600SKU品揃えしている。

皿を用意することなく食べられる「トレー入り」商品や弁当などの「ワンプレート」商品を充実させた。

冷凍食品の中には、サミットが総菜で開発したオリジナル商品を冷凍の素材にしたものも品揃え。その旨をアピールして売り込んでいる
サミットとしては地域のお客のニーズに応えた「個々に寄り添う」店づくりにしていくことを目指している。既存店でも展開されえるお客の声をベースに品揃えしたコーナー
地域には子どもを持つ世帯が多く、これからも増加が見込まれることから文具は今後、さらに強化される見込み
グロサリーのゴンドラエンドでは一部、投げ込み式の什器を採用。人手不足が続く中、オペレーション効率を高める取り組みも見られる
レジはセミセルフが一部ある他は多くがフルセルフレジ。フルセルフレジは30台設置

サミットストアららテラスHARUMI FLAG店

所在地/東京都中央区晴海5-2-31

オープン日/2024年3月1日

営業時間/9時~22時

駐車台数/104台(施設共用)

駐輪台数/122台(施設共用)

売場面積/2030㎡(614坪)

バックヤード面積/881㎡(267坪)

レジ台数/34台(セルフ精算レジ4台、セルフレジ30台)

店長/羽山正浩

従業員数/109.1人(正社員35.0人、パートタイム・アルバイト社員74.1人、パートタイム・アルバイト社員は173時間/月=1人で計算)

年商目標/33.8億円(2年目)

商圏内世帯数(人口)/1次商圏(半径0.5km以内)4509世帯(9548人)、2次商圏(半径1.0km以内)1万6229世帯(3万3243人)、3次商圏(半径1.5km以内)3万1555世帯(6万1783人)

ららテラスHARUMI FLAG

サミットの店の前には、東京2020オリンピック・パラリンピックの選手村でも提供された、GAP認証の食材を活用するレストラン「TEAM JAPAN 2020 VILLAGE Café & Restaurant CENTRALE」を配置
2階は入口に東京2020大会の歴史を伝えるスポーツピクトグラムのオブジェを展示している他、アートウオール、人々の交流を創出するイベントスペースを設置。新しい街・晴海の地域交流の創出の場として地域社会に貢献することを目指す

マツモトキヨシららテラスHARUMI FLAG店

サミットの隣に出店しているマツモトキヨシは、商業施設内の都市型の店舗で売場面積はワンフロア約90坪で、都市型としては比較的広め。

ドラッグストアとして、地域住民の他、一部外国人もターゲットと考えている。日用品などはベビー用品などを中心にしっかりそろえている一方で、食品については隣にサミットがあるため、一部菓子をそろえる程度。アイテム数は約1万3000。

医薬品については第1類も取り扱うが、施設内に調剤薬局が入っていることもあって、調剤は展開していない
医薬品、化粧品などでもプライベートブランド(PB)商品を最上段で売り込んでいる。医薬品のPBについてはパッケージに「どのような薬か」が分かるようなパッケージとしている
PB商品は企業名を冠したものの他、「オーガニックコスメを日常に」をテーマとするオーガニックコスメブランドの「アルジェラン」やヘアケアブランドの「MQURE(エムキュア)」など、カテゴリーやコンセプトを明確化したブランドを持つ
「THE RETINOTIME(ザ・レチノタイム)」は、ナリス化粧品との共同開発のエイジングケアブランド
高保湿スキンケアブランドの「RECiPEO(レシピオ)」はコーセーとの共同開発。ナショナルブランド商品にはない分野の商品

お役立ち資料データ

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