スマートレシートとは?使い方や仕組み、事業者と消費者双方のメリットなどを解説
2022.04.22
2021.11.18
昨今、政府のキャッシュレス推進政策が進んでおり、多様な店舗で電子決済サービスが導入されている。その一方で、レシートに関しても、紙媒体から電子媒体へ移行する動きが見られる。
2018年には、経済産業省が「電子レシート実証実験」を実施。個人の購買履歴データを蓄積し、事業者がデータを活用することで、正確な消費者理解や新たなサービスの実現などを、政府は目標に掲げている。
電子レシートサービスは複数存在するが、その中でも注目を集めているのが「スマートレシート」だ。本記事では、スマートレシートの概要から、消費者・事業者が利用するメリットとデメリット、使い方まで解説していく。
スマートレシートとは?
スマートレシートとは、東芝テック株式会社が手掛ける電子レシートサービスだ。専用アプリをスマホへインストールし、表示されるバーコードを会計時に提示することで、レシートを電子化できる。電子レシートは会計後、過去に読み取ったものを含め、スマホアプリからすぐに確認可能。なお、スマホアプリは、iOS・Androidの両OSに対応済みだ。
スマートレシートは、サービスを導入する店舗でしか利用できないが、全国のさまざまな業態で導入されている。例えば、関東・近畿エリアでは、下記のような店舗が挙げられる。
エリア | 店舗 |
関東エリア | INGNI、かごの屋、スギ薬局、ミニストップ等 |
近畿エリア | 串家物語、ジャパン、スーパーマツモト、阪急OASIS等 |
※2021年11月時点の導入店舗
スーパーからドラッグストア、コンビニ、ファッションブランド、飲食店など、多様な店舗で導入が進んでいると分かる。ただし、気を付けたいのが、同じ店舗名であってもエリアにより、利用可否が変わる点。例えば、福島県会津若松市内のセブン-イレブンでは、スマートレシートを利用可能だが、関東・関西・九州など他のエリアでは利用できない。同じセブン-イレブンであっても、導入エリアが限定されている点に注意が必要だ。
スマートレシートのメリット・デメリット
スマートレシートを導入することには、消費者側と事業者側の両方にメリットがある。一方で、デメリットも存在するため、チェックしてほしい。
消費者がスマートレシートを利用するメリット
キャンペーンへ簡単に応募できる
対象商品を購入し、レシートから応募できるキャンペーンを実施する事業者は多い。応募方法としては、レシートをハガキに貼る、スマホからQRコードを読み込む、シリアルナンバーをWebで入力するなどが挙げられる。しかし、消費者側からすると手間に感じたり、応募すること自体忘れる可能性も。
その点、スマートレシートではキャンペーンの対象商品を購入すると、レシート詳細画面にプレゼントマークが表示され、応募を行える。キャンペーンの応募漏れを防止しやすいだけでなく、スマホ上から簡単に応募できるのもメリットと言える。
クーポン・スタンプカードを利用できる
スマートレシートでは、会員限定のお得なクーポンが配布されている。利用方法としては、クーポン一覧から発行したいクーポンを選び、会計時に提示するのみ。少しでも出費を減らしたい人に、重宝できる機能だ。
加えて、スタンプカードもスマートレシートには実装されている。
例えば、1,000円ごとに1スタンプ貯まるカードの場合、条件を満たした買い物をするだけで自動発行・捺印される。会計時にスタンプカードを提示する必要はなく、スムーズに支払いを済ませられる。また、クーポン・スタンプカードが電子化することで、財布をスリムにできるのもメリットだ。
セルフメディケーション税制の証明に利用できる
セルフメディケーション税制とは、対象の要指導医薬品及び一般用医薬品を、1年間に12,000円以上購入した場合に、所得控除を受けられる制度。スマートレシートを利用すれば、対象の医薬品を自動集計し、年間購入金額の確認を行える。
さらに、セルフメディケーション対象商品の購入一覧表を、セブン-イレブン・ローソン・ファミリーマートのマルチコピー機から印刷することも可能。明細をプリントし、領収書として提出できる。医薬品のレシート仕分けを行っていない家庭でも、スマートレシートの利用で、セルフメディケーション税制を適用できるか簡単に確認可能だ。
レシートスキャンとの連携で紙レシートも取り込める
東芝の子会社である東芝データは2021年11月1日より、紙レシートを撮影することで店舗名・購入商品名・金額などを認識し、データ化する「レシートスキャン」のアプリをリリースした。レシートスキャンはスマートレシートと連携可能で、スキャンした情報をスマートレシートでも確認できる。
加えて、レシート情報の手動入力を行える機能も搭載。紙レシートが出ない店舗や、スマートレシート非対応の店舗でも、レシート情報を電子化して管理できる。
消費者がスマートレシートを利用するデメリット
後からレシートを発行できない
アプリ上に保存されるレシートを、後から紙媒体で発行することはできない。事業者や個人事業主など、会計処理でレシート・領収書を利用する場合は、必ず支払い時に店員へ申し出る必要がある。なお、電子レシートと紙レシートは会計時に申告すれば、両方とも受領可能だ。
電子レシートの閲覧期間が設けられている
スマートレシートで発行した電子レシートは、閲覧期間が13ヶ月となっている。家計簿を兼ねている場合など、1年以上前の電子レシートまで遡って閲覧する可能性がある人は、注意が必要だ。
導入店舗が限定されている
先述の通り、スマートレシートは多様な業態の店舗で利用が進んでいるが、まだまだ導入店舗は少ないのが実情。大手企業が経営する店舗であっても、スマートレシートを利用できるとは限らない。PayPay・楽天Payなどのスマホ決済、WAON・nanacoなどの電子マネー決済は着々と浸透しているが、キャッシュレス決済サービスに比べると、スマートレシートの導入店は少ないため、注意しておこう。
事業者がスマートレシートを利用するメリット
紙のコストを削減できる
レシートを発行しても、すぐに破棄したり受領しない消費者は多い。全国で消費されるレシート用紙の量は年間で約5.4万トン、費用にすると約960億円となっており、事業者側としては無駄な出費を避けたいところだ。
そこで、スマートレシートを導入すれば、レシート用紙のコスト削減に繋がる。レシート用紙のロール交換頻度も下がり、レジの混雑緩和を期待できるだろう。クーポン・スタンプカードの機能も利用することで、それに係る紙代・印刷代も削減可能だ。
販売促進に繋げられる
クーポンやスタンプカードの導入は、リピーターを獲得するための効果的な販促とされている。しかし、紙媒体のクーポン・スタンプカードは財布がかさばるため、家に忘れたり破棄される可能性も。一方、スマートレシートで電子化できれば、消費者の利便性向上・クーポン利用率の向上・他店舗との差別化など、事業者にとってさまざまなメリットを得られる。
また、新しいクーポン・キャンペーン・お知らせを「おトクの更新」として、プッシュ通知で知らせることも可能。プッシュ通知の開封率は約30~40%とも言われており、消費者の来店に繋がるきっかけを作りやすいだろう。
消費者との物理的接触を避けられる
今般の新型コロナウイルスの感染拡大により、店員・消費者の接触機会を減らすための施策を、各店舗は行っている。スマートレシートに関しても、消費者のスマホ画面に表示されるバーコードをリーダーで読み取るだけのため、レシートを手渡しする必要がなくなる。接触機会の減少に、大きく寄与するだろう。
事業者がスマートレシートを利用するデメリット
専用のレジが必要
スマートレシートは、全てのレジに対応しているわけではなく、専用のレジが必要となる。場合によってはレジのリプレイスが発生し、導入コストが高額になる可能性も。
また、レジのリプレイス時は、これまで連携を行っていた自社システムやキャッシュレス決済サービスなど、連携仕様も考慮しなければならない。工数面も踏まえ、慎重に導入を検討したい。
業務フローの改善が必要
スマートレシートを導入する場合、従業員へのオペレーション指導やマニュアルの整備など、レジのリプレイス以外にも事前準備が必要となる。バーコード表示やクーポン・ポイントカードの利用方法といった、使い方の質問を受ける可能性もあるため、アプリの操作方法にもある程度精通しておかなければならない。
また、スマートレシートの提示で商品の返品も行えるが、返品条件は店舗により異なる。例えば、商品返品時に紙レシートを回収する店舗もあるだろう。これが電子レシートへ移行した場合の業務フロー改善も、必要になると考えらえる。
スマートレシートの使い方
ここでは、スマートレシートの使い方を画像付きで解説していく。まず、App StoreもしくはGoogle Playストアから「スマートレシート」のアプリをインストールする。無料アプリのため、料金は発生しない。
スマートレシートでは利用時、会員登録が必須なので、画面下の『新規登録』から設定を進めていく。
会員登録には、メールアドレスもしくは携帯番号が必要となる。利用規約を確認後、いずれかの情報を入力し、『完了』をタップ。数秒後に届く5桁の番号を入力し、『完了』をタップしよう。
続く画面で、会員情報を入力する。個人情報の登録は必須ではなく、パスワードさえあれば登録は可能。
ただし、性別・生年月日・郵便番号まで登録しておけば、利用者に合わせたお得な情報が届くため、入力しておくのがおすすめ。入力完了後、『登録』をタップする。
以上で事前登録は完了。スマートレシートのホーム画面にバーコードが表示されるので、支払い時に提示し、店員に読み取ってもらおう。
電子化したレシートは、画面下の『レシート』のメニューから確認可能。
一覧表示されたレシートをタップすると、品目や金額など詳細なレシート内容を確認できる。
その他、クーポンやスタンプカードといったお得なコンテンツは、スマートレシートを利用して買い物し、マイストアに登録することで受け取れるようになる。スマートレシートの使い方は以上だ。
スマートレシートのまとめ
レシートを電子化できるスマートレシートには、消費者・事業者双方に大きなメリットが存在する。消費者側の使い方は非常に簡単で、アプリを起動し、ホーム画面のバーコードを提示するだけ。レシートをアプリ上で一括管理できるだけでなく、クーポン・スタンプカードも利用できるなど、優れた利便性がある。
事業者側も導入することで、コスト削減・販売促進・新型コロナウイルスの感染拡大防止に繋げられる。ただし、キャッシュレス決済より優先度が低いことも起因してか、現状の導入店舗数は決して多いと言えない。消費者は、普段利用する店舗がスマートレシートに対応しているか必ずチェックし、事業